二次創作小説(紙ほか)

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自己満足で書く
日時: 2017/03/19 00:00
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)


 どうもおはこんばんにちはぜんざいです。

 ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。

 ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
 アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。

 しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。

では。☆(∀´)ゝシ

Re: 自己満足で書く ( No.34 )
日時: 2017/10/23 00:18
名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)



 あれからいくばくかの時が過ぎている。白雄たち? 白雄たちはしっかりと俺の事実を受け止めてこれからも友人でいてくれるそうだ。時に、出発だと言うのに最後まで俺の服を掴んで離さなかったのが紅炎で、「次に会うときは絶対に瞬動術とやらを教えてください」と頼み込んできた。いつ会えるかも知らないし、俺はその時この世界にいないかも知れないが、とりあえず約束はしてやった。だって約束するまで離さねぇみたいな顔してたからな。紅明は去り際、「また一緒鳩の餌やりしたいです」と微笑んでいた。
 俺は現在、瞬動をフル活用してパルテビアという国のとある村に泊まらせてもらっていた。
 ことの発端は旅の途中、小さな子供たちが奴隷商人なるものに強引につれていかれそうになっていたところを目撃したからである。恐らくその辺で遊んでいたのだろう、大人としてクズか。
 助けに入ろうとした瞬間、12.3歳の菫色の髪をした少年が既に助けに入っていた。しかし、少年も大人には負けるのか、もうやられそうである。いや、ほら、見てらんなかった訳で。



『おーっす、おっさんたち何やってんだ?』



 思わず瞬動で幼い子供を背に守ろうとしていた少年の前に降り立つ。彼らにも背後の子供たちにも瞬間移動でもしたかのように見えたろうが違うわけで。そこんとこはまあ置いといて。
 俺は振り返って子供たちの頭を撫でて大丈夫か、と声を掛ける。困惑ぎみだが頷いてくれた。



『怖かったろ、紫のお前もよくやったなー』



 菫色の少年を撫でくり回していると奴隷商人たちが逆上したらしい。なにか騒ぎ出して武器を取り出す音さえ聞こえてきた。子供たちに笑みを浮かべてから黒棒を預けてそいつらに向き直り、吠えた。



『よってたかってガキいじめて楽しいか三下が!』



 そのあと? 俺の圧倒的勝利。いつぞやの盗賊のようにぼっこぼこのふるぼっこだ。とりあえずぺぺっと縄で拘束してからもう放置。
 そんなこんなで菫色の髪をした少年に感謝を述べられ、お礼と言うことで数日泊まらせてもらうことになった次第だ。
 菫色の髪をした少年は『シンドバッド』と言うらしい。菫色の髪に金の瞳が特徴的だ。年は12、そしてどうやら紅炎のように俺の瞬動に興味を持ったようで、教えてくれよ刀太さんと好奇心旺盛だ。もう12だし、と泊めてもらえた小さなお礼も兼ねてちょこちょこシンドバッドに瞬動術を教えている。まあ、気を使えないみたいだからまだまだ本格的なことはさきのばしだが。彼の母親のエスラさんは体調が優れないらしく、シンドバッドは薬代を稼ぐために働いているとのこと。



「刀太さん……これ、難しくないか……?」
『こういうのはちょっとした切っ掛けとか、才能だからなー。シンは見込みあっからすぐ使えるようになるだろーな』
「本当か!?」
『おう! 俺に瞬動術教えてくれた人はなー<大地を掴め、世界を掴め>って言ってたぜ!』
「なんだそりゃ! 言ってることでけぇな!」
『俺も最初はそう思ったわー』



 兎に角、見込みがあると言われてうわーい、と手放しで喜ぶシンドバッドの頭を撫でた。こうしてみると弟が出来たようで少しむず痒いもんだなあ……。


 シンドバッドやエスラさん、村の方々に見送られて俺は数日後にそのティソン村を出た。シンドバッドは最後まで瞬動術を教えきるまで居てくれと言われたが何年かかるかわかりゃしない。旅先でまた会えたら教えてやることを約束して、俺は別れも早々に、後ろ髪を引かれる思いで歩き出した。
 どうしてか、シンドバッドはまた会えると確信が持てている。どうしてかは全然わかりゃしないのだが。


 その数年後、俺はシンドバッドが迷宮攻略者とか冒険家とか商会当主とかの噂を耳にし、シンドバッドの冒険書を読んで驚愕したのは言うまでもない。



Re: 自己満足で書く ( No.35 )
日時: 2017/10/24 00:52
名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)

また新しいの。ネギま!→マギのトリップ。
 オリ主は男。設定は葉っぱで書いてたのどか落ちの女子中等部3-A所属の鋼級の理性を持つ『麻帆良の堅物』の少年。
 のどかとくっついた設定で。
 (ネギま!の)原作の最終話にあった七年後の同窓会の数日後にトリップ。オリジナルのジンが登場します。ミシャンドラごめんね。


『緋影 伊織(あかかげ いおり)』(22)

 旧世界、所謂現実世界(つまるところ魔法世界の人間ではなく普通の人間)出身。身体炎化能力者(事情が複雑)で愛刀は刃が真紅、みね等の斬れない部分は漆黒の『紅丸くれないまる』。父を殺したあと、倉庫から目利きして引っ張り出してきた一級品。
 表向きは男女共学テスト生として女子中等部に強引に入学させられた彼だが、本来の理由として実力が当時からエヴァ級だったので監視のため。学園長はあわよくば木乃香の護衛をしてくれたらなって理由。
 伊織の父は『紅き翼』構成メンバーの一人でナギにも並ぶ実力者の『緋影 稲荷(あかかげ いなり)』。強さを追い求めるあまり、今の自分よりさらに強い二代目の自分を造ろうとし、長男であった当時五歳の伊織に『鳳凰』『朱雀』『フェニックス』の魔力と魂の塊を注ぎ込んだ。背中の大火傷は神獣三体を注ぎ込むための入り口とされたらしい。その過程でたくさんの人間がその実験の犠牲になる。魔法世界にて真実を知っていくなかで一人っ子だと思っていた伊織はその過程の中に顔も見たことがなく、存在すら認知していなかった兄弟がいたようだ。
 当時五歳の伊織は体内で父に対する憎しみで暴れまわる神獣三体の魂や記憶、魔力に自我を消し飛ばされそうになるも、それらすべてを抑え込み消し飛ばし魔力と技術と神獣三体のこれまでの経験すら自らのものとした。のち、フェニックスの影響で魔法世界にてラカンとの修行中不老不死となる。
 はねた短い黒髪に深紅の瞳の切れ長の目。3-Aに身を置くだけあって整った容姿をしている。基本無表情だが、かなり紳士的な性格をしており、またダイヤモンドよりも硬い理性を保有しているため、『麻帆良の堅物』と呼ばれている。3-Aはネギには大胆な行動を起こすも、伊織は寡黙な同級生で落ち着いた雰囲気を晒しているからか、おおっぴろげなアピールはないものの水面下で静かに激しく戦闘を行っていることも屡々。彼の非常に硬い理性のせいで女子中等部に放り込まれたことは否めない。
 神楽坂と雪広の二人とは小学一年からずっと同じクラスで幼馴染みといっていい。二人の喧嘩を仲裁するのはほとんど伊織。もはやお馴染みの光景となりつつあった。
 神楽坂を素直な良い子と評価しており、ネギと同じように信頼している。が、時々攻撃される理由は分かっていない。雪広に関しては最早何を言い出すか予想もついていない。毎年雪広の弟の誕生日であり命日には雪広邸にやって来る。
 ネギに関しては一応目上なので『ネギ先生』や敬語を使うも、信頼し弟のように思っている。唯一の同性だからだろうか。ネギからの信頼も厚く、兄のように慕われている。
 のどかに対してはちゃんと異性として好意を寄せている。のどかは唯一自分に告白してくれた女子であり、その存在は伊織の中でかなり大きく、3-Aでも群を抜いて大切に想っているのだ。彼女に関しては、それ以外の女子には鉄壁だった鋼の理性をほっぽりだしそうになっているが。そのたび毎回必死に思い止まっている。
 容姿もよく性格や態度も良いのでモテるのだが、伊織自身基本クールであり、3-Aのメンバーの妨害もあったりして未だ告白されたことのある女の子はのどかのみ。
 名前で呼ぶ人物として、女子は雪広あやかと宮崎のどかの二人とネギ・スプリングフィールド、犬上小太郎、タカミチ・T・高畑等の男性が挙げられる。他に呼び方が異なるのはエヴァを指す『エヴァ嬢』と木乃香を指す『お嬢』。
 成績、身体能力共に自らのものとして取り込んだ神獣だった者の知識と経験と副産物のお陰で割りと良い。剣術は我流と神鳴流の斬魔剣弐の太刀(詠春から技を見て盗んだ)のみ。
 才能は多彩。
 右耳にピアス、右の人差し指と中指にエヴァとクウネルからのただの装飾の指輪と、左の指に結婚指輪。

**


 どこだここ。気が付いたら俺は砂漠に立っていて、ぽつんと広大な砂の上に俺は、いた。



『……は……?』



 よし待て一旦落ち着け緋影伊織、そう、落ち着くんだ俺。クールになれ俺。さっきまでのことを思い出せ。確か俺はネギせんせ……もう担任じゃないから先生って要らないんだったか? まあいい、世界を救った英雄の仲間としてネギくんに連立つ様に魔法世界現実世界の要人や政府をあやかのネギくんとのアーティファクト使って神楽坂やフェイト、小太郎、俺が連れてきたのどかと文字通り飛び回って会談していたはずだ。
 それがいったいなにがどうしてこうなった。そもそも、この世界の気が現実世界の地球とも魔法世界の火星とも魔界の金星とも違うってどういうことだ説明しろ。
 そんな俺らしくない下らない現実逃避はとっととやめて、そろそろここを三つの世界とは違う異世界だと決めていいだろう。上記三つの星は気が違うといっても一貫性は感じるがここは全然感じない。確定して良さそうだ。

 とりあえず俺は、目の前にそびえ立つ立派な建築物に目をやった。中に人はいるのだろうか。いや、居ないだろうな。気配はない。そもそもオアシスでもなんでもないここに建築物があるのがおかしい。
 まあ動かないことには始まらないのだが。俺は物をストックする魔法陣を手のそばに出現させ、その陣から出てくる紅丸を手に入り口へと続く階段を登った。



『……転移ゲート、か?』



 まじまじと不思議な色をするそれを見つめてから、不用意に手を突っ込むと引きずられるようにして俺はその中に吸い込まれた。体がバラバラになりそうな激痛が身体を襲うも、それも一瞬、赤い世界が見えたと思ったら暗転。目を覚ますと八芒星の陣の上にねっころがっており、目を白黒させる。



『……マジか』



 好奇心なんて俺らしくないことするんじゃなかった。まったくもって理解不明、どうなってるんだ。まあ、いいか。もうこんなトンデモ展開は中三の夏休みで慣れた。
 一本道を進んでいくと、美しい自然の光景を目にするも感じとれる気は複数。何十何百だ。



『……突っ切るか』



 まあそれ一択だろう。気持ちの悪いスライムとか、途中ドラゴンなんかも居たけど龍樹に比べたらなんてことない。そのすべてを一刀両断しながら俺は怒涛のスピードで最深部へとたどりつき、最後の扉を紅丸で叩き斬り奥へと進むと、なんとまあ。



『……とんでもない気だな』



 中央のランプ。そこから圧倒的な存在感が放たれ、主張している。俺が目覚めた場所にあった八芒星も輝いていた。なんとなくそれに触れると、周囲のガラクタだと思っていた物は金の光を放ち、売れば大層金になるであろうものになる。……まあ、例に漏れずまったく興味が持てないわけだが。
 そして目の前に現れたのは、青い巨人。……え、どこの千年一夜物語だよ?
 厳格な雰囲気を纏わせながら現れた美形の男の青い巨人はどうしてか俺に頭を下げながら名乗った。いったい全体どういうことだ、俺にもわかるように説明してくれ。



「我が名は創造と破壊のジン、ヴァルシア。王になるのは貴方様でございますか」
『……え、』



 王って、なんなんだ。



Re: 自己満足で書く ( No.36 )
日時: 2017/10/24 23:51
名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)


 とにもかくにも、俺の右の中指の指輪に八芒星を刻んだヴァルシアの話によると、王とは王の器となりえる人物を差し、金属器の力は王の力と言われるようだ。
 詳しいことを知るつもりのない俺は金属器の使い方だけを教えてもらう。武器化魔装に全身魔装、極大魔法……とりあえず試した。
 武器化魔装の時、俺の腕は白と青の奔流の模様を浮かばせ、指輪は同系統の色の細身の斧となる。白青の色の雷を纏う斧は『千の雷』と同クラスの威力を保有していた。確かに、王の力と言うだけあってお手軽だな。
 さくさく行こう。次、全身魔装。やってみた感じ、見た目は違うが能力的にもろ『雷天双壮』だわ。なんだこのネギくんとの被り率。ほぼ最強かよ。伸びた髪は薄い青白い光を纏うようにその色へと変わり、服装は大分露出を含んだものへ変化する。青白い袴と、襦拌や着物は身に付けておらず、半裸の上半身に紺の羽織を肩に乗せているだけだ。ぱりぱりと電気が空気をしびれさせるなか、伊織は魔装を解き、ヴァルシアに要求を言い付ける。



『……終わったなら出させてくれ』
「落ち着き払っておられるな、神よ」
『俺は神じゃない』



 コイツの丁寧な口調は俺の神気ゆえらしい。普通はもっと高圧的なんだとか。この世界じゃ迷宮攻略者、すなわち金属器使いに魔法使いはなれないようだが、どうやら俺はいろいろ規格外らしく影響されないようだ。それはそれでどうかとも思わなくないが、まあいい。
 瞬きの次に見たのは第73迷宮ヴァルシアに入る前の広大な砂漠だった。



**


 とりあえず人里を探そうと砂漠を歩き回ってキャラバンの護衛をして大金をいただくと言う生活を繰り返して数ヵ月。俺はなぜか空のように青い髪を持つ少年、アラジンと紅連の髪の少女、モルジアナと共に『バルバット』と言う国を目指していた。
 成り行きと言う成り行きはない。一人砂漠をばさばさ歩いていると二人が寄ってきてこんにちはと挨拶されたから挨拶を返しただけのこと。なんと二人だけでそのバルバットと言う国を目指しているようだ。行く宛のなかった俺もそれに同行を願うと二人して快く受け入れてくれた。アラジン曰く「お兄さんのルフはとても誠実だったからね」らしい。ルフってなんだ。ただそれだけのことだった。
 どうやらアラジンとモルジアナはバルバットにいるアリババに会いに行くらしい。アラジンにとって初めての友達、モルジアナにとってアラジンと同じ、自分を奴隷から解放してくれた恩人として。モルジアナに関しては故郷に帰るためにバルバットから船に乗るようだ。



「私に、自由な未来を与えてくれて本当に感謝しています。ありがとうアラジン」



 お礼を表すように土下座したモルジアナをアラジンは慌ててなだめる。なんだか微笑ましい。麻帆良の奴等はこんなに落ち着いてなんて居ないからな。アラジンもモルジアナもいいこだ。
 どうやら二人にとってアリババとは、大切な存在らしい。



『……俺も、会ってみたくなった。君たちの言う、そのアリババくんに』
「! もちろんさ伊織お兄さん! 僕の友達だよって紹介してあげるよ!」
「はい。……とても、いい人です」
『そうか……楽しみだな』



 二人の笑顔にほっこりしながら、楽しみを胸に抱えて歩み出す。しかし、その歩みはすぐに止まった。
 目の前に、葉っぱ一枚しか身に付けていない変態が現れたからだ。見事に立っているアホ毛と、人の良さそうな笑みを浮かべた、太い眉が凛々しく整った容姿の男は俺たちの行く道を阻むように仁王立ちで両手を広げている。鍛え抜かれたその肉体美は素晴らしいものだが、子供たちの目には些か毒だ。なんで葉っぱ一枚なんだ。



「やあ! 今日はいい天気だね!」



 なんか喋ったぞ今。表情をあまり変えないモルジアナですら目と口を開けて唖然、アラジンは目を見開き呆然とした様子で眉間に皺を寄せている。かくいう俺は向こうじゃ風花武装解除のやネギくんのくしゃみのせいでこんなのよく見る光景だ。一人平然としている。



「モルさん危ない!! 下がって!!」



 モンスターかも知れない! と見せてもらったアラジンの友達、ウーゴくんの入った八鋩星の模様のある笛を手にモルジアナを下がらせる。正しく懸命な判断だ。えらい。
 相手は相手で危険物扱いされるとは思ってなかったのか、本気で驚愕していた。
 今にもウーゴくんを呼び出しそうなアラジンとおろおろしてる暫定変態男の間にこれはいけないと体を滑り込ませる。



『待て待てアラジン。いきなり笛なんか持ち出してどうする気だ』
「伊織お兄さん! モンスターだよ! 危険かもしれないんだ!」
『俺にはモンスターも危険物も見えてないから安心しろ、な? 一旦落ち着け』



 しゃがみこんでぽむぽむとターバンの巻かれたアラジンの頭を撫でて一旦落ち着かせた。モルジアナの頭も撫でてからどうするか悩んだ挙げ句ひとつの結論に至り、男の横を通りすぎて二人の背中を後ろから押す。



『さあ行こうアラジンくん、モルジアナちゃん。俺たちは何も見ちゃいないんだ、そう、俺たちは蜃気楼を見ただけだ。幻覚だ、一切合財全くもって気にすることはないぞ』
「おい!? 待て、無かったことにする気か!? 明らかに目が合っただろう!」



 結局「話を聞いてくれ!」とすがりつかれた俺たちは男の話を聞くことにした。
 見るに耐えなかった訳で、俺はとりあえずストック用の魔法陣から俺の着替えを取り出して男に貸した。身長似通ってたし、サイズが合ってよかった……。



「服を貸してくれてありがとう、伊織」
『いえ、気にしないでください。サイズが合ってよかったです』



 男の名は『シン』、商人をやっているらしい。バルバットへ向かう途中身ぐるみ剥がされたようだ。



「そっか……さっきは話も聞かずに疑ってごめんよおじさん」
『(おじさん……)』
「どうも僕は砂漠越えのせいで、危険なものに敏感になっているようだよ……」



 ほう、その年で砂漠を越えたのかい? と興味を持ったシンさんにアラジンは黄牙がどうとか中央砂漠を越えたとか見たことのない生き物や植物を見たらしい。うちにもわりととんでもない生き物や植物居るよな。魔物とか。


「そうか! いいねぇ……俺はそういう冒険潭が大好きだよ。未知なる土地や知識に出会うあの高揚感はなにものにも代えがたいね。道を切り開くことで生まれる自信、経験、大切な仲間たちとの命懸けの絆……それらを折り重ねて自分だけの壮大なストーリーを作り上げる快感! いいねぇ冒険は。冒険は……男のロマンだよ!」



 その言葉と風格に俺は人知れず視線を鋭くした。このシンと言う男、ただ者ではない。商人にしては肉体が鍛え抜かれ過ぎているし、そもそも商人は冒険をしたことがあるような口ぶりはしないはずだ。滅多な機会がない限りそういう言葉はきっとでない。そして妙に語りなれている。この男、何か隠してるな。
 そしてロマンと言っちゃいるが、俺が体験した冒険は文字通り命の駆け引きがあった。作戦が成功しなければ世界が滅びる。そんな精神をすり減らすような冒険だ。世界の命運を肩に乗せた冒険。果たしてそれをロマンと言い切りこうして語れるか。否、俺は無理だ。朝倉辺りがやってくれるだろう。語らないだけで俺は記憶を見せてやれるからそれで終わりだ。

 冒険潭もそこそこに俺たちはバルバットを目指して歩き出した。歩く途中、アラジンくんとシンさんが服を取り出したときのあれはなんだと聞かれたので魔法だと返しておいた。
 わいわいと会話を楽しみながら、俺たちは丘の上へ出た。眼下に広がるはうちの麻帆良学園都市よりも小さいかもしれない国とは言いがたい小さな国。しかし、周辺の島国さえ国の領土としているらしく大海洋国家のようだ。ここは代々サルージャ一族と言う王族が納めてきた国だと言う。シンさん詳しい。



「しかし、先王が倒れてからと言うもの。国が乱れているようだね」



 壁には王政打破と連ねられており、どうにも不穏な空気が漂っている。しかし、次の瞬間にはシンさんは「ここなら安全だよ」と豪華な建物を背に主張した。



「俺もいつも泊まっている国一番の高級ホテル!」



 助けてくれたお礼にと金はシンさんが出すらしく、何泊してもオーケーと言われてアラジンとモルジアナはホッとしている。しかし、俺はそれを丁重に断った。



「えっ、どうしてだい?」
『金がかなり貯まってて。そろそろ散財しないと持ち歩けそうにないからです』
「えぇ…わかった。ただし、足りなくなったら言うといい」
『ありがとうございます』



 シンさんの瞳の奥が失敗したか、と言ったように気落ちしたような気がして、あぁコイツはやっぱりただ者ではないなと確信した。



Re: 自己満足で書く ( No.37 )
日時: 2017/10/26 00:47
名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)



 シンさんを迎えに来たらしいクーフィーヤを被った青年がやって来たことで、とりあえず服は後日返却ということで一旦シンさんやアラジンらと別れる。
 チェックインを済ませ、案内された部屋に入るとそこはふっかふかのベッドの置かれた広いゴージャスな部屋。ベッドなんてこの世界に来てから使ってないぞやっほい。
 荷物をそこに置いてから、感動に浸るのもそこそこに、外で警戒しすぎていた体の力を抜くとすぐに睡魔は俺を襲う。どうやら気を張りすぎたらしい。のどかとあやかのアーティファクトカードがあるのに数時間前に気付いたのに、まぁ起きたときに念話を試してみようか。


**

 目を覚ますともう昼頃、とりあえず着替えでもするかとネクタイを外し、コートとベストとワイシャツ、黒のTシャツを脱いで右の太股の装飾金属を取り外しベルトに手を掛けた時だった。



「伊織お兄さーん! おじさんがお昼ご飯食べようって言ってたよー!」
「お誘いに来ました、伊織さん」



 バンッとノックも無しに開かれたドアから姿を現したのはアラジンとモルジアナ。俺は驚きに目を見開いて二人を凝視しながら、視線が背中の大火傷の痕に注がれているのを見て、至って普通に黒のTシャツを再び着る。ワイシャツはもう一回着るのは面倒だった。



『そうか……飯時か』
「う、うん……」



 平然としている俺に困惑したのかアラジンとモルジアナは視線を背けるが、俺は二人に行かないのかと催促する。
 気を取り直したらしい二人は「そうですね……」「僕、お腹空いちゃったなー」と歩き出した俺の横に並んだ。
 外に出て、着替えたらしいシンさんの手招きに呼び寄せられて席につくと、美味しそうな匂いをさせる魚の料理がドンと出された。



「うわあああ!」
「これぞバルバッド名物、エウメラ鯛のバター焼きだ!」



 じゅるりと涎を垂らすアラジンと興味津々なモルジアナにシンさんは腕を組んで快活に笑う。俺はそれを一歩引いたところで微笑ましく見ていた。シンさんの後ろに控えるクーフィーヤの青年とモルジアナと同じ目付きと髪の色を持つ青年に控えめに頭を下げると各々の反応を返してくれた。いい人だ。
 シンさん曰くエウメラ鯛はバルバッド周辺にしか生息していない珍魚らしく、鯛の癖に骨まで柔らかく、香草と併せて丸ごと食べると絶品とのこと。早速取り分けた分をすごい勢いで食べ始める二人に苦笑いを浮かべて、俺も一口頂く。四葉の料理と比べるつもりもないが、美味しい。とにかく柔らかいのに味があふれでるようだ。素直にうまい。
 「旅した土地でうまい料理に出会う、いいねえ、冒険の醍醐味だね!」といい笑顔で言い切るシンさんに少なからず確かにと思った俺は悪くないはずだ。実際、魔法世界の食べ物も美味しかった。



「……おや、伊織くん。ずいぶんとラフな格好だね」
『あ、はい、すみません。さっきまで寝てて、着替え途中に二人が乱入してきまして。とりあえず下は脱いでなくて良かったです、シンさんの二の舞は嫌なんで』
「……酷くないか?」
「ご、ごめんよ伊織お兄さん」
「すみません……」
『いや、慣れてるから構わない。少なくとも、子供が気にすることじゃない。それに、ちゃんと謝れてるだろ、十分だ。うちは気にするどころか全部脱がしにかかって来るからな、怪我をさせないように避けるのも大変だ』



 うちの女連中も二人を見習ってほしいよ、と遠い目をして呟けば、その場にいたほとんどが苦労してるんだなって視線を寄越してきた。ひどい。



「そ、そう言えば部下の紹介がまだだったな! 部下のジャーファルとマスルールだ。
 モルジアナ、マスルールはな、「ファナリス」なのだよ」



 はて、ファナリスとは一体。同じ民族だとはわかるが、モルジアナがそこまで驚愕していることに驚きを隠せない。忘れ去られた民族的なあれか? あれ、もしかしてファナリスがわからないの俺だけなのか。え? 確かにシンさんの言う通り目元わりと似てるけど。
 小さくどうもと挨拶を交わすファナリスとやらに、アラジンはマスルールに果敢に僕はアラジンだよと手を握る。反対の手にはモルジアナの掌が握られていた。いい子だなあ。



「……で、どうするのです? 道具のない今の貴方には、今朝の無茶な約束は果たせないのでは?」
「……なんとかなるさ?」
「おい」



 なんて無責任な商人だこの男。そもそも、ジャーファルさんは俺が居ることに気付いているのだろうか。いやいい、こちらに来てからめっきり影が薄くなったように感じるのさ、いいんだ、あれ、おかしいな、火の元なのに俺の影が薄いような。
 どうやらシンさんは右も左もわからなかった商人時代、この国の先王と友好と言うか恩が有るらしく、この国を戦火に沈めたりしないと格好つけた。
 とりあえず、アラジンがシンさんの座る後ろでウーゴくんの腕を出現させ、ジャーファルさんが驚きで吹き出す。俺はもう慣れた。「オワー!」と叫ぶシンさんうるさいです。
 ウーゴくんを触るシンさんはマギとか他のマギに会ったことが有るとか言ってるが、そもそもマギってなんなんだ。そしてそんなマギ全員にあったことのあるシンさんは何者なんだ。



「……おじさんって、一体何者なの?」



 アラジンが俺の心を代弁する。シンさんはマギなら明かそう、と今まで隠していて悪かったね、と謝罪する。やっぱり隠してやがったかこんこんちきめ。



「俺は……『シンドバッド』さ」



 さて、ここで問題が起きた。俺とアラジンは目を見開いてドヤ顔するシンドバッドさんを見つめる。誰だ、と呟いたのは俺だったか。



「しっ、知らないの?」
「どこかで聞いた……ような気はするよ……? わすれちゃった……」
「!? 思い出してごらんよ!! 『シンドバッド』の伝説を……ほら! ほら! ね!」
『すみません初耳です』
「なんだって!?」



 俺たちの反応に驚愕した様子のシンドバッドさん。後ろのジャーファルさんとマスルールさんに目を向けると、二人もわりと驚いてた。



「幾重にも航海を重ね、世界中七つの海を全てを冒険した男! 世界中数々の迷宮を攻略し、自らの国を打ち立てた、攻略した迷宮の数もなんと七つ!! 七人のジンの王! 七海の覇王。
それがシンドバッドだよ」



 アラジンがす、すごい!と呟くもよくわからないけどと付け足した言葉にシンドバッドさんはマギなのに!? とずっこける。アラジンは最近になって迷宮を知ったらしく、まぁそうかと頷くとシンドバッドさんはバッと俺を見た。



「……伊織くんは、全然驚かないな……」
『まあ薄々は。王様とは知りませんでしたが、商人にしては鍛えられた筋肉に無駄が有りませんでしたし、雰囲気とか、ただ者ではないなと実は警戒してました、すみません。普通の商人は滅多なことがない限り冒険なんてしませんし』
「ほお、鋭いな。謝ることはないさ……でも、迷宮を七つも攻略してるんだからちょっとは驚いてくれていいだろう……」
『そこはまあ、俺もシンドバッドさんと同じ『複数迷宮攻略者』なので』



 そう言うとシンドバッドさんだけでなく、アラジンたちまで驚きを表した。
 そう、俺は数ヵ月の間でヴァルシアの他にも迷宮を攻略していたのだ。



「ちなみに聞くが……幾つだい?」
『13です』
「13!?」



 金属器は!? と詰め寄られたので右の中指の指輪と人差し指の指輪、左耳のピアスを机に置き、ストック用の魔法陣からがしゃがしゃと斧やら槍やらの武器を10個取り出す。唖然とするシンドバッドさんから目を逸らしてもういいですかと聞くと、ああとちょっと呆然自失気味の声が聞こえたのでそそくさとストック用の魔法陣に直し、アクセサリーを身に付ける。
 薬指の指輪は? と聞かれたので結婚指輪なので入れさせませんでしたと言うとまた結婚してるのかと驚かれた。うるせえ。



Re: 自己満足で書く ( No.38 )
日時: 2017/10/29 01:57
名前: マメツキ (ID: QJD7iA8Z)


 結婚してたのか、おめでとうとシンドバッドさんに言われ素直に感謝をのべたあと、アラジンがマギはなんなんだと問う。もちろん、その間俺は聞く耳を持たずジッとのどかのカードを見つめていたわけだが。
 困った、これ、念話通じるといいけど、通じなかった時が最後だよな。連絡手段はゼロにちかしい。ネギくんなら持ち前の頭脳と才能と力業で何とかしてくれる気もするっちゃするが、五つも年がしたの子に任せるのもどうかと思うのだ。
 不意に意識をシンドバッドさんたちに戻すと、彼はアラジンに頼み事をしようとしているらしい。



「実は今、とある戦いを控えているのだが……とある事情で、金属器が今、ひとつもないんだ」



 絶句した。いい顔で言い切ったシンドバッドさんに絶句した。心底シンドバッドさんを見下した冷たい目で見るジャーファルさんの「七つ全部盗まれたんですけどね」と言う言葉にさらに絶句した。こんな大人にだけはなりたくないな……ああ、俺もう大人だわ。
 二の句が告げない俺を気にせず、シンドバッドさん__もうめんどくさいからシンさんでいいや__は、「伊織くんにも聞いてほしい」と神妙な顔をして呼び寄せる。嫁や向こうの世界にトリップした意識は一気にこちらへ引き寄せられた。



「君たちの力を貸してくれないか?」



 シンさん達曰く、今バルバッドを騒がせている義賊『霧の団』を捕まえるらしい。それに異を唱えたのはジャーファルさんだった。主のことはちゃんと叱っていい関係を築き、主の言葉にちゃんと耳を傾けて言うことを聞く従者の鏡のような人だと思っていた分、意外だった。



「何言ってるんですか!? 伊織くんならともかく、こんな小さな子供にそんなことをさせていいワケがないでしょう!? 年端のいかない子供に、危険なことをさせるワケにはいきません!」



 なるほど。前半は単に子供好きが祟って庇っただけか。子供想いの好い人だ。子持ちになればその子供は真っ直ぐ賢く育つだろう。
 しかし。



「……年齢は関係ないだろう? 一番肝心なのは、盗賊に相対する力があるかないかだ。アラジンはマギなのだ、見ての通り……常識を越えた強大な力を持っている。子供であると同時に、その辺の大人よりもずっと強い一人の人間なんだよ。俺とて初めて迷宮を攻略したのは14の時だ。大人が一万人以上死んだ迷宮だったそうだ。以来、繰り返した幾度の航海、冒険、死地での戦いで武器になったのは生きた年数ではなかった。必要なのは能力、未知の世界に挑み、選ばれる、他者よりも優れた能力! 伊織くんもそう思わないかい?」



 突然話を振られたことに驚きはしたが、思っていたことと大差はない。のどかの絵が描かれた方をしたに向け、カードを伏せてから口を開く。



『確かに、俺もガキの頃に紅丸を持ちました。そうせざるを得なかったので。大勢が死んだ中で俺は気も狂わさず耐えて力を手に入れた、それが当時5歳の時です。もちろん、シンドバッドさんは生きた年数より能力だ、とは言ってますが例外はあるでしょう。それこそ俺の師匠のように。50年やそこらなら楽に俺でもやってしまえますが、約600年を生きると違ってくるきますからね。普通の人間はそこまでは絶対生きれない。
 結局ながったらしく語りましたが、最終的に力さえあれば年なんてあってないようなもんなんです。極論で言ってしまえば、の話ですが』



 要は望んでない力でも持ってしまえば自分の力。それを使うのに年なんか伊見ないと言うことだ。
 視界の端でシンさんが満足げに頷いた。



「彼にはそれが備わっている、お前にもそれがわかるだろう?」



 理解出来てしまったジャーファルさんは微妙な顔で俺たちを見つめる。
 無論、俺はやっても良いと思っている。『シンドバッド王』に力を貸すと言うことは、“一国の王”に貸しを作れると言うことだからな。大きなコネを手に入れられる、それだけでも大きな利益だ。
 そういうウマをシンさんたちに告げると「強かだな、君は」とシンさん、ジャーファルさん共々苦笑いされた。いやいや、こればっかりは仕方がないだろう。



『……今の俺には後ろ楯が何もありませんからね、保険は掛けておくに越したことはないでしょう。一応こういうことも見越してホテル代も受け取ってませんし』
「先を見据えていると言うか、なんと言うか……」
『これぐらいしないとやってられませんよ、この世界は』
「それもそうだ!」




 はははと笑うシンさんを横目に、俺の話を聞いたらしいモルジアナもやると言った。アリババを探すのに国の力を借りられるかも知れない、と。頭のいい子だ。
 結果、シンさんが国王に掛け合って国中を探す、それプラスモルジアナの暗黒大陸行きの船の用意までしてやるらしい。お人好しと言うかなんと言うか、裏があるのではないかと疑ってしまうところ、俺はあちらの世界に毒されているようだ。



「そうか! ではアラジン、伊織! 早速作戦を練ろう!」
「うん!」
『はい』
「そしてモルジアナ!」



 君は宿で待っていてくれ!
 その言葉にモルジアナは固まった。それもそうだろう、意気揚々とモルジアナも歩き出したのである。驚くのも無理はない。



「……!? あの…私も戦います……」
「いやいや、いくらファナリスでも女の子は戦わせらんないよ。ここは男の俺たちに任せて部屋で待っていてくれ! なっ!」



 シンさんは気付いていないのだろうか、それ、戦う女の子に一番言っちゃいけない言葉だ。ネギくんが神楽坂にそういう風に告げて大喧嘩したのを見たことがある。女だから、無関係だから下がっていろ。侮辱にも等しいぞそれ。
 案の定モルジアナは踏み出した足で地面をメシャアと踏みつけ亀裂が走る。シンさんはいきなりのことで真っ青だ。
 アラジン曰く。



「モルさん強いんだよ、この間も、そこの採石場砦の盗賊団を一人で壊滅させたもの。僕、捕まってたところを助けてもらったんだ!」
「えっ!? マギが捕まった盗賊団を一人で!? ……ファナリスってつよいんだね……」
『採石場砦のうんぬんかんぬんは初耳だが、……シンさん、年齢は関係無いっつっといてそれはないだろ…性別差別とか最低だ……』
「えっ!? 伊織の中ってすごくシビアだな!?」




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