二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

  金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集)
日時: 2012/06/23 23:55
名前: さくら (ID: ZFblzpHM)
参照: http://nanos.jp/10sakura/page/19/

真昼のプールでイルカが魅せた夢。(イルカは花冠を着けていたの)



 *参照、さくらの小説一覧

[about.]
--------------------------------------------------------------------------------
このスレッドは、さくらが運営する「桜の図書館」の生まれ変わり。
題名はたまに変わります。時期不定期。私の気まぐれです。
世間ではそれを「勝手」と言う。ってね!はい。

題名などは多々のお題サイト様からお借りしています。キャー素敵!
長篇、短篇気まぐれに書いていきます。
気まぐれ気まぐれってもう本当五月蝿いですね、すみません。



[sakura.]
--------------------------------------------------------------------------------
*さくら   (13.♀)
inzmとfate大好きな中一。
熊本県出身で熊本県育ち。熊本県熊もっとっけん。・・・ウケない只のギャグです。
好きなキャラは、拓人、京介、フィディオ、円堂、王牙。ギルガメッシュ、ランサー、セイバー。
最近はシュウ君にハマって来た。やられた。
頭良くない、運動神経良くない、美少女違う、神文違う、駄文おk。
他にも、輪るピングドラムとか、APHとか、アザゼルとか好きです。カキコに入り浸りたい。愛してる。



[menu.]
--------------------------------------------------------------------------------



 金木犀で創るシャングリラ|menu.



|long.

◎World End TinkerBell*. (世界を忘れたティンカーベルの唄声は)

View of the world (世界観) [>>002]

序章‖桜花繚乱 [>>044]

A章‖鴻鵠飛翔
prologue.ⅰ 鴻鵠飛翔 >>047 
episode.AA 気まぐれなガブリエラ >>040
episode.AB 強欲ステラ >>041
episode.AC よくあるエニグマの白昼夢 >>060
episode.AD タータンチェック色の愛 >>065
episode.AE 溺れる人魚姫 >>069 new!!


◎Crimson
  ∟円堂達が闇に溺れる。私は必死になって闇の沼の中から円堂達を探した。でも見つかんなかった。

first* >>106
01.連想の限界 >>107
02.残骨灰かぶりの末路 >>108
03.邪魔なものは縛るタイプ >>109
04.人工アリスの白昼夢 >>110
05.痩せ兎と穴掘り猫 >>111



|medium.

エレクトロニック*.
 ∟狩屋と初々しいケンカップル。
01.>>084/02.>>88/03.>>/04.>>/







|short.

切り裂く白祈に機械仕掛けのきみは何を想うの、 (バダップ) >>018-020
世界が消えてなくなるまでの3秒でキスを交わそう (晴矢) >>021-022
愛して居たという証など抱き合った冷たい温度だけで十分じゃないか (シュウ) >>29-32
ワンコインプリーズ! (剣城) >>34-35
まるで自分が君の音世界に溶けてしまったかのような、 (シュウ) >>72-73
落雷インターバル (剣城) >>77

|Plan.

>>045    たとえるならパーティで泣きながらキスするみたいに、 (Valentine/円秋)
>>054-056  卒業の春、君を攫って一生逃げられたら良いのに。 (Graduation/円豪鬼)

¦落書き
>>36





[kiss!!.]
---------------------------------------------------------------------------------
御題‖涙星マーメイドオライオン様
    Made in Alice*様
   (随時更新致します。)
   (題名などに使わせて頂いています。素敵御題どうも有難うございます。)

お客様‖(名前が載って無かった場合はお知らせ願います。)
    >>夜桜様 >>桜花火様 >>めーこ様 >>伊莉寿様 >>漆黒様 >>風風様
    >>アーシェ様 >> >>




[others.]
--------------------------------------------------------------------------------
|memo.
>>025 >>033 >>053 >> >>

|picture.
>>057 >>061 >>062 >>103 >>104 >>105

|music.
>>074 >>075

|Animation.
>>091 >>096 >>098 >>099 >>100




[last up.]
--------------------------------------------------------------------------------
0623’  Crimson+1
 January 1st.Start


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23



Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.19 )
日時: 2012/01/02 11:41
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

2



月日は流れ、彼の死から今日で丁度2年が経った。私は彼の死をきっかけに、軍人を辞めた。今は普通の女性として、彼が好きだった海の近くに家を建てのんびりと暮らしている。たまに今だ軍人で居るミストレとエスカバも遊びに来たり、珍しく二人が休みを取った時は色々な所に3人で出掛ける。ミストレやエスカバは、もう軍人でない私に、扮装に駆り出された時のエピソードや、王牙での事を楽しく話してくれる。そして、私の前では決してバダップの事は話さなかった。私の気持ちを悟っていたのであろう。勘の鋭い奴等だ。特にミストレに関しては。

そして今日は二年前、バダップが少女を庇い戦死したという命日だ。

私は花を持って、家の近くの海に来ていた。ヒールのある白いサンダルに白いキャミソールのワンピース。白いリボン付きのハット帽を深く被る。髪は軍人を辞めた為ずっと伸ばしている。腰辺りまでの綺麗な髪を風に靡かせ、私は只海の彼方を眺めていた。片手に花を持ちながら。



「あれから2年もするのね、」


「元気にしてる?って、意味分からないよね、・・・私は海の近くに家を建てて、花栽培を始めたの。だから、家の花壇は花が満開よ」




最初は、返事も返って来ない相手に、話し掛ける様に言葉を放った。

だがそれは次第に彼に対する文句、時に暴言へと変化して行く。何故だろう、次々に言葉が溢れてくる。まるでバケツの水を引っくり返した様に次々と次々と、言葉が流れ出てくる。次第に大粒の涙も溢れて来た。何だよ私、周りから見たら只の変質者じゃないか。恥ずかしい。それとバダップ、命日なのに白いワンピースなんて君なら笑いこけるか無言の圧力だよね。ごめんね。バダップを思うと、何故か取って着ていたのは白だったの。ごめんね。




「バダップ必ず帰って来るって言ってたじゃん!約束って、指切り拳万だってやったじゃん!嘘付かないでよね!!私ずっと待ってたんだよ!?ミストレ達は帰って来たのに、って!!もしかしたら帰って来ないのかもっても思ってしまったけど、バダップの言葉を信じたいから、絶対帰って、来る、って、ヒック、って、ヒック、思って待っ、てたヒックんだからっぁ!!」



「私、バダップの事好きだった、好きだったから、今も好き、だけど、本当は行って欲しくなかったのにバダップを信じて「行かないで」の一言も掛けなかった私の気持ちも知ってよね!どうせバダップは友達かそれ以下だったかもしれないけど・・・。信じて約束までしたのに、帰って来たのはバダップじゃなくてバダップの戦死報告だったっていう最悪の結末な私の気持ちを知ってよね!!」



「私は只「おかえり」って言ってあげたいだけなのに、何でそんな簡単な事もさせてくれないの?この馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!!このバカップ!!」





全く、もう命日も糞もあるまいがな。第一「待っ、てたヒックんだからっぁ!!」とは何だ。

だが此処で毒づいても彼が戻って来ないのは知っていた。だから、文句を言うのは此処までにしよう。もしも。彼がもう一度私の前に現れるなんていう奇跡があったら、ある訳無い事は分かっている。だがもしもそんな奇跡があったなら、その時に思いっきり文句を吐いてやればいい。あのバダップの頬に一発お見舞いしてやればいい。

一先ず気を無理矢理に押し殺し、持っていた花を天に仰ぐ。

空は大きかった。私の前に立ちはだかる海も、大きかった。こんな素晴らしい大自然を前に、私達なんてちっぽけに視得て。こんな素晴らしい大自然を前に、最高権力者と庶民を横に並ばせても、視得るのは只の同じ人間で。いかに私達の存在が、悩みが、生死がちっぽけな事だと思い知らされる。そんな大自然が、海が彼は好きだと言っていた。

もう一度意識を花に戻す。この花は「百日草」。花言葉は「亡き友人を忍ぶ」。一年間色んな花を咲かせるこの百日草は、命日に簡単に手に入れる事が出来た。

綺麗にラッピングなどされては居ないが、遠き彼を想い、私の想いが天国の彼に届きますように、と願いを込めて。思いっきり、投げた。投球系は余り得意では無かったが、可也飛んだと思う。

投げた花束は、チャポンと可愛らしい音を立てて、一度沈み浮き上がり、自由気ままに流されて行く。この花は何時かは何処か遠い国の岸に辿り着くのだろうか。もしその花が枯れていたとしても、此花に託した私の思いは変わらない。この思いが天国に居る彼に届くと良いな、希望を持って。



[途中保存]

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.20 )
日時: 2012/01/02 11:43
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。



3




今は亡き彼を思えば、私の想い人、バダップ・スリードは幼い少女を庇い戦死した。という事実が今や世の中に出回っている。だが、通常の彼と関わりの無かった人はもうとっくに忘れているだろう。もう二年だ。仕方が無い。彼が死んでしまった事は、私の中に大きな穴がぽっかり開いた様だった。それ程大きかったのだ。彼の存在は。だが、今思えば彼も私以上に辛く人生の幕を閉じたのかもしれない。「必ず帰って来る」と自分で言い、約束までしたのにそれを果たせなかった。信じて待ってくれている人が居るのに、一人にしてしまう。少女を庇って撃たれた時は、無我夢中でその少女を助ける事で頭がいっぱいだったが、自分には自分を待ってくれている人が居る。信じてくれている人が居るのに、今此処で死んだらきっと彼女を悲しませてしまう。約束したのに、と泣かれてしまう。自分も今此処で死にたくない。無事に帰って彼女に「ただいま」と言って安心させてあげたい。だがそれが出来そうにも無い。死を仕事と結びつけるのは好ましくないが、任務を果たせなかった時と同じではないだろうか。彼は、バダップは、使命感が人一倍強い。それは、軍人にとっては良い事なのかもしれないけれど。自分の所為で足を引っ張ったり、渡された任務がコンプリート出来なかったりした時は凄く反省していた姿が脳裏に蘇る。彼にとって、任務を、約束を果たせないまま死ぬなんて、死んでも死に切れない程屈辱だろう。私もそうだ。軍人たるもの、誰でもそうだと想う。第一、私は軍人の欠片にしか過ぎないが。


「バダップぅ、・・・、」


もう一度彼の名前を呟くと、もしかしたら彼が帰って来て私の頭をまた撫でてくれるのでは無いか、と微かな希望が沸き、後ろを振り向くが其処に人は居なかった。

仕方が無い、それは分かっていた。もう二年も連絡が無いんだ。彼がこの世界に生きて居る訳が無い。だがやはり希望は捨てがたいものだった。こんなに現実と向き合おうとしていても、もしかしたら何処かで生きているのではないか。そう心の何処かで思ってしまう。だから、何時の日か決めたんだ。信じてみよう、と。彼は“必ず”何処かで無事に生きている。「この世界は、絶望だけじゃ生きていけない」そう彼が言ったのを覚えている。だからこそ、希望は捨てない。ちゃんと前を向いて、彼は必ず帰ってくるから、彼が帰って来た時に髪を伸ばして、飛びっきり綺麗になって驚かせてやれば良い。もっともっと勉強して、軍の人間では無くなったものの、格闘の練習も怠らない、もっともっともっと強くなって驚かせてやれば良い。バダップは、必ず帰って来るから。


「うん。私、頑張ってる。だから、バダップも、」

「花に込めた願いが、何時の日か貴方に伝わりますように、」


互いの手の指を絡ませ、胸の前まで持ってくる。瞳を閉じるとまっくらになった。


瞳を開けると、この上ないと言う程の光が一番に眼に届いた。眩し過ぎる日光だ。だが、この光が遠い彼にも届いているのだと想うと、途端に有難くなった。

花はどんどん流されて行く。全身の力を抜き切って、全てを波に任せて。ゆらゆら、ゆらり。ゆっくりと流れていくあの花は、何時か何処かに辿り着くだろう。だが、波に揺られていく内に花弁は落ち、茎だけになっているかもしれない。枯れ果てているかもしれない。だが、私の此花に込めた強い思いは変わらない。何時かの遠い何処かの国の誰かが、私と同じ思いをしている人が拾ってくれる事を、そして、その人にも私の想いが、希望を持って、相手を信じて、という想いが届くように。もしも彼がこの世界に生きていると言うならば、その彼が此花を見つけて、彼にも私の想いが届きますように。

冷徹で堅物で無口で一見近寄りがたい彼だけど、誰よりも、この地球の誰よりも優しい心を持つ彼がちゃんと無事に生きていて、これ以上の我侭を言うならば、私の元に戻ってきて欲しい。ちゃんと彼に「おかえり」を言いたい。また優しく頭を撫でて貰いたい。彼の温もりを、もう一度、感じたい。そんな想いを宿し、花はゆらゆら流れていく。


花は、もう肉眼では見えなくなっていた。



「              」






(( 遠き彼に花を捧ぐ ))









------------------------------------------------------------------
・・・ふぅ、
久しぶりに長いの書いた。

231123 

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.21 )
日時: 2012/01/02 11:45
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。



「え、嘘。」

「嘘なんかじゃねぇし」


日付、ついでに年がバトンタッチする約15分程前の事。目の前の燃え滾るような紅い髪の少年は少々ぐちゃぐちゃになった書類を両手でひらひらさせながら意地悪く笑っている。因みに、彼の頭には綺麗にチューリップの花が咲いていた。書類には、殴り書きの様な汚い字が並べられている。この書類は学校破壊報告のレポートだ。
彼の名前は南雲晴矢。此処ではバーンで通っている。エイリア学園マスターランクチーム、プロミネンスのキャプテンであり、誰もが一目置く存在である。短気で血の気が早く、喧嘩っ早い彼の性格から、色々と怖がっている輩も居る位だ。

バーンは、学園内でも位の高いマスターランクを誇るプロミネンスのキャプテンである事。それは良いのだが、こうして毎回レポートという報告書を書かされる事には飽き飽きしていた。否、彼にとっては初っ端からやる気失せる一環であるこの報告書作り。机に向かって数十分もしない内に投げ出してしまう彼は、エイリア学園にもある数々のイベントにはほぼ不参加で、報告書作りに明け暮れていたという事例が多々ある中、誰もが今年の正月も不参加だと思い固めていた所だった。
そんな彼が、見た目は雑だが既に全て書き終わったであろう報告書を両手にひらひらさせながら意地悪く笑っている。


「終わったの?」

「まぁな、お陰様で」


そう得意げに笑ってみせる彼。各チームの主将に与えられるもうひとつの任務。それが、報告書。バーンはそれを大の苦手、脅威としていた。全く、これでは脅威の侵略者所ではない。
そして、先程から信じられないとばかりに大きな瞳をぱちくりさせている少女は彼率いるプロミネンスのマネージャーだ。彼女は、バーンとヒートとの幼馴染であり、3人、基、2人の時は彼を“晴矢”と呼んでいた。それは、彼女の密かなる乙女心であるが、それに全く気付かない彼は一体。とは言え、言わずと知れた彼等は恋仲である為、お互いあまり気に留めなかった。





[途中保存]

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.22 )
日時: 2012/01/02 11:46
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

「・・・良かったね、」

「何で嫌そうなんだよ」

「別にー」


別に嫌では無いのだが。

というか、そんなに嫌そうな顔をしていたのだろうか。少し不安になり、自分の頬を突っぱねてみる。

するとケラケラと晴矢に笑われる訳で。


「・・・笑う事ないでしょ」

「いや・・・、あれは、ない・・・っ」

「黙れ何時まで笑っとんじゃこのバかーン死ね」

「休め休め。句点を入れろ(笑)」

「(笑)じゃ無いでしょ!さっきまで変な雄叫び上げながら机と睨めっこしてた癖にっ!」

「うっせ」


晴矢に睨まれ、口篭る。すると点けていたテレビが新年を迎えた事を告げた。
しめた、そろそろと微妙に揺れ動く右手がリモコンに伸びる。するとその右手に気が付いた晴矢が乱暴にその右手を払い、掴んだ。
そのまま壁へと投げられる。投げることは無いだろ!と文句を付けると晴矢の顔が近づいて来て、やっと自分の置かれている状況を把握できた。

掴まれていた手は開放され自由になったが両サイドを晴矢の手で囲まれる。目の前には晴矢。後ろは壁であって、背中はピタリとついている。四方を囲まれた。逃げ道は、無い。最悪だ。
こう調子に乗ってきた晴矢は歯止めが利かない。思う存分遊ばれる。

最後の手段として私が使用したのは、グラン達との“新年明けましておめでとう、今年も学校破壊頑張ろう!パーティ”の事である。既に危ない唇を重々しく開く。


「は、晴矢。年明けちゃった、よ。パーティ行こう?ね?」

「嫌だ。今更行っても遅ぇだろ。だりィ」


完全に拒否された。だが私は諦めない。まだ希望は残っている。晴矢だって今日は3校潰してきた。結構疲労が溜ってる筈だ。
それに私はパーティに行きたい。晴矢が大人しくしてくれていれば、私は思いっきりパーティに行ける筈だ。って、こんなん、彼女の台詞じゃないな。


「なら、寝たら?晴矢だって疲れてるし、ね。だるいな、んっ・・・!むぐぅ、」


がしっ。思いっきり、頬を掴まれる。変な顔、と笑う晴矢が憎たらしい。お前の所為だろ。
負けずと晴矢を睨めば「おー、怖い怖い」と馬鹿にされる。
本当、この馬鹿殺っても良いだろうか。


「・・・パーティ、行くか」

「え、良いの!?」

「良い訳ねぇだろ馬鹿か」

「だと思ったよ!もう死んでしまえこの糞ドS!」

「黙れドMが。どうせ俺が寝ればお前は楽しいパーティに行けるとでも思ってたんだろ。残念だったな。今年は二人共不参加だ。」


目の前で意地悪く笑う晴矢に無償に腹が立つ。
いっそこのまま首を絞めてやりたい気分だ。だが先程から私達の体制は変わらない。否、晴矢が先程より近くなってる気がする。
良く見ると晴矢は顔が整っていると思う。黄金の切れ長の瞳からは男らしい雰囲気が醸し出る。その下から伸びる亀裂は印象的だ。意地悪く笑う彼も、太陽の様に笑う彼も、格好良いと、思う。これなら他の女の子達から人気があるのも可笑しくない。

だが今はそんな事を考えている場合ではない、と思い直す。


「嫌だ!私はパーティに行きたいの!!」

「駄々捏ねんじゃねぇよブス。大人しくしてろ。今年の新年パーティは二人でやろうぜ」


また抵抗しようとしたら、「お前、置かれている状況が分かってねぇようだな。」とより一層距離を詰めてくる晴矢。
これ以上晴矢に歯向かうと、晴矢の性格だ。危機感を持った所でもう遅いだろう。


「・・・・・・・今年だけだからね」

「おす」


もう、本当に敵わない。本当に腹立つ。萎える。
これじゃ良いムードの一つ出来やしない。何がしたいんだ、こいつは。大人しくパーティに来れば良いものを。

じりじりと距離が先程から全く変わらない。晴矢は顔を近づけるも、ギリギリの所で止める。どうやら私を焦らそうとしている様だ。糞、このドSめ。
一時置いて、晴矢が漸く口を開く。


「お前に、プレゼントっつー物があるんだがな、」

「プレゼントって、」


確か、この前のクリスマスの時の物だろう。前記にもあったが、彼はクリスマスの時も、一人だけ報告書作りをさせられていたのだ。自業自得である。だがその為に彼は私の為に買っていたクリスマスプレゼントという物も渡せず、甘い雰囲気も作れず、一人寂しく机と睨めっこで一夜を過ごしたのである。勿論、私は翌日彼にプレゼントを渡したが、張本人は忘れたという。
だから、今日という訳か。何だ何だと期待に胸を膨らませていたが、手の中から出てきたのは期待から大きく逸れた物だった。否、実際そんな胸無いんだけどね。


「———は。」

「“は。”って何だよ。高かったんだからな、此れ。」

「高かったって、幾等なんでも此れは無いよ晴矢!リボンは無いよ!古いよ!」

「つべこべ言ってんじゃねぇ。折角の彼氏様からのプレゼント、大事にしやがれ」


出て来たのはリボンだった。それも、只のリボンではない。ご丁寧にファーとフリルがあしらわれている。そしてド真ん中には鈴が。無駄にデカく派手なそれは、只のリボンでは無かった。だが失望は大きい。もっと、彼氏たる者ならアクセサリーとかだろ。それしか無いだろ。だけど何だ、この目の前の彼氏様は。リボンってなんだリボンて。何の時代だよ、古すぎる。それに自棄に誇ってるし。
だが、そのリボンからはちゃんとした彼の“気持ち”と言うものが感じ取れた。これが、彼なりの“愛情表現”なのだろう。
ちょっと、ちょっとだけだけど、嬉しい。




「首にでも付けとけ。一生お前は俺のだって、見せ付けてやれ」




私はお前の犬か!





   NewYear:( 世界が消えてなくなるまでの3秒でキスを交わそう )

240101
悪口しか言う事の出来ない晴矢君ェ


Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.23 )
日時: 2012/01/02 11:51
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

お待たせしました。
コメント禁止解除します。

今年も、伸び伸びと亀更新ですが、頑張ります。
相変わらず駄文ですが、ご了承下さい。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23



この掲示板は過去ログ化されています。