二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

クレイモア外伝 黄昏の戦士達
日時: 2012/04/13 23:03
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

プロローグ
かつて、人間は妖魔になすすべもなく
同胞の内臓を喰われるのを指をくわえているしかなかった。
そして、およそ百年前……
妖魔を見抜き、妖魔を超える力で妖魔を殺す戦士が現れた。
しかし、戦士達は人々から感謝される事はなかった
それは、戦士達は妖魔の血肉を取り込んだ半人半妖だからである。
人々は戦士達をこう呼び畏怖している。
クレイモア……と。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10



Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.13 )
日時: 2012/06/09 05:04
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

「それで、あなたの名前とかつてのナンバーは……?」

「ウィルフレドだ。
 いや……悲壮の、と言ったらわかるか?」

IF 膂力と疾風と……3

最初の上位ナンバーほど有名なものはない……

No.5 陽炎かげろうのジェイク
No.4 神速剣しんそくけんのキース
No.3 千里眼せんりがんのゲオルギウス
No.2 粉砕ふんさいのヨハン
そして、No.1 殲滅せんめつのレーヴァント……
いずれも、
その異名に恥じない能力と強さを有した戦士であった。
しかし、
訓練生時は全くといっていいほど、
これといった秀でた力はなく、目立つ事はなかった。
正式に戦士に昇格する試験で初めて、
その鬼才と言える才能をあらわにした初代No.7……
いつしか、No.6であった蜃気楼しんきろうのチェザーレを追い抜いただけでなく。
ジェイクが世を去ってまもなく、
No.5に昇格した防御型の戦士。
それが、悲壮のウィルフレドだった…………。

「かつての…ナンバー2…だ…と!?」

(確か…自分のナンバーや実力に無頓着で、
 組織に対する従順さは前後にない、といわれる
 あの……?)

「あぁ、俺自身は興味は無かったがな……」

ただ、生き長らえるだけでよかったのだ、と。
つぶやくと、ウィルフレドは二人の横を通りすぎ
ゆっくりと、振り返る。

「こっちに来い。
 “あの”イースレイやリフル、ルシエラに近い奴にやられた傷だ。
 組織に戻るか、戻らないにしても早く治したほうがいい……」


4に続く

Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.14 )
日時: 2012/06/10 03:15
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

幕間 黒服の男Side1

奴を見つけたのは、
前日、龍の末裔とも呼ばれるアサラカム率いる
敵対勢力との戦闘があった廃墟だった。
まだ、火があちこちでくすぐり煙がたつ家屋の傍。
そこにおそらくは十になるか、ならないかの赤銅の髪の子供が、
皮膚の大部分が焼け焦げ、僅かに衣服が張り付いた女性と少女…
全身に幾つもの傷があり、
元の顔がわからない男と若者の……
家族のものと思われる屍の血で汚れながら、
すがりつき押し殺した声で啜り泣いていた。

「……おれたちは何もしてない…のに、
 大好きな…家族だったのに……。
 し…にたくない……イヤダ…イヤダ……!」

奪う者と奪われる者。
奪われた側である哀れな戦災孤児など、
奪った側は殺すか、一瞥もしない。
よしんば、我々組織のように集めて利用するだけだ。
全くどちらにしても、いかがわしい事に変わりはないが、な。

「お…い…
 おい…おいっ……小僧!」

「…………おじ…さんは…誰……!?
 おじさんが、村のみんなを…おれの家族を殺したのか?」

その時の奴の目は子供らしからぬ…
生気がない虚ろで怯えの色しかなかった。

「違う…とは、言い切れないな……
 だが、お前達孤児には敵意はない。
 どうだ? このまま飢えてのたれ死ぬか……
 それとも、我々組織の手足として力を得て、
 …アサラカム率いる奴等に復讐をする為に剣をとるか……
 あるいは、ただ己が生存の為に剣をとるか?
 いずれかの答えを選べばいい……
ただし、後戻りは出来ないがな」

「お…おれは、生きたい。
 石にかじりついてでも、どんなに惨めでも…生きたいっ……!」

その時、一度は死んでいたはずの奴の目に力が戻り……
人間として名誉ある死よりも、血まみれの生存を選択した ーーー

続く

後書き

今回はウィルフレドの過去編の、
担当である黒服の男サイドのお話です。
主人公の過酷なる運命は、ここから始まり
原作に続くわけですが、
まだ、一番大事な下りにもいっていないのが現状……。
う〜ん…………

Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.15 )
日時: 2012/06/11 22:18
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

「何故…何故、こんな……」

「ウィルっ!!」

仲間の引きつる表情と悲鳴に近い自分を呼ぶ声の狭間。
長はギリギリの、髪に異形の爪が届く直前でよけ、
大剣を持たない左手で異形の腕を捻る。

「がぁぁぁああっ!!! 」

(何…故……何故、そんな姿に……?
 何故、覚醒したんだ。
 ……………アルトゥーロっ!!?)

Seen2 悔恨の牙

まるで砕け散った鏡の破片のように、
幾度も、幾度も。
その景色は現れては消え、現れては消えて
また現れては、消えていく……。

「(オオオォォォォっ……!! )」

「(ウィル!
 お前だけでも、逃げろ!!)」

「(殺せ! 敵は全て殺せぇ!!!!)」

「(母さ…ん……母…さ……ん )」

「(エドガー兄さんっ!
 話さないで!
 もう少しで、衛生兵のおじさんが薬を持ってくるから……!! )」

「(ウィル…か……?
 何も見えない……もう、よ…るか?
 寒い……ここは酷く寒…い…… )」

「(きっと、助かるよ…だから…… )」

「(泣いているのか……?
 お前の泣き虫は相変わらずだ…な。
 これじゃ、戦場で…生きていけないぞ?
 嫌なぐらい静かな夜だ……
 剣戟の響きも聴こえない程の……
 少し寝るから、朝になったらおこしーー )」

「(ーーー いずれかの答えを選べばいい……
 ただし、後戻りは出来ないがな)」

最後に……
今よりも幾分かは若い担当者である隻眼の黒服男。
レオナルが現れると風景は一変し、
周囲は暗転して消える。

Seen2-2に続く
後書き

漸く、本編に戻ってまいりました。
今回は前回の、幕間の続きになりまして……
本人にとって、全ての始まりの ーー

Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.16 )
日時: 2012/06/12 20:50
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

あれから何年経ったのか、あまり数えていないうえ、
あの混乱をどのようにして生き残ったのかはわからない。
ただ、覚えているのは……

ー 地をはうかの如し龍の末裔……
  もとい、アサラカムの咆哮と移動での地響き。
ー 狂気に走った敵将の腐った目と、
  戦闘員、非戦闘員関係なく無慈悲に殺戮。
ー 紙切れのように軽く、
  虫ケラのようにあっさりと殺されていく命。
  鮮血と生き物が焼ける二つが入り混じった。
  胸焼けと吐き気がする臭気。
ー 一番年下だった自分を守るが為に、
  父親と兄らが戦う剣戟の響き。
  そして、“逃げろ” の一言。
ー 男兄弟の中で、
  一番年齢が近かった兄が腹を貫かれ、  今わの際、母親を呼びながら涙を流していた事。
  最後まで、弟である自分を気遣い。
 まるで、眠るかの如く息を引き取った事。
ー それが、三日三晩間続いた。
ー 残ったのは灰になった村と焼け焦げた死体。
  押しつぶされた死体。
  辛うじて人間の形をした切り刻まれた……
  或いは、原形を留めていない死体。
  かつて、二百はいたうちの
 わずか、数人の子供しか生きていなかった。
ー 他の家族が生きている事を願い。
  変わり果てた姿で見つけた時の絶望と虚脱感。
  言葉に出来ない感情。
ー そして、今は、担当者である黒服の男。
  レオナルの“生きるか、死ぬ”かの選択肢。


あの日。
自分が人間としての名誉ある死ではなく。
殺戮と血にまみれた
半人半妖の戦士の生を選んだのは、
敵対勢力の奴等への憎悪や復讐ではない。
強権のしいや殺伐としたものでも怯まず。
ただ、生きたい。
それだけの理由だった。

Seen2-2 悔恨の牙 2

「!?」

(夢か…… )

何十回、何百回目だろうか……?
時折。
あの日、あの時の光景が鮮明に夢に出たり
何度もフラッシュバックをしては、罪悪感に襲われるのだ。

(久しぶりだな。
 あの時の忌まわしい夢は…… )

続く
後書き

いつでも、どこの国でも
政治や戦争の、世の中の不条理で最も犠牲になるのは子供です。
それでも、子供は生まれてくる……
重い、重過ぎます。

Re: クレイモア外伝 黄昏の戦士達 ( No.17 )
日時: 2012/06/17 02:47
名前: カササギ ◆QcV39OuFkU (ID: ???)  

「おや、奇遇だな。
 こんなところで会うなんて…
もう、この町に妖魔はいないはずだが…」

IF 微笑と邂こう 覚醒版 1

「俺らが、この町で
 いくら町の奴らを殺そうが、略奪の限りをつくそうが
 あくまで、人間同士の出来事…
 貴様らには、関係ないはずだ。
 それとも、分を超えて俺らを止めに来たのかい?
 人を殺せぬ その身でよ」

盗賊の頭は馬上から、
目の前の戦士をやひな表情で嘲笑う。
その戦士……。
組織のナンバー1 微笑のテレサは、
乱れた呼吸をしながらも、先ほど別れた少女を目で探し、
その視線に入ったのは……
先日の夜。 テレサとクレアに奇襲をかけてきた
隻腕の男が血まみれのクレアを引きずり歩いていたのだ。

「クレア!!」


「あ?
 よぉ、なんだ、あんたか。
 なんか、忘れ物でもしたのかい?
 心配しなくても、こいつの面倒は俺が見てやるよ。
 これからも、たっぷりかわいがってやるから心配すんな。
 泣き叫ぶ姿が、かわいかったぜ
 テレサー
 テレサーってな」

その時、テレサは今まで感じたことのない憎悪が燃え上がり。
「こいつら、全員。
 皆殺しにしてやる」、そう思い大剣に手をかけた瞬間だった。

「…………おい。
 これは、この惨状は、お前達の仕業か……」

ふと、見れば
そこには外装で顔が隠れた子供が、
まるで、わいたかのように現れ周囲を見まわしている。

「なんだ、このガキ?
 てめーも、こいつみたいにされてぇのかい?」

「もう、何も話さくていい……」

「へ? なにいってんだ。
 クソガキ??」

この町の子供にしては、何かが違う
もっと別のナニカ……。
それの正体にテレサが気付いた。
その瞬間だった。
突然。
隻腕の男の、腹から背の肉が丸く消失して空洞が出来た。

「なっ!?」

外装の、少年らしき者は静かに
その容姿と年齢に不相応の、
まるで幾多の修羅場をくぐり抜けてきた
老練の戦士のような声色で独り言のように呟いた。

「あぁ…懐かしい内臓の味だ。
 長年の間。
 衝動に耐えてきたが、もうすでに限界だった……」

(まさか、こいつは……
 この覚醒者は……!?)

「他の人間の営みを踏みにじる
 お前達、盗賊どもが死んで喜ぶ奴はいても。
 涙を流して泣く奴はいないだろう……?」

「こ、こいつは妖魔か!?」

「この女にぶっ殺されたんじゃーー 」

ーー 長年の飢えから解放された
その少年。 否、覚醒者は…………
町の人々やクレアに目もくれず。
彼の突然の襲来に、逃げ惑う盗賊団達を一人…
また一人と、凄まじい速度で追い
その内臓を一瞬で喰らい自分の腹に収めてゆく。

「くっ……!
 人間を見くびるなよ!!
 闘う相手さえ見えりゃ、
2轤ネいだろう)

テレサ一人ならば、覚醒体でも討伐可能だが、
幼いクレアを守りながらとなるとやや難しくなる。
ましてや、かつての上位ナンバーとなると……。

「……テレサ?」

2へ続く


後書き
こんばんは、カササギで御座います。
今回は、原作コミックス4巻のIF。
ストーリー版のほうは、もう少しお待ちください。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10