二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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  金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集)
日時: 2012/06/23 23:55
名前: さくら (ID: ZFblzpHM)
参照: http://nanos.jp/10sakura/page/19/

真昼のプールでイルカが魅せた夢。(イルカは花冠を着けていたの)



 *参照、さくらの小説一覧

[about.]
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このスレッドは、さくらが運営する「桜の図書館」の生まれ変わり。
題名はたまに変わります。時期不定期。私の気まぐれです。
世間ではそれを「勝手」と言う。ってね!はい。

題名などは多々のお題サイト様からお借りしています。キャー素敵!
長篇、短篇気まぐれに書いていきます。
気まぐれ気まぐれってもう本当五月蝿いですね、すみません。



[sakura.]
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*さくら   (13.♀)
inzmとfate大好きな中一。
熊本県出身で熊本県育ち。熊本県熊もっとっけん。・・・ウケない只のギャグです。
好きなキャラは、拓人、京介、フィディオ、円堂、王牙。ギルガメッシュ、ランサー、セイバー。
最近はシュウ君にハマって来た。やられた。
頭良くない、運動神経良くない、美少女違う、神文違う、駄文おk。
他にも、輪るピングドラムとか、APHとか、アザゼルとか好きです。カキコに入り浸りたい。愛してる。



[menu.]
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 金木犀で創るシャングリラ|menu.



|long.

◎World End TinkerBell*. (世界を忘れたティンカーベルの唄声は)

View of the world (世界観) [>>002]

序章‖桜花繚乱 [>>044]

A章‖鴻鵠飛翔
prologue.ⅰ 鴻鵠飛翔 >>047 
episode.AA 気まぐれなガブリエラ >>040
episode.AB 強欲ステラ >>041
episode.AC よくあるエニグマの白昼夢 >>060
episode.AD タータンチェック色の愛 >>065
episode.AE 溺れる人魚姫 >>069 new!!


◎Crimson
  ∟円堂達が闇に溺れる。私は必死になって闇の沼の中から円堂達を探した。でも見つかんなかった。

first* >>106
01.連想の限界 >>107
02.残骨灰かぶりの末路 >>108
03.邪魔なものは縛るタイプ >>109
04.人工アリスの白昼夢 >>110
05.痩せ兎と穴掘り猫 >>111



|medium.

エレクトロニック*.
 ∟狩屋と初々しいケンカップル。
01.>>084/02.>>88/03.>>/04.>>/







|short.

切り裂く白祈に機械仕掛けのきみは何を想うの、 (バダップ) >>018-020
世界が消えてなくなるまでの3秒でキスを交わそう (晴矢) >>021-022
愛して居たという証など抱き合った冷たい温度だけで十分じゃないか (シュウ) >>29-32
ワンコインプリーズ! (剣城) >>34-35
まるで自分が君の音世界に溶けてしまったかのような、 (シュウ) >>72-73
落雷インターバル (剣城) >>77

|Plan.

>>045    たとえるならパーティで泣きながらキスするみたいに、 (Valentine/円秋)
>>054-056  卒業の春、君を攫って一生逃げられたら良いのに。 (Graduation/円豪鬼)

¦落書き
>>36





[kiss!!.]
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御題‖涙星マーメイドオライオン様
    Made in Alice*様
   (随時更新致します。)
   (題名などに使わせて頂いています。素敵御題どうも有難うございます。)

お客様‖(名前が載って無かった場合はお知らせ願います。)
    >>夜桜様 >>桜花火様 >>めーこ様 >>伊莉寿様 >>漆黒様 >>風風様
    >>アーシェ様 >> >>




[others.]
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|memo.
>>025 >>033 >>053 >> >>

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>>057 >>061 >>062 >>103 >>104 >>105

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[last up.]
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0623’  Crimson+1
 January 1st.Start


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Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.14 )
日時: 2012/01/02 11:38
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。







場所変わって此処は“ボルケイノ・ヴィレッジ”跡地。破壊された直後よりは随分と益しになったものの、やはりまだ瓦礫は残っているし、濛々と漂う嫌な臭いに、訪れた2人の少女達の内の一人、茶髪の少女が鼻を摘む。


「まさか、此処までやってたなんて、・・・、」


だらし無く毀れた言葉が、被災の深い真情を物語る。眉を八の字に潜め、何処か悲しそうな表情だ。そして彼女は隣に居た金髪の少女の表情を黙って伺った。

茶髪の少女とは逆に、否、少しは同じ様な感情も持ち合わせているだろうが、蒼く燃え滾る様な蒼眼に強い意志を巡らせ、無表情で活気あった村のザマを眺めていた。



「・・・少し、遅すぎたかもしれないわね・・・・・、」



堅く締められた唇の端を更に堅く締め、一瞬悲しそうな表情をした後、またいつものポーカーフェイスへと戻るのであった。


「うん、私達に情報が入って来るのは早かったはずなのに。もう少し早く動いていたら、ね。・・・ジュリア、」


茶髪の少女———“清野サクラ”及び“サクラ・カーライト”は戻れない過去の自分に想いを馳せる。視立て17位の少女でストレートで艶のある長い茶髪を頭上高い位置で結い、輝く淡いライムグリーンの瞳に端整な顔立ち。

そんなサクラに名前を呼ばれた金髪の少女———“ジュリア・クラウン”及び“優峰樹理亜”。彼女はサクラの呼びかけに小さく頷いた。ジュリアの髪は一本一本が柔らかく品のある綺麗な髪の毛であり、髪色は金髪ブロンド。ウェーブの掛かってるその金髪は、光に当たる程輝きを帯びていた。そんな金髪に、蒼眼。

彼女達は今回の第43次魔聖大戦に出生する魔族の二人でもある。


「私達の争い戦う決闘劇で勝ち残った者に与えられる新約聖書ノーヴム・テスタメントゥムの魔力を溜める為に必要なのは、生きた魔族の魂。それも大量な」

「そして、今回の標的にされたのが、此処、“ボルケイノ・ヴィレッジ”って事だね、」

「そうよ。本当、何て事を仕出かしてくれてるのよ。こんなんじゃ、何の為に魔聖大戦を開催しているのか、全く分からないわ」

「命を天秤に掛けるなんて・・・っ、」

「これは、何としても勝ち進まないといけないわね」

「うん、」


墓の広がるこの地に堅く目を閉じ、二人の少女は強く意を決したのだった。


「さてと、本題に入るとするか、」





















ギン!鈍く嫌な音が響き渡る。此処は“ウォリアーテイル”1層目のとある国の裏路地。

所々ハネている紫色の髪を赤いリボンでサイドに結っている。髪は所々ハネ、余り手入れはされていない様だ。そして、瞳は綺麗な紅色。

衣服と頬には返り血が少々付いていた。



「ちょっと、殺り過ぎたか、」



彼女は、魔聖大戦に出生する魔族の一人である。


「虹彩、お前も出生するのか。実は、アタシもなんだ」


行き成り襲ってきたであろう数名の不良共を蹴散らし殺った後、浴びた返り血を叩いた。


「さてと、アタシも、動き出すとするか」





 10J:( 猛者の出生 )

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.15 )
日時: 2012/04/30 13:00
名前: さくら (ID: te9LMWl4)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

キィ。ドアノブを廻せば木製のドアが声を上げる。薄暗い部屋にドア音が木霊した。木霊でしょうか、いいえ、誰でも。と言うのはこの際気にしないで置こう。

素足か。と思わせる位に音も無く忍び寄る影。革張りのソファに腰掛けた蜂蜜色の少女の直ぐ後ろに移動すると耳元で少女の名前を囁いた。カーテンが閉められ、真昼なのに日の入らない薄暗いこの部屋はバーの様だった。だが客も店員もマスターも居ない。要るのは金髪の少女と同じく先程入ってきた金銀髪の少女だけ。金髪の少女が座っている少女の先には同じ革張りのソファが置いてあり、テーブルには菓子とコーヒー紅茶などが置いてあった。

この薄暗い部屋には少々刺激の強い程の輝かしい髪を持った少女が要る。一本一本が丁寧に手入れされた美しいという文字では足りない位の丁度金と茶が混じった絶妙な彩色の髪は、毛先が銀色化しており、グラデーションのようになっている。そしてこの薄暗い部屋で良く光るルビーの様な、燃え滾る炎を意識した宝石の様な瞳。艶のある色白の肌。瞳を縁取るは、これまた長い睫毛。絶世の美少女であった。

薄い水色の細い縦ストライプの入った半袖シャツには、大きな黒いボタンが三つと同じ色のリボンが一つ付いており、周りをフリルで飾られている。女性独特の気質を保ったシャツだった。そしてその上から黒いサスペンダーが伸びる。土台が可愛らしい模様の刺繍された3段フリルの上から灰色のスカートが止められており、何かと銀色の糸で刺繍がされてある。レースの付いた黒いニーハイソックスの上から灰色のブーツ。手には黒い腕上までの布手袋でファーがあしらわれた高級そうな灰色と黒のポンチョらしき物を持っている。

今回は綺麗に整えられてはいるものの、頭上で編まれてはいないその髪は胸下まで下ろされていた。


改めて向かい側のソファに腰掛けると足を組んでテーブルのコーヒーを一口含み、ごくり。飲んだ。



「久しぶりだな。———七瀬虹彩。」




   「・・・ノック位しなさいよ。」




虹彩の事を「七瀬虹彩」とフルネーム呼びをした彼女の名前は「冠羽祈咲」。及び「キサキ・ウォン・フォレストベルン」である。「冠羽」という苗字も早々居ないこのぶっ飛んだネーセンと、このキャラは「fateシリーズ」の塊だという事には、あえて触れないで欲しい。

さて、話を戻そう。彼女はこの“第43次魔聖大戦”に出場する猛者の一人である。主な武器は針金細工。彼女の武器の源となる針金細工を数々の武器に変形させ、それを武器として扱う。主属性は炎、光。副属性は天体系(月、星など空に浮かぶもの)、音楽系、花、善。



「七瀬、あんな馬鹿げた遊戯ゲームに出ると聞いたけど。」

「馬鹿げた、とは何かしら?」

「惚けるな。情報屋に高値で聞いたんだから間違いない。」

「はぁ、もう。容赦無いわね。」

「そう?七瀬程では無いと思うけど」

「あ、それと。


        聞いたわ。貴女、革命家側に付いたんだってね、」



祈咲の瞳が、揺らぐ。まさか此処まで情報通が早いとは。敵という訳ではない。正直逆だ。だが流石七瀬だな、と恐れ入る。

話が、着々と進んでいく。最終地点に行くのは各地で潰しあい、人数が基準を突破した後。結構潰さなくてはならない。


円堂守。彼も同席するそうだ。嘗て伝説となりかけた男。消息不明だったらしいが。大人しく伝説になっていれば良いものを、魔聖大戦の出場権は円堂守へも送られたそうだ。

そして、松風天馬。革命家のスキルを持っており、文字通り魔聖大戦を終結させようとする。開催主催者側からしてみれば天敵のはずなのに、何故彼に出場権が渡されたのかは今だ謎。


この二人は常に最強クラスである。敵として戦う事になる以上、充分に警戒せねばならない相手だ。因みに、祈咲は松風天馬と同盟を結んでいる。



「他には、ジュリア・クラウン、サクラ・カーライト。・・・後、時空姉妹もだ」

「ときそらしまい?何よ、それ」

「知らないのか。姉・時空過去。妹・時空未来のコンビ名だ。特に妹の時空未来は、魔聖大戦最強スキル“神殺し”を持ってるんだよ。」

「要するに、充分に警戒しなければいけない。」

「そ。」




これから拙戦になりそうな戦いに思いを馳せて、虹彩は紅茶を啜った。





 11K:( 革命の芽は、確かに此処にある。 )

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.16 )
日時: 2012/04/30 13:03
名前: さくら (ID: te9LMWl4)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

ゆら。ゆらり、ゆらり。とある島の、何処かの森に、黒い髪のあの少年は居た。
黒い髪の、髪飾りを付けた瞳までもまるで闇に閉ざされた様な少年は、恐らく樹齢1000年を超えるであろう大木のしっかりとした枝の上に座り、幹に背を委ねる様にしてぼんやりと空を見上げていた。
ゆらゆら、雲はゆっくりと流れている。額に手を翳し、木の葉のお陰で隠れていた日光が顔を出す、その眩しい位の光を遮る。この森は彼、彼ら“堕ち過ぎた善なる運命エンシャント・ダーク”が活動の拠点としている森だ。部外者の侵入は一切認めない。認められていない。はぁ、シュウは溜息を付けば音も無く自然と消えていく息も同じ様にぼんやりと眺めながらうつらうつら、脳内を眠気に侵略され様としていた。


「そんな所で寝ていたら、風邪を引くぞ」


ビクン。、突如頭上から聞こえて来た低く、そして筋の通った深い声に背中が跳ねた。

人物を確認し、その張本人が安堵出来る者だった事に脱力し、またもや深い溜息を零すシュウは、彼の言葉———否、存在までもを無視する気なのだろうか。
咄嗟に起き上がった身体を、溜息と共に元に戻す。そして数十秒が経つのだが、それから一歩も動こうとしない彼の痛い視線を浴びながら、伏せていた瞳を片目だけ開いて表情を確認する。言うまでも無く、彼は顔に不機嫌という文字を貼り付けたような表情だった。The,Hukigen.
これ以上無視し続ける様な、冷酷では無い為、否、実を言うと彼は根はとても優しい為、これ以上無視し続ける様な事は出来ず、諦めて身体を起こした。

太く伸びた枝に座る彼の体重は、一体誰が想像出来ただろうか。



「—————、で。どうしたの?、白竜、・・・って言うか寝てないし。」













「それは此方の台詞だ。こんな時に暢気に昼寝など・・・。・・・・・まさか知らないとは言わせんぞ」

「あはは、冗談だよ。明日だもんね」


全く、冗談で済む話では無いだろ。と愚痴を零しながらちょいちょいと手招きをする。

彼等は悟っていた。今回は、前代未聞の大接戦になる事を。円堂守とその同志達。彼等は前回の魔聖大戦で聖書を手にした猛者である。何故今回の魔聖大戦まで歳を取らなかったのか。何故今回の魔聖大戦にも出生するのか。何故伝説に“なりかけた”男達は、今回で伝説に“なろう”としているのか。それは未だ謎である。何故聖書管理組織フィフスセクターは、彼等を聖なる場に招いたのかは、聖書管理組織フィフスセクターの中核を成している白竜とシュウでさえ、知らされていない。
そして、聖書管理組織フィフスセクターにとって、最大の脅威であろう魔族、革命軍も招かれたのである。革命軍の大黒柱“松風天馬”とその同志達。嘗て聖書管理組織フィフスセクターシードであった“剣城京介”。白竜やシュウは、そのシードの中でも究極と呼ばれる存在であり、聖書管理組織フィフスセクターの従者の中では最高位の位を担う少年達である。そして、革命軍の指揮を取る“神指揮”、“神童拓人”。この3人を中心に、革命軍は動いている。この時代最高位の革命の芽だろう。
他にも、招かれた客は、強い猛者達だらけだ。


「今回も惨劇になりそうだね・・・。否、今回は特に、」


「ああ。七瀬を中心とするオリキャラ軍は皆強いがな、」

「ちょ、リアルを語らないw」


今の二つの会話は尋常に無視して頂いて結構だ。否、無視して下さい。



「特に、七瀬にはバックに柱刺団が付いてるらしい。其方の情報は、此方にも届いている」

「知ってるよ。本当、ふざけてるのかと思ったよ」

「ああ。柱刺団の団長は七瀬。副団長はシンデレラ。団員に、赤頭巾、ジュエット、眠り姫、人魚姫、ラプンツェル、アリス。」

「何時ぞやの童話キャラばかりじゃないか!」

「だが油断はするな。あの七瀬が仕切る柱刺団だ。実力は確かなものだろう」



「そして問題は、“冠羽祈咲”だ。」

「かんば・・・?誰なの?」

「やはり、お前も知らないか。・・・あいつは、あいつに関する情報の殆どが明かされていないんだ。」

「如何いう事・・・?」




白竜が言っている事。それは、冠羽祈咲についての情報の殆どが謎のまま、という事だ。
普通、主催者の聖書管理組織フィフスセクターには出生する全ての魔族の能力やらステータスやら年齢、出身などの情報が全て届けられる訳だが、祈咲に関しては如何いった手違いか、殆どの情報が届けられていないのだ。なので、白竜やシュウ、他の聖書管理組織フィフスセクターの配下の魔族達は“冠羽祈咲”という人物が如何いった人物なのか、全く把握仕切れて居ないのだ。




「その子…。強いの?」

「分からん」

「へぇ、」




何処か意味有りげに、シュウはニタリと笑った。






Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.17 )
日時: 2012/01/02 11:39
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

此処でこそもう遅いが、此処で少し彼等の紹介をしよう。白い白銀の髪を束ねた何処か神々しい雰囲気を纏うこの少年の名は「白竜」。フルネームは不明。彼は、“失われし理想郷ロスト・オブ・エデン”に存在する不落した“天国宮殿”及び“絶対白殿”に住み着く神官である。“絶対白殿”は“王亡き城”とも呼ばれており、文字通り前世に住み着いていた王族は全滅。それを見つけた聖書管理組織フィフスセクターが彼等に与えたといわれている。
その目的は、宮殿の地下に眠り、同時に彼の化身でもある“聖獣・シャイニングドラゴン”を守護する為である。元よりこの島で生まれ、この島で育った島人である。だが今では聖書管理組織フィフスセクターの手に堕ち、同志のシュウと一緒に“聖書”の管理を遂行している。
そして、先程まで樹の上に居た、黒い髪の可愛らしい少年の名は「シュウ」。白竜と同じく、“失われし理想郷ロスト・オブ・エデン”に存在する“雲海の森”の奥深くの神殿に祀られている“暗黒神・ダークエクソダス”を守護する神官。白竜と同じく、この暗黒神は彼の化身でもあり、同志の白竜と一緒に“聖書”の管理を任されている。



「僕達は、只、此処で待つ事しか出来ないのだけどね」

「否、その方が良いだろう。戦い方も知らない雑魚共と一戦見えるとは、屈辱過ぎる」




彼等は、余程プライドの高いのだろう。

其処でふ、と、白竜はある事に気がついた。



「松風天馬・・・も、彼も、出生するらしいな」

「うん。そうだね。・・・あれ、フィフスは怖くないのかな。天馬は“革命”すスキルを持っているというのに」



シュウが松風天馬の事を「天馬」と呼ぶ事には意味がある。彼とは随分と親しい仲だからだ。あの時は、お互い敵になろうとは微塵も思って居なかったのだろう。少なくとも、未だに松風天馬はシュウが自分の敵だという事を知らない。



「何か、考えがあるのだろうがな。“あいつ”は其処まで馬鹿では無い」



白竜が“あいつ”と称した人は、今はまだ伏せておこう。只、今後七瀬虹彩や松風天馬、円堂守達にとって、最大の脅威になるに違いない人物だ。
シュウは、良い様の無い思いを胸に刻み止め、反射的に瞳を閉じながら呟いた。




「裏切り、か。多分、キリスト教の話その物なんだろうな。……イエスが天馬で、ユダが、———…僕、」















 12L:( 神官達の静宴。 )


Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.18 )
日時: 2012/01/02 11:41
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。

( バダップ/切シリアス/成人 )
※死ネタあり。
※長いです。切り裂く白祈に機械仕掛けのきみは何を想うの、  (バダップ)
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1




 “———…行ってきます、”


そう言って私の頭をそっと撫でてくれたのは、何時の日だったか。







** ( 切り裂く白祈に機械仕掛けのきみは何を想うの、 )








此処最近この街は物騒である。その為に王牙はあるのだろうが。だが、隣国が近国との紛争に借り出される王牙の軍人は少なくない。最近は王牙も人数を絶やしている所だ。そして、私もその一人であった。

2年前までは、私の職は軍人だった。それは彼も一緒。私と彼は同じ大地を翔ける軍人だった。彼は並みの軍人は到底し切れない難題を次々とコンプリートして行くという、もはや新米の憧れの上司だった。だがその技術は既に上の者にも認められ、良く紛争に出かけた。私と彼と同じ同志のミストレーネ・カルスにエスカ・バメルも高評価であり、良く紛争に出かけていた。私はと言うと、彼等の様な技術は更々無かったし、女性である事、そして何よりこの国でも高い地位に在る権力者の一人娘として余り紛争には駆り出されなかった。だが私も軍人の身、借り出されるときは主に彼等のサポートとして同じ大地を駆け、彼等と一緒にこの国の旗を立てた。その時は嬉しかった。男女関係無く彼等と抱き合った。戦争は生死の賭けとも言える。少しのヘマで自分の一生の人生を棒に振るかもしれないのだ。そんな中を勝ち抜いた勝利の喜びは大きい。勿論、“勝った”のだから敗北者も犠牲者も居る。私達は只只管に国だけを想って戦わなければいけない。例えそれが、死の道を切り開く事になろうとしても。

軍人たるもの、無駄な感情は一切切り捨て、同時に持ち合わせてはいけない。鈍るからだ。その訳を幾つか出してみよう。例えばA男とB子が居たとする。そして彼等は軍人で、同時に男女の関係だったとしよう。するとどうだ。もしもB子が他国のスパイで、それを偶々知ってしまったA男は、直ぐにB子を始末する事が出来るだろうか。もし最後に戦う事になろうとしても、お互いに殺しあう事が出来るのだろうか。ついには国まで裏切ってしまうかもしれない。そうとなれば国側はとても困る。と、言う訳で、基本中の基本だが軍人に無駄な感情は一切持ち合わせてはいけないという事になる。だが今の時代、時代が変わっているのだろうか、軍人同士のカップルが増加している。勿論、軍人ではないカップルも山の様に居るのだが。恋は何れ愛に変わる。愛は全てを棄てる覚悟までを脅かす。この状況を如何にかせねばと動こうとする上も居るが、全く歯が立たない。

だが、彼は違った。

全ての任務を全うに遂行する完璧なる軍人。彼は国の為ならどんな事でもやって見せた。勿論無駄な感情は一切持ち合わせていない。いつもお馴染みのポーカーフェイス、だが容姿は本当に端麗で、此方も見入ってしまう程だった。必要以下のものは即座に切り捨てる。無駄な動きが一切ない、物凄い堅物。だが、本当は優しいのだ。とっても、とっても優しいのだ。

そんな彼に、私は段々と惹かれて行く。

クラスも同じで、ミストレやエスカバと仲がいい為、彼とも親しくなる事ができた。

そして月日は流れる。



彼に私に対する異性への愛というものは無いけども、私には微かに存在した。所謂片思いと言うやつだ。

私達は師匠と弟子の様に、バダップが私に特訓をする、など月日が流れていく度にもっと一緒に居る時間が長くなる、仲良くなっていった。友達以上恋人未満とは正にこの事を言うのだろう。

「え、嘘、」

「だから、少しの間、お前とは離れる事になる。ミストレやエスカバも俺と一緒に出るので少々一人になるがな。」

「・・・そう、なんだ、」


「だから、お前には、待っていて欲しい」


“必ず、無事に帰ってくるから”


こういう事は何時まで経っても慣れないものだ。彼等は軍人(私もだが)、紛争に出ることも屡ある。だからこそ怖いのだ。もし、彼等が出て行ったまま戻って来なかったら。彼が帰ってこなかったら。「おかえり」って言えなくなったら。

彼等が居ない、彼の居ない夜は長い。毛布の中で、彼等は、彼は大丈夫なのだろうか、震えながら朝を待つ。


「———・・・うん、頑張ってね。絶対、帰って来てね」

「ああ。」

「・・・・・死なないでね」

「、ああ。」


「約束、」



だが彼は、———もう帰っては来なかった。

あの後、家を出たっきり、私が彼に「おかえり」を言う事が出来なくなってしまった。約束は、果たされなかった。ミストレ達は怪我を負っていたが無事に帰ってきた。それと同時に彼が戦死したと上司から告げられた。敵国に狙われ、射殺されそうになった少女を庇ったそうだ。それを聞いた途端、何故か出て来なかった涙が吹っ切れたように溢れ出した。全く、馬鹿な話だ。彼にとって、最高の笑い話になりそうな死だった。彼が撃たれた事に気がついた同志が相手を斬り、少女は無事守られたが、私には悲と嬉が半々で私の意思がかなり解らなくなって来た。彼が死んでしまい、とても悲しいが、彼の死がこんな優しい死で良かった。その時少女は死んでいた身だったのだろう。彼は死んでしまったけれど、助からないはずの命が、助かった。だがやはり結末に嘘は付けなかった。何で彼は約束を守らなかったんだろう。何故彼は私を置いて死んでしまったのだろう。必ず帰って来るって言ったのに。私の気持ちなんて知らないで。そんな意思が複雑に絡まりあい、縺れる。

それから3日間、私は止まず泣き崩れ、泣き続けた。







「何で、死んじゃったのオ、———バダ、ップウッ!!」















[途中保存]


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