二次創作小説(紙ほか)
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- 自己満足で書く
- 日時: 2017/03/19 00:00
- 名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)
どうもおはこんばんにちはぜんざいです。
ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。
ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。
しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。
では。☆(∀´)ゝシ
- Re: 自己満足で書く ( No.9 )
- 日時: 2017/03/23 00:47
- 名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)
最近、人斬り似蔵と呼ばれる鬼兵隊の奴が辻斬りをやりはじめたらしい。そう、岡田似蔵である。先日、刀鍛冶の刀匠である鉄矢と言う男を味方に付け、最高傑作だと言う紅桜と言う機械刀兵器を似蔵が性能テストの為に盗み出したのだ、紅桜は人と一体化し斬れば斬るほど強くなるから。それを試してみたいが為に始めて、楽しくなったようだ。積極的でよろしい。……よろしいのだが、聞くところによるとつい昨日桂をやって来たらしい。また子がキレそう。
夜、目立たない港に停めた甲板で晋助と並んで彼方を眺める。似蔵は多分今日も誰かを斬って居ることだろう。晋助が煙管を葺かす間、こっちは隣で海を眺めた。桂は多分死んだ。いや、もしかしたら生きているかもしれない。確率は五分五分。だとしても、もし本当にそんなザマなら少し落胆しそうで、ふっと笑みを浮かべかちゃりと気付かれぬように左手を刀へと置く。
肩に羽織っただけの赤で縁取られた黒いコートが潮風になびく。以前の祭りの時の服装とは違い、薄いカーマイン色の女物の着物と中性的なデザインの黒の女物の帯。腰から下の着物は左右に足の付け根ほどまで大きくあいたスリッドが入っている。その下は黒の短パンなので気にすることはない。そして、まあ大丈夫やろ、と左手を刀から下ろした。
がちゃんと背後で金属音がした。それと共に「オイ」と少女の声が聞こえ、続けて「お前ら、この船の船員アルカ? ちょいと中案内してもらおーか。頭ぶち抜かれたくなかったらな」と悪者さながらの台詞を吐いて見せる。
それに何も言わず二人で背を向けていれば「オイ聞いてんのか」と再び声が掛かる。晋助がゆっくり振り向いた。顔に氷の微笑を張り付けて。
「今日はまた随分とデケー月が出てるなァ、いおり」
『せやなァ……月見酒でもしたいわ』
「くくっ、悪かねぇな。かぐや姫でも降りて来そうな夜だと思ったが、とんだじゃじゃ馬姫が降りてきたもんだ」
そんな会話に後ろの少女が息を飲む。ちらりと確認すれば所持武器は番傘。傘の先端に穴が空いていてそれをこちらへと向けていた。大方銃器かなにかだろう。少女に視線をやり、ふっと口角を持ち上げたところで、ドォンと言う耳をつんざく音。すぐ近くの足元が抉れていて、やっぱ頼もしい限りやなァとしみじみ思う。そして、抉れたそこには少女がいたはずだが、少女はちゃんと飛び上がって回避していた。なかなかの身のこなしである。チャイナ服の少女はそのままドォンドォンドォンと追ってくる銃弾を側転や宙返りで見事に避けて怪我ひとつない。
そして船の建物の屋根から姿を現したまた子が「おおおおおおお!」と二丁拳銃で飛び降りてきた。きちんとチャイナ少女の上に馬乗りになったまた子は二丁拳銃をつきつける。チャイナ少女もまた、傘の先端をまた子に向けていた。
「貴様ァァ!! 何者だァァァア!! 晋助様といおり様を襲撃するとは絶対許さないっス! 銃を下ろせ! この来島また子の早撃ちに勝てると思ってるんスかァ!?」
「また子また見えてるヨ、シミツキパンツが丸見えネ」
チャイナ少女の言葉を晋助はふっと鼻で微かに笑い、こっちは唖然。坂田や坂本ならまだしも、あんないたいけな少女がそんなこと言うたらあかんやろ……挑発やとしても。
そんな挑発に簡単に乗っかってしまうのがうちの猪突猛進ちゃんである。
「甘いな、注意を逸らすつもりか! そんなん絶対ないもん! 毎日取り替えてるもん!」
「いやいや付いてるよきったねーな、また子のまたはシミだらけ〜」
「貴様ァァァア!! これ以上晋助様といおり様の前で侮辱することは許さないっス!」
そう怒鳴ったまた子はぐるりと顔をこちらへと向けて「晋助様、いおり様ァ! 違うんスホントッ、毎日取り替えてますから! 確認してくださいこれ…」とバッと立ち上がった。わかったわかった、わかったから見せんでエエ。晋助男やぞ女やとしても倫理的にそんなん言うたらあかんやろ……。チャイナはチャイナでおっさんのような喋り方である。そう、まるで坂田のような……。そこまで考えて思い出す。ああ、あのチャイナ、坂田のところにおった他の二人や。
そう考えに至ったのと、チャイナがまた子を蹴り飛ばしたのはほぼ同時だった。また子ェ。そして肩に傘を担いでチャイナはイタズラが失敗したかのように駆け出した。
「クソガキィィィイイ!! 武市先輩ィイ、そっちっスぅぅ!!」
チャイナが走った先には、鬼兵隊の兵士と武市が待ち構えていた。また子と武市がロリコンだフェミニストだと喚くなか、チャイナは兵士を薙ぎ倒していく。……傘を持ってて、それでいて強い。恐らく夜兎か、そこら辺りやろう。ちっさいガキやのにな。
「ヅラぁぁぁ! どこアルかァァ!? ここにいるんでしょォォォ!!」
気になるワードをお母さんさながらな台詞を撒き散らし、「いたら返事するアル!」と怒鳴る。桂よ、お前はチャイナ少女とどんな繋がりやねん。チャイナは桂がこの船に居ると勘違いしているようだった。様は早とちりである。何やっとんねん保護者(坂田)ェ。
そして、それの後ろから先程とはうってかわって真面目な表情で銃を構えたまた子。また子は実はやればできる子である。えらい。そんなマジモードのまた子の狙いは標的から狂わず、見事にパンっとチャイナの左肩を銃弾が貫いた。二発目は左足のふくらはぎ。しかし、少女は止まらない。
「ふんごをををを!!! ヅラぁぁぁ! 待ってろォォ!! 今行くからなァァァ!!」
少女は深手を負いながらそれでも動き兵士を叩き潰していく。一人が「なんてガキだ」と引いたように呟いた。それを聞いて晋助と二人、微妙な顔をする。少女は工場へと入る。それを見て血相を変えて動き出す鬼兵隊。
事は少女が工場の奥で例のものを見つけて収束した。また子が少女を捕まえたのであった。
**
「こっぴどくやられたものですね。紅桜を勝手に持ち出し、さらにそれほどの深手を負って帰ってくるとは」
翌朝、船内の一室にて武市が右腕をなくして帰ってきた岡田に告げる。続けて無情にも「腹を斬る覚悟は出来ていますよね、岡田さん」と窓の外を見ながら冷たく言い放った。また子が岡田の前で仁王立ちして腕を組み、「アンタの最近の身勝手ぶりは目に余るものがあるっス」とぶすくれて言う。
「幕府の犬に紅桜嗅ぎ付けられたらどうするんスか。アンタ、晋助様といおり様の邪魔なんスよ」
そういったまた子は桂の次は坂田銀時かと問い詰める。仕舞いには桂に勝てたのは紅桜のお陰、と言ってしまった。これがいけなかった。なくなった岡田の右腕から触手のように機械がうねり、また子の首に巻き付き持ち上げ締め付ける。
どうやら、岡田の意思では無いようだ。紅桜は既に岡田の体を自分のものだと思っているようで、自分への言動は気を付けた方が良いと忠告する。どさりと倒れ、咳き込むまた子には目もくれず、岡田は宙を、虚空を見てはっきりした口調で口を開いた。
「……どうにも邪魔でねェ。俺達ァ高杉と小原(あの人たち)とこの腐った国で一暴れしてやろうと集まった輩だ。言わば伝説になろうとしているわけじゃないかィ。それを、いつまでも後ろでキラキラとねィ」
岡田の脳裏に攘夷時代の坂田と桂の映像がよぎる。「目障りなんだ、邪魔なんだよ奴ら」と憎々しげに言葉を投げ捨てた。
「そろそろ古い伝説には朽ちてもらって、その上に新しい伝説を打ち立てる時じゃないかィ?
あの人たちの隣にいるのはもう奴らじゃない、俺達なんだ」
- Re: 自己満足で書く ( No.10 )
- 日時: 2017/03/25 14:14
- 名前: ぜんざい (ID: RZK0hNxi)
晋助と共にやって来たのは工場。ややこしく管や電線、パイプ等が複雑に絡み、気を付けなければ足を引っ掻けそうになる場所をゆっくりと歩く。
周りに並ぶ幾つもの人一人入りそうな丸い水槽に入っているのは、薄紅色の刀身。
これら全て、紅桜の量産型である。紅桜の実態は『対戦艦用機械機動兵器』。機械と書いてからくりと読むところはやはり江戸らしいと思う。紅桜は電魄と呼ばれる人工知能を有し、使用者に寄生することでその身体をも操る。戦闘の経緯をデータ化し、学習を積むことで能力を向上させていく、まさに生きた刀。こっち等はこれを使い、江戸を火の海にし幕府を滅ぼすのだ。もちろん、こっちは紅桜を使うつもりはない。こんなリスキーなことをして、死んでしまったら晋助に悪い。だって、こっちは晋助のもので晋助はこっちのものなのだから。こういうものは兵士に持たせておけばいい。
不気味な色の液体に浸され、それを眺めてから随分と思考が物騒になったものだ、とフッと笑えば、後ろから人がやって来た。もちろん、こんな素晴らしい刀を打てるのは、この江戸には恐らく彼しか居ない。
村田鉄矢。かつて江戸一番の刀匠だった村田仁鉄を父に持つ男だ。コイツは紅桜を強くすることしか考えていない。それはそれで、利用しやすいのだが。
さて、それより、河上がどうなったのかが気になる。宇宙海賊春雨との交渉に向かわせたが、うまくいっただろうか。そんなことをぼんやりと考えていれば、「酔狂な話じゃねーか」と背後の村田鉄矢に向かって口を開いた。
「大砲ブッぱなしてドンパチやる時代にこんな刀つくるたァ」
「ソイツで幕府を転覆するなどと大法螺ふく貴殿らも充分酔狂だと思うがな!!!」
『へェ、法螺なァ……』
「法螺を実現させてみせる法螺吹きが英傑と呼ばれるのさ、俺達ゃ出来ねー法螺は吹かねー。しかし流石は希代の刀工、村田仁鉄が一人息子。まさかこんな代物を作り出しちまうたァ」
鳶が鷹を生むとは聞いたことがあるが、鷹が龍を生んだか。そう茶化す様に続けた晋助に『まあ、まだ侍も剣も滅んどらん言うことやな』と続けた。
『幕府にはソレ見せつけて、滅んでもらおか』
「そうだなァ、ククッ」
ニヒルに笑む晋助を横目に、「貴殿等が何を企み何を成そうとしているかなど興味はない!」と無駄にでかい大声で怒鳴り出す村田に顔を微かにしかめて不意と視線を逸らす。
「私に言えることはただひとつ! この紅桜に、斬れぬものなどない!」
あぁそう。そろそろ面倒になってきたので晋助に視線で訴えれば「先戻ってな。俺もあとから行く」と了承された。
**
とある家屋の一室にて。桂を支持する攘夷志士が集まり、桂のペットである天人エリザベスとそのとなりに姿勢正しく座る志村新八と対峙していた。志村新八とは、高杉や小原、桂には幼馴染みにあたるあの銀髪天パ、坂田銀時が社長をしている『万事屋銀ちゃん』と言うなんでも屋の一人であり、今回エリザベスから桂を一緒に探してほしいと言う依頼の元ここにいた。なんでも屋の一人であり、と言ってもメンバーは坂田銀時と志村新八と神楽しか居ないのだが。
お互いの間に剣呑な雰囲気はなく、桂一派の攘夷志士たちは同じ桂を探してくれる手助け人として彼らを認めているようである。その要因として社長である坂田が桂と幼馴染みだと言うことも多いが要は人柄、人徳だ。
なぜここに新八一人しか万事屋が居ないのかは、神楽は行方不明、坂田は似蔵とやりあい重傷だからである。ちなみに似蔵の左腕を落としたのは新八だったり。
「高杉晋助、小原いおり。その人たちが……桂さん失踪と岡田似蔵と関わる重要人物だと?」
丁寧な口調で今聞かされた話を聞き返す新八に、攘夷志士からすぐに返答が来た。
「俺達も桂さんを探す傍ら、色々調べたんだがまさかね、俺達と同じ攘夷浪士の仕業だったとは」
「それに高杉晋助と小原いおりといやぁ、かつて桂さんと共に攘夷戦争を戦った盟友だ……そいつがなんで……」
「他じゃ二人は人斬り似蔵の他に、紅い弾丸と恐れられる拳銃使い来島また子、変人謀略家武市変平太、そして似蔵と同じく人斬りと恐れられる剣豪河上万斉らを中心に鬼兵隊を復活させたときいたが……」
新八は気になるのか、「鬼兵隊?」と聞き返す。それにもすぐさま「かつて高杉、小原が率いていた義勇軍さ、文字通り鬼のように強かったって話だが」と答えは返ってくる。
「連中は秘密裏に強力な兵器を開発しているとも聞く。強力な武装集団を作りクーデターを起こすのが奴等二人の狙い。桂さんは最近では武力による攘夷を捨てて別の道を探しておられた。袂を分かったかつての仲間にいらだちでも感じていたのだろうか、高杉と小原は」
そこまで聞いて他の攘夷志士が「このまま黙っている訳にはいかん!」とやいのやいのと猛々しく乗り込もうだと騒ぎ出した。やりましょうエリザベスさん! 高杉と小原の首を取りに! とエリザベスに同意を求め始め、そのエリザベスがプラカードで<おちつけ!>といさめるも聞く様子はなく。だが、その中でエリザベスは新八が部屋から出ていくのに気が付いた。
駆け出していく新八に後ろからプラカードで<待て!>と書いても聞こえる訳もないのだった。
- Re: 自己満足で書く ( No.11 )
- 日時: 2017/03/25 19:12
- 名前: ぜんざい (ID: RZK0hNxi)
「う゛ぉえ゛!」
鬼兵隊船内通路にて、来島また子が女らしからぬ声をあげた。喉を押さえて「あー、いったァー」と整った顔をしかめる。どうやらご立腹のようだ。
「くっそォ、似蔵の奴めェ、調子に乗りやがって」
先程、紅桜で首を絞められたまた子。まあ確かに殺されかければ腹も立てるだろう。
また子は先程の似蔵の腕に寄生した紅桜を思い出して少し不安になる。あの剣は本当に大丈夫なのだろうか、と。身を持って力を思い知った彼女は使っていないにせよ、その危険性に気づき始めている。そんなときだった、曲がり角からブーツの底をトントンと鳴らしながらいおりが歩いてきたのは。
偶然見つけたいおりの後ろ姿に今まで下がりきっていたテンションは急上昇する。
「いおり様ァ!」
駆け出しながら名前を叫べばいおりは立ち止まって振り返る。また子だと気付けばいつも通りの凛とした表情で「また子」と口を開いた。
隣に並んで歩き出したところで、また子が「どうしたんですかいおり様」と疑問を問い掛ける。些細な変化しか無いが、どうにも疲れ気味な気がするのだ。いおりが酷い面倒臭がりなことを浪士達は知っているので、普段は何をしているか分からないが部屋に引き込もっているか高杉と二人でいるところぐらいしか姿を見ない。今は高杉と一緒でもないし、人が行き交い面倒な仕事も飛び交うここで見るのは珍しい。いおりもそれを理解しているのか、あぁと納得した声を出した。
『晋助と量産型紅桜ん様子見に行っとったんや、まぁそこで村田が来よって……やかましいて、面倒なって来てな』
「確かに、あの大声うざいっスもんね」
また子が同意すればせやんなァと疲れきった声で溜め息を吐くいおり。間近でハァと掠れた低い声で溜め息を吐かれたまた子は危うくその色気に腰砕けになりそうだった。
いおりは見た目こそ、主に上半身の凹凸がはっきりとした大人だが、声は男の様でなぜか色っぽい、関西弁もそれに加担しているように思えるが。ちなみに少し歌い手の志麻に似ている。おっとメタ発言失礼。そして言動や行動がやたらと頼もしいのだ。
きらきらとした尊敬の視線をいおりへと送るまた子はふと脳裏に紅桜がちらつき一気に不安へと誘われた。急にテンションが落ち暗い顔をしたまた子を流石のいおりも不思議に思ったらしく、歩きながら『どないした』と聞く。
「……紅桜のことなんスけど、急にすごく危ないもののような気がして…」
『不安なんか』
「……はいっス。晋助様といおり様に対してではなく、このまま紅桜を持っていていいのか……」
うつむいたまた子がそういったとき、ポンと頭に何かが乗せられた。じわじわと伝わってくる温度にまた子が気がついて、いおりをゆっくりと見上げる。女なのにわりと大きな手のひらだ。
『大丈夫や、お前が不安感じる必要はない』
「……え」
『もし、その不安とやらが的中して責任やなんやとその他もろもろが有るんなら、こっちが全て一人で背負ったる』
「い、いおり様……」
『やから期待して、頼れ。今みたいに』
また子が「きゃあああああ! いおり様ァァァ!! ついてきます一生ついていきますゥゥゥウ!」と叫んだのはほとんど必然と言うかなんというか。
そのあといおりが『じゃあ、ちょっと部屋戻るわ』と去っていった。
**
ドォン! と船内に地響きが起こり、トントンとたたらを踏む。壁に手をついて重心を支えた。
『……なんや……? 爆撃か?』
桂一派の攘夷浪士が復讐にでも来たのか。晋助の後ろ姿を見つけて隣に並べば晋助はこっちを一瞥したあととある部屋にはいった。そこにはうめいて右腕を抑え苦しむ岡田。
「よォ。お苦しみのとこ失礼するぜ。お前のお客さんだ」
晋助がそう告げれば似蔵は「相変わらず仲が良いねェ、お二人は」と皮肉にも似た言葉を返してきた。客とは外のことだろうか。自己完結させれば、「……桂、やったらしいな」と晋助が問い掛け始めたので面倒な気配を察知。晋助の端から動き、会話が聞こえる程度に離れた廊下の壁に持たれかかって腰の左側に下がる愛刀へ目を向けた。切れ味はきっと今も昔も変わっていないだろう、今朝手入れをしたから心配はない。光に照らされ光沢に反射する薄い赤色の鋼の鍔、黒い柄、黒い鞘。中の刀身は光に照らされれば鈍く光り、よく見ないとわからないぐらいに薄い緋。剣閃は赤くなるからついた異名が『緋の剣聖』か、なんとまあ安直なことか。
物思いに耽っていれば、晋助と似蔵の方からガギャンと刀が交わったときの独特の音が響く。慌てて見れば晋助が似蔵に冷たい目をして言い放った。
「二度と俺達を同志なんて呼び方するんじゃねェ。そんなあまっちょろいもんじゃねーんだよ俺たちは」
昔の話でもしていたのだろうか、どうでも良いことだが「次言ったら紅桜ごとぶった斬るぜ」と物騒なことを言ってのけているから苛立ちでも感じていたのだろう。
晋助が隣を歩きながら呟いた。
「お前は、お前だけは、俺から離れてくれるなよ……いおり」
真剣な顔をこちらへ向けて顔を見る目にはこっちしか映っていなくて、少し濁っていた。もちろんだと言うように晋助と視線を合わせて無言で頬に手のひらを滑らせれば、唇を塞がれる。すぐに離れたそれの味は、煙管のせいで少し苦かったが、こっちも煙管を吸うので別に気にはならない。
もう一度晋助の目を見てみれば、濁りは濃くなっていた。
- Re: 自己満足で書く ( No.12 )
- 日時: 2017/03/25 23:10
- 名前: ぜんざい (ID: RZK0hNxi)
磔にされて甲板に出された神楽に向かって桂一派の二撃目の砲弾が着弾した。先程の地響きは港からの、桂に扮装したエリザベスのもので、これから本格的に攻めいってくる様だ。
神楽を尋問していた武市とまた子は神楽が桂一派と繋がっていると読んだ様だが、どうやらアテが外れたみたいである。二人の神楽は桂一派じゃないとわかったあとの砲弾への対処は迅速だった。要するに神楽を置いてその場から逃げたのである。これが上記への経緯だ。
爆煙に周囲が包まれ、また子が「結局何の役にも立たなかったッス!」と悪態を着いた瞬間、黒煙は晴れてその中から姿を現したのは、磔台ごと神楽を支えた新八。
「お待たせ、神楽ちゃん」
地味な奴には似合わない正義のヒーローの様な言葉でも神楽は「新八ぃぃい!」と歓喜の声をあげる。神楽がいくら宇宙最強の戦闘民族「夜兎」とは言え手足を金属で縛られていては動けないのは当然だった。しかも神楽はたった12、13の女の子、無理もない話だ。
ただ、そう格好をつけたのはいいものの、甲板が砲撃で崩され足元が斜めに傾いていくので新八は磔ごと神楽を脇に抱えて全力で傾いていく方向とは逆に駆け上がる。要するにここで滑ったら死ぬのだ。上方からひゅんひゅんと重力に従い落ちてくる木箱や一升瓶を避けながら必死なところで、同じ様に必死なまた子が「何者ッスかァ!!? オイィ答えるっス!」と怒鳴り散らした。それを似たように走りながらいさめたのはこんなときでも表情があまり変わらない武市である。
「また子さん、走ることに集中した方が良さそうですよ」
ああなります、と武市が指を指した先には、なにかにぶつかったのかそれとも足を滑らせたのか、別にどちらでも構わないが叫びを上げながら転がり落ちていく鬼兵隊の兵士。タイミングバッチリだ。その瞬間武市の顔面に一升瓶がぶち当たり、同じ様に転がっていったのはご愛嬌。
新八は怒鳴るようにして弱音を吐く。
「ダメッ、もう落ちる! 神楽ちゃん助けに来といてなんだけど助けてェェェェェェエ!!」
「そりゃねーぜぱっつぁん」
神楽のふざけた言動に「呑気でいいなてめーはよう!」と半ばヤケクソにも見えるツッコミをすかさず入れた。そこで神楽が「ヅラはどうなった」と聞くのだから、新八は黙ってしまった。その様子に察したように「新八」と神楽が名前を呼んだ瞬間、また子らの近くに砲撃が着弾。勢いに押され新八は転がり、神楽はちょうど破壊されていた柵から宙に投げ出された。
「神楽ちゃん!」
咄嗟に神楽の手を掴んだ新八は船から身を乗り出し「ふんぬぐぐ」と唸る。そしてとうとう新八の体をずる、と下へ引きずり込まれ、苦い顔をしたとき、新八の服の襟が掴まれ、ものすごい力で引き上げられた。
振り向けばそこにはノーマルフォルムのエリザベスの姿が。
「エリザベス! こんなところまで来てくれたんだね!」
歓喜する新八に<いろいろあってな>とプラカードで会話を成立させたエリザベス、その後ろにはニヒルな笑みを浮かべた高杉と、普通の表情なのだが初対面からみたら睨まれていると思われがちな鋭い目付きの小原。神楽と新八が姿に気が付いたときにはもう遅く、エリザベスの体は横に二つに斬られ、上半身が風に乗って飛ばされた。そう、高杉が剣を抜き、エリザベスの体を横一閃に切り落としたのだ。
「オイオイいおり。いつの間に仮装パーティ会場になっちまったんだ? ここは」
『さぁなァ。ガキが来てエエところや無いんは、確かやけど』
まるで嘲笑うかのような表情の高杉と、冷たい瞳で冷笑する小原に二人は息を飲む。すると。
「ガキじゃない」
不思議なことに骸になったと思われたエリザベスの中から、懐かしい声が聞こえた。高杉がこの匂いは、と状況を理解したことと同時に、中から男が現れエリザベスが斬られた時と同じく高杉を左から右に刀で横一閃した。
……もちろん、それは高杉の右側、新八らから見て左側に居た小原に、刀身で止められてしまったが。小原に関しては攻撃が来ると言う勘である。
いきなり男が現れた勢いで後ろへとたたらを踏む高杉と相手の刀身を自分の刀で受け止めている小原は目の前の男に目を見開いた。それはもちろん新八や神楽だって同じだった。
「桂だ」
その男とは、髪がショートカットになった桂だった。髪は似蔵に斬られたときに刈り取られたのである。最早ロン毛ですら無くなった桂は、二人を見据えて真剣な表情を浮かべて刀を引く。そして、バッとこの場から一旦下がった高杉に、また子が「大丈夫ですか晋助様ァァァ!」と駆け寄るのを視界の端で捉えた小原が桂を睨み付けながら言葉を溢した。
『これァ、意外な奴に出会たな……こんな戦場で死人に会うとか思わんかったで』
「桂さん!」
桂の後ろの新八が彼の名前を呼ぶ。聞くからに彼はエリザベスと共に相当桂を探していたようで、どこかほっとしていた。それは端に寝転がる神楽も同様で、顔に笑顔が浮かんでいた。
「この世で未練があったものでな。黄泉帰って来たのさ。かつての仲間に斬られたとあっては、死んでも死にきれぬと言うもの。
防がれて斬れなかったが、なァ高杉、小原、お前たちもそうだろう?」
桂が見据える先は刀を右手に構える小原と、また子に側に寄り添われている高杉。高杉はくつくつと喉をならして笑い、「仲間ねェ、まだそう思ってくれていたとは、ありがた迷惑な話だ」と嘲た様子で嫌味を投げ付けて桂を視界に捉えた。
「まさか、斬られたクセに生きていたとはなァ」
「いや、貴様らの無能な部下のお陰さ。よほど興奮していたらしい、ロクに確認もせず髪だけ刈り取って去っていったわ。大した人斬りだ」
『そらどーも。ウチの全く役に立たん部下ァ褒めてもなんも出ェへんで』
「逃げ回るだけじゃなく、死んだふりもうまくなったらしいな。で? わざわざ復讐にでも来たのかィ? 奴を差し向けたのは俺達だと?」
「アレが貴様らの差し金だろうが奴の独断だろうが関係無い。だが、お前たち二人のやろうとしている事、黙って見ているわけにもいくまい」
桂がそう言い切った瞬間、両勢力のトップが対峙するその間にドゴォンと爆発と共に船が突っ込んできた。「! なっ、」と声をあげたまた子の声を聞いてもなお、小原は表情を崩さない。髪を爆風になびかせながら、まるで予想通りだとでも言うような雰囲気で突っ込んできた船すらも冷たい目でぼんやりと見つめる。内心はあかんめっちゃビビった近い危ないビビった、とビビりまくりだったが全く顔には出ていなかった。ここら辺ほとんど彼女の意地である。実に涙ぐましい意地である。
- Re: 自己満足で書く ( No.13 )
- 日時: 2017/03/26 22:54
- 名前: ぜんざい (ID: RZK0hNxi)
「貴様らの野望、悪いが海に消えてもらおう」
桂は大真面目な顔をして言い放った。そこはちょうど紅桜の工場で、もうボロボロである。何してくれてんねん桂、損害酷いんやけど。
また子が逆上して桂を怒鳴り付けて、周りの男共も感化され桂の周りを取り囲む。こっちはというと既に晋助の横に戻っており、ほとんど傍観する感じだ。遠目に見ていたのだが、磔から脱出したチャイナ_神楽と言う少女が勢いよく桂へとジャーマンを喰らわせ、眼鏡はキレて「ふざけんのも大概にしろォ!」ともぬけの殻になった磔で桂の顔面を殴る。え、仲間割れしとん?
「いつからエリザベスん中入ってた、あん? いつから俺達騙してた?」
「ちょ、待て。今はそういうこと言ってる場合じゃないだろ、ホラ見て今にも襲い掛かって来そうな雰囲気だよ」
「うるせーんだよ! こっちも襲い掛かりそうな雰囲気!!!」
こっちの目がおかしくなったんやろか、桂めっちゃ怒鳴られてへん?
桂は高杉と小原が絡んでいるとは思わなかっただ、俺個人の問題だと思っただ、故に変装してただと言い訳を始めるのだが、眼鏡_新八と神楽は「だからなんでエリザベスだァァァア!!」とそれぞれ桂の足を掴んで回転し出す。それで襲おうとしていた兵士を殴りつけるのだからもう手が付けられない。
桂何してんねんと言う呆れた顔をしながらぼんやりと眺めていれば、向こうから桂一派の船がこの船へと向かっているではないか。それはこの船へと衝突し、桂側の浪士が溢れかえってきた。これまた面倒なものになったものだ。だるい。
「高杉! 小原! 貴様らの思い通りにはさせん!」
「ちっ、全員叩き斬るッス!」
また子の指示から始まり、両勢力は入り乱れての大乱闘が開始される。こっちと晋助は武市とまた子の護衛の元、場所を移動。とっとと来いや桂。
*
長いこと夢の中にあると、目玉では映らん微かな光でさえ拾えるようになる。ソイツが人間の放つ物だと知ったのはいつだったか。線香花火のように人間もまた消えゆくとき一際大きく美しい花を咲かす。だが稀にコイツを生きながらに背負う奴等がいる。その光はひどく不安定で攻撃的でそして哀しい色を帯びていた。知ってか知らずかその光に惹かれ人が集まる。そうまるで蛾のように。だが一度あれらの光を見てもう闇の中に戻ることは俺にも出来なかった。
似蔵の前には、鈍く光る銀髪の男が真剣を構えていた。先刻まで桂の船一隻を落とした似蔵だが、銀髪_坂田銀時を落とすのは難しそうだ。
*
幾人もの道を塞いできた男たちを切り伏せた桂は、とうとう小原と高杉のところへと辿り着いた。先程とは別の甲板の上、高杉は台に腰掛けて、小原はその傍らで至極面倒臭そうな顔をしている。
高杉が桂の背後にある建物の瓦ばりの屋根を見上げた。
「ヅラ、あれ見ろ、銀時が来てる」
『……意外よな。銀時、こういうん来んそうやのに。……ガキ二人が関係しとるからか』
一人納得したように腕組みをして屋根を見上げる小原。やっぱりそういう人情には厚い奴だとでも言いたげに口角が微かに上がり、見る人には冷笑に見える微笑みをたたえている。高杉は「紅桜相手にやろうってつもりらしいよ」と嘲笑した。
「クク、相変わらず馬鹿だな……。生身で戦艦とやりあうようなもんだぜ」
それを聞いて、二人に倣い同じように屋根の上を見上げていた桂は静かに「……もはや人間の動きではないな」と悲しげに目を細める。桂が言うには、紅桜の伝達司令に付いていけず身体が悲鳴をあげているらしい。続けて「あの男、死ぬぞ」と告げた。
「貴様らは知っていたはずだ。紅桜を使えばどのようなことになるか。仲間だろう、なんとも思わんのか」
『あのなァ桂。別になんとも思わん訳やないんやで、こっち等は』
「そうだ。でもな、ありゃアイツが望んでやったことだ。あれで死んだとしても本望だろう」
怪訝な顔をして「本望だと?」と聞き返してくる桂に高杉と小原は二人してニヒルに笑みを浮かべる。まだ遠くでドンパチ、屋根の上でガンギンと闘う音が響いているのに、二人はまるで興味が無い様だった。まるで、当然とでも言うように。
「そうだ。あいつァな、まさしく刀になることを望んでる。俺といおりと言う篝火を護る為の刀にな」
『もう一回闇に戻るくらいやったら、火ぃに飛び込んでその勢いを増長させるんも厭わん奴や。光に目ぇ焼かれて最早それ以外見えん。なんちゅー哀れで愚かな男やろな。村田曰く、そこには善も悪も越えたそこには美が有るらしいで。一振りの剣と同じ美がな』
少し間を置いて、高杉が自身の鍔の無い黒塗りの柄の刀を見て「刀は斬る。刀匠は打つ。侍は……なんだろな」と桂に問いかけた。その場から立ち上がった高杉は船の外に広がる大きな、排気ガスにより黒ずんだ青い空を見る。
「まァなんにせよ、ひとつの目的の為に存在するものは強くしなやかで美しいんだそうだ。剣のように」
単純な連中だろ? と答えを求めていない同意の声。それに小原は晋助らしい、と笑みを浮かべ、桂はいつもの何を考えているかわからない顔で黙って口出しをしない。高杉は酷く真剣な顔をして「だが嫌いじゃねーよ」とだけ吐き捨てた。風に煽られた彼の髪がはためき、その紫色は鮮やかに映える。
「俺もいおりも、目の前の同じ一本の道しか見えちゃいねえ。畦道に互い(俺といおり)以外の仲間が転がろうが、互い(俺といおり)以外の誰が転がろうがかまやしねェ」
坂田達が戦っていた屋根の丁度下で轟音が轟いた。決着が着いたらしい。やれやれと内心で重い溜め息を吐いた小原はそれとは別に、高杉の言葉に酷く同意していたのだった。相変わらず晋助はこっちの全てを理解してくれていた。そして、こっちも晋助のしたいことやりたいこと考えること考えていることを理解している。そう、安堵のような笑みを微かに浮かべた。
「高杉、小原。」
唐突に桂は「俺はお前達が嫌いだ、今も昔もな」と言い出した。ほお、と少しだけ目を丸くした小原と、背を向けている高杉。桂の「だが仲間だと思っている、昔も今もだ」とそう続いた言葉に小原は眉をしかめた。
「いつから違った、俺達の道は」
『それは違う』
素早く返された言葉に桂は目を見開くでもなく、静かに小原を見つめる。つまらなさそうな、めんどくさそうな顔をした小原は「アホか」と淡々とそう言った。はァ、と大きく息を吐いた小原は、高杉と同じ方へと顔を向けながら淡々と告げる。
『確かにこっち等は、始まりこそ同じ場所やったかもしれん。やけど、あん頃から、晋助は例外としてこっち等は同じ場所なんか見とらん。どいつもこいつも好き勝手、てんでバラバラの方向を見て生きとったやないか』
「その通りだ。俺は、俺達はあの頃と何も変わっちゃいねー。俺達の見ているもんはあの頃と何も変わっちゃいねー。俺達は_」
高杉はここからはあとでだと言うように言葉を止めた。確かに、その言葉は今の段階では必要のないものである。高杉は「ヅラァ、俺達はな」と話題を斜めにずらした。小原は塀に背を預けて、腕を組んだまま。
「てめーらが国の為だァ、仲間の為だァ剣を取ったときも、そんなもんどうでもよかったのさ」
『そういうことや。考えてもみろや、その握った剣、コレの使い方を、こっち等に教えてくれたんは誰や? こっち等の武士の道、生きる術、それらを教えてくれたんは誰や?』
「……俺達に、生きる世界を与えてくれたのは、紛れもねェ。」
『「松陽先生だ/や」』
その声は酷く悲しげだった。

