二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ヴィンテルドロップ
日時: 2012/08/04 20:31
名前: めた (ID: UcmONG3e)

さあおいで。

昔話をしてあげる。

だれも知らないお話だよ。

それは冬の終わりのお話だよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お母さんお話して!」

というと、ほとんどの親はこのお話しをする。

ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。

このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。

『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
 建国したときからどの季節もふゆでした。
 なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
 そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
 真上で太陽と月が喧嘩した。
 それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
 けれど、このときからばらばらになりました。
 そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
 うけとると、それは太陽と月の涙でした。
 片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
 女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
 冬は消え去りました。
 そして3つの季節が出来上がったのです。』

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Re: ヴィンテルドロップ ( No.75 )
日時: 2012/11/18 17:38
名前: めた (ID: UcmONG3e)

「宝石が戻ってきたぜ!!」

うおおーっと歓喜の声が上がったのは、冬のみ存在する雪の辺境の地。

そこにある古びた教会内で、バカ騒ぎは始まった。

それは何百年来もの間この赤の盗賊団を留守にしていた世界一の宝石が、戻ってきたからだろう。

その月と太陽の涙は今はシャンデリアの一つにぶら下がっておりきらめく光を放っていた。

ボスである男、バイロンは満足げにその宝石を見上げていた。

どこかの間抜けな者からの依頼で金と宝石が一気に手に入ったのだ。

今宵は狼たちも交えてバカ騒ぎが行われた。

「レビン、おまえの手柄だってな?!」

すでに酔っている仲間たちが、未成年のレビンに詰め寄る。

レビンは下っ端としてせっせと酒を注いでいるところだった。

なので酒を手渡しながら照れつつなづく。

するとガッと胸元を掴まれて急に輪の中に引っ張り込まれた。

目を見開いているレビンに赤い服の集団は酒を浴びせるように薦めていく。

「ちょ・・・酒はもういいです!」

結婚式の新郎さながらの勢いで酒を薦められたレビンは慌てたように後ずさろうとするが、みんな酔っ払っているため加減を知らない。

「いいじゃねえか、飲め!!」

レビンの悲鳴はその言葉に相殺された。


Re: ヴィンテルドロップ ( No.76 )
日時: 2012/11/22 00:53
名前: めた (ID: UcmONG3e)

「エノタはどうした?」

ヴィンテル王国王都の喫茶店にて妙な集団が集っていた。

二人組みの男女がテラスに座り、もう一人目の男がそのそばでうろうろしている。

皆黒い服を着ており、その周囲には誰も寄り付かなかった。

「さぁ?思い当たる節があるってどっかいったっきりよ?」

丸テーブルにひじをついて飲み物を飲む黒服の少女が返事するも、仲間の神経質な男、ぶらついているレノは落ち着かない。

「そもそも・・・ここに次期女王がいるはずなのに何故いない?」

レノは本日三度目のため息をつくとようやく静止した。

「依頼人がここにいると提示したくせに・・・なんてことだ」

そして嘆きながら丸テーブルに合流して乱暴に座った。

飲み物を飲んでいた少女はレノをにらみつつ文句を言う。

「そんな事言ったってしょうがないでしょ。探すしかないのよ」

「まぁその点についてはロミに賛成だけど・・・どこ探すの?」

ロミと呼ばれる少女の隣に座る少年が首をかしげて聞く。

丸三日かけて少し筒潜入して調べたが、次期女王クローロスは煙のように消えている。

だれも行方を知らないのだ。

「潜入はあんたが一番得意でしょ、ロイ。このままじゃボスに怒られちゃうよ」

ロミがぼやくとロイは肩をすくめた。

「潜入は出来ても情報が無いよ。とりあえずエノタと合流しようよ」



Re: ヴィンテルドロップ ( No.77 )
日時: 2012/11/23 23:49
名前: めた (ID: UcmONG3e)

そのころエノタはというと、一室に連れ込まれていた。

黒の旅団本部にて、閉鎖ゾーンに置かれていた。

留置場のような感じで、迷路のような本部の中心にあるため一端方向感覚がずれれば脱出は困難だろう。

そのまま猿轡をかまされたエノタ。

もごもご状態でさらには怪力の両手も使えず、男は縛られて芋虫状態である。

そのまま見張りもいないこの部屋で恨めしげに檻格子を見つめているしかなかった。


その頃クローロスをつれてウウィントは本部にやってきていた。

明確に言うと、本当の本部に、だ。

地価に降りていき、長い階段を歩いている。

薄暗く迷路なのは追っ手を阻むためと万一の侵入のためである。

クローロスは不安げにウウィントの服のすそをひっつかみ、はぐれないようにと身を寄せている。

妹が出来たみたいだなと楽しげに階段を下っていくウウィント。

明かりも無い暗闇を歩いていけるのは長年培った経験のおかげだ。

「迷子にならないのですか・・・?」

背後より震える声が聞こえ、ウウィントは得意げに答える。

「もちろん。ここで迷ったら終わりだからね」

そして殆ど見えない状態で頭の中の距離を測り言う。

「もう少しでつくよ」



Re: ヴィンテルドロップ ( No.78 )
日時: 2012/12/13 17:39
名前: めた (ID: UcmONG3e)

次期女王探しを一時やめ、暗殺団より派遣された三人の黒ずくめはエノタのことを探し始めていた。

先ほどまで集っていた喫茶店を出て、しばらく情報集めをしていたのだ。

「無理でしょ。アイツがどこいったかなんて知らないもん」

だが・・・いい加減で先の見えない創作劇にロイは反対だった。

だがロミ、レノの視線でうっとつまる。

「じゃあどうしろっていうのよ。次期女王の行方もエノタの行方も知れないんだから」

ロミが腰に手をあてて言う。その頬は怒った幼児のようにむっと膨らんでいる。

「なんだ、文句があるのならおまえ、もう一回潜入してこいよ」

レノも面倒くさそうにいう。

そういわれてしまうとやる気がそがれる。

だが・・・行方の分からないエノタを探すよりも次期女王を優先したほうが楽。

長い列車旅しなくて住む。しばらくはあったかい旅館に泊まれるし。

「わかったよ。次期女王の行方を探るため、もう一回潜入する」



「勢いで言わなきゃよかった・・・」

ここはヴィンテルの王城に近い神殿。

貴族を装って進入したロイ。だがやはりどんな姿では入ろうが、肝心の王城にはいれない。

「親戚貴族も入れねーってどういうことよ・・・」

ぶつくさ文句を言うロイ。だが手ぶらで帰ればロミとレノの文句攻撃にあってしまうだろう。

それは避けたい!

「ちっ 貴族もたいした情報どころか使えない事しか知らないし・・・何か王城に入るいい手はないかなぁ?」

さすがに貴族の住む神殿内で—しかもトイレで—盗聴はされていないだろうと、ロイは文句をこぼす。

「王城に入れんのは、王族…しかも直径子孫のみ。イオーデス女王とその夫バジル。その息子三人と次期女王一人のみ、か。たまに外交官。そして一握りのメイドや王宮騎士たち」

そいつらのどれかに成りすまそうか・・・。

「そういえば、息子の一人も失踪していたな・・・使えるかも?」





Re: ヴィンテルドロップ ( No.79 )
日時: 2012/12/13 18:22
名前: めた (ID: UcmONG3e)

「おや・・・ブランド様、だ」

ブランドに化けたロイは、澄ました顔で王城への道を歩いていく。

門を守る王宮騎士たちがそろって頭をたれ、扉を開ける。

(なにこれ!ずっとこの格好していたいな)

それらにありがとう、とお礼を言ってさっさと歩くロイ。

メイドたちにも頭を下げられてにやけそうになる。

(王族って感じだな・・・こんな扱いうけてると照れる)

そして適当に歩いていく。

誰か、次期女王の行方を知っているヤツはいるだろうか。

赤い絨毯の上を歩いていくとある人が目に留まった。

メガネをかけた少し小太りの男。

窓に手をかけて外をのぞいている。

(誰だアイツ?格好は執事じゃないから・・・イオーデスの息子の?)

と、その男が振り返った。

ロイの姿を見るなり眉を寄せた。

「!!(ばれた・・・?)」

知らないやつは素通りしたかったのだが、無理なようだ。

「ブランド・・・どこ行ってたんだよ」

「・・・・」

その男に声をかけられてロイはポーカーフェイスのまま首をかしげる。

内心はらはらしていたのだが。

するとその反応を見て男が悲しげな表情をした。

「実の兄貴にも教えられないか?悲しいもんだねぇ」

「・・・・・(うそ臭い演技。バレバレって分かってないのかな)」

それを見てロイはかすかにあきれたような目をしてしまった。

「なんだ、その目。・・・心配してたんだけどね」

肩をすくめたブランドの兄。

「・・・その分じゃ、クローロスの居場所も教えないだろうね」

「!?」

そのまま行ってしまった兄らしき人物。

ほっとしたロイは、だがどういうことだと思考がとまりかけていた。

「クローロス・・・次期女王はこの男・・・ブランドと共に行った?」




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