二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- クレイモア外伝 黄昏の戦士達
- 日時: 2012/04/13 23:03
- 名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)
プロローグ
かつて、人間は妖魔になすすべもなく
同胞の内臓を喰われるのを指をくわえているしかなかった。
そして、およそ百年前……
妖魔を見抜き、妖魔を超える力で妖魔を殺す戦士が現れた。
しかし、戦士達は人々から感謝される事はなかった
それは、戦士達は妖魔の血肉を取り込んだ半人半妖だからである。
人々は戦士達をこう呼び畏怖している。
クレイモア……と。
- Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.38 )
- 日時: 2012/08/09 03:34
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
「あはっ!
精々ナンバー6から9の覚醒者と思ってて、
あんまり期待していなかったけれど。
化け物のくせにやるじゃないの!? 」
「お褒めに預かり有り難う、と言いたいところだが……。
お前のような輩は死しても好きになれないのでな……!! 」
IF 海峡の剣
(やれやれ、久しぶりにありつけたと思ったらコレだ。
血濡れのユリウス、狂犬のベンジャミン、憤慨のハイリンヒ。
そして、女の時代は鮮血のアガサ……。
いずれも戦闘狂いの血を好む性格で、
あの連中に組織は、酷く手を焼いていたな…… )
山賊のアジトを襲撃をし、久しぶりに内臓にありついたまでは良かった。
しかし、今日は運が良いのか。 悪いのか。
遠くから自分の妖力を察知した戦士が、
組織の指令を無しに闘いを挑んで来たのだった。
ウィルフレドは呑気に昔の記憶を懐かしみながら、
まるで蛇のように波を打つ太刀すじを軽く受け流し、
立て続けに来るソレを何度も、何度も全て受け流し捌き続ける。
「あら、奇遇ね。
私も貴方達、覚醒者の事を好きになるのなら死ぬほうがマシと思っていたところなの 」
この覚醒者は強い。
何度、虚を突こうとしても。
何度、このさざ波の剣で斬ろうとしても。
相手は手に携えた大剣で受けとめるどころか、
全く攻撃が当たらない否、当てさせる余裕を与えないのだ。
「ちいっ!
いい加減当たりやがれって、クソ野郎!! 」
「……下品な女だ。
なら、自力で当てて見せろ。
俺は手抜きはしない主義なのでな…… 」
そう言い放ったウィルフレドは、
視力だけで相手の動きを見切り、受け流し捌く防御態勢から、
一瞬で攻撃態勢へと、脳内を切り替え。
右手に握った大剣を斜め右の上段に構え、一気に相手の右肩を斬る。
「ガハッぁ!!
(何なのよ、コイツ!?
この私がまだ、覚醒体にもなっていない……。
四肢ですら解放していない奴にも、劣るというの? )
クソがぁぁああ!! 」
「……お前は弱い……。
キースやゲオルギウスよりずっとな。
だから、言う……
たとえ今、覚醒したとしても俺には一生勝てない、とな! 」
そう言い放つと、
一息でオフィーリアの両足、両手を斬った。
「過去、お前の身に何が起きたのかは知らないが、
大方、俺達覚醒者への復讐だろう?
そうでなければ、ここまで執拗に挑む事はないはずだ 」
- Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.39 )
- 日時: 2012/08/09 23:29
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
「目的は、ここから山二つ先の廃村フィンだ。
妖魔ごときに遅れを取らないだろうが、
気を引き締めて動け。
特にルドルフ、お前はな…… 」
「何故、オレが名指しなんすかっ!! 」
Scene7 集いたる剣3-2
「言ってもいいが、お前は良いのか? 」
呆れた表情を浮かべるリーダーにルドルフは、
その言葉が一体、何を意味しているのか理解不能といわんばかりに
両隣にいるイースレイとフレッドを交互に見る。
その間が抜けたようすを見たイースレイは、
失笑まじりに口を開き当人にその意味を告げた。
「……お前、馬鹿だろう?
要はお前がこの中で最も、
足を引っ張りそうだって、ウィルフレドは釘を刺しているんだよ 」
そういって、大剣を地面から抜き背に戻す。
「……そういう事だルドルフ。
くれぐれも皆の足を引っ張るな 」
新人にも辛辣をいわれ、ひきつった表情を浮かべる。
ルドルフは急に口を閉ざし、自分も大剣を地面から抜き背に戻した。
Scene8へ続く
- Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.40 )
- 日時: 2012/08/10 14:56
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
Scene8 焦燥の残像
全てをなくしたあの日……
俺は世界の残酷さと不条理を知った。
折り重なりあう死体から発される血や腐臭の中、
建物と生き物が焼け焦げた灰儘と唇につく人間の脂肪のそれは、
つい、数日前まであった……
人々営みがあっけなく奪われ、砕け散った姿だった。
今も目に焼き付いて離れない
あの光景は、正に地獄としか言いようがない……
あれを目にした結果か、半人半妖になったが故のものなのか。
俺はもう、この銀色の目から一滴も涙を流す事を忘れた ーー
後書き
ウィルフレドの過去編「焦燥の残像」の始まりです。
多分、次回あたりに
これまで、名前しか出てこなかったキャラクターもでると思いますので、
ぬるい?目で見守ってください。
- Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.41 )
- 日時: 2012/08/11 00:41
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
IF 再会と記憶 “覚醒編”
「何よ…これ……?
このあたしが顔を地面につけているの?
痛い…痛いよ…… 」
「……これで少しは頭を冷やすんだな。
それに攻撃型でも、接続は出来るだろう?
さて……と 」
ウィルフレドは何やら懐かしい気配のするほうへと、
軽く地面を蹴り一瞬で、その場をあとにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(オフィーリアの追撃が止まった……!
もう一つの妖力の持ち主が止めたというのか?
しかも、この妖力は覚醒者……!? )
妖力の大きさから一瞬。
オフィーリアがゴナールの覚醒者を仕留め損ねたかと思ったが、
すぐに、それは間違いだと妖力の質の違いで分かった。
(ナンバーが実力の全てとは言えないが、
ただの元一桁ナンバーが、上位ナンバーを圧倒的な力でねじ伏せるなどありえるのか? )
その時。
風を切り裂くような音と共に、
まるで赤銅のような影がクレアの前に突然姿を現した。
(くっ……!
あの覚醒者ではなく、男の時代の覚醒者だと……!? )
遠くで感じた限りでは、はっきりしなかったけれど。
それでも、クレアの見立てでは
この覚醒者は、ナンバー4を圧倒する筋力、スピード、そしてスタミナを有し。
オフィーリアを超えているのは明白だと分かる。
「…………その顔。
確か昔、微笑のテレサが連れていた子供か?
人違いなら、そういってくれれば助かるのだが……? 」
「クレア、知り合い? 」
「テレサを知っているのか……?
……あぁ、思い出した。
ロクトの町が、盗賊に襲撃された時の異常食欲者か……? 」
あの日テレサは、クレアが人間として生きれる事を願い。
ロクトの住民に自分を託して一度は、町を去った。
しかし、皮肉な事にその妖魔こそが町の防壁で、
テレサによって、
妖魔が討伐されてすぐに、盗賊団が町に襲来したのだ。
そして、自身はあの隻腕の盗賊に見つかり。
子供でも、その盗賊は容赦なく顔や腹を殴る蹴るの暴行を加えられ、
あまりの苦痛に意識を手放したところまでは覚えている。
次に意識を取り戻した時に目にうつったのは、
自分と同じ背丈の者が盗賊団を襲い。
皆、次々に腹に穴があき内臓を喰らっている光景だった……。
「……元ナンバー2、ウィルフレドだ 」
もう、随分と昔の話しだとウィルフレド苦笑する。
すると、クレアの後ろに隠れていた少年が思わず すっとんきょうな声をだす。
「へ? 元ナンバー2!?
でも、男だし髪と目の色が……! 」
兄に乗り移っていた妖魔曰わく、
男の半人半妖は、ことごとく失敗した為に造られず。
妖魔の血肉を取り込んだ証として半人半妖の戦士は、
白あるいは限りなく薄い金髪に、異様に目立つ銀色の瞳をしていると聴いている。
その為、ラキは酷く驚きクレアに尋ね。
クレアはその問いに、こう答えた。
「……組織の黎明期は、
女ではなく、男の戦士しかいなかった時代があった……
だが、私達女戦士とは違い。
精神面では劣る男戦士の殆どは短期間で、
人としての限界を超えて妖魔と化したと聴く……。
つまり、このウィルフレドという男はかつて、
私達と同じ半人半妖の戦士だった者だ 」
「かつては、な。
今の俺は、もはや人の意識は無く妖魔のものだ。
それでも、一応は一般人はーー 」
「へぇ。
化け物にも、案外まともな奴もいるのね? 」
「「!?」」
「……意外に早かったな。
攻撃型だから、もう少し時間がかかると予想していたのだが……? 」
聞き慣れた声のほうを見やるとそこには、
オフィーリアが激高した表情でウィルフレドとクレアを睨みつけていた。
「ふん。
これでも、あたしは組織のナンバー4よ?
女だからって、見くびらないで 」
当のウィルフレドは、素っ気ない言葉をかえしオフィーリアを良く見る。
クレアよりはマシだが、よほど急いで手足を接続したのか。
僅かに傷口から血が染み出ていて、白い服を赤く染めている。
「何度やっても同じだ。
今のお前では、過去の上位戦士に劣ると言っただろう? 」
「このクソ野郎! 殺してやる!!
てめぇら覚醒者を皆殺しにするまで、
あたしは、気がすまないんだよ!! 」
(面倒臭い女だな。
動物でも、一回痛い目に遭えば学習するというが…… )
続く?
- Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.42 )
- 日時: 2012/08/11 15:00
- 名前: カササギ ◆QNO.naEbTg (ID: ???)
番外編 最後の残光(一人称小説)
それは、自身がまだナンバー7だった時。
覚醒者となった元ナンバー11を討伐する指令を受け、
難なくソレを終えた直後の事だ……。
当時のリーダーだったジェイクが、
突然、手が震え出し大剣を地面に落としたのは……
「ガッ…ガガガ………! 」
「「「ジェイク!? 」」」
そう、人間としての限界を奴は迎えたのだ。
本人は必死に戻そうと、妖力を押さえ込もうとしていたものの。
空しく妖力の暴走は止まる事は無いまま、
顔つきが変わり、筋肉が膨れ上がり。
妖魔そのものになりつつあった。
「ク……ッ!!
タ、頼ム…オレヲ……殺シテクレ………。
モウ、人ノ側ニハ…モドレン 」
「な、何を言ってんだテメぇっ!?
何で、ダチを殺さなきゃいけねーんだよ!! 」
ジェイクの親友だった組織ナンバー25。
ダニエルは、どうにかして戻れないのかと、
親友を殺したくないと。
悲鳴に近い声で叫んでいた事は、今も鮮明に覚えている。
「スマナイ…ダニエル……。
セメテ、人ノ意識ガ…残ッテイルウチニ……。
オレハ、人トシテ…死タイノダヨ 」
人として生まれてきた以上、人のまま死にたい。
それは多くの戦士が持つ存在意義で、
人間として最後のプライドであり。
覚醒者になって人を喰うよりは、死ぬ事を選ぶ方が楽になれる。
「ちきしょう…卑怯野郎め……。
おれは…こんな事をさせたテメぇを一生、許さねぇからな! 」
大粒の涙を流しながらダニエルは、
ゆっくりと震える両腕でジェイクの頭上、首に向けて大剣を構えた。
だが、俺はダニエルを止めた。
「……そんなに辛いのならば、止めろ。 ただし、代わりに俺がいんどうを渡してやるからな…… 」
「七番…スマナイ……。
手ヲ煩ワセテ…本当ニスマナイ…… 」
「構わん。
同期のよしみだ…苦しませずに殺してやる 」
そして短く“あの世で先に待っている”と、
ジェイクが呟いた瞬間。
俺は一息に奴を、奴の首をはねたのだった…………。
「ア…リ…ガト…ウ…… 」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後。
俺とダニエルの二人で、
ジェイクの奴が使っていた大剣を墓標に弔い。
気がつけば空は白み始め、遥か東から太陽が昇り朝をむかえていた。
「良い朝だ……。
これなら、奴も安らかに眠れるな…… 」
「馬鹿な奴だぜ……アイツは。
テメぇだけ、好き勝手やって勝手に逝きやがって!! 」
「……そうだな。
だが、奴がいた事だけは忘れないでいてやれ。
お前や俺が覚えている限り奴は、
ジェイクは思い出の中で生きている…… 」
いつだったか、誰が言ったのかは覚えていないが……
“忘却こそ、死そのものに勝る”と聴いた気がする。
何故、唐突にその言葉を思い出したのかは、わからないが……。
本当にそうだ、と言えるかもしれない。
記憶こそ、その人間が此の世界に存在した
ただ一つの証拠なのだからな……
「今は分からいだろうが、決して逃げるな。
そして…いずれ、思い出せ…… 」
嗚呼、思い出した。
あの日、親父だったな……
昔、近所の友達が流行り病で逝った時に教えてくれた言葉。
「忘れるもんかっ!!
いつか、あの世でアイツをとっちめてやる!!! 」
ー 命は消える。
死はいずれ、平等に訪れるものだ。
だが、その死から目を背けるな……
そして、決して振り返るな。
自分も忘れない、相手も忘れない。
記憶の中でこそ、人間は生き続けるのだからな…… ー
「……お前の魂は、俺とダニエルが持ってゆく。
だから、そっちでゆっくり待ってろ 」
Fin
後書き
かつてのナンバー5 陽炎のジェイクの最後。
それは、二人の心に何を残したのでしょう?