二次創作小説(紙ほか)

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自己満足で書く
日時: 2017/03/19 00:00
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)


 どうもおはこんばんにちはぜんざいです。

 ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。

 ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
 アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。

 しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。

では。☆(∀´)ゝシ

Re: 自己満足で書く ( No.29 )
日時: 2017/09/12 23:25
名前: マメツキ (ID: 9wv.1jV8)


 そんなこんなでまぁいろいろありました。ええ、ありましたよこの十年間。ここからはダイジェストになりますが、シンドバッドすごいやべえとしか言えないとは何事。はい、ダイジェスト終わり。はい嘘です。虫食いでお伝えしよう。
 結果として、アバレイッカクはシンドバッドがやってしまった。のちイムチャックにつき、宴を行うも不満に思った兄が実力試しとして迷宮へ。助けるために向かうシンドバッドと共に行こうとすれば断られ、ジンが有ることを説明するとすんなりだった。無事帰れたよ。ドラグルとやらが二階級特進で死亡扱いが発覚したがもういいやお前ら濃いよ、内容が。ドラグルたちとはお別れして、道中ジャーファル(お命頂戴してきた暗殺者)やヒナホホ、ヒナホホの嫁さんルルムらと共に旅して、レームで出払ったジャーファルたちを気にしながらもバルバット国王と友好持って商会をシンドバッドと二人で立ち上げ、大きくして。のちのち騎士王の息子等々たくさん仲間が増えた。女系民族国家のアルテミュラの時はヒナホホ以外のシンドバッドらは全裸に剥かれて谷に突き落とされとった時は流石に肝冷えたわあ。その時こっちはというと女王様に気に入られ抱き締められていました。助けにいけんかったんや……。数日経った夜にジンを取り返しに来たシンドバッドに『俺の恋人』と称して助け出されたのは不服だが助かった。半幽閉されてたんやからな……。ピスティ可愛かった。
 流石にそのあとの商会の宴を終えた時に、シンドバッドに求婚されるとは思っていなかった。あの少年シンドバッドが……。もうお互い、まぁこっちの場合は体が、だが16歳になったのだからまああり得たと言えば有り得た。虫食いで読んだコミックスのセレンディーネ様といい雰囲気になっていたのはなんだったのか。ドラグルに謝れ。
 だが、シンドバッドにお付き合いスッ飛ばして求婚されるなんて全く考えていなかった。姉的ポジションだと思っていたんだが。その時のシンドバッドと言うと今までイムチャックの女性や少人数のアルテミュラの女性を骨抜きにした男とは思えないほど顔が赤かった。耳までとは何事か。可愛い。まだ明るい日中の光に照らされて鮮明に見れた彼は今後七海の覇王になる王様でもなく、第一級特異点でもなく、ただの16歳の男の子だった。
 しかし誤算だったのは、こっちが不覚にも今までの二年間でシンドバッドに惚れてしまっていたことだ。なんたる不覚。前の世界で元成人済みの女が。前の世界で国軍女中将として君臨していたような怠惰を極めた女が。まぁ今は16だし良いだろう……え、良いのか? 元の世界に戻ったときこっちが居なければどうなるんだ? 良いのか? いや、いい訳がない筈がない。あれ、どっちだこれ。しかし、もう元の世界に戻れる気がしない。兆しも予感もない。おいおいここで一生を暮らせと言うのか上等だ満喫してやる。とかいろいろと考えが駆け巡ったが、その時のこっちはやはりどうかしていたのだ。



『……シンドバッド』
「っ、」
『こっちがこの世界の人間と違うん知っとるやろ』
「ああ……でも、俺は」



 その時のことはよく憶えている。この時こっちが異世界の人間だと知っているのはコイツだけだった。顔を逸らしたシンドバッドの頬を両手で挟んでこちらに向けさせる。あ、可愛いなんてもう言えへんぞこれ。ただの凛々しいイケメンやぞ。
 その時のこっちも頬が微かに赤かっただろう。こんな明るい時プロポーズなんてするもんじゃなかったぞシンドバッド。



『もうこっちは元の世界に戻る気ぃなんかないからな』
「は、」
『こっちはどこに行こうとお前に着いてく、どこにおってもお前の側におるつもりや』
「え、は、」
『逃げたってシンドバッド、絶対にお前を捕まえる』



 いつの間にか抜かされていた背に時の流れを著しく感じた。その差は頭半分ほどだとしても見下ろされるのは気にくわんけど。
 先程から不明瞭な言葉しか発していなかったシンドバッドはこっちの言っていた意味を理解したらしい。目を輝かせながらも呼吸を整え再度言ったのだ。もちろん、快い返事を返したのは言うまでもない。

 それから作った国を潰されたりシンドバッドとお互い半堕転したり仲間が増えたり。求婚してきた日以来、シンドバッドは女性を口説かなくなった。酒を飲んでも相手と寝ていた、なんてことはなく、ただひたすらにこっちに対して真っ直ぐだった。
 そんなこんなで『マギ』の原作に合流したらしい。カシムの霧の団編が終わった。え、早い? 知らん。
 ジュダルの件で出てきた紅玉はシンドバッドに対して恋心を抱いたようだが、まぁこっちの存在を知っていたからか顔は赤かったものの泥沼な展開になることはないだろうと思いたい。夏黄文は大人しくしてな。
 どうやらこっちはシンと共に『第一級特異点』として扱われているらしい。まぁそうだろうなとはもう言わない。
 それから半年。こっちらはアリババ、モルジアナ、アラジンを連れてシンの作ったシンドリア王国でそれぞれ強くなるために訓練をしたりタダ飯を貪ったりさせていた。
 こっちとシンはと言うと、紅玉との約束、バルバットの国をどうするかと言う煌帝国との会談を行いに行っていた。そしてシンはバルバット国民を奴隷のように虐げることなく、共和国としての自治を認めること。また、バルバットの王族は処刑せず国外シンドリアへ追放することなど認めさせようとした。力を持つ「七海連合」の長たるシンドバッドにしか出来ない交渉だったが、煌帝国はそれを快諾した。その結果、煌帝国はバルバットを支配下に置くが、バルバットの共和国としての自治を認めるそうだ。ちなみに信号機トリオは食客として王宮で匿っているのだ。
 現在煌帝国滞在最後の夜、別れの酒宴が開かれている。なんでもシンドバッド『王』と『王妃』の、らしい。一応王妃の位置にいるこっちは対してもてなされることなど全くした覚えがない。が、まぁ良いか。
 どんなに度数の高い酒を飲んでも全くもって酔えないザルなこっちは煌帝国の官などに酒をついでもらって酒のせいで赤い顔をしているシンドバッドをベランダのような場所にて風に当たりながら呆れた目で一瞥した。手すりに肘をついて中腰の態勢で空を見上げる。こっちの服装はこの世界に来た当初の服のサイズのデカイものだ。似た素材を集めてつくってもらった。当初のものはフリーサイズだったが如何せん胸回りのボタンが一気にふたつぷちんと取れてしまい使えなくなったのだ。王妃のくせにドレスを着ないのはどうかと思うもやはり自然体最高やふーい。今も尚胸が入りきらなくてシャツのボタンは第三まで開けてしまっているが下品じゃないからよし。下は短パンにニーハイだがコート着てるしよし。身だしなみが崩れていないか確認したあと、ちらちらと部屋の中からこちらを伺う様子の紅玉姫に笑いかける。



『そんなところにおりはらんと、こっち来はってください姫様』



 その言葉に途端におろおろし出すからなんだこの子可愛い。しばらくしてからおずおずとやって来た可愛らしい紅玉に笑みを漏らす。顔が赤いのは酒のせいか。なるほど。
 静かに隣にやって来た紅玉に「酒宴に女性が居らんで少し心細かったんですわ」と言うと、紅玉は顔をパッと輝かせ、「実は私もでしたの!」と笑顔を見せる。あ、この子超可愛い。確信だわ。



「えっと、あの、イオリ様はその、シンドバッド様の王妃として、優秀なダンジョン攻略者として『熱海の剣聖』と呼ばれていらっしゃるそうですが……」
『ああ、いつの間にかそう呼ばれとりますね』



 それがどないしはったんですか? と問い掛けると、しばらく考え込んで、と言うか言葉を選んだ様子でどうしてそこまで強いのかと言う質問が返ってきた。……うーむ、難しいな……。



『……恥ずかしながら、こっちは実はシンドバッド王と出会う以前、軍に所属していまして』



 そう言うと彼女はまあ、と目を見開いて裾で口元を隠す。そのあとシンドバッド様と出会ったころの年齢と軍の時の地位を問われ、少し考え込む。前の世界では25で国軍中将についていた。異例の出世スピードやったなあ。さて、どう話そうか。考えあぐねていると、こっちが機嫌を損ねたように見えたのか、紅玉がしどろもどろに「いえ、その、教えにくければ」と言い出すが、微笑んでどう説明するか考えていただけだと告げた。



『こっちが迷宮を攻略したんがシンドバッドと出会う前の13や思うんで、年齢は確か14やった筈です。軍の地位は国軍中将でした』
「……えっ、そ、そんなに幼い年で!?」



 こくりと頷くと尊敬の眼差しで見られた。間違ってはいないはずだ。この世界に来たとき肉体年齢は13、前の世界で中将。うん、合ってる。
 紅玉ちゃんにとりあえず敬語は堅苦しいのでやめてほしいと言うと、王妃に向かってそんなことは出来ないと言われたが、ならば友人になればいいと言うと嬉しそうな顔で了承してくれた。ちょろい可愛い。



Re: 自己満足で書く ( No.30 )
日時: 2017/09/16 01:50
名前: マメツキ (ID: L/on88L2)


 翌日、どうせ夏黄文は何もしていないに違いない。嫁が居るんだから紅玉にそんなことをさせるはずはないとシンと共にシンドリアへ帰ってきた。
 いやあ、相変わらずここの気候は温暖で過ごしやすい。炎熱系トリガー使いはこういう暖かい場所が最適だ。
 して、帰ってきたら帰ってきたで国民からの祝福。そして半年もただ飯を貪らせていたせいか丸々太ったアラジンとアリババ。もちろんそれを目撃したシンは目を遠くさせてただ一言「走れ」とだけ告げてぶくぶく太った脂肪を絞らせた。おいこらジャーファルお前が居ながらなんてことだ。もうこれは笑うしかないな。はっはっは。
 アラジンとアリババは走った。怠惰で太った体を絞るため、毎日汗を流し続けた。そして数週間後。



「よしっ、痩せた!」
『え、はっや』



 ぐっ、と両手を握るアリババに思わず言葉が漏れる。隣のシンは「やればできるな!」とカラカラ笑っている。流石にこれは速すぎないかと思うものの、まあいいかと考えてしまう辺りここで過ごして価値観が変わってしまってきている。まあめんどくさいからいいか。それにしても見事に痩せたなあ……。
 アラジンはと言うと、結果はまるでなし。少しましになったかな程度で痩せる見込みが全くないのだ。これにはシンと目を遠くした。いや、アリババこんなに痩せたのにおいこらアラジンェ……。



「近頃お腹の力を使う機会がなかったからかもしれないねえ」



 そういうアラジンに、ウーゴくんのことが思い出される。確かに、あれも一役買っていたのだろう、とにもかくにも元の可愛らしいアラジンに戻ってくれることを望むわ……。
 アラジンの発言にこっちと同じことを思い浮かべたらしいモルジアナとジャーファルが励ましの言葉を掛けた。



「げ、元気を出してくださいアラジン!」
「そうですよ! えーと……そうだ! なにか美味しい食べ物でも!」
「『コラッ!!』」



 リバウンドでもさせるつもりなのかジャーファルくんは。慌てて二人で甘やかすな! と叱ると、ジャーファルははっとした様子を見せた。目的を思い出したらしい。痩せさせるためにしているのに食い物食べさせてどうすんねんジャーファルくん。
 快晴の空のした、シンドバッドは机を叩く。



「二人とも、そんな調子では困る!」
『あのなぁ、お前ら二人はシンドリアの食客として来とるんやで?』
「そう、まったくもってその通りだ! イオリも当然、国主として俺は君たちがシンドリアの為に何かしら力を尽くしてくれることを期待している。そういう食客は他にもいる、君たちも彼ら同様に俺たちに力を貸してほしい!」



 力を貸すと言う具体例が思い浮かばなかったのか、「力を貸すって?」と二人は首をかしげた。
 その質問に対しこっちはシンをちらりと見やり、再び二人を見ながら腕を組んだ。もちろん口火を切るのはシンである。



「とある相手との戦いにだ……」
「とある相手?」
「ああ。俺たちはシンドリア建国以前からある組織と深く因縁があり、何度も戦い続けている」
『……世界の異変については前触れたやろ。戦争、貧困、差別……それらが今現在も世界中に拡大しとる』
「そうだ。そしてそれは偶然ではない。組織の作為によるものなのだ……」



 その組織の名はアル・サーメン。バルバッドを乗っ取ろうと影から煌を動かしたのもそいつら。アラジンは言う。力不足だと感じたと。
 そこで現れたのがうちの誇る天才魔導士のヤムライハだ。早速アラジンのセクハラの被害にあっていたがもうこれは病気だ、気にしちゃいけない。
 ヤムライハはアラジンの魔法の師匠となるだろう。そしてアリババの師匠にはシャルルカンが当てられた。アイツ剣大好きだからな。剣術に関しちゃシンより達者だ。しかし剣術を軍の商売道具にしていたこっちとしてはまだ抜かされたくないと思う。マジで。
 そこで連絡が入る。東地区で『南海生物』が出現したと。直ぐ様顔色を変えて八人将を召集させるシンにこっちはどうすればいいのか聞くと。



「イオリは今回俺の横で見ていればいい、今回はシャルルカンにやらせるつもりだ」
『……なるほどな。アリババか』
「当たりだ」



 にっと笑うシンににやりと口角をつり上げて企むように笑む。
 この国にとって南海生物が現れると言うことは、『謝肉宴』を行うことを意味する。ようするに国をあげての祭りだ。いやぁここの国民は祭り好きなもんや、とかっかっかと笑いが漏れる。
 南海生物を切り分けてあまつさえ盛り付けすらしてしまったシャルルカンに唖然とするアリババを放ってフシャーと言う効果音すら見えそうに威嚇し合うシャルルカンとヤムライハは心底仲が悪い。魔法を最強だと言い張るヤムライハと剣こそが最強だと言い張るシャルルカン。どうしてもいつも対立してしまうがよく言うだろう、喧嘩するほど仲がいいと。毎回穏やかな目で二人を見てしまうのは前の世界でこういうことをよく見たからか。
 ばーかばーかはーげ、ハゲてねえよと言い合い取っ組み合いをする二人は最早じゃれているといっていい。いやもう微笑ましい限りだ。毎回ハハハと笑ってしまうのはお決まりだ。それぞれどっちの弟子が強くなるか勝負をし出すところを見たモルジアナが「マスルールさんが師匠で良かったです」と毅然と言い放つ。それは思ったわ、良かったなぁモルジアナ。
 さぁ宴だ宴だ、盛り上がれ野郎共。
 シンドリアの位置する海域には南海動物と呼ばれる超巨大な生物が生息している。それが年に数度沖の警戒網を潜り抜けて島まで襲ってくる度に撃退するのは圧倒的強さを誇る王と王妃、その配下の精鋭「八人将」の役目である。本来驚異でしかない南海生物の襲来だが、シンドバッドはこの撃退をパフォーマンス化することにより、国民たちの恐怖心を和らげ国外からの客人を楽しませているのだ。仕留めた南海生物は良質なタンパク源であり、国中で食べる。シンドリアのこの収穫祭を「謝肉宴マハラガーン」と言っている。そして今宵も盛大な宴が始まるのだ。
 あちこちでホラ貝の笛がなり響き、みんながみんな酒や今日採れた肉を片手に盛り上がっている。



「シンドバッド王と南海の恵みに感謝を!」



 そうしてより騒がしくなる中心に笑みを深めてコートを脱ぎ捨てる。ワイシャツ一枚とか最高すぎる。怠惰の極み。籠り気質のこっちにはやはりここは何度やっても新鮮だ。前の世界では天使の侵攻のせいでおちおち祭りも、それどころか学園都市をあげて行う体育祭や文化祭すら出来なかったのだ。
 衣装に着替えてキョロキョロと周囲を見渡すモルジアナに料理を持たせて席に座らせるマスルールはいい子だ。シャルルカンはなんでもかんでもエロい方へ持っていくのはやめた方がいいだろう。だから彼女出来へんねんでばーかばーかくっそわらう。
 酔えないこっちは今日こそ酔うぞと樽を周囲に用意し、シンの近くにどかりと腰掛けて樽を持ち上げ傾ける。こんな荒業ももう国民は見慣れたものだ。
 だんだんと集まる、というよりかはべりに来てくれる踊り子ちゃんたちにはははと笑みを浮かべながら、酒をがんがん煽っていく。



「あぁんイオリさまあ! 相変わらず凛々しく麗しいです!」
「流石イオリ様! 素敵な飲みっぷりですわぁ!」
「王妃さま〜! 次は私を膝に乗せてくださいな〜!」



 わいわいきゃっきゃと笑顔の女の子が肩や腕、太ももの上などに乗ってくるのに全く持って悪い気がしない。いやもう可愛い女の子は国の宝ですよね。樽を片手で抱えながらその手を引かれて一人の女の子の胸へと押し当てられる。はっはっは! 本当にマジで真面目に女の子は宝ですよねいやぁ柔らかくて癒される。いやしかしこの子たちこっちの性別間違えてないかとか思う。これ明らか男にする態度じゃね? 楽しいから良いや。
 近くでシンも同じ状況だが全くもって気にしない。だって女遊びが楽しいの超分かる、理解できる。こっちももし邪魔されたら嫌やし好きなようにさせておこう。その代わり好きなようにさせてもらうがな!



「うわあ」
「うわぁ」
「うわあ〜! それ僕もやる〜!」



 目を細めたジャーファルと魚の骨をくわえたマスルール、笑顔のシャルルカン。頬を赤くさせて照れるアリババと嬉々とするアラジン。反応は三者どころか五者五様だったが、アリババが叫ぶのが耳に届く。



「! シンドバッドさんにはイオリさんがいるんじゃなかったんですか!?」



 そう指摘したアリババに、ジャーファルはシンドバッドに向けた呆れの眼差しをそのままこちらへ向けて「見なさい」と指差す。



「イオリ様ぁん、今晩ご予定がおありかしらあ!? 無いのなら抱いて欲しいです〜っ!」
「えっ、いやよお、ずるいわ! 抜け駆けは許さないから!」
「あっ! それなら私も!」
「私だって!」
『はっはっは、いやまず女同士っちゅうの忘れ』
「イオリ様は黙っていてください!」
「これは私たちの間で決めねばならぬことなのです!」
「そうですわ!」
『え、あの、』
「黙っていてください!」
『ホンマすんませんした』
「あぁ、しゅんとするイオリ様も素敵!」



 早くも軽くなってきた樽を足の間に置きながら両腕に巻き付く女の子たちや背中側からしなだれるようにこちらの肩を抱く数人に笑みを浮かべ、はははと声をあげていれば口論は激しくなり腕に巻き付く力も肩を抱く力も強くなる。いやはや何も言わせてくれなくなるとは女の子ナンダコレっょぃ。最近の子っょぃ……。
 そんなことはほっといて一緒に飲みましょうよ派の人はコップを片手に樽と同じところに腰を下ろしている。いっちゃなんだがシンの方がまだマシ感あるぞこれ。
 アリババなんか唖然としてるぞ唖然と。ジャーファルも今回は度が行きすぎていることに頭を抱えている。今回はぐいぐい来るなあ。
 シンがアリババとアラジンが来たなと立ち上がったのでこちらもそろそろ立ち上がろうと腰を浮かせる。



「イオリ様、もう行ってしまわれるのですか?」
「今回は一樽も飲み終わっていないではないですか!」
『!? いや、王が食客と話するみたいやからな? また機会があれば戻って来るかもしれんから、そんときはまたな。綺麗で可愛え女性をこんなに独り占めすると他の男がかわいそうやろ?』



 近くにいた女の子の顎をくいと上に向けてからりと微笑むと悲鳴をあげて全員総意で解放してくれた。ほっと息を吐くのも束の間、じとりとした視線を頂いた。やめなさいジャーファルくん。



「まーたあなたは女性をたぶらかして……」
『!? ジャーファルくん誤解や、別にたぶらかしてへんで』
「七海の女たらしと熱海の女たらし……」
『おいやめや!』



 シンに並べられるとは、そんなことないと思うんだがなあ。



Re: 自己満足で書く ( No.31 )
日時: 2017/10/15 00:47
名前: マメツキ (ID: 82zK86Y5)

上記はまた気まぐれで書くかも?
次連載。
『UQHOLDER』の近衛刀太が『マギ』の煌帝国に知らないカフェとトリップする的な。
 刀太くんは気楽に時間が経てば戻れるだろうし、それまではこの見知らぬ家でカフェでも開いちゃおうぜ、幸いこの家カフェだし服装もユーキューホルダーのウェイターのだし。ってな感じでいつも通りの能天気さを発揮し、持ち前の料理の腕を奮っちゃう。冷蔵庫でけぇな食材腐らねぇんだけど使ったら増えてる的なチート冷蔵庫と減らないチート消耗品たちをフル活用し、煌の皇族、時々他の国の人とほのぼのするお話。
 原作は白雄さんたちがまだ生きてた時。むしろ同い年ぐらいの時に遡る。


**

 ふと気が付くと俺は見知らぬカフェの中にいた。落ち着いた雰囲気のシックな店内には人っ子一人おらず、不気味さが増していく。
 俺こと近衛刀太はさっきまで泉境館の中庭で夏凛先輩と試合をしていたはずだ。見ての通り服装はウェイターそれそのものだけど、黒棒はしっかり抜き身で俺の手に収まっている。



『オーイ、誰か居ねぇかー!?』



 その場で声を掛けてから、何が起こるか分からないゆえに黒棒を担ぐ。一応黒棒にもどういうことか聞いてみたがわからないと返ってきた。黒棒までわからないとなると自力でどういうわけか探るしかないようだ。
 二階を見ても誰一人居らず藻抜けの殻。生活感の欠片も無いくせに日用品はしっかり整っていて不気味さに拍車を掛けていった。
 どうやらこのカフェは個人経営のものらしく、一階は店内に、二階は少し物が足りないぐらいの普通の家だった。立派なテラスまであるとは感服である。部屋が複数個あったので警戒して見てみるもやはり誰も居ない。
 薄ら寒くなったその時、とりあえず外に出て情報を集めようと黒棒に提案された。



『……確かに、情報は必要だよなぁ…』
<ああ、知れることは知っておいた方がいい>
『でもなあ、危険もあるかもしれねぇ……いや、ねぇな、殺気もなんも感じねーし』



 ちょっと悩んでから外に出ることにした。大抵の奴なら倒せる自信はある。雪姫……キティやフェイトクラスはまだしも、夏凛先輩と引き分けれる程度には成長したし。ダーナ師匠にも殺されまくって強くなったし、いけるいける。俺はカウンター席に置いてあった鍵を手に、戸締まりをしてから外に出た。

 それから。まあ大変だったわ。ここは煌帝国とか言う三国を纏めて新しく出来た軍事国家らしい。聞いたことも無いが、むしろアマノミハシラが見えないことに驚きだ。日本なんて国知らないらしいし、もしかしてここ異世界? マジで? とか困惑してたら黒棒に別世界にトリップでもしたのではないかと言われ、戻れるのかよ、と言う疑問を抱いた。
 とりあえず役所に言って、色々誤魔化して戸籍を得て、今はカフェでも開くかと言う話になっている。



『不安はあっちに帰れるかってことなんだが、どう思う黒棒?』



 カウンター席に腰を掛け、拝借したコップに備え付けのコーヒーメーカーで淹れた珈琲を飲みながら問い掛ける。祖父さんのこともあるし、世界を救う件もある。それに、キティやキリエのことだって。問題は山積みだ。
 カウンターに置いた黒棒はこう言った。



<今すぐ、と言う訳でもないだろうが帰れないと言う可能性も低いだろう。気長に待てばいい>
『……あっちはどうなってんだ?』
<私にもわからん。キリエがお前とキスした時のように時間が止まっているかも知れないし、普通に進んでいるかもしれん。一番可能性が高いのはこちらとあちらで時間の流れが違うことだろうな>
『……違う?』
<ダイオラマ球の様にな。こちらでは一日経っていてもあちらでは一時間しか経ってない可能性も捨てきれない。あくまでも可能性、だがな>



 なら良いや。

 そう呟くと黒棒も頷いた気がする。いや、実際黒棒は黒い見た目の重力剣で言ってしまえば太刀だから頷いたかどうかは知らないが。
 可能性があるならその可能性を信じる他ない。くよくよしてるのは俺らしくないし、キティ……雪姫にフラれた時に比べたらショックは全く無いしここで気楽にカフェでも何でも開いてやる。
 幸い、立地は町から少し離れたところの森の手前であまり言いとは言えないが。やったもん勝ちだ、楽しくやろうぜ。



**



 それから二週間が経った。帰る兆しは無いものの、楽しく俺はカフェを営んでいる。最初は物珍しさから人が来て、俺の飯を食ってちゃんとした客になってくれている。どうやら俺は格安で提供していたらしい、人からの信頼を集めることができ、客が来たら楽しく会話する程度には人のいい客ばかりだ。こんなとき泉境館で働いていてよかったと思う。町のガキも「刀太にーちゃん遊んでー」と時々遊びに来る程度で比較的いい関係を築けているだろう。泉境館にも居たしなあ、ガキども。みんな人間じゃなかったけど、それを言うなら俺なんて不死身で不老不死の吸血鬼だ。実は祖父さんのクローンの出来損ないだとか金星の黒と火星の白と訳のわからない二つの魔力を有する人形だとか。まぁこれは一旦置いといて。
 聞いて驚け見て笑え、なんと冷蔵庫が超でかかった。個人経営とは思えない程設備の整った高級レストランのような厨房には天井に届くかと言うぐらいのデカイ冷蔵庫が二つあって、その中には食材がぎっしり。腐る様子も全く無いし、使うといつも間にか元に戻っている。元に戻っていると言うと消耗品と言う日用品だってそうだった。何げにすげえ家かもどういう原理だとか思うけど気にしてはいけないようだ。
 そして黒棒はと言うと、店内の壁に太刀掛けを取り付けて飾ってある。本物だから触るなよと言ってあるから大丈夫なはずだ。もし盗もうとするやつがいても恐らく無理。だって重力剣だぜ、重さも常人じゃ持てないように設定してある。
 からんころんとドアのベルが軽快になり響き、客が来たことを知らせた。先程OPENの札を掛けに行った所だったのだが、なんだこの客ずいぶん早いご来店だな。
 誰だ誰だと思いながら『いらっしゃいませ』と顔をキッチンから覗かせると、そこには微笑んだ白雄が居た。



『おっ、白雄じゃねーか。おはよう』
「ああ、おはよう刀太。朝早くに悪いな」
『気にすんなよ、OPENの札は掛かってたろ』



 カウンター席に案内してから『御注文は?』と目の前のキッチンで問い掛ける。ここの店はカウンター席の目の前にコーヒーメーカーやらコンロ、水道やらのキッチンあって、強いて言うならバーのような作りになっている。まぁバーと違って店内は広く、そこかしこにテーブル席が余裕を持って並んでいるのだが。最早冷蔵庫置き場として存在している厨房はただ食材を取りに行く程度だ。大抵のことはここでできる。
 目の前で「じゃあコーヒーを頼む」と言った口元に黒子のある美形の男は練 白雄、俺と同い年ながら遠目でしか見たことのない皇族の住む禁城に住んでいるようだ。煌帝国の第一皇子と聞いたときは慌てて頭を下げたが、白雄は悲しそうな目をして「やめてくれ、お前とは身分関係なしに仲良くしたい」と言ってくれた店の客第一号である。心が広いぜ。



『眠気覚ましか? 砂糖とミルクどうする?』
「ああ。……いつも通りで頼む」
『おうよ』



 コップをコーヒーメーカーにセットする。どっかの大手機械企業の開発した便利なコレは静かな音を立てながらコップに注いでいく。俺は俺を見ながら白雄に問い掛けた。



『白雄、お前また夜遅くまで起きてたのか?』
「……あぁ」
『駄目だろ寝ないとー。寝る子は育つって言うぜ? 今は成長期だしな』
「それなら刀太はもっと寝ないとな、身長伸びないぞ」
『お前それ俺のことチビって言ってんのかおいこら』



 珈琲を白雄に提供しながらそういうとくすくす白雄が笑うので俺もつられてカラカラと笑う。

 外で白く輝く鳥が、羽ばたいた。



.

Re: 自己満足で書く ( No.32 )
日時: 2017/10/15 01:58
名前: マメツキ (ID: 82zK86Y5)



 白雄はお忍びでここに来ていたらしく、店内に掛けてある時計を見て戻らねば、と談笑もそこそこに珈琲を飲んで帰っていった。
 またの御来店お待ちしてます、と腰を折ったあと、じゃーな、また来いよと手を振って見送った。微笑んでまたな、と言われたのは新鮮だった。向こうじゃこんなことはなかったしな。
 さてさて、一気にやることがなくなった訳だが、とりあえずモップかけようモップ。
 ぱたぱたと奥に引っ込んでモップを持ってモップ掛けを開始する。テーブルも布巾で拭いて、メニュー表を立てて、店の前のブラックボードに今日の一日限定を書き連ねる。今日は煌のイメージに合わせて中華風が登場する。仕込みも終わってるし、あとは注文を受けるだけだ。そんなに人が多い訳でもないし、一人でも行けるはず。



『黒棒、外の様子はどうだー?』
<異常はない、未だ人影も無しだ>
『おう』



 自分用に珈琲を入れてカウンターに腰を掛けながらそれをすする。科学の力ってすげぇよなあ、電気があれば何でもできる。電気供給大丈夫かよとも思うが黒棒が大丈夫ってんなら大丈夫だろう。
 ああ、ここ最近素振りしてなかったから暇な今にでもやっておこうか。飲み干した珈琲カップを流しにつけおきして、ベストと前掛けをカウンターの椅子に掛けて黒棒を持って外に出る。テラスの横の庭には草花や普通のデカイ花がが綺麗に咲き誇っており、枯れる様子は見られない。
 とりあえず10tで黒棒を素振りに使う。10tなんて重さを軽々と振るえるなんて、村にいたときは考えもしなかっただろう。平然とそれを振り回しながらひたすら剣を振っていると、どうやら昼になったらしい。「刀太にいちゃーん」と遠くから声が聞こえた。あ、客か。
 こんなこと姿は見せられない、とそそくさと黒棒を店内に10tのまま立て掛け、ベストと前掛けを着用して汗を拭いてから外に出る。声はよく来る子供のうちの一人。その後ろにその母親が笑顔でやって来た。



「刀太にいちゃん! こんにちは!」
『おうガキ、挨拶出来て偉いぞー』
「えへへー」
「刀太くん、こんにちは」
『はい、こんちは!』



 改めて「いらっしゃいませ」と頭を下げてから店内に案内する。お昼を食べに来たのだろう、一日限定の唐揚げの注文が入った。どんな食べ物だろうと子供がワクワクしてるので食べたことはないのだろう。
 手早く調理して盛り付け、二人の前に皿を置く。腹の減る香りが店内を満たし、二人はいただきますと口をつけた。美味しかったようなので満足だ。
 その二人を見送ってから、テーブルを拭いていると再びからんころんとベルが鳴る。



『いらっしゃいませ、ようこそカフェ、ユーキューホルダーへ……って、白雄じゃん』



 扉の前に居たのは今朝見た白雄だ。微笑んだ様子の白雄に首をかしげながら、「こんにちは、刀太」と挨拶されたのでこんにちはと返す。



『まぁ座れ座れ……って、誰だ?』



 白雄の後ろにちっさいのが居るのに気が付いた。白雄の服を握り締めてそっと顔を覗かせたのは二人。どちらも白雄に似ているが、少し違う。
 もしや兄弟か、と予想し、それなら白雄の顔が緩んでいるのも納得できると理解する。



『白雄、そっちは……』
「ああ、弟と妹だ。ほら、お前たち」
「練白蓮です! お話は兄上から伺っております!」
「……れ、練白瑛です……よろしくおねがいします……」
『おー、俺は近衛刀太だ。よろしくなー、白蓮、白瑛』



 笑顔で腰を屈めてわしゃわしゃと髪を崩さないに撫でてやる。聞けば白蓮は12、白瑛は4歳らしい。二人とも幼くて愛らしい。二人は頭を撫でるとキョトンとしたあと、白蓮はえへへ、と白瑛はきゃーと嬉しそうに微笑んでいたのでよしとしよう。これで第二皇子と第一皇女だから驚きだ。皇族の頭を撫でるのは…俺は不敬罪にはならないよな白雄……?
 いやしかし、笑顔の下二人を見ていたそのときの白雄の顔はもう兄弟大好きって顔してたわ。いいなあそういうの。



『で、白雄。席はどうすんだ? 三人だしテーブル席か?』
「……いや、いつも通り見えやすいカウンターが良いな」
『はいよー』



 こっちだぜー、と案内すると白雄を先頭にぞろぞろ俺のあとを着いてくるからおかしい。
 カラカラ笑ってから、カウンターに三人を座らせる。白雄を真ん中に、左右に二人がいる形だ。流石に白瑛は一人で座れなかったようなので持ち上げて座らせてやると「ありがとうございます、とーたさん」と満面の笑みでお礼を言われた。ぱっと白雄を見る。真面目な顔で親指を立てられた。とりあえず立て返した。白瑛天使。
 そのままメニュー表を渡すと、あれはなにこれはなにと白蓮と白瑛から問われて、丁寧に答えを返していく。



「この……みねすとろーねってなんですか?」
『ああ、それはトマトのスープに麦や野菜を入れた奴だな。暖まるから主に冬に飲むよ』
「これは!? これはなんですか!?」
『アイスか。氷菓子ってやつだ、甘くて美味しいお菓子。種類もあるぜ』
「……刀太、今日の一日限定はなんだ?」
『一日限定は中華だな、中華はそこまで詳しくないからいろいろ詰め込んだけど。餃子に唐揚げ、小籠包に中華そば、炒飯に杏仁豆腐にゴマ団子とか桃饅とか』
「……餃子と小籠包」
『白雄はそれだな。二人はどうする?』
「……今日は兄上と同じのにしときます!」
「わたしもです!」
『はーい、餃子と小籠包それぞれ三人前かー』



 ちょっと待ってな、と厨房で蒸してあった小籠包を器に入れて、餃子は焼く前のものを三人前。
 キッチンに戻って小籠包を先にだし、火傷に注意を促して食べさせる。とりあえず中にスープが入っているとは伝えた。火傷しないでくれよ。
 その間にさっさと餃子を焼き上げる。じゅわっ、と言う音に反応した三人はじっとこちらを見ていたがうん、出すからあまりこっち見るなよ。照れる。



「刀太さん、小籠包美味しいです!」
「おいしいです!」
「うまい」
『お、マジかそうか! 餃子もお待ちどう。熱いから落ち着いて食えよ』



 帰り際、従兄弟たちと食えよ、と桃饅を持たせてやると、三人は一様に微笑み、また来ると手を振って帰っていった。お付きの人が居たならもっと多く持たせてやると良かったな……。



Re: 自己満足で書く ( No.33 )
日時: 2017/10/16 01:43
名前: マメツキ (ID: 82zK86Y5)


 OPENと掛けられた札。からんころんと鳴るドアのベル。今日も今日とてやって来た白雄は後ろに白蓮と見掛けない紅い髪のガキを二人連れてきた。
 俺は机を布巾で拭いていた体勢をやめて、三人に向き直る。



『いらっしゃいませー。よく来たなー白雄、そっちの赤髪は?』
「俺の従兄弟だ。父上の弟、叔父上の子でな」
「そこの長男の紅炎、次男の紅明です刀太さん!」
「……噂はお二人と白瑛様からかねがね伺っております、近衛刀太様」
「よろしくお願いします」
『おー、よろしくなー紅炎、紅明。そういや白雄、今日はお付きは?』
「外で待機だ。気にするな」
『良いのかよ』



 わしゃわしゃと赤髪を撫でたあと、いつものように白雄に席はどうするのかと聞くと、いつも通りカウンターが言いと言われ、はいはーいと返事をする。
 四人を案内して白瑛はどうしたのかと聞くと、礼儀作法を仕込まれているのだと言う。小さいのに偉いなあ。流石皇女、恐れ入るぜ。全く。
 白雄にメニューを渡し、白蓮と共に見てもらう。俺はというと、ちょっと不審げな目を向けてきている紅炎、紅明に着いた。



『メニュー表はこれな。わからないことがあったら何でも聞けよー』
「……」
「……」
『……っていや、なんか言えよっ! 白雄っ、こいつら何っ!? 超睨んでくるんだけどっ!?』



 まるで俺の首を切り落とした時の相棒みたいな目をしてるんですが! とは言わなかった。化け物扱いされるのは困る。
 聞くところによると、二人は高貴な身分の白雄白蓮にタメ口なのが気に入らなかったみたいだ。二人とも白雄白蓮が好きなんだなぁ。
 とりあえず、白雄の勝負してみるかと言う訳のわからない提案で木刀持って庭に出てきたは良いが、何せ紅色兄弟とお付きの人の目が怖い。弱かったらやっちまえみたいな。
 結果? もちろん俺が勝ったぜ? 瞬動使って懐に入り込み、木刀を蹴りあげてお仕舞いだ。からんからんと飛んでいったからまぁいいだろう。
 そのあとの紅色兄弟の目の色は変わった。もうめちゃくちゃ慕ってくれたわ。こいつら可愛いなあ。白雄を見ると白瑛の時のように親指を立てられたので俺も立て返す。真似して白蓮も立てるのだから可愛すぎた。
 紅炎はあの瞬動をやりたいようだが、まだ小さいから無理だろう。気を足に溜めて跳ねさせる、と言うことと『大地を掴め』とだけ教えておいた。



『紅炎も紅明も博識だな、……俺より知識あるんじゃね? お前ら幾つよ』
「俺は10です」
「8です……」
『紅炎ですら俺と5も離れてるのになー、偉いなーお前ら』



 わしゃわしゃと再び頭を撫でると嬉しそうに刀太さん刀太さんと微笑むから可愛い。白蓮も撫でてくださいーと突進してくるからもうここは天国か。白雄はうんうんと頷いている。もしやこいつはブラコンシスコンか。

 どうやら飯には満足してくれたようだ。また来ます、と目を輝かせた紅兄弟は白兄弟とお付きと帰っていった。


**

 それからもちょくちょく皇族はやって来た。例えば白雄が一人で「あと数ヵ月で新しい兄弟が生まれるんだ」とか。白蓮がお忍びで菓子をねだりに来てついでに稽古を着けていたら偶然やって来た白雄に見つかったりとか。白兄弟が来て白瑛に料理を教えてほしいと頼まれ、白瑛と調理するもダークマターが幼い手から生物兵器として産み出されたりとか。紅炎がやって来ては黒棒を触りたがるので、代わりに木刀を持たせて稽古したり飯を出したりとか。紅明が来て、テラスでお菓子を摘まみながら集まる鳩にエサを一緒にあげたりとか。
 どうやら俺のカフェの飯は禁城でも評判らしく、よくあいつらが来るとお持ち帰りをねだる。それに快く快諾させてもらっていた。

 そんなある日のことだ。俺が外回りの散歩から帰ってくると、そのカフェは焼けていた。いや、現在進行形で焼けている。



『嘘だろ!?』



 とりあえず黒棒ー! と叫びながら店内に飛び込んだ。火はまだ回りきって居ないらしい。中には恐らく盗賊と思われるやからが7人いて、舌打ちが漏れる。7人は必死に黒棒を持ち上げようとして居るが、重すぎて持ち上がらないらしい。バカだな、10tだぞ無理無理。



「くそっ、店主が帰ってきやがった!」
「えーいめんどくせぇっ、やっちまえ!」
『えっ、三下だ! コイツら三下!』



 各々が武器を持ってにやにやと勝ち誇った笑みを浮かべている。まったく困ったもんだ。
 襲い掛かって来る盗賊をすり抜けて、黒棒を手にとる。大層驚いていたがまあそうだろうな。大の男が7人がかりで持ち上がらなかったのを15の子供が軽々持ち上げてんだから。
 盗賊の末路? ふるぼっこにして役所につき出したよ。

 それからは家は焼けて跡形もなくなった。こんなにも店仕舞いが早いとはなんてこった。もうちょっとしてたかったんだけどなぁ……。悔しい。
 火事を見たらしい白雄たち白兄弟紅兄弟がやって来ては、惨状を見てなにがあったと聞いてきた。



「……焼けて無くなったのか……」
『ああ。盗賊どもがガラス割って入ってきてたんだ』
「刀太さんっ! け、怪我は!? 怪我はないですよね!? うっ、ぐすっ、けがあああああ!」
「あーーん! とーたさああああん!」
『ないない。だから泣くなよー白蓮白瑛ー』



 なぜかびゃーびゃー泣き喚く二人を宥めていたらなぜか紅炎と紅明まで俺にすがりついてきて驚く。あ、ちょっと泣きそう。困り果てた俺は白雄を見た。え、お前までちょっと泣きそう? 嘘だろ。
 とりあえずみんなを必死にあやしてから、落ち着かせる。都合のいいことに黒棒はここにあるし、今後困ることはないだろう。



「……ぐすっ。刀太さん、これから、どうするんですか……?」



 鼻をすすって、未だ俺の服から手を離さない紅明がこれからのことを聞いてきた。……これから。これからねぇ。



『……良い機会だし、旅にでも出るかな』
「やあああああ! とーたさんっ、とーたさんっ!」
「いやです! いやです……!」
「……俺もいやです、このまま煌帝国にいてください……!」
「刀太さん行かないでええええ! 白雄兄上もなんか言ってくださいよおおおお!」
『嫌て! あーもー泣くなよー』



 また泣き出す下四人に二度と会えない訳じゃないから! また多分会えるから! と泣き止ませ、未だぐずるそいつらに好きなようにさせてから、子供の身長に合わせて屈めていた腰をあげる。
 白雄と目があった。



「……お前の顔も見れなくなるとなると、寂しいな。新しく出来る弟も見せてやりたかったが……。美味い飯が食えなくなるのか」
『俺も寂しいぜ、白雄。っておい最後』



 飯かよ、と顔をしかめていると白雄は口を開く。「お前は初めて出来た同年の友人だ」と、泣きそうな笑顔を浮かべた。今世の別れでもないのに大袈裟な。



「これをやろう。……親友と呼べるお前への送りものだ」



 照れ臭そうに言った白雄は耳に着けていたピアスの片方を外して俺に渡した。小さいながらも綺麗な装飾がなされたもので、こんなに高価なものもらって良いのかと彼を見つめる。
 白雄は貰ってくれ、と微笑む。有り難く頂戴して、右耳に躊躇いなく刺した。驚いてたが別に良い。
 紅炎からは指輪を貰った。サイズがぴったりなのは紅炎の手がでかかったからだと思いたい。
 そして、コイツらは人間だ。年を取る。対して俺は不老不死の吸血鬼。次会うと多少なりとも彼らは成長しているだろう。この秘密は言っておくべきだと思った。



『よく聞けお前ら。別れ際だし、お前らにだけ教えてやるよ、俺の秘密。言外は絶対にしないでくれ』
「……刀太の頼みだ、約束しよう」
「刀太さんが言うなら! 白瑛も紅炎も紅明も秘密に出来るな?」
「っ、はいっ!」
「分かりました」
「はい……」



 俺は、不老不死の吸血鬼なんだよ。まだ年は15だけど。次会う時、俺が成長してなくても驚かないでくれよ。




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