二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- イナクロ〜なくしたくない物〜参照23,000突破感謝!!〜
- 日時: 2016/02/10 23:59
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: JuyJRz6j)
どうも。
イナGOの「なくしたくない物」がイナクロなるってことで、続編つくりました←
いちおう、>>1にキャラ紹介をのせときます。オリキャラも。
※注意事項※
・キャラ崩壊のおそれあり
・なんかいろいろ意味不
・更新おそい(中学生だもん、部活入ってるもん←)
・絶叫多しww
・荒し、パクリは厳禁
・ひとの目によって、駄作に見え……いや、駄作
・なんかシリアスでもコメディでもなし(←わかんねえよ、あいまいで)
・「駄作お断り!」のかたはさよならです(二度目)
注意事項はどんどん追加されていきます←
もしこれのうちひとつでも「守れるわけねえだろ!」という人は、そよかぜステップで退散!
「いいよ^^」という神様は、どうぞおとおりください!
オリキャラ募集のお知らせです
>>95
《更新再開の大号令》
>>342
〜もくじ〜
ストーリー説明〜第2章まで
>>230
第3章〜第5章まで
>>328
第6章まで
>>345
☆番外編☆ また会う日まで
第1話〜第10話まで
>>317
第11話〜第20話まで
>>329
第21話〜第30話まで
>>344
第31話
>>346
第32話
>>347
第33話
>>349
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.245 )
- 日時: 2013/03/29 15:57
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
10話 「いろんな……」
建物から、そうとう離れた場所にいた。まあ、走れば五分くらいでつくけど。
ながめるのは、どうしても目を離せない、みんながいる建物。なぜか、すごく気になるんだ。なにかが、おこる気がして……。
「あ、あれ……?」
あれって、もしかして……。
『風花さん……。』
ファイアリはただひとり、とり残されて、練習場に立っていた。
アクアが現れたのと、ファイアリが封印されたのは、ほぼ期間だった。
それ以来、ファイアリよりも、アクアの方が、風花を理解できるようになっていて。
ひとり目の化身である自分より、アクアの方が、良き理解者になっているような気がして。
目がさめたら、いろんな風花がいた。
猫かぶってる風花。
『月流ユエ』としてふるまっている風花。
『月流ユエ』で猫をかぶっている風花……。
もう、ありすぎて数えられないくらい。
情けないことに、どれが本物の『風丸風花』なのか、識別がつかなくなってしまった。
『情けないにも、ほどがありますよね……。』
ファイアリは、目にたまった涙をこぼさないため、力なく、ただひとりでわらう。きれいな顔を、くしゃくしゃにして。
と、そのとき。
「ファ、ファイアリ、だいじょうぶ?」
『えっ?』
背後から、語りかけられた。自分だけだと思っていたから、こんな弱音、はいたのに……。
ふり返ると、なんと、輝だった。そのとなりには、フェイもいる。フェイは、なんとなく、深刻そうな顔にも見えるが……?
『お、おふたりとも、いつから……。』
「えっと……最初から、かな;;」
『……盗み聞きって言うんですよ、そういうの。』
「それより!」
深刻そうな顔をしていたフェイが、いきおいよく切り出した。ファイアリと輝も、ハッとして彼を見つめる。
「なんなの? ぼくに話すことって。ぼくに、なにか話すことがあるの? それに、そのことは、これからぼく自身が分かるって……。」
『そ、それは……。風花さんも、話さないのには、きっとわけがあると思います。だから、わたしの口からは、なんとも……。』
「そ、っか……。ごめん。」
『いえ……。』
その言葉を合図に、エルドラドの巨大な建物が、大きく揺れた。
俺が存在に気づいたときは、すでに遅かった。
あの無駄にデカい建物が、爆音と爆煙に襲われていた。
『フェーダ』だったんだ。あの銃で、建物を射撃していた。
「あいつら……! 試合は明日じゃなかったのかよ!?」
そこで、ハッとした。
まさか、あいつら、フェイを迎えに来た……?
その考えで、俺の体は勝手に動いた。建物に一直線に続く道を、自分の全力を出して、走り出す。
いまより最悪のタイミングは、あるかもしれないけど……いまのタイミングで、フェイを持って枯れるのはキツい。
戦力的以上に、雷門中の精神的に。特に、天馬はまずいだろ。あいつ、かなりフェイのこと信頼してたし。
全力疾走って、けっこう疲れるらしかった。持久走なみの距離のある道を、のどの奥が鉄の味がするのをがまんしながら、必死に走った。
「なに、この揺れ!?」
『分かりません! でも、危険なのは分かります。逃げましょう!』
ファイアリの声を合図に、ふたりともあわてて走りだした。
みんなも跳ね起きて、出口に向かって走っているのが、確認できる。
「すごい揺れだね……。」
「ふーちゃん、どこにいるんだろう……。なにも、なければいいんだけど。」
『風花さんは無事です。わたしが保証します。』
ファイアリのやけに真剣な声に、彼女を信じ、ふたりもうなずく。
出口を抜けるのと、大きな音をたて、自分たちがいた建物がくずれ落ちたのは、ほぼ同時だった。全員脱出できたのが、なにより安心だが、もし、一歩でも遅れていたらと思うと……ぞっとする。
さきほどは、せっぱつまっていたためファイアリをあっさり信じたものの、本当にだいじょうぶかは、誰にも分からない。輝は、みょうに大きな不安にかられ、向こうへ続く道の先を見つめた。
建物が、煙をあげてくずれ落ちるのが見えた。全員脱出できていることを願うけど……。
「くそっ。こんな離れてなけりゃよかった!」
ひとり、そうさけんだ。
やっと距離が近づいてきて、数十人の人々が、あぜんと崩れていく建物を見上げていた。
(あっ、いた!)
『フェーダ』の奴らだ。元々いたところは少し高くなっていたからよく見えたけど、走り始めるとなかなか見えなくて……やっと確認できたぜ。
俺は、天馬の元の方にさけぶ。
「天馬——ッ!」
「((ハッ ユ、ユエ!? どこにいたのっ。」
「悪い。ちょっと風に当たりに……。」
「良かった、ふーちゃん。無事だったんだね。」
「やあ。」
あ、来たよ。サリューが。
「SARU……君は、『フェーダ』だったのか!?」
天馬のさけび声が、すごく遠くに感じられた。
あ、あれ……? 気のせいか?
それにしても、酷いありさまだな。まわりにいる『フェーダ』は、全員銃を装備していて、こちらがなにか仕掛けようとしたら、撃つつもりでもいるのかな。
あの銃って、銃刀法違反には引っかからないのかね。
サリューがフェイを見つめた。と、その瞬間、フェイが「うっ。」と小さくうめく。その時点で、もう体は勝手に動いていた。フェイの元にかけ寄り、「フェイ?」と声をかける。
フェイの状態は悪化し、頭をおさえると、その場にくずれ落ちた。
「フェイッ。」
天馬の悲痛な声が響く。
まあ、うん。もし思い出した衝撃なら、しかたないだろうな、この頭痛は。
俺だけがただひとり、平然とした目でフェイを見つめる。
が……。
「あがっ。」
俺の方も、頭痛がしてきた。
なんだ、この音……! キィーンッて、すげぇ嫌な金属音みたいだ……!
「ううっ。」
体をくの字に曲げ、ひざをつく。
「えっ、ユエ!?」
フェイのような症状をうったえるふたり目の人間に、みんなの戸惑った空気が感じ取れた。
でも、そんなの、気になんてできないほど、苦しい。
ああ、ダメだ。もう、意識が、持たな……。
☆
フェイが目を覚ますと、着がえられており、ベッドに寝かせられていた。
「あっ、フェイ。気がついたやんね。」
「黄名子……。」
「うち、なにか持ってくるやんね。」
「いや、おれたちが持ってくる。おまえは話してろ。」
車田が言い、他の者たちにも言って、黄名子とフェイだけを部屋に残し、退室する。
「ぼく……?」
「とつぜん倒れちゃって、みんなびっくりしたやんね。……あ、でも、風花は全然驚いてなかったやんね。」
「あっ、ユエは?」
「風花? 風花は、となりの部屋にいるやんね。風花も、フェイみたいにたおれちゃったやんね。キャプテンたちが見にいったけど、まだ、眠ってるみたい。」
「そっか……。」
「会いたいやんね? なら、後で会うといいやんね。うち、見てるから。目がさめたら、呼びに来るね。」
黄名子はほほえんで言うと、部屋を退室した。
『風花さん、もう眠っているふり、止めたらどうです?』
天馬たちが退室してから数分後。ファイアリの声を合図に、俺はぱっちりと目を開けた。
そう。俺はずーっと、寝てるふりをしてた。って言っても、天馬たちが入ってきたとき、目がさめたんだけどな。
『どこまで嫌なひとなんです。』
「いいじゃん、許してよ。」
『にしても、驚きましたよ、フェイさんのことについては。』
「ああ。……注意、しないとな。」
『嫌なものですね、仲間をうたがいながら戦うというのは……。』
「なに言ってるんだよ。俺がセカンドステージチルドレンの能力持ってるって知ったら、みんなも俺のこと、スパイなんじゃないかと疑いなら、やることになるんだ。……まあ、つらいけどな。」
ほんとは、疑いたくなんかないしな。
「じゃ、寝るふり、続けますか♪」
俺はそう言い、ゆっくり目を閉じた。
でも、バカのことに、俺は寝るふりじゃなく、ほんとうに寝てしまっていた。黄名子が入室してきたことも、フェイの話をしていたことも、なにひとつ知らない。
目を覚ましたのは、真夜中の、二時だった。
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.246 )
- 日時: 2013/03/29 18:14
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
なんか、最近ひとりに慣れてきた。
風花「悲しい奴だな。……知ってたけど。」
じゃあ、あえて言ってくれるなよ。
最近ね、カゲロウデイズってやつ聞いたんだけどさ。
それ聞いて、いろいろ描いてたらさ……。
風花「妹に見られて、泣かれたんだろ?」
うん……。
怖く描きすぎてしまってね。
風花「才能なのか、それ……?」
怖く描く才能……マンガ家志望じゃないから、あまり意味をなさないような……。
これが言いたかっただけです。
風花「意味不明だな。」
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.247 )
- 日時: 2013/03/29 20:13
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
5章 。○裏切り方○。
1話 「信じることってけっこうムズい」
ラグナロク第一戦目の前半も、残りわずか。
ベンチに座っていた俺は、ただひたすら、緊張していた。
いや、まあね。疑ったりなんかしたくないけど、いつ『フェーダ』側の人間が、しかけてくるか、分かんねぇし。
フェイのこともあるし……。一番良いのは、なにもないことなんだけどな。
っていうか、フェイにボールがわたる度、ハラハラしてしまう俺は、なんつー奴なんだ。
「フェイ?」
いぶかしげな水鳥先輩の声に、俺はハッとして、フィールドに目を向けた。
フェイが——エルドラド側のゴールをふり返った!
(まさか、記憶が!?)
「やめろっ、フェイィッ!!」
その声を合図に、フェイの足元から、ボールが消えた。——ように見えた。
シュートしていた。自分たちのチームのゴールに。
(やられた……!)
絶対サリューだ。
わけもなく、そう確信した。かってに、右手に力が入る。
不意打ちのシュートは、うなりを上げて、シュートへ一直線。あっさりと、ゴールを許した。
『フェイのオンゴールだぁ!?』
うるさい実況の声が、遠くに聞こえる。
『ふ、風花さん……。』
(やられたよ、ほんとに……。)
『サリューさんですね。まさか、この短時間でなんて……。』
(ナメてたな、あいつのこと。)
ピ——ッ
『おぉっと、ここで前半終了!』
このタイミング!? あの、タイミング良すぎじゃないですかね!?
って、それよりフェイだッ。
「どこへ……あ、いた。」
俺は静かにベンチから抜け出し、フェイの尾行を開始した。
☆
「ぼくは天馬と一緒に、サッカーを守らない。」
冷たい声が、静かな廊下に響きわたる。俺は壁に身をひそめながら、目を細めた。
(ひー。こえぇ、こえぇ。)
「なに、盗み聞きしてるの?」
「ん?;;」
いきなり声をかけられ、硬直。
と同時に、えりもとをつかまれ、天馬たちのところに放り出される。
「わっ!? え、ユエ?;;」
「よ、よぉ、おふたりさん……。めっさ扱い悪いな、サリュー。」
「だって、ていねいに扱う必要はないでしょ?」
「おまえなぁ……。」
「ユエ……な、なんでここに?」
「彼女、ずっと盗み聞きしてたんだよ、ふたりの話。」
「えっ……。」
天馬の顔が、明らかにゆがむ。
「ちっ、ちがう、カンちがいすんな!?;;」
サリュー、ほんとに人聞きの悪いこと言うよな……。
頼むから、これ以上へんな子と言わないで……。
「それに、色々かくしてるんだよねぇ?((チラッ」
「えっ((ドキッ」
「それ、ほんとう? ユエ……。」
「そ、それは……。」
俺は、思わずうつむく。
さすがに、天馬が俺を疑うとは思えないが、さすがに言うのは、少し気が引ける。
「いっちゃえば? どうせ、いつかバレるんでしょ。」
フェイが、ばっさりいいすてる。
そう。どうせ、あとでバレる。でも、いまは、まだいいたくない。
「風花?」
天馬に声をかけられ、ハッとした。
(くそっ……。)
ムカつく。
サリューにじゃない。
自分に対してだった。
もしかしたら、『フェーダ』のスパイなんじゃないかっていわれる……。そう思ってる俺が、ムカつく。それに、そういわれるんじゃないかって、天馬を信じられていない、俺も……。
「じれったいなぁ。」
サリューの声と同時に、ガチャッと音がした。その音に、下げていた顔が、弾かれたように上がる。サリューの手にあったのは、銃——!
「危険物は持ち込み禁止のはずじゃ!?」
「関係ないね。」
サリューはいい、引き金に手をかけた。その銃口は、天馬に向けられている……!? 向けられている本人は、かたまって動けない。
「え……!?」
「いいのかなぁ。このままじゃ、天馬が死んじゃうよ?」
(こいつ……俺にわざと、能力を使わせようとしてるのか……!?)
いま、天馬を殺るようなことは、さすがにサリューでもしないだろう。でも、やっぱり可能性は捨てきれない。
いや、それ以前に、なんでこいつ、俺の持ってる能力、知ってんの?
って! 冷静に考えてる場合じゃねえ! このまま放っておいたら、あのクソな破壊力の銃で、天馬は、罪もないのに打ち首に!(←なに、それ)
なんて混乱している間に、重々しい銃声が、廊下を振動させた。その瞬間、体が勝手に動く。
天馬に手を伸ばし、その手に、無意識的に力が入り——能力が発動されていた。緑色のまくが、天馬をドーム状に包み、守っていた。天馬の目が、驚きで見開かれ、ゆっくり、スローモーションのように、こちらをふり返った。
かたまって動けない俺。
怪しい笑みをたたえているサリュー。
無表情でこの光景を見ているフェイ。
目を見開く天馬。
死んだときと同じくらい、最悪の瞬間に感じられた。
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.248 )
- 日時: 2013/03/29 20:15
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
- 参照: http://nicoviewer.net/sm18621153
おもしろいの見つけてしまった……ww
風花「カゲロウデイズを勉強中に歌ってたのを、妹さんが録音して、アップしたものらしい。
……なんか、勉強してる感じはない。」
歌詞の内容を気にしなければ、もう、ヤバイ……ww
グロ系なんで、苦手な方は聞かない方がいいと思います。
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.249 )
- 日時: 2013/03/30 11:52
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
- 参照: http://nicoviewer.net/sm18621153
2話 「役に立たぬお荷物」
しんと静まり返り、すごく気まずい、この空気。
沈黙を破ったのは、この空気を作りだした張本人——サリューだった。
「バレちゃったね、風丸風花さん?」
「バラす原因作った本人のどの口が、んなこと抜かしてんだ?」
しまったねぇ。完全にお怒りモードでいっちゃったや★(←黒いぞ)
「どの口って、この口だけど。」
ケロッとした顔で、サリューが自分の口を指さす。
殺すぞ?
「まあ、いいや。けっこうおもしろくなったから。いこうか、フェイ。言い逃れ、頑張ってね^^」
俺の前を素通りし、フェイと一緒に、サリューはいってしまった。
いまぶっ殺したい奴ベスト3の頂点は、あいつになったよ。……いまさっき。
「ユエ……。」
天馬の沈んだ声で、ハッと我に返った。
なにも返せない俺のせいで、しんと静まり返る空気。
「お、俺、試合あるから……。」
この空気が嫌で、俺はフィールドへ走った。
☆
「月流! おまえ、どこいってんだよ、この大事に!」
もどってきてそうそう、思いっきり頭を殴る水鳥先輩。それを見て、選手のみなさんは、ちょっとひや汗。
そんなみんなとは違い、平然とした顔で、鬼道監督はこちらに歩みよってきた。
「フェイの代わりに、おまえを出す。いいな。」
「あっ、はい。」
「頼んだぞ、月流。」
めずらしく、剣城の方から声をかけてくれた。俺は、まださっきのことが吹っ切れず、とまどい気味に、「ああ。」と返す。それを感じとったらしく、剣城はキッとこちらを見て、
「試合に集中しろよ。」
と言い、フィールドに歩いていった。
「おい、月流。はじまるぞ!」
「は、はいっ。」
うーん、でも、ちょっとなぁ。
フェイのポジションにつく=FWにつくってこと。FWが苦手な俺にとっては、あんまり良くない条件。
仮にも、元フィフスセクターで、訓練されていたくせに、なにぬかしてんだ、と自分でツッコんでおこう。
ただ、あっちの出方には、注意したいところだな。あのラフプレー、友撫と同じくらい酷いぞ?
「……れ?」
いきなり、視界がはっきりしなくなった。まわりがすべてくらみ、あげくの果てにまわりはじめる。
「ッ……!?」
「月流?」
となりの剣城の声が、遠くに聞こえる。
視界がまわるのが最悪かと思ったのに、重なって、頭痛とおかしな、ここちの悪い声まで聞こえはじめた。
『頭おかしいよねぇ。』
『気持ち悪ッ。』
『寄るなよ!』
『……ねばいいのに。』
いまの……母さん……?
『死ねば、いいのに。』
この一言、聞きおぼえが……。
……あ。
分かった……。これは、幻聴なんかじゃない。
全部、昔いわれたのと同じだ。
最初の3つは、いじめられていた時代に。
最後の声は……《いつもの》病院で。
くり返し聞いているだけなんだ。
そう思ったとたん、急に体が軽くなって。
抵抗も出来ず、前のめりに倒れた。
『しッ、試合開始直前に、選手が倒れ——……。』
音なんて、なくなってしまえばいい。
そう思ったのは、今回で6回目だった。
☆
試合を立ち見して、黙っていた少女は、思わず舌を鳴らした。
実に、お荷物。どこまでもついて来て、けっきょく、全部足を引っぱるのだ。
少女は、見れば見るほど思った。
彼女は、どこまでも役に立たない、足手まといな奴なんだと。
「やるなら、ちゃんとやりなさいよ。」
小さく、つぶやいた。イライラは間もなく、ピークをむかえる。
ブチ切れる前に、少女は、黒髪を揺らし、彼女に背を向けた。
出口に延びる通路に足をふみ入れ、少女は携帯をとり出す。ああ、リミットなのだ。
少女はやっとすっきりし、口元にうすい笑みをたたえ、ホイッスルの鳴りひびくフィールドへ顔を向けた。
彼女はいない。すがすがしいが、すこしいらだつ。
矛盾している感情とともに、少女は消えた。
言葉どおり、すぅっと。
赤く丸い、髪飾りを残して。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73
この掲示板は過去ログ化されています。