二次創作小説(紙ほか)

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自己満足で書く
日時: 2017/03/19 00:00
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)


 どうもおはこんばんにちはぜんざいです。

 ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。

 ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
 アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。

 しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。

では。☆(∀´)ゝシ

Re: 自己満足で書く ( No.4 )
日時: 2017/03/20 21:15
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)


いおりside

 数日後の事だった。父さんから、もう松下村塾へもう行くなと言われた。



『……なんでや』
「あっこは幕政批判、国家転覆、怪しげな教えを説くと噂になっとるみたいやからな」



 ……何を今さら。
 今こっちにそう告げている父は道具をがちゃがちゃと整理している。そう言うことを言う時ぐらい此方を見て言ったらどうやねん。金と権力と周囲の目しか気にしていない癖に。今更ずっとほったらかしにしていた娘の心配を……いや、ちゃうな、こうやってこっちに注意するのは娘がそこに出入りしていることを噂されたらここの変な噂が立つからやろうな。
 ホンマに、今更父親ぶっても誰がそんなもん聞くねん。



『嫌や』
「あかん」



 短く告げればすぐに同じように短い返事が返ってくる、その鋭い目付きで此方を睨み付けると言うオマケも付けて。評判の優しい笑顔はどこにいったんやこの若作りくそ親父が。



「次塾行ってみ、勘当やで」
『何や、今更父親ぶりよって。金と権力しか見てへんくせに。この若作りが。失せろや』
「いおり」



 次の瞬間にはパンっと頬を思いきり叩かれた。かしゃんと勢いで飛んでいった眼鏡が地面に落ちる。叩かれた体勢のまま父を睨めば、父さんは最早ゴミを見る目ような冷たい瞳でこっちを見ていた。



「お前みたいに声は男みたいに低いわ胸と身長しか育たんかったわの馬鹿娘にそんなん言われる筋合いないで」
『好きな女を無理矢理強姦して孕ませたんがこの馬鹿娘やろうがドアホ。その所為で母さん自殺したんや。なにを今更、偉っそうに』



 次は鋏が飛んできた、鋭い睨みと共に。かすった頬からたらりと薄く血が垂れる。医者がこんなんしてええんか、とか文句のひとつも言ってやりたいが、これ以上面倒なことにするわけにも行かへんし、今回は引くかと父の部屋をあとにした。ああ、勘当か、清々するわ、そう思っていたのに去り際の言葉でこっちは絶望に落とされた。



「お前を堀田の許嫁に出したわ。勘当したらそこまでやが、相手は相当お前に惚れ込んどるからな、いや、その身体からだに、か」



 ぱたりと閉じた扉を、もう一度開ける気にはならなかった。何を勝手に。堀田……? あれやん、晋助を目の敵にしているあのグループ。いやや、絶対。アイツがこっちに惚れ込んどるのはきっと嘘や。晋助の大事なもんをとるためだけに……人の人生まで。
 ずるずると壁に背を預けて廊下に座り込む。なぜだか無償に晋助に会いたくなった。

 夕方、晋助も父親から塾へ行くなと言われたようで、一日中二人でぶらぶらしていた。時折菓子を食べたり、塾を遠くから眺めたり。
 そんなことをしていたら日が暮れて、いつもの神社の境内にやって来た。晋助が腰を掛けて夕陽を見るなか、こっちは晋助の背と背中合わせで座る。見えるのは神社の奥だった。なぜだか気まずい。昨日の許嫁の事はまだ晋助には伝えていない。伝えられていない。



『……』
「いおり?」



 不意に晋助に声を掛けられた。別に、と素っ気なく返してやはりこっちは父さんに言われた通り女らしくないなと嘲笑する。剣は最近手合わせするようになった銀時にも負けたことない。もちろん晋助にだって負けたことない。ホンマに可愛いげのないやつやな、自分は。



『なあ』
「…なんだよ」
『……こっちさ、堀田ん所に許嫁に出されたわ』
「へェ……ん!!?」



 一度は頷いたのだが、そのあと言葉の意味を理解したのか背後で変な声をあげた。背中越しに伝わってきたのは酷く動揺したと言うことだけだった。『父さんに』と告げれば晋助は「どこまで権力広げる気だよあの人……」と呆れた声を出す。



『……めんどいし、アイツ嫌いやから嫌や』
「……」
『嫌やなァ……』



 ……どうしよ、行きたない。初めて言う我が儘は声が掠れた。ああ、泣きそう。今回のは我慢はできひん、行きたくない。そんな許嫁とか、ぶち壊してこの日常に居たい。
 他の令嬢さんとかは、何でこんな唐突な許嫁やらなんやらを文句のひとつも言わずに受け入れられんねん。そう考えるとそちらの女の子はこっち遥かに強いと思えた。何がどうと言われると、具体的には言えないが、こう、精神的な面で。ああ、こっちは無理や。そんなに強くない。
 諦感の表情を浮かべていると、晋助が「立つぞ」と言って一人立ち上がった。空いた背中が無性に寂しくて、ああそうかと悟る。だが、その悟った気持ちに蓋をして目を閉じた。わざわざ晋助を困らせる必要はない。出さなければ良いのだ。こんなもの、面倒なだけやんか。どうして気づいてもーたんや。



「いおり」



 名前を呼ばれてゆっくり振り向けば、晋助がいた。真っ直ぐにこちらを見つめて。何がなんだかわからず固まるこっちを気にする様子もなく、晋助は告げた。



「行きたくないなら俺のところに来い。俺が貰ってやる」
『……は』



 間近でそういう晋助は別に冗談を言っているようには見えない。至って真剣なようだ。一方のこっちは唖然だ。



「俺がお前を嫁に貰ってやる、ずっと傍にいさせてやる」
『……晋助』
「俺なら絶対そんな顔させねェ、だから」



 傍にいろ。
 よおそんな気恥ずかしい言葉言えるな、とからかおうとしてやめた。真剣な声色にふざけていないと理解したからや。その言葉にしばらく間を置いて、ゆっくりと頷き立ち上がる。



『……ずっと晋助の傍におる。何がなんでも、晋助とおる』
「そうだ。俺も一生いおりの傍から離れねェ」



 その言葉がやけに心の底を焦がした。さっき蓋をしたくせに、開いた。どんだけ意思が軽いねん。でも、やっぱり晋助が好きやった。



Re: 自己満足で書く ( No.5 )
日時: 2017/03/20 22:36
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)



 翌日、晋助と二人で松下村塾の様子を見に来た。相変わらず笑顔で授業を行っている様を見て、あぁ変わらんななんて思う。しばらく二人で何も言わずに眺めていれば、背後から「噂通りだ」と聞きたくない声が聞こえてくる。振り返るとそこには堀田を中心に取り巻きがいやらしい顔をして立っていた。



「近頃塾で顔を見んと思っていたが、こんな怪しげな寺子屋にご執心とは。高杉、榊原。いよいよお前らも講武館破門だな」



 晋助を見てそう告げて、それからこっちをその気持ちの悪い目付きで見つめてきた。あまりのキモさにチッと舌打ちをかまして視線を逸らす。どうせこっちをものにできると言う余裕が有るのだろう。アホ共め。後ろでどの順番でヤるかっちゅー話し合いして気っ持ち悪い。



「むしろ清々したか。だが残念、ウチをクビになってもお前等の行くところはないぞ。今晩にもこの寺子屋はつぶれる。父上にこの塾に関するあらぬ噂を吹き込んでおいた、役人が動く」



 自信満々の顔でそう告げた堀田は晋助を笑った。もうここにお前たちの居場所はない、高杉、お前はもう侍になどなれんよと。お前は一体何様や。
 静かに言い返しもしない晋助の隣で平然と彼らを見つめた。



**

 その晩、こっちと晋助はいつも役人が出入りしている門の近くにいた。満月の綺麗な夜だ。晋助は腰に木刀を指して、こっちは肩に担ぎながら民家の壁に背を預ける。すると桂が通りを挟んで向こう側の民家の壁に背を預けた。



「こんな夜更けに出歩いて良いのか二人とも。今度こそ勘当されるぞ」



 桂がそうこっちたちに声を掛けた。晋助は「心配いらねェ」と小さく告げる。視線はちらりとこちらへ一瞬向いた。



「どうせ明日には勘当される身だ」
『こっちはもうされた』



 昼間のあのあと、前に松陽先生と初めて会ったあの神社で、彼らを二人で伸したのだ。本当に、手応えのない奴等だった。どうしてあそこで粋がれたのか分からないくらいに。
 そのあとこっちが診療所へ連れていけば開口一番「勘当や」と告げられ二言目には「二度と『榊原』を名乗るな」と言われてしまった。まあこれで許嫁の話も白紙に返るし、万々歳なのだが、如何せん名乗る名字が無くなってしまった。どうしようかと悩みながら本を読んでいれば、本の作者の名字貰ったらエエんちゃうやろか、と思い至りその名字を拝借した。
 桂は夜に出歩けば特待生も取り消される可能性がある。それを晋助が指摘すればゆとり教育には飽きていたところだ、とお前は本当に子供かと突っ込みたくなる言葉が飛んできた。



「夜になる前に逃げるよう伝えてきた。借りは返さんとな」



 恐らく松下村塾のことを言っているのだろう。借りとは多分、坂田と松陽先生に助けてもらった時のことだろう。全く、律儀な奴である。
 遠くの方で、役人がやって来たのが見えた。



「名門講武館きっての神童と悪童と最強が組むんだ、役人の足止めぐらい容易かろう」



 桂がそういった時、「名門の三人? 笑わせるな」とバカにしたような声が通りの奥から聞こえてくる。まさかと思い、三人で振り返ればそこには木刀を手に持ち、腰に真剣を差した坂田がいた。



「国家転覆を狙う悪の巣、松下村塾の悪ガキ『四人』の間違いだろ」



 いたずらげに言い放った坂田に『おいおい……』「お前は!」「なぜここに! 逃げろといったはず!」と三人で問い詰めれば「そりゃ松陽の話だろ、なんで俺まで逃げなきゃならねえ」と優雅に小指で鼻をほじりだした。きったないな。



「それに、学校のサボり方から夜遊びまで覚えたんだ。もうてめェら立派なうちの門下だ。別れの挨拶位来るさ」



 坂田はそのまま真ん中を歩みだし、「十分だ、てめェらもう帰れ」と進んでいく。「士籍を失いてぇのか」と告げた坂田に、気ぃでも使っとるんか、不器用なりに、と全員で鼻で笑って歩き出した。



『坂田、こっちはもう勘当されてんねん』
「戻る場所なんざあったら、ハナからこんな場所来ねェ」
「お婆が死んでから天涯孤独の身、もとよりこの身を案ずる者などいない。何より、士籍などと言う肩書きが必要なものには、もうなるつもりはない」
『こっから先は、女でもきっと士籍は必要ないねん』
「もしそんなもんがあんなら、誰に与えられるでもねェ」
『この足で探し』
「この目で見つけ」
「この手で掴む」



 四人で並んで道を歩く。ようやく役人共がこっちらに気づき、おい童共と声を掛けるのと同時に場の雰囲気はがらりと変わった。すらりと他が木刀を構えるのに倣い、こっちもスッと片手で握った。



「松下村塾、吉田松陽が弟子、坂田銀時」
「同じく、桂小太郎」
「同じく、高杉晋助」
『……同じく、“小原”いおり』



 榊なんちゅーそんな大層なもんは要らん。“小”さくても“原”点がはっきりしとったらエエ。作者の名字を見て、ふと頭にこう思い付いて付けた名字や。誰にも文句は言わせへん。



『「「「参る!!」」」』



 木刀を振り上げ駆け出したとき、役人も刀に手を掛けた。それと同時に「抜かないでください」と静かな声が辺りに響く。ピタリと全員の動きが止まった。声の元は役人の後ろ、視線を巡らせればそこにはいつもの穏やかな笑顔とは違う、酷く真剣で怖い顔をした松陽先生。



「どうか剣を納めて下さい。両者とも」



 どうか私に、抜かせないください。どこか懇願するような松陽先生の声に、四人で腕を下ろす。
 役人の一人が「吉田松陽貴様!」と声をあげるも、役人たちの真ん中を悠々と歩き出した先生に遮られた。



「私のことを吹聴するのは構いません。私が目障りならどこへなりとも行きましょう。……ですが」



 先生が歩いてとうとう役人の先頭まで来た瞬間、役人たちの刀がパキンと割れた。いや、斬られたといった方が正しいのか。きっと先生だ。いつ抜いたのか全く分からなかったが、きっと。やっぱり、その強さには憧れる。



「剣を私の教え子たちに向けるのならば、私は本当に国家ぐらい転覆しても構いませんよ」



 そう告げた先生に役人は恐れを成してあわてて逃げていった。なんて情けない、と思うものの振り向いたときの先生の視線は冷たかったし無理もない。



Re: 自己満足で書く ( No.6 )
日時: 2017/03/20 23:20
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)



「やれやれ、教え子は巻き込まないように全員家に帰したつもりでしたが、こんなところにもまだ残っていましたか、悪ガキどもが」



 先程の冷たい雰囲気とは違い、いつもの松陽先生は此方にそう告げた。そして晋助に向かって「すみません道場破りさん。破るにももう道場も学舎もなくなってしまいました」と困った様子だった。



「心配いらねェ。俺が破りてェのは道場じゃねえ。アンタだよ松陽先生」
『こっちはもう、松陽先生以外を師と仰ぐつもりはないんやけどな』
「先生。我らにとっては先生が居るところなら野原であろうと畑であろうと学舎です」
『……教えてくれたやろ、松陽先生』
「アンタの武士道も俺たちの武士道も、こんなもんで折れるほど柔じゃないだろ?」



 驚きで目を見開く先生は「やれやれ、銀時」と隣で相変わらず鼻をほじる坂田へ視線を移して「こりゃまた君以上に生意気そうな生徒を連れてきたものですね」と呆れ気味に微笑んだ。



「そうだろ」



 鼻くそをピンと飛ばした坂田は松陽先生を見上げて笑う。先生もそれに微笑み、「では早速路傍で授業を一つ」と人差し指を立てた。



「ハンパ者が夜遊びなんて100年早い」



 コツンコツンコツンコツン、そんな軽い音の拳骨と共にこっちとその他三名の体は地中にドゴッと埋まるのだった。



**

 ぱちりと目が覚める。ずいぶんと懐かしい夢を見た。まだ、松陽先生が生きていた、平穏な……幸せな思い出。

 あれから。しばらくは楽しい日々は続いたものの、何者かに塾は焼かれて先生は奈落等と言うものに連れていかれてしまった。あの異常な強さの先生がそんなに簡単につれていかれる筈はないと思ったもののもう気に止めない。
 そして先生を取り戻すために攘夷戦争に参加して、鬼兵隊を晋助と共に作って、戦って、坂本辰馬を加えて五人でリーダー格として動いて、異名まで付いて、強くなって、それでも先生は死んだ。幕府が、世界が先生を奪った。坂田が、こっちらと先生を天秤に掛けてこっちら三人を取って、先生の首を飛ばした。そこのところ、いまだに理解できないでいる。なんでこっち等を取ったのか。まあ坂田なりの考えがあったのだろう。先生は最期に笑っていた。坂田も泣きながら微かに笑っていた。何をされても泣かなかった坂田が、泣いた。
 晋助は左目を失ってしまった。だから、晋助の左目になることに決めたのだ、こっちは。それからもう、10年が経った。
 窓の外を見れば暗い暗い宇宙、隣を見れば穏やかな寝顔の晋助。ああ、今でもこれは幸せなのだろうか。幸せに違いない。
 眼鏡を掛けて、襟付きのワイシャツを着て、短パンを穿いて、装飾の入った目立たなく暗い薄いカーマインの着物を明るい赤色の男物の帯で結んで黒いコートを肩に羽織る。腕は通さない。
 攘夷戦争以来解散した鬼兵隊を、また一から晋助と作り直して、今は倒幕を狙い活動している。言うなれば一種のテロリストな過激派攘夷志士。お国の為に戦ったのに、お国から追われるとは理不尽な。



『……晋助、起きや』



 いつまでも眠りこける旦那兼総督を揺さぶればすんなりと起きた。相変わらずこの歳では男性としては晋助は小さいようで、こっちとあまり身長が変わらない。まあ見下ろされるよりはマシだ。



「……今日はアレだなァ」
『……あァ、前の。料亭で幕吏が十数人集まってやる会談のやつやな……めんど』
「あれもこれもってめんどくさがんじゃねェよいおり。お前は今日斬り込みとして動いてもらうんだからな、“緋の剣聖”」
『……なんや、悪意感じるわァ、“鬼兵隊総督”くん』
「てめェは総督の次に偉いだろーが」



 ポイッと投げられた赤と黒の柄の太刀。そんなにぞんざいに扱わんといてや、とぶつぶつ文句を言いながら腰に下げる。



「行くぞ」
『ん』



Re: 自己満足で書く ( No.7 )
日時: 2017/03/21 18:27
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)




 京から移動して、幕吏十数人を大虐殺。もう殺すことに躊躇いなんて全く感じなくて、人殺しの手だと実感する。
 真選組も周りを嗅ぎ回っているらしい。あいつらめんどくさいんよな……。
 そして、今、こっちと晋助は江戸に居るのである。真選組が嗅ぎ回って居ようと、ここで鎖国解禁二十周年の祭りがあるからには、行かないわけにもいかへん。晋助も派手好き…と言うか祭り好きやし。よもや、将軍まで出てくるのだから、尚更。
 まあ、今橋の上で桂と会話している晋助を見て「あの着物目立つわァ」と様子を眺める。
 晋助が桂と話終えたようで、こっちにゆったりと向かってくる。隣に並べば町をぶらぶら。……真選組仕事しろや。
 片や紫の布地に黄色い蝶が散りばめられた派手な女物の着物を着た男と、ワイシャツに黒の短パン、腰にジャージを巻いた女。それぞれが笠を被っているのでそこそこ視線を集めるが気にする必要もない。



「腹減ったなァ……」
『昼時やしな』
「飯でも食うか」
『ん』



 鎖国解禁二十周年の祭りが開催される道を歩く。こっちと晋助は予定通り向かう道の途中の河原で足を止めた。



『……へぇ、居るな』
「あァ、行くぞ」



 河原で機械をいじる老人、_平賀のじいさんに晋助と共に接触を図るのだった。



 同時刻、真選組屯所にて。鬼の副長、土方十四郎が「いいか、祭りの当日は俺達ゃ真選組総出で将軍の護衛につくことになる」と真剣なトーンで告げる。自分たちが護衛をするからには掠り傷でもつければ全員の首が飛ぶ、心してかかれ、と念入りに隊士に刷り混む。



「まちがいなく攘夷派の浪士どもも動く。とにかくキナくせぇ野郎を見つけたら迷わずぶった切れ。俺が責任とる」
「マジですかィ土方さん。俺ァどうも鼻が利かねぇんで、侍見つけたら片っ端から叩き斬りますァ。頼みますぜ」



 土方の宣言にすかさず嫌がらせをし出すのは沖田総悟、彼は土方のことが気に入らないらしく、四六時中彼の首をと副長の座を虎視眈々としたたかに狙っているのだ。直ぐ様「オーイみんな、さっき言ったことはナシの方向で」と取り消す土方には先程の威厳なんてものはなかった。
 ゴホンと咳払いした土方は「それから」と和室で隊士に言い聞かせるように話し出す。



「コイツはまだ未確認の情報なんだが、江戸にとんでもねぇ二人が来てるって情報があんだ」
「とんでもねー奴等? 一体誰でェ。桂の野郎は最近大人しくしてるし」
「以前料亭で会談していた幕吏十数人が皆殺しにされた事件があったろう、あらァ奴等の仕業よ。攘夷浪士の中でも最も過激で最も危険な男と女……高杉晋助と小原いおりのな」



**

 どんぱんとうち上がる空砲は、祭りの開催を知らせる合図だ。そう、祭りが始まったのである。
 夕暮れ時、晋助と共に平賀のじいさんの様子を見に来たのだが、思わぬ収穫を得た。たった今、平賀のじいさんの手伝いだのなんだのと喧しかった三人組。そのうちの一人が、銀髪天パ。そう、坂田である。
 橋の上で二人で並んでその光景を見てお互い薄く笑みを浮かべた。そのままその場を後にして、適当にふらりふらりと店を物色する。



『やっぱたこ焼き美味かったわ……』
「そういやァ、お前関西出身だったな」
『なんでそれで思い出すねん。意外と偏見やぞ』
「へェ」
『この林檎飴旨い』
「一口寄越せ」
『ん』
「……甘ェな」
『林檎飴やし』
「…銀時だな、あれ」
『……甘い話した途端やなァ、偶然』



 丁度そのとき、花火が上がり始めた。どん、パラパラ。花火特有の音を響かせて消えていく。晋助がそれを見上げて瓢箪の酒を飲んだと思えば、すぐ目の前に銀時はいて、なるほどと納得する。周りが花火に夢中で視線が釘付けなのをいいことにってことか。



「やっぱり祭りは派手じゃねーと面白くねェな」
「!」



 一際大きく花火が空を染めたとき、坂田が腰に差さる木刀に手を掛けた。晋助はそれより先に腰に下げた鍔のない、昔から使っている刀を半分ほど抜く。振り向いて木刀で殴るが早いか、そのまま斬るのが早いか、恐らく結果は同然。こっちは晋助の右隣で何時でも抜けるよう準備万端だ。



『動くなや』
「クク、白夜叉ともあろうものが後ろをとられるとはなァ、銀時ィ、てめェ弱くなったか!?」
「……なんでてめーらがこんなところに居んだ……」
『煩いで』
「いいから黙って見とけよ。すこぶる楽しい見せものが始まるぜ……」



 そう、平賀のじいさんの、面白い見せ物。



Re: 自己満足で書く ( No.8 )
日時: 2017/03/22 00:06
名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)



 突如、平賀のじいさんが見世物をする方向からドォンと煙が上がった。始めたんか、あのじーさん。
 昔、鬼兵隊に三郎って男が居った。剣はからっきしやったけど、機械には滅法強い男やった。その男はいつもいつも俺は戦争しに来たんじゃねえ、親子喧嘩しに来たとずっと親父のことを語っていた変なやつだった。鬼兵隊に居たために攘夷戦争で幕府に打ち首で殺された。その首を河原に並べられて、息子が死んだ事を知った親の_平賀のじいさんの想像はかたくない。
 坂田が晋助にお前らがけしかけたのかと低い声で聞く。まったく、そういうところは成長したなぁ、お前は。
 晋助は立派な牙が見えたから磨いただけだとちらりとコチラに視線を向ける。こくりと頷けば晋助は満足げだ。
 テロだなんだと逃げ出す群衆はこの場には目もくれず、避けて逃げていく。そんな群れを見て、哀れやなァと目を細めた。すると、隣の晋助が強ばる。どうしたのかと見てみれば、坂田が晋助の刀の刃を握っているではないか。何をしとるんやと坂田を見れば、晋助が視線で手ぇ出すなとこっちに指示を寄越す。それに溜め息を吐いて視線を下へと下げ、呆れる。



「高杉よ。見くびってもらっちゃ困るぜ。獣ぐらい俺だって飼ってる」



 その言葉と共に、自分の手のひらも省みず、坂田はミシミシと強く刀の刃を握り締めた。晋助は握られた刃を見つめ、瞳孔を微かに開かせる。どうやら坂田の腕力のせいで刀が動かないらしい。危ないようならこっちが出るまで。



「ただし黒くねェ。白い奴でな。ん? 名前? 定春ってんだ」



 そう言って振り向いた坂田は右手を握っていて、拳を振り被る。咄嗟に飛んでくる腕を横から掌抵でパンっと弾き、軌道をずらす。晋助自身も避けていたようで無傷だ。
 臨戦態勢に入るべく坂田を見れば、既に遠くにある背中。逃げた……いや、あの暴動を止めにいくつもりだろう。相変わらず、仲間思いのめんどくさい奴だ。



「行くぞいおり。真選組が嗅ぎ付けてくらァ」
『……ん』



 晋助の隣に並びながら、フッと口角を上げる。それを見た晋助もニヤリと笑んだ。



『……昔の牙を無くした思っとったが、そんなこと無かったな』
「あァ、そうだな」
『ホンマ、お前らいつんなったらこっちに勝てるんやろな』
「……気が向いたらな」



**



 翌日、朝方に船に帰れば「晋助様ァァア! いおり様ァァア!」と言う叫び声。向こうから駆け寄ってくるのは来島また子である。金髪にセクシーな赤ピンクの腹出しの衣装を着て笑顔で彼女はやって来た。
 晋助と鬼兵隊をもう一度作るときに、わりと最初の方にスカウトした銃使いだ。大変な境遇にいたから、結果的には拾ったことになる。それからこっちと晋助に大層なつき、今では猪突猛進、キャッキャと年相応にはしゃいでいるのだ。かわいい。



「お仕事ご苦労様ッス! 次の準備もできてるッスよ晋助様、いおり様!」



 ピシッと敬礼した彼女に晋助は「おう」とだけ返し、「いおり、先に行く」と告げてのらりくらりと行ってしまった。おいてかんといて。
 残されたこっちにまた子がえっ、えっ、と晋助を見、こっちを見、戸惑っているのに気が付きアイツホンマ不器用やなと微かに笑って告げる。



『……まあ、要するにな。よく頑張ったから、こっちを今だけ置いてったるっちゅーことや』
「えっ」
『……さてまた子、遊びに行くでー』



 彼女の腕を取って歩き出せばしばらくしてから「はいッス!」と元気な声が返ってきた。それを聞いて少し笑みを浮かべて、どこから回るかをまた子と話しつつ歩きながら江戸の町へと繰り出した。晋助は今ごろ河上と酒でも飲んでいるだろう。
 どこ行こかなァ。




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