二次創作小説(紙ほか)
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- 自己満足で書く
- 日時: 2017/03/19 00:00
- 名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)
どうもおはこんばんにちはぜんざいです。
ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。
ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。
しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。
では。☆(∀´)ゝシ
- Re: 自己満足で書く ( No.19 )
- 日時: 2017/07/29 00:05
- 名前: ぜんざい (ID: gKlwWMvF)
短編。ぜんざいが今連載している『神崎くんは叱られたい。』と『黒子のバスケ』のクロスオーバー。神崎くんは叱られたい。は多分完結後と言うことになっています。一種のIFです。
神崎くんたちは高校、大学を出て社会人。黒子たちは帝光時代。ざまぁ要素がかなりありますので嫌な方はブラウザバック。
**
東京の私立帝光中学校から少し離れた場所にあるコンビニエンスストア。あたし、桜雨 准(さくらめ じゅん)はバイトをしていた。九十八学園の高等部大学部を卒業したあたし、と言うかいつも行動を共にしていた神崎と一宮の三人は九十八学園と言う学園都市を出て、各々自分の進みたい道へと一歩を踏み出していっている。神崎は大学院生に、一宮は公務員の試験に受かった。対するあたしはと言うと、場繋ぎのための資金貯め。所謂貯金。そんなバイトももうじきやめる訳だが。神崎が理由である。大学院を卒業するまで待ってくれだとさ。どれだけ待たせるつもりなんだあの無意識女たらし。そんなところも好きですが。
実際、神崎のモテ様は私が心配になるレベルだ。目が合えば惚れられ喋るとついでに告白され、見た目で惚れられ話の中でフラグが立つ。まあ、本人のその俗に言うイケメンな容姿も合間っているはずだ。神崎自身全く気付いていないのだが。呪縛が解けたと言うのに未だ無くならないその『他人から叱られない体質』は一向に直らず、近頃神崎は前にもまして目が死に始めた。元々が死んだ魚のような目の癖に、それ以上死んでどうすんだよ神崎。まあ、アイツと仲がいいのは私と一宮のみと言うのは、少しばかり優越感を覚える。
そんなことはさておき、高校でこれでも高嶺の花と言われてきた私だ。たとえ元ヤンだとしても、知らない人は見た目に騙されるらしい。不良をやめて髪を伸ばしたらびっくりするぐらい環境が変わって一時期人間不信にすらなったが。
現在もそうだ。クビにされたくなくてボロがでないようにした敬語と、貼り付けた笑みのあたしに、一人の軽薄そうな雰囲気の男がレジ前でナンパしてきている。神崎でも一宮でもいい助けて。流石に手は出したくないんだ。
「このあと空いてる? 空いてんならちょっとお茶でもしない?」
「(なんつーテンプレートだこのボケナスチャラ男が、くたばれゴミクズ手ェ握んな触んなとっとと離せそして死ね)すみません、このあとは用事が入っておりまして」
「あ、ならその予定キャンセr」
「無理ですすいません絶対無理です(神崎がバイクで迎えに来てくれんだよキャンセルとか有り得ねぇからとりあえず死ね)」
「あ、そう。じゃあいつなら行ける? 行ける日あったら連絡いれてよ、連絡先交換しよ」
「すみません、それはちょっと……(無理だっつってんだろしつけーな。そろそろ釘バットが恋しくなってきたんだけど)」
手を握られて逃げることもままならない。てめぇの視線あたしの胸に釘付けなんだよ下心丸見えだわ性欲の権化め。中学前半から無駄にデカくなったからあたしも困ってんだよもう嫌だ神崎助けて。
そろそろプッツンしそうなときだった、「あー、桜雨さん久しぶりッスー!」と男を突き飛ばして横から出てきたのは金髪金目のシャララデルモ犬と名高いキセリョだった。帝光中の制服来てるから帝光生なんだ。キセリョとは、黄瀬涼太くん、なんでも中学バスケ界の頂点に君臨する五人からなるキセキの世代とやらの一人らしい。これは仕事仲間の男子から聞かされたものだ。興味あるの? と聞かれたので全く無いですねときっぱり言えばその彼はほっとしていた。そのあと神崎があたしをバイクで迎えに来たのを見て絶望した顔をしていたが。残念だったな名も覚えてない仕事仲間。あたしは神崎一筋だ。
ところでこの黄瀬涼太とは、レジで度々出くわすだけで、ここまで仲良くなったいわれはない。名字を知っているのは名札を見たからだろうと思い、助けてくれたのだと感じつつ、会話を合わせるとナンパ野郎は舌打ちしながら帰っていった。
「行ったっスね……」
「すみません、ありがとうございました。正直どう対応しようか迷っていまして」
「いえいえ! でも帰りとか気を付けた方がいいっスよ、なるべく一人にならないようにしないと。いつ襲われるか分からないっスからね……。なんなら」
「ご心配ありがとうございます、帰りは人と一緒なので問題ありません」
にこりと営業スマイルを貼り付けると、黄瀬は続けようとした言葉を打ち止め、「そっスか!」と軽快に笑う。コイツはここによく来る所謂お得意様だからいい顔しとかねぇとな。バイト仲間の女の先輩がなるべく引き留めて!と言うので毎回長話をしているが。正直このザ、犬! みたいな奴は苦手と言うか嫌いだ。
「あ、今度バスケの試合があるんスけど、よかったらどうっスか? この日っス」
「すみませんその日は先約がありまして。と言うか、私はレジでのお誘いには行かないことにしているんです。せっかく誘ってくださったのに、すみません」
「……なら仕方ないっスね…」
出た、きゅるんとしたうるうるの瞳でどうしてもダメっスか攻撃。これがあるからこいつが嫌いなんだ気付けよ。そのままにこにこ流していれば相手が折れたのか、ミネラルウォーターとおにぎりを買って帰っていった。もう来んなシャララデルモ。
- Re: 自己満足で書く ( No.20 )
- 日時: 2017/07/29 12:32
- 名前: ぜんざい (ID: gKlwWMvF)
その翌日、黄瀬は青峰と言うキセキの世代の一人を連れてコンビニへとやって来た。入店した際、ぱちんとウィンクしてくれちゃっているがチャラ男に興味はない。青峰とやらはあたしを、と言うかあたしの胸をガン見して目を逸らした。この思春期め。
「昨日ぶりっすね! 桜雨さん!」
「いらっしゃいませ」
ミネラルウォーターを片手に笑顔でやって来た黄瀬に笑顔で対応すると、彼は満足げに笑う。特別扱いされてるとでも思ってんのかみんな一緒だっつーの。
青峰が雑誌を持ってきたので笑顔で対応すると、黄瀬は「えっ!?」とでも言いたげな顔であたしと青峰を見る。青峰はと言うと、黄瀬にたいしてドヤ顔していた。お前も別に特別じゃねーから。初対面だろ。
「どーも」
「またのご来店をお待ちしております」
社交辞令としてそう言えば青峰は雑談しねぇのかよときょとんとし、黄瀬がやっぱり俺との雑談は特別だったからなんすね! と顔を輝かせる。バイト仲間の頼みだったからですが?
「桜雨さん、聞いてくださいよ〜」
「桜雨さーん、休憩時間だよー」
「休憩時間ですので失礼します」
ヘラーっとろーっとした満足そうな顔で話しかけてきた瞬間の休憩時間。ショックな顔をした黄瀬は会話してくれますよねとあたしにすがるがそれをスルーして中に引っ込む。絶望した顔をしていたが知らん。思い上がるんじゃない中坊ごときが。
女子バイト仲間と楽しく会話していたら掛かってきたスマホに掛かってきた電話。あたしの顔がぱっと和らいだのを見てバイト仲間はきゃああと黄色い声をあげて興奮した目で「早く出てあげて!」と店外に押し出された。少し照れ臭いのもあるが、顔がにやけるのは仕方がない。壁に持たれてスマホを耳に押し付けた。
「……もしもォし、辰巳?」
『准? 俺だけど』
「どした? なんかあったか?」
『今日何時に終わるか聞いてなかったなって思ってな』
「今休憩十分。あと三十分でもう終わるけど。すぐ来れんのか?」
『……むずい。椿も行きたいっつってたから、歩き』
「相変わらずだな、椿は。まぁ、あと三十分あるし、たまにゃ良いだろ」
『あのな……』
「ふふ、怒んなよ。もにもには? 家か?」
俺の頭の上だ。と言われ、くすりと笑みが漏れる。相変わらず、七不思議の二番と六番はあたしたちになついている。七番は未だ見たことがないがどうせどこかで出会う機会もあるはずだ。
そのあとも笑いながら話に花を咲かせて休憩時間ギリギリまで話して終了。ホクホクとレジに戻れば待機していたらしい黄瀬と青峰が良いことでもあったのかと聞いてきたので照れ臭そうに笑っておいた。言っておくがお前たちに興味など微塵もない。
- Re: 自己満足で書く ( No.21 )
- 日時: 2017/08/03 23:53
- 名前: ぜんざい (ID: VCG9nm3.)
今日も今日とてコンビニバイト。レジでニコニコ「いらっしゃいませー」っつっとけば大抵はどうにかなるだろうと言う失礼すぎる感想を抱きながら、そんなこと思ってすみませんでしたと今めっちゃ土下座したい。Dogeza☆したいめちゃしたい。
目の前に黄瀬と青峰と、二人が新たに連れてきた赤髪の赤司くんとやらがあたしの目の前にいるんだけど、なにこいつニコニコ爽やかに笑ってるけどなんとも言えない威圧感すごい。泣きたい。た、辰巳助けて……。
「あなたが二人の言っていた桜雨さんですか?」
「はい、そうですけど……」
「すみません、うちの馬鹿が最近ここに入り浸っているみたいで。雑談までなさってくださるとか」
「あぁ、いえいえ。仕事ですので。雑談は、まぁ、うちのバイト仲間が黄瀬くんをよく見たいから引き留めて、と言うお願いなのでしていることなので……黄瀬くん引き留めると青峰くんもひっつっいてきてしまうのですが、やめるように言われるのならやめますよ」
赤司の後ろの黄瀬が「え、そうだったの!?」とでも言いそうなぐらい目を見開いていた。自分が特別だとでも思っていたのか、ふははは、ばかめ、あたしの中の特別は辰巳と真揮と椿(七不思議六番)ともにもに(七不思議二番)だけだぞ。
思い上がるんじゃないぞ小僧、とか無駄に悪役ぶっていたら、赤司くんにじっと見られていたのでにこっと笑い返すとその端整な顔立ちの頬がほんのり赤く染まった。おいおい勘弁してくれ。
「長居も禁物でしょう、俺はこれで失礼しますね」
去り際めちゃめちゃ良い笑顔を残されて赤司くんは黄瀬と青峰引き連れて帰っていきました。黄瀬と青峰があたしが赤司に惚れてないかハラハラした様子で見ていたがあたしが惚れてんのは神崎辰巳のみだ。誰が中学生に恋するんだよ。ショタコンじゃねーぞあたしは。あいつらは既にショタではない。
**
次の日もあのカラフルな頭たちはやって来た三人増えた。水色の髪の影薄そうな男と紫の頭した身長くそ高いのと緑の眼鏡。カラフルかよ。マジでカラフルかよ。
「こんにちは、桜雨さん。会えて嬉しいです」
「いらっしゃいませ」
早々にきゅっと赤司に手を握られてコイツやべぇとか思いながら黄瀬や青峰も顔見知りなのでこんにちはと張り付けた笑顔で返す。顔が赤くなるのはご愛嬌かそうなのか死にたい。
緑に紫、水色といらっしゃいませと微笑むとみんな頬を赤く染めるのだからもううんざりだ。微笑まなければ良いのか? そうなのか? 無理に決まってんだろ仕事だぞ。
「……黒子テツヤです」
「……緑間慎太郎なのだよ」
「紫原敦〜」
うん、そうだね。誰が名乗れと言ったよこのカラフルども。お前らの牽制のしあいみてんのやだよ。悪いことしてる気分になるから! 客が増えれば良いな、と思ってやってるけどもう我慢の限界近いんだけど!? とりあえず名乗ろう。
「はじめまして、桜雨です」
張り付けた(ここ大事)笑顔で名乗ると緑間と黒子、紫原、黄瀬、青峰の顔が赤く染まる。約二名笑み向けてませんが。赤司くん笑顔で手をギリギリ握るのやめていただいて良いでしょうか痛い。かつてないほど骨がミシミシいってんだが折れないよな? 大丈夫よな?
まぁ、もうじきここともお別れだ。辰巳の卒業が近いから、もう会うこともなくなるだろう。我慢我慢。
- Re: 自己満足で書く ( No.22 )
- 日時: 2017/08/16 00:18
- 名前: ぜんざい (ID: lByHJ1tJ)
昨日、辰巳が大学院を卒業した。こう言えばもう分かるだろう。このコンビニ最後の今日は生憎の品出しだ。この時間帯が一番絡まれやすいからあたし的にはそんなに好きじゃない。
人もいないので無表情で黙々と下の棚の品出しをするべくしゃがんで仕事をしていると、不意にとんとんと肩を軽く叩かれた。まぁ誰だか予想は出来る。どうせまた調子に乗った黄瀬とかだろう。これはあれだ、叩かれたら振り向いてそのまま頬をふにって奴だろ読めてんだよ。そして敢えて反対を向いて応じるスタイル……!
「ふむぐっ」
「あっ、やっぱり引っ掛かった!」
反対を振り向くと予想しなかった指。読まれた思考。必然的に頬をふにっとされたが、問題はそこじゃない。問題は背後から聞こえてきた幼い少年の声だ。幼いと言っても10か11程度のものだが、何度も言うが聞き覚えがある。
コイツが自分のテリトリーを飛び出してここまで出てくるのは珍しいな、とキョトンとしながらソイツの姿を見つめた。
「やっほー准ちゃん! お仕事の様子見に来たよ!」
「椿お前、ここまで出てこれたんだなぁ。昨日ぶり。お前相変わらず頭良いよな」
「うん! 物は試しだね! 俺もここまで出てこれるとは思わなかったよ! 准ちゃんの仕事姿見れて俺嬉しい!」
あたしに飛び付いて嬉しい! を体で表現している小さな生物は『椿』。九十八の学園都市全体を自分の行動範囲とする学園の七不思議の中で二番目の強さを誇るの六番、『家庭科室の地下階段』を担う地縛霊だ。その呼び名の通り、普段はよく家庭科室に出没する。見た目は十歳かそこらで、学帽にカッターシャツ、袴的な昔の学制服を見にまとった少年だ。しかしその無邪気な笑顔と違ってザクロ色の瞳は何を考えているかわからない、私達の気の知れた友人である。
まぁ神崎辰巳の叱られない体質の原因はこいつにあると言っても過言ではないが、その件は解決してるから良しとしよう。
ただ、椿は性格にかなり難がある男だ。まったくもってめんどくさいショタ爺です。例えば。七不思議のみんなも大事なようだが優先順位は私達の方が高いらしい。他にも私達三人を『大切な友人』と言ったり、全力前進全身全霊を持って加護したり、とてもなついたりしていたりととにかく辰巳、真揮、あたしの三人に酷く甘く優しい。が、それはあたしたち三人と七不思議に限っての話だ。
世の中に心の身内にひきいれると優しく、それ以外はとても冷たいと言った人間がいるだろう。椿はそれの代名詞と言っても良い。あたしたちを褒めたりする人間に対しては「友達を褒めてくれてありがとうすごく嬉しい!」 と笑顔で顕著に表現するが、あたしたちをよくない目で見る人間に対しては「出てくるなゴミカス」という風に冷たく当たる。真揮は知らないが、あたしと辰巳に恋愛感情を持つ人間に対してはもっと顕著だ、口に出してしまう程度には。だって真揮と共に真っ先にあたしたちをくっつけようと奮闘してくれたのだ。当たり前と言える。最早お父さんというかヤンデレの域。しかし椿は嫌いじゃない。好き。
まぁ要するに、感情の起伏が激しいと理解してくれたら良い。
「せっかく来たし椿なんか食う? あたし奢るけど」
「え、ホント!? やったね! 准ちゃん優しい大好き!」
「でも高いのはやめろ、今日の晩飯は外であたし持ちなんだからな」
「うんわかったー!」
わーい、とぱたぱたと駆けていく椿の後ろ姿に溜め息を吐いた。ホントにわかってんのかオイ。ソッコーでハーゲン置いてあるアイス売り場行ったぞ。返事だけは良いんだからまったくあの子は。母の心境が今ならとても分かる。
結局持ってきたのは今季限定のハーゲンダッツでした。流石にダメ? ダメ? と目で訴えられると買わないわけにはいかないですよね。なんだかんだあたしも椿に甘いのである。まぁ今夜は椿連れていつものメンバーで焼肉ですけどね! 辰巳がすげえ食うから泣きたいな! あの大喰らいめ!
とっとと真揮か辰巳が引き取りに来てくれないかなとか考えながら今日は真揮が車で辰巳乗せてやって来るんだと思いだし、だから椿も来たのかと納得した。くそう。
**
Noside
今日も今日とて部活に勤しむ帝光バスケ部のレギュラー、キセキの世代の五人+黒子はいつものコンビニへと足を向けていた。黒子が居るからと桃井も着いてきたわけであるが。
「へぇ〜、そこコンビニの美人の店員さん評判なんだ! 私何回か行ってるんだけど鉢合わせしたことないなぁ」
「まぁあの人もいつも出てる訳じゃないのだよ」
「すげぇ優しいんすよ! 珍しく笑顔で対応してくれるし、会話だって! 絶対俺のこと好きっすよ桜雨さん!」
「それはないのだよ」
「なにほざいてんだよ黄瀬、あの人の下の名前も知らねぇくせに」
「うっ、うるさいっす! そのうち教えてもらうんすから!」
自信満々に言い切った黄瀬に対し、緑間が睨み、青峰が鼻で笑い飛ばす。しかし顔が「それは俺に対してだろ」と言っていた。どこにそんな根拠が。その奥で紫原が「キョーミなーい」とうまい棒をかじった。紫原に関しては綺麗な人だなぁと思う程度だ。黒子もそれに同じく。
しかし一番重症なのは赤司である。外掘りを埋めて逃げ場を無くす作戦を取っている彼は準備の整った今日、「俺と一緒に来てくれますよね」と威圧を掛けるつもりだった。
まぁ失敗に終わったのだが。
「あれ、桜雨さん!?」
黄瀬が前方から少年と男二人と歩いてくるのを発見した。
- Re: 自己満足で書く ( No.23 )
- 日時: 2017/08/16 23:42
- 名前: ぜんざい (ID: lByHJ1tJ)
桜雨、神崎、一宮、椿は今日、外食の約束を元々していた、桜雨の最後のバイトの日。普段は神崎が桜雨を送り帰すのだが、外食なので一宮の車で帰るため少し離れた駐車場へ向かっていた。そして通り道で赤司等と鉢合わせをしたわけだが。
当の桜雨は気付いてなかった。当然だ。まだ夕方なので人通りが多い。つまり中学生たちが意識しすぎているというわけだ。
桜雨に想いを寄せる四人はいつもと雰囲気の違う彼女に怪訝に顔をしかめ、七人は興味を持ち、端に身を寄せて通り過ぎた彼らの後を追いながら会話に耳を澄ませる。別にストーカーではなく、目的地が一緒だという風を装って。聞こえてくる彼女の声はいつもより少し低かった。それでも鈴を転がしたような美しいものだが。
「あー、バイト疲れたー」
「……お疲れ」
「あんがと辰巳。今日なー、品出し中にナンパしてくる二人組の二十代位のゴミカスクズ男居てさぁ、しつこすぎて思わず手が出そうになったわ」
「うーわ。准はマジでやりそうで怖ぇわ。やるなよ? 絶対やるなよ?」
「はぁ? ぶっ殺すぞ真揮テメェ」
「元ヤンだろお前は。謝るから殺すとか言わないで、じゅんじゅん」
「じゅんじゅん言うんじゃねーよ真揮殺すぶっ殺す」
「すみませんでした!」
「……じゅんじゅん……」
「ん? なに? どした辰巳?」
「……別に悪くない。俺は、好きだ」
「そうだな! 辰巳が好きならもういいよそれで! 辰巳もう好きだ愛してる!」
「……知ってる」
「オイコラ待て待て、准は俺と辰巳に対する扱いの差の大きさを考えて、お願い」
ばっとおもむろに神崎の右腕に抱き着いた桜雨は満面の笑顔だ。その時赤司の笑顔は凍り付いた。神崎の左側にいる一宮はあまりの対応の差に苦笑いして自分を指差す。真ん中の神崎は桜雨の勢いに少しよろけ、神崎に肩車をしてもらっていた椿はぐらつきに驚いて神崎の頭を抱え込む。しかし弾けんばかりの笑顔で彼は言うのだ、「この場のマキマキの疎外感は凄いね!」と。
「それは目の前でリア充を見せ付けられているからか!? それとも俺の嫁がこの場に居ないからか!? 返答によっては車出さないからな!?」
「え、車出してくれないのは困る! どうしようたつみん!」
「その前に抱え込まれて前が見えないから解放してくれ椿」
「あっごめん!」
「准も動きにくいから離れろ」
「悪かった辰巳! 愛してる!」
「うん、知ってる」
この時黄瀬と青峰、緑間は桜雨を少し理解した。桜雨准とは、口調が悪く、元ヤンで愛情はおおっぴろげにする人間だと。コンビニで想像していた“優しく、おしとやかで女らしい女性”と言う空想の桜雨が崩れたのである。そして赤司含む四人は『辰巳』と呼ばれる、目にハイライトの無い表情の起伏が貧しいイケメンを憎悪の目で見た。恐らく、彼氏だろう。本来なら自分がそこにいるはずなのに、どうしてお前が我が物顔で彼女の隣に立っているのかと。
「つか、なんで辰巳は黙ってんだよ。今日また花瓶割ったんだろ? コイツテンパって俺に連絡してきてさ、それなのに言った言葉は「また割った、どうしよう」だけだったんだぜ? まず何割ったか教えろよ!」
「……検討つくだろ」
「ん〜、辰巳が割ったと言えば花瓶くらいだしねぇ。あ、この花瓶何回も割っちゃう不運に俺は関与してないよ!」
「……されてたら泣くからな」
声がワントーン落ちた神崎にカラカラと違うよー、と笑う椿。桜雨は「で、今回はどうだったんだ?」と問い掛ける。キセキたちはなんのことだと考えながら次の言葉を待った。
「……ダメだった」
「「元気出せよ辰巳……っ」」
「二人してそんな顔されると惨めになるからやめろ。どうせ俺は、俺は……」
「うわ出た辰巳のネガティブシンキング」
「……それやめろ真揮、殴るぞ」
「おかしいな〜、呪縛は解けたからもうそうならないはずなのに」
「椿でもわかんねぇとなると手に負えねぇな、あたしが店で叱ってやるから安心しろ辰巳」
「ありがとう准……」
訳のわからない会話に背後の一同が首をかしげていると、一宮がにやっと笑って「式日は決めたか?」と問い掛けた。それに桜雨はボッと顔を赤くし、神崎は平然と「来月だ」とあっけらかん。四人は声もなく悲鳴をあげた。
「ほんとにもー、准ちゃんと辰巳くっつけるの大変だったんだよ!?」
「桜雨も今はこんなにあけっぴろげだけど、告白する前はちょこちょこ出すだけで自己主張しないし。胸の自己主張だけは激しいのに」
「真揮お前喧嘩売ってんのか」
「別に売ってねぇよ!? それに辰巳は鈍感過ぎて全く気付かないし。お前運動部のマネージャーとかに助っ人頼まれてたろ、あれもアピールなのに気付いてなかったし、このニブチン!」
「……お前も大概だろ」
「そうだ。お前だって如月にアピールされてたろ。そして無惨にそのフラグをへし折って……可哀想に」
「そ、それを持ち出すんじゃありません! 俺達もう結婚してるし! 俺如月姓だし! ちゃんと気付くし!」
「……この言い訳にしか聞こえねぇ感、どう思う准」
「如月が可哀想だな、死ね真揮」
「だからお前ら俺に当たり強くね? どう思いますか椿さん」
「先に結婚した君が羨ましいんだよ!」
「ふっ、そうだったのかお前ら!」
「「絶対違う」」
そう楽しげに車に乗り込む様子を、四人は呆然と、他は素敵だなんだと言いながら眺めていた。
翌日、コンビニで四人が問いただそうとすると、桜雨は昨日限りでバイトをやめたと告げられたのだった。
『終』

