二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜
- 日時: 2015/02/21 19:37
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
二次創作は初です、Va*Chuです( ´ ▽ ` )ノ
私は、「ツバサ -RESERVoir CHRoNiCLE-」及び「ツバサ -WoRLD CHRoNiCLE-」の二次創作を書かせていただきます。どうかよろしくお願いしますo(^▽^)o
- Re: ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜 ( No.11 )
- 日時: 2015/03/02 23:29
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
Chapitre.5 異変
静かな部屋に、ほのかな光。それには、四月一日が映っている。何か起こったことを察して、モコナを通じた通信——いくらかぶりの——をしているのだ。
「そう、だね。君たちは、"同じ"だから」
『はい。大事な半身です。放っておくわけにはいきません』
四月一日がそう噛みしめるように言った。自分も感じた異変。ただ事ではないと、そう思った、心配したのだろう。
一通りの説明を受け、四月一日は少し考えこんだ。しかし、少し経ってからやがて顔を上げ、言った。
『小狼が特異な存在であることは、ご存知ですよね』
「うん。それがどうしたの?」
『——危険な目に遭いやすい、ということです』
四月一日が苦い声色でそう告げた。なんとなく皆、わかっていたのだが、やはりそうなのかと少し思う。
『もともと、彼の魔力を考えると、クロウから受け継いだものもありますし、かなり強いんです』
「あー、そういえば、そうだったね」
『はい。その上、お母さんがさくらちゃんなだけあって、夢に関することに敏感だ』
「…というと?」
少し間をおいて、四月一日は続ける。
『おれの考えは、——小狼の魂は、夢に囚われているのではないか』
「!!」
『潜在的に強大な魔力、特異な存在、夢という概念——彼を付け狙うには、絶好の環境です』
確かに。黒鋼、モコナはともかく、魔術師であるファイでさえあまり夢には精通していない。小狼が夢という概念とのつながりが強いことを考えると、夢の中で何かあったとして気づけるかと言われたら、否、である。
『特異な存在で、強大な魔力の持ち主は狙われやすい。おれは、特に魔力と呼べるものはないし、何より店に守られているので、』
「妖しいモノが寄ってくることはない、と」
『そうです。しかし、小狼は魔力を持ち、殆ど守りもないまま、色々なところを渡り歩いている。よく考えたら、いつ何があってもおかしくはなかったんです』
言われればそうだ、と思う。逆に、今までよく何もされなかったなと考えられるほど、今までがすごかったのだ。今回のケースが珍しいわけではない。しかし、夢が関わってきているので、どう対処すればいいのかがわからない。
「どうすりゃいいんだ」
「とりあえずは情報収集だよね。さっき四月一日君が言ってたけど、小狼君の魔力は強い。魂は離れたけれど、普通の人間よりは躯の朽ちる速度は遅いよ」
『そうですね、慎重な方がいいかと。あ、それから』
四月一日が何か思い出したように話を続ける。
『もともと世界への影響力が強い者に対しての異変です、何か起こるかもしれませんから気をつけてください』
「うん、ありがとう」
そのとき、ジリリリッとベルが鳴った。「魔神狩り」緊急招集のベルだ。早速ですね、と四月一日が呟いた。
『ひと段落ついたら、また折り返しください』
「わかった」
四月一日からの通信はいったん切れる。黒鋼とファイは、顔を見合わせて、
「どちらかが残らないと。小狼君を置いてはいけない」
「俺が残る。お前は白まんじゅう連れて早く行け」
「了解、そっちのことは任せたよ。モコナ、行こう」
「うん!」
黒鋼はベッドの横にどっかり座り、ファイとモコナは部屋を飛び出した。世界の異変が、始まる———
- Re: ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜 ( No.12 )
- 日時: 2015/03/07 11:12
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
Chapitre.6 雨の音
「急な呼び出し、すまんな」
ローゼンがファイとモコナに苦笑混じりに言った。しかしすぐに真剣な表情に戻ると、おもむろに呟いた。
「街の郊外に、魔神が出た」
「!?」
そんな、まさか。そう、その場にいた誰もが思った。魔神は普通、夜に、街にしか現れない。こんな朝っぱらにましてや郊外に現れるなんて聞いたことがなかった。
「なんでですか!?」
ローゼンのグループの若い男が血相を変えて叫んだ。彼の家族は——その、郊外に住んでいるのである。魔神に襲われないように。
「知らん!! 理由はわからんが、行かねばならん! 違うか」
「当たり前でしょう!!」
男は取り乱しながら、部屋を飛び出した。他のメンバーも立ち上がった、そのときにローゼンは気づいてファイに声をかけた。
「他の二人はどうした?」
「ああ、小狼君、具合が悪くて。とても出歩けない感じなので黒様は看病…みたいな」
適当にファイは言い訳をする。出歩けない状態なのは間違いないし、嘘はついていない。しかし、
「動員できないほどか」
そこまでするか? ローゼンのその問いにファイは一瞬顔をしかめた。例外だとはいえ、そんな強敵でもないはずだ。なんならファイひとりでも倒せるだろう。ローゼンの意図が、まったく読めなかった。
「ええ、ベッドから出られないくらいなんで、すみません本当に」
早口になってしまったのは少しイラついていたせいかもしれない。ファイは、なおも何か言おうとするローゼンを振り切って、部屋を出た。
「ファイ、機嫌悪い?」
移動中、肩に乗ったモコナにそう尋ねられた。ファイは、今は悪くないよ、と笑った。
「今は?」
「うん。さっきは少しイラッとしちゃったけど」
ファイが苦笑した。モコナもイライラした、とモコナが呟く。まあ、事情を知らない人だからあんなことを言うのも仕方がないことなんだろうけど、少し考えてほしいものだ。
「…小狼のせいなのかな?」
「機嫌悪いのが?」
「違うよ、魔神が出たの」
モコナが唐突にそう言うから、何のことか一瞬わからなかったけど、なるほどそっちかとファイは頷いた。
「多分ね。四月一日君の言う通りだ」
「…大丈夫かな?」
「どうにかしよう?」
「うん」
ファイはモコナににっこりと微笑んだ。そのとき、前方、大きな黒い物体が見えた。——魔神だ。
「あれだね。規模は小さいけど、魔神に違いない」
「わかっているならさっさと攻撃してくれないか」
突然、そんな声が聞こえたと思ったら、先ほどの若い男だった。そうだ、彼の家族はこのあたりに住んでいるのだった。
「はいはいごめんなさいね」
ファイが魔法を放ちながらそう気だるげに言った。その一発で魔神は倒されてしまった。男は礼もなしにただ鼻を鳴らし、下に降り立った。感じ悪いね〜、とモコナが耳打ちするが、気にしないの、とファイは諌めた。
———ぽつり
そのとき、脳天に何か落ちてきた。ハッとして空を見上げると、無数の水滴が落ちてきた。それは、どんどん数を増していく。———雨だ。
「雨だ」
「雨!? これが雨なのか」
若い男がファイの言葉に叫んだ。雨を、知らないのか? すると、ローゼンが目を瞠って呟いた。
「雨なんて、この20年くらい降ってなかったのに…」
ファイもその言葉に驚きを隠せなかった。どうやら、この国では雨は滅多と降らないようだ。近くにいたローゼンの仲間に尋ねてみると、このテルモンド王国では厄年にしか降らないそうである。その厄年というのは100年に1度あるかないかだそうで、雨を知らずに一生を終える人が多くいるそうである。私も今はじめて雨を見た、と彼女は言った。
「厄年にしか降らないはずの雨が降るなんて…」
「ファイ、これって」
「…うん、きっとそうだ」
小狼の影響に違いない。
黒鋼は、外の様子に気が付いて、窓の方を見た。
「雨か」
呟いて、カーテンを閉めようと立ち上がったとき、後ろで動く気配がした。
「…小僧?」
ふと後ろを振り返ったとき、黒鋼は顔を真っ青にした。
小狼の腕から、血が滴り落ちていたのだ。
- Re: ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜 ( No.13 )
- 日時: 2015/03/07 18:00
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
Chapitre.7 さくらの夢
小狼は、ゆっくりと目を開けた。
「ここ、は…」
どこを見渡しても、暗く、何もない。ここを、彼は知っている。
「…夢の中…?」
そっと地に足をつけると、そこに波紋が生まれたのが見えた。ああ、やはりと思って、一歩踏み出したとき、何かが落ちてきてハッと上を見た。
———はらり、はらり。
「…桜…」
よく知っている、大切なひとと同じ名の花の花びらが、落ちてきたのだった。小狼は、すっと手を伸ばし、花びらを手にとった。それは、柔らかな光を放っていた。
———ざあっ…
ざわめく音がしてふと前を見ると、そこには、———大木、桜の大木が。それを目に留めた小狼は、導かれるように、ふらりと歩き出した。そして、その幹に手を置くと、呼応するように、小狼の体と、桜が光り、ざわめきが増した。そのまま小狼は額を幹につけた。目を閉じ、そこから感じる『声』に耳を傾ける。
「…苦しい…のか…?」
本来、声なき者の声を聴くことはできない小狼だが、なぜかそのときは『声』が聞こえたのだ。
「…怖い…?」
そうやって呟くたびに、桜はざわめく。そうか、とそう言って、小狼は目を開けた。そして、幹を優しく撫でながら微笑んだ。
「でも、大丈夫。——絶対、大丈夫だから」
光が、強くなる。小狼は、微笑みを深く、———しようとしたが。
そのときだった。地の底から這いあがってくるような声が頭に響いたのは。
『余計なことを…』
ハッと目を見開いたとき、
何かが切り裂かれる音がした。
急にすごい音が聞こえて、ファイはあたりを見回した。すると、雨の中でよく見えなかったものの、確かに桜の木が見えた。それは、中央に筋のように穴が開いていて、中が忌々しく光っている。一度目の旅の間、日本国で見たそれと、酷似していた。
「モコナ」
「うん、視えるよ」
どうやら、モコナにも視えているようだった。試しにファイは、近くにいたローゼンに尋ねてみる。
「あの桜の木、昔からあるんですか?」
「サクラ? なんだそれは。木? ———どこにもそんなものないが」
桜、という概念すらないようだ。それならば、あれがすべての発端といえよう。
「そうですか…、わかりました、ありがとうございます」
「なんなんだいったい。不満があるなら言えばよかろう」
「不満って…別にありませんよ、どうしてですか?」
「嘘をつけ! 今朝からずっとおかしかろう! 他の二人を連れてこなかったのもそれでか!」
「何を仰いますか、二人は来なかったんじゃなくて来られなかったんですってば」
面倒くさい。ファイはそう思った。やっと事件の片鱗が見えてきたというのにこうしつこく絡んでくる人がいれば動きづらいったらない。
「白々しい!!」
「貴方こそ今日はおかしいですけどねえ」
「何を!!」
「ファイ、もうやめよう、帰ろう! 小狼たち、心配でしょ?」
「うん、そうだね。すみませんでした、では雨も強くなってきましたし、帰りましょう?」
未だ怒りの引かないローゼンを置いて、ファイは家———ではなく、桜の方向へと急いだ。帰らないの、とモコナに聞かれるが、先に確かめないと、とファイはキッと空を睨んだ。
「…なんだよ、これっ」
くそ、と悪態をつきながら、黒鋼は自分の衣服を裂き、小狼の腕に巻き付ける。しかし、それはすぐに赤黒く染まってしまう。布から、血が滴り落ち、床を赤黒くする。それに伴って小狼の顔色が悪くなっていく。
「くっそ、なんなんだいったい…!」
歯ぎしりをしながら、ファイたちが何か手がかりを見つけて早く帰ってくることを願うほかなかった。
- Re: ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜 ( No.14 )
- 日時: 2015/03/07 20:52
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
参照100突破ありがとうございます!!
これからもよろしくお願いいたします!
- Re: ツバサ -DReaM CHRoNiCLE- 〜夢に導かれて〜 ( No.15 )
- 日時: 2015/03/08 12:35
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
Chapitre.8 非常事態
夢の中で。四月一日は、すうと目を開け、目の前に少女の後ろ姿を確認すると、そっと声をかけた。
「さくらちゃん」
少女——サクラは、呼ばれて振り向く。そして四月一日を目に留めると、たたっと駆けていく。
「小狼が…」
「うん、わかってる。今、みんな解決に向けて頑張ってるよ」
「…でも…、このままじゃ、だめなの」
サクラが涙目になって言った。四月一日がだめって、と聞き返すと、サクラが言う。
「小狼は、今、夢の中にいる。でも、——逢えないの」
「逢えない? なんで」
「わからないの。何かに、遮られてるみたいで。小狼自身が出てくるのを待つしかないかも…」
「…」
四月一日は驚きで声も出なかった。こちらからは手を出せない、ということなのか。サクラは不安らしく、俯いている。そんな彼女に、四月一日は優しく声をかける。
「大丈夫、彼らは強いから。できるだけのことはしよう。そして、信じて待とう」
「…はい」
サクラは微笑んだ。しかし、その顔から不安がなくなることはなかった。
小狼の左腕から、血が滴り落ちる。彼は、その腕を無事な右手で押さえて息を荒げている。なぜか血が止まらない。
「…っ、なん、で」
目の前では、桜の木がおどろおどろしい雰囲気を纏い、暴れている。あの木の枝に、腕を裂かれたのだ。しかし、あの桜は…
「何か、悪いモノに憑かれているな…」
本来の姿ではない、そう思った。そして今、剣を片手にどうにかしようと思っているのだが、血が止まらないせいで、酷い眩暈と、魔力が吸い取られていくのを感じる。思うように動けないのだ。
「…っ」
下を見ると、滴り落ちた血が、桜の根に吸い込まれて消えていくのが見えた。それに伴って、桜の闇も深くなっていく。
「…っはぁ、くそっ…」
あの妖しいモノに、魔力を吸い取られているようである。意識が朦朧としてくるのを感じる。しかしここで意識を失ってしまえば、二度と戻ってこられないのは目に見えている。どうにかしてここから出なければならない。
「…どう、する…っ!?」
雨の中。ファイとモコナは桜の木の前にいた。それに入っている大きな亀裂からは、膨大な闇の魔力が感じられた。しかし、どこか懐かしみがある…これは…
「小狼の感じがするよ、ちょっとだけど」
「うん…、どうやら、四月一日君の予想は当たったみたいだね」
というのは、小狼が夢に囚われている、ということだ。しかも、事態は相当悪いらしい。
「確認はとれたね。黒様に報告しないと」
『非常事態、非常事態!!』
そのとき、国中に警告音が響き渡った。何事か、とファイが振り返ると、警告音は、こう続いた。
『街中に、魔神出現!! 住民はすぐに郊外へ避難せよ!!』