二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.45 )
- 日時: 2012/08/27 18:33
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ウウィントは自分の部屋に引きこもって何度も手紙を読み返していた。
必要最低限の情報しかかかれていない。
椅子に反対向きに座っていたウウィントは、三階の鳩部屋に行くことにした。
ヴィンテル王国の南東に位置するこの街は伝書鳩の起源で有名である。
優秀な伝書鳩を一羽呼び寄せて、王都にいる仲間に届けてもらうつもりだった。
もちろん、次期女王にあてた手紙を、だ。
灰色の伝書鳩が服にしがみつくと、ウウィントは地図の確認をした。
長方形の地図はヴィンテル王国の地図である。
主に、季節の配分について書かれている。
山脈の関係で南東、北西、中心部では季節がまったく違う。
ウウィントがいる南東では肌寒い秋しか存在せず、赤の盗賊団のいる北西は冬のみ。
その中心部には春があり、秋があり、そして冬がある。
今、王都は春である。
「なら伝書鳩でも平気だな」
走鳥類を使わなかったのは、空路のほうが早いからだ。
けれどワシなどに狙われる危険もある。
足輪のピッケルに軽い手紙をはめ込んで窓から送る。
飛び立たせる前に目の前に蒼いぬのを振る。
目的地は色によって決めてある。
鳩が羽ばたいていくと、今回のリーダーになってしまった彼は作戦を練り始めた。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.46 )
- 日時: 2012/08/29 17:37
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
こつこつこつ、と窓を何かが叩く音でクローロスは目覚めた。
彼女の部屋は始祖のイリジウム女王が使っていた部屋の隣である。
もともとは一つの部屋だったが、その巨大な部屋を仕切り、今では一番高い部屋は二つあることになる。
伝承の通り、その部屋は城の一番高いところである。
隣の部屋、つまりイリジウムの大部分の部屋であったところには現女王のイオーデスが眠っている。
物音の根源を確かめようとそっとベットを抜け出した。
次期女王の部屋は余り大きくない。
彼女の性格がもともと派手好きではないので、ベットとクローゼット、その他必要な家具ひとにぎり、そして勉強好きなため、各教科の詳しい書物がずらりと並んでいた。
なので狭い部屋は結構なスペースが残っていたため、それほど狭くは感じない。
床にしかれた絨毯を踏みしめて足音をしのばせる。
気分はそう、始祖イリジウム女王にでもなった気分だ。
本当の伝承では彼女の部屋に訪れてきたのは泥棒。
もしかして泥棒が隠れに来たの?
窓に飛びついて、カーテンを開けるとその夢は打ち砕かれた。
いや、たしかに彼女を訪れてきたものはいた。
人ではなかったが。
「あら、鳩…」
残念がるクローロスの目前には、期待を裏切ったことを知らぬ灰色の鳩が首をかしげながらとまっていた。
窓を開けると、その羽を伸ばし部屋の中に入ってくる。
羽音はあまりせず、無作法に部屋を飛び回るのではなくクローロスの勉強机に飛び乗った。
そして、ふんぞり返るように片足を突き出す。
見事なバランス感覚に驚いていたクローロスだったが、その足のピッケルに手紙がはまっているのを見つけると即座に手を伸ばした。
「いてっ?」
しかし鳩は足を引っ込めると、クローロスの手を容赦なくつついた。
手を振って顔をしかめたクローロスは鳩を見る。
「わたしあての手紙じゃないの?」
なんとか手紙を取ろうと必死になったが、どれもうまくはいかなかった。
鳩もあきれつつ、たくみにクローロスの陰謀をかわす。
クローロスはしまいには戸棚から伝書鳩や鳩についての本を取り出して読み始めた。
鳩はその様子をのんびりと眺めている。
「そうか!」
やっと理解したクローロスは本を閉じた。
鳩は期待に目を輝かせる。
クローロスは部屋中を探し回って、御礼できそうなものがないことをさとった。
そして部屋を抜け出すと料理番の元に走っていった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.47 )
- 日時: 2012/08/30 03:13
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「おはようございます、クローロス様…」
早朝、まだ太陽がその身をすべて山脈の影より出し切らぬ時間に訪れた次期女王に、朝食の用意をしていた料理番のコックは不思議そうに挨拶をした。
「いったい…どうされました?何か入用ですか?」
調理台のすべてを任されているコックが、その厨房でのみ王族と話が出来る。
なので、こうして自分から話が出来るのだ。
「実は、鳥の喜ぶものがほしくて。何かないですかな」
クローロスが手に持ったバスケットを差し出してコックにたのむ。
自分がどれほど奇妙なことを言っているのか理解していない様だった。
コックは目を見開いたが、失礼のないようにすぐ表情を引き締めた。
「鳥ですか…その、種類は…」
調理台を超えて、食糧庫にむかうコックは不安げにつぶやいた。
もしへびやかえるが好みの鳥だったらどうしようと、不安がっているのだ。
「あ、鳩ですよ」
クローロスは言いそびれていたとばかりに、付け加えた。
「わたくしの手よりも大きいので、きっと沢山食べますよ」
そしてにっこり笑った。
鳩がうれしそうに餌をついばむ姿を想像しているのだろう。
動物好きの14歳のこの娘は、まだそういう無邪気な心を失ってはいない。
「ではこれをどうぞ」
クローロスより受け取ったバスケットにクロワッサンとビスケット、この地方では高級品のとうもろこしを添えた。
クローロスは料理番にほほえんで、去っていった。
あまり、王族なのでとうもろこしが高価であるとは知らないのだろう。
その後姿を見送り、コックは厨房へ戻っていった。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.48 )
- 日時: 2012/08/30 03:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
思ったとおりだった。
クローロスが部屋に帰るとすぐに、鳩は興奮気味に首を振りながら机の上で待ち構えていた。
そして早くクレと言わんばかりにしきりに羽ばたいている。
机に置かれたバスケットに首を突っ込む瞬間、手によって阻止された。
「!!」
鳩の頭上に特大のビックリマークが浮かぶ。
その黒い目は、驚きから怒りへと変わっていく。
鳥というのは賢いが、短絡的なところがあるのだ。
「お礼というのはまず、それを成し遂げなければ手に入らぬのだぞ」
鳩にわかるはずもないのに、クローロスは持ったえぶって言ってやった。
すると、驚いたことに鳩は片足を不機嫌そうに突き出すではないか。
早く取れよ!といっている様だった。
「よしよし、いいこだね」
言いながらピッケルより手紙を取り出して読む。
ピッケルと言うのは伝書鳩の足に取り付けられる細長いアルミの管で、管のようになっており、その管の中に同じくアルミに巻きつけた手紙を入れるのだ。
クローロスが手紙を広げて読み始めると、鳩は猛スピードでバスケットにダイブし、真っ先にとうもろこしに飛び掛った。
手紙は細長いため、少々読みにくかった。
器用な人なのだろう、こんな細かい字でよく手紙が書けたものだ。
内容はこうだった。
『次期女王で依頼人のクローロス さま
おまえが言うには、その宝石を俺に取り戻してほしいということだな。
お礼は何でも差し上げると聞いた。
時に、おまえは次期女王らしいな。
金銀財宝やら願うものはすべて手に入れられるんだろ?
お礼なんかすぐに手配できるんだろうな。』
この部分にクローロスはハッとした。
まさにその通りだ。
鳩へのお礼だって、コックに頼めばすぐ手に入れられた。
『おまえが本当にその宝石を取り戻したいのか試してやろう。
俺の手下として、ついてくるというのがお礼でいい。
もちろん雑用から料理にいたるまでこき使うからな。
それなりに覚悟がいるだろう。
それでいいなら取り戻してやる。
それと伝書鳩には餌はやるな。
返事が着くのが遅くなるからな。
黒の旅団本部 ウウィント』
読み終えたクローロスはどうしようと、おどおどしていた。
手下として来いとよばれたからではない。
鳩に餌をあげてしまったからだ。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.49 )
- 日時: 2012/08/30 13:24
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
しかしそのときすでに遅し、鳩はと言うと、とうもろこしを食いちぎり、パンを飲み込み、ビスケットを粉砕してほぼ満腹状態であった。
先ほどまではスリムな体系であったのに、いまやむっくりと腹が大きくなっており、片足で立つことも出来ないだろう。
「ど、どうしよう」
そんな鳩の姿を見、クローロスは試しに鳩を飛ばせることにした。
灰色の鳩をつまみ、手のひらに乗せる。
もちろんこのとき、彼女は愛用の黒の手袋をしていたため鳩の鋭いつめにやられることはなかった。
そして勢いよく腕を振り回し、鳩の本に書いてあったとおりに飛び立たせようとした。
が、鳩はクローロスの手にしっかりとしがみついて離れようとせず、そのまま振り回される。
振り回すたびに首がのけぞって羽が出遅れる。
手を休めると、鳩は恨みのこもった目でクローロスを見上げた。
『食後に飛べるか!!』
そういう視線だろう。
バスケットに鳩をおろすと、もう一度本を調べた。
鳩の消化時間を知りたかったのだ。
出来るだけ早く、手紙を運んでいってほしいのだが…。
「鳩は、伝書鳩として活用されるものの多くは長時間の距離を飛ぶため、消化時間は長く、腹持ちがよい。途中で餌を探しに行く様では、伝書としての役目がないため、このような特性の鳩が選ばれたのです」
声によんであらためて落胆する。
と言うことはつまり、手紙は相当遅くなってしまうと言うことだろうか。
先ほどは気づかなかったが、細長い手紙の裏に、五日の間待ってやるとかかれていたのだ。
伝書鳩は三日かそこらでここまで来たのだろうけれど、この腹では大丈夫だろうか。
本によるとある程度のスピードが出せなければワシやトビによって襲われてしまう危険が高まる。
「殺してしまうわけには…」
そういうと、ある考えが脳裏を掠める。
やはり、こうするしかないか。
自分の足で、旅団の元まで行くしかない。
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