二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.70 )
- 日時: 2012/11/11 13:47
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ウウィントはと言うと、釘が扉に突き刺さった瞬間うおっと声を上げていた。
鳩に邪魔されながらも扉をこじ開けようとしていたが、顔面すれすれに釘が突き刺さってきたので当然だ。
「何で釘?どんだけ嫌われているんだよ俺は・・・」
クローロスが開けるなという意味で釘をぶっさしたのだと思い、冷や汗を流すウウィント。
しかし一国の次期女王s間がそんなことするわけもなく・・・なにやら会話が聞こえてくる。
何を言っているのかはわかる。
黒の旅団本部の扉は特殊なのだ。
内側からの会話は聞こえないが、外の会話はクリアに聞こえる。
なのでドアを押しつつその声に耳を傾ける。
—『わたしは・・・そんな身分では—』
—『あー、ウソついてもだめ。こっちは分かってんだから』
何言ってるんだこいつら?
ウウィントは眉をひそめる。
クローロスの声と、知らない男の声。
—『どういう意味ですか』
—『悪いねお嬢ちゃ—あ、ごめん—次期女王様。あんたに暗殺の依頼来てるんだ』
「!!」
ウウィントは暗殺ときいて思いっきりドアに体当たりした。
ドアが勢いよく開き、クローロスが前かがみになって倒れる寸前に抱えあげる。
恐怖の目で見上げてくるクローロスを抱えて、男の姿を凝視した。
木彫りの屋根に発っているのは黒い、かすかな紫の混じる服に身を包む青年。
その男はちょっと意外そうに微笑んでいた。
「なに?かばう気?」
「・・・・」
黙っていると青年の目つきが一瞬代わり、その手が一瞬ぶれた。
「う、ウウィントさんあの人、わたしを—」
クローロスがなにやら言うがウウィントは完全ムシでいきなり振り返ると本部のドアを破壊してそれを盾にするように構えた。
一瞬の出来事にクローロスは目を丸くしていたが次の瞬間ドアに釘が突き刺さるのを見て目を見開く。
自分の頭の位置に三つの釘が突き刺さっている。
「え・・・え?」
わけが分からずウウィントを見上げるが、手下であるクローロスを見もしない。
ただこれからどうしようかと考えている様子だ。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.71 )
- 日時: 2012/11/13 22:17
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
屋根の上にいる男—暗殺団より派遣された男はすばやく事を終わらせようとしていたので不機嫌そうに眉をしかめた。
「黒の旅団のある街に来るのだってイヤだったのに」
黒の旅団と赤の盗賊団は何百年もの間、お互いを嫌っている。
ネコとねずみのような関係なのだ。
それはもちろん今も続いている。
その原因はウウィントのはるか昔のご先祖様が、赤の盗賊団の世界で一番価値のある宝石を盗んだせいであり、その宝石はひょんなことからクローロスのご先祖様に与えられた。
「まぁいいや。仕事の妨害されたって言えば、正統な攻撃理由になるでしょ」
そんなむちゃくちゃなことを言う男は今時分が立っている屋根に手を下ろした。
そして凄まじい腕力で 屋根の部品を再びむしりとった 。
そしてむしりとったねじやら板を抱えあげると、力任せにターゲットと部外者にたたきつけた。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.72 )
- 日時: 2012/11/15 21:14
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
吹き飛んでくるネジや釘木材の破片は一般市民にも降り注ぎ、皆さっとよけて自らの家に閉じこもる。
この完璧な逃避は、黒の旅団本部がこの街にあるからゆえの動きである。
みんないつ来るか知れぬ怪しき人物に遭遇しないように、ある程度旅団から指示を受けていた。
そしてついにそのような人物がやってきた。狙いは本部ではないが。
—バシ ガン
ウウィントは盾代わりにしているドアで出来るだけ粉砕物がクローロスに当たらぬように気をつけていた。
「こんな攻撃・・・これが本気じゃないですよね?」
荷物のように脇に抱えられたクローロスは怯えた顔をウウィントに向けつつ、敵の攻撃を分析していた。
「—あぁ。よくわかってるね」
それを横目で感心したように頷くウウィント。
「あの人、腕力がすごいですね。だから・・・何か振り回す武器を使うんですか?」
そうウウィントを見上げた瞬間—ドオンッと地響きのような凄まじい音がしてクローロスは目の前が砂塵で見えなくなった。
ただ垣間見えるのは、石畳の破片と、ドアの破片、うねるように舞う砂埃。
理解できないクローロスは目を見開くばかり。
「え・・・石の柱・・・」
だがわかった事は、今まで自分達が立っていたところに神殿のような石の柱が突き刺さっていたことのみ。
「あらまぁ・・・こんなものまで使うんだね」
もくもくと土煙を上げる石柱に、クローロスは主人であるウウィントを見上げた。
ウウィントは石柱を微笑みながら見ている。
ドアを手放して、すばやく避けたウウィントは命の恩人であり主人だが・・・この人も石柱を投げてきた人も常人じゃない。
あんなもの投げる人もどうかと思うが、あんなもの避けられるやつもどうかと思う。
「仕事の邪魔・・・」
不機嫌そうな男は今しがた破壊して調達してきた石の柱のあった家の屋根からすでに飛び移っており、少し近い位置から見下ろすように言った。
「両方とも当てようと思ったのに」
物騒なこと口走る男は片腕を再び足元に伸ばしながら言う。
フードをかぶっているが、その合間からこぼれる短めの茶色の髪。
どうやらこの人も完全なる黒尽くめでは無いらしい。
「でも、今度は盾が無いよね」
みちみち音を立てる屋根の基礎に、クローロスはあっけに取られる。
「どういう筋肉細胞をしているんですか・・・神経細胞やむしろその力に耐えられる背骨が凄い」
「この状況でそんなこと口走るおまえのほうが凄いよ」
ウウィントに突っ込まれるがクローロスは屋根丸ごと投げようとしている男に絶望と研究好奇心しか沸かない。
そんな手下にあきれつつ、ウウィントは指笛を吹いた。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.73 )
- 日時: 2012/11/15 22:03
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ウウィントの指笛で茶髪の男は一瞬動きを止める。
それはクローロスも同じであり、戦場に旋律が流れるような光景だった。
すると、ふいに視界がふわふわしたものに包まれ始めた。
「なに・・・?」
ぼわっと急に本部の屋根より真っ白の塊が出てきて視界を真っ白に染める。
「コレは・・・鳩?」
ウウィントの合図により、いっせいに鳩たちがウウィントとクローロス、そして茶髪の男との間に割ってはいる。
コレでは目の前が見えない。
いらだって屋根の基礎を掴もうとすると、鳩の羽毛により手が滑ってもちずらい。
今はどこもかしこも鳩と純白の綿羽で雪が降ったように真っ白。
舌打ちしつつ、鳩を振り払うように腕を振り回せば鳩たちはいとも簡単にその攻撃を避ける。
伊達に黒の旅団の鳩をやっているわけではないようだ。
すべて動きが読めるかのように、余裕そうな表情に見える。
ま、日頃お駄賃(餌)くれるし、助けてやろうじゃないの!と言っているようだ。
茶髪の男は舌打ちしつつ、闇雲に屋根から飛び降りた。
着地は危うく出来たが、鳩のせいで何も見えない状態は継続している。
「何で黒の旅団はあいつをかばうんだろう」
素朴な疑問を口にした瞬間だった。
ふいに鳩が奇妙な動きをした。
目を疑うようなすばやい動きをしたかと思うと、鳩のいない空間がすっと出来上がる。
管のように、その部分だけ鳩がいない・・・?
と、妙な異物が見えて次の瞬間肩に鋭い痛みが走る。
「なっ?」
そのまま勢いに吹き飛ばされて地面に横たわる男。
肩に手をやれば、血と共に矢が刺さっていた。
鉄で出来た矢はそのまま身体を貫いている。
避けられなかった。それに驚愕する男に、もう一本目の矢が放たれる。
ぶっつりと両腕の神経をきづつけられたようで、男の得意な腕力は発揮できなくなった。
それを確認した後、鳩の中から思ったより小柄な人物が現れた。
「カトレーヌ、それは痛いんじゃない?」
ウウィントの声が鳩の群れの中から聞こえてくる。
美しい顔の女性は、カトレーヌと呼ばれるようだ。
その美人女性が腰に手を当てて担ぐように持っていたボウガンを構えなおす。
そして美しい顔に似合わぬ強気な声で。
「ちょっと、顔かしなさいよ」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.74 )
- 日時: 2012/11/18 16:04
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
茶髪の男は引きずられるように本部に運ばれていた。
目隠しをはずされてやっと視界が見えるようになると比較的狭そうな部屋にいることが分かった。
あまりに質素なつくりに、ちょっと意外そうにしていると声が聞こえた。
背後にいるらしく、首を回してやっと姿が見えた。
「鳩ってすごいですね・・・」
「そりゃそうでしょ。一応彼らも戦闘員だし・・・」
窓に視線を向ける少年と少女。
その少女は今回暗殺命令の出されている次期王女であるとわかると、茶髪の男は手が動かない今どうやって始末しようと考えていた。
けれどすぐさま別の声が聞こえる。
「あんたはここにいなくていいから、早く鳩をねぎらってきなさいよ」
「いや、一人であいつら相手にするとか無理」
その声の主は先ほどの次期女王をかばった銀髪の青年と、鉄ボウガンを使う美しき女性。
計4人ほどがこの部屋にいた。
「コイツどうするの?」
目隠しをはずしたカトレーヌに、ウウィントはそういった。
とりあえず腕の神経を切った今は、とりあえず安全だろう。
クローロスは今、少年と言ったら微妙な年の子と共に窓の外を見ている。
「暗殺命令が出てるって言ってたから、どっかの暗殺部隊じゃない?もしかしたら赤の盗賊団の暗殺部隊かもね」
ウウィントがそういうと、カトレーヌは部屋内だというのにボウガンを話さず構え振り返る。
「もしかして—あの子の一番上の兄の依頼でか?」
「そうだと思う。話を聞くとそう考えられる」
茶髪の男は黙って話を聞き、そして足が動くことを確認すると踏ん張った。
が—
途端に部屋中拡散する強烈な音によって動きが止まった。
「うごくな」
茶髪の男の足元に鉄ボウガンの矢が突き刺さり、ズボンと靴を床に固定している。
だが足には触れておらず、足は無傷である。
だが男の動きは完全にストップしており、もう動く気も無いようだ。
「とにかく、この男をそう処理するか・・・」
物騒なことを言うカトレーヌに少々怯え気味のクローロス。
「そもそも、こいつ一人で暗殺に来たんだろうかね?」
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