二次創作小説(紙ほか)
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- 自己満足で書く
- 日時: 2017/03/19 00:00
- 名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)
どうもおはこんばんにちはぜんざいです。
ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。
ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。
しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。
では。☆(∀´)ゝシ
- Re: 自己満足で書く ( No.24 )
- 日時: 2017/09/10 01:31
- 名前: ぜんざい改めマメツキ (ID: 9wv.1jV8)
マギ連載。少年シンドバッド逆トリップ。もちろんシンドバッド落ち。シンドバッドの冒険が主。後々夢主が彼に連れられトリップしますがもう少しあとになるかも。下ネタくるやもしれん。
夢主の設定は大学生。巨乳眼鏡の関西弁。わりと性格が男らしい。両親は他界済み。現在は一軒家に一人で住んでいる。家の裏には道場があり、剣道や空手を自己鍛練したりな武道娘。道場に家宝の日本刀が飾られてる。頭はどちらかと言うと良い方な平凡子。面倒見はいい方なめんどくさがり。
名前は恐らく下のそれしか出ないので『イオリ』とだけ。かつオタク。
**
さて。
「!? !?」
腕の中ででかなり戸惑った様子の見知らぬアラビアンな服装の幼児、どこの子。
事件は一分前。今日の講義が二時限目からだからと、布団でぬくぬくと寝ていると、何やら抱き覚えの無い暖かな存在にふと目を覚ました。目を開けて横向きに寝ていたのでそのまま視線をやると藍色と言うか紫と言うか、形容しがたい色の髪をした幼い子供が居た。起き上がってその少年と唖然と見つめ合い、とりあえず眼鏡を掛けて少年を凝視し余りにも可愛かったので抱え込んで頭を撫でくり回した。いやぁ可愛いなこの子。
しっかし、どこかで見たことがあるんだよなぁ。
「っ、おまえはだれだ! おかあさんをどこにやったんだ! おれをさらったのか!」
『ん?』
バッと腕から逃げ出した少年、と言うか幼児だがこの際少年で良いや。その少年が涙目で指を指して怒鳴り付けてきた。わりとでかい家で良かった。こんなの普通の家じゃあ近所迷惑だ。
とりあえずそのまま頭に手をのばせば触るな! と一喝されて叩き払われた。
『言うとくけど、こっちはお前をさらってもないし、お前のおかあさんもここには居らんよ』
「!?」
とたんに泣き出しそうになった少年を「こっちが何者かって言われてもなぁ。名前はイオリやけど」と言うとおかあさんおかあさんと泣き出した。あぁあぁ可哀想に。そりゃそうだろう、まだ五歳ごろの少年が見知らぬ土地と見知らぬ人間におかあさんがいないと言われたら泣くわ。多分こっちも泣く。
あーあーと唸りながら再び抱え込んで頭を撫でる。ぎゃんぎゃん離せだの近付くなだの怒鳴っているがとりあえず泣きたいなら泣けばいいさ。めんどくさいし。後半はほとんど泣きに徹していた。怒鳴るのも疲れたのだろう。
そこから嗚咽が聞こえる程度にまで収まると、そっと体を離す。
『落ち着いたんか』
「……」
どうしようそっぽを向くこの子が可愛い。多分散々怒鳴って泣き喚いて冷静になって考えてちょっと反省したのだろう。それでもギリギリと親の仇の様に睨んでくれているが。
名前を聞くと教えない、出身地を聞くと教えないの一点張り。なかなかしぶとい子だ。可愛いけど。将来はイケメンになるはずだ羨ましい。
『……とりあえず寝起きやし、顔洗わして……』
「……」
『頼む……』
ギリギリ睨むのをやめないのでとりあえず腕に抱えて立ち上がる。洗面台に向かい、そこで子供を下ろしてさっさと洗顔を済ませ、タオルで顔を拭く。
思ったんだがこの子、ずいぶんと土臭い。とりあえず風呂のボタンを押してタオルを用意した。
『さて。少年、脱げ。風呂や』
「……!?」
少ししてから言葉を理解したのか目を見開いて驚いていたがもう問答無用だ。暴れる子供の服をひっぺがし、風呂場に放り込む。いまだ困惑した顔の少年にここぞとばかりにお湯のシャワーを浴びせ、こっちは服を来たまま椅子に座り、膝に乗っける。またちょっと暴れたがお湯を頭に掛けたら大人しくなった。シャワーを見て驚いていたから見るのは初めてなのだろうか。とまあそんなことはどうでもいい。
シャンプーを手にして告げる。
『少年、目ぇ瞑っときや。染みるで』
これには素直に応じてくれたので助かった。さっさと頭を洗い、体もとっとと洗い終え、そそくさと風呂場を後にして脱衣所へ。
かったるかったので素早く少年の体を拭き、こっちのTシャツを被せた。うわ可愛い。
「……」
『……そんな睨まんといてや、少年』
少年の髪をタオルでわしわしと大雑把に水分を拭き取り、そのままタオルを頭に被せて視界を塞ぐ。その間にこっちも濡れた服の着替えを済ませた。
ドライヤーでしばらく髪を乾かしてリビングへと入る。ドライヤーにビビって泣き出しそうになったのは秘密だ。知らんかったんやな……。
リビングにて。ソファに腰を下ろし、その上に少年を乗せながらやっと一心地着いた。
思ったんだが、この少年シンドバッドじゃないか? 太い眉と言い髪色と言い服装と言い金色の目と言い容姿といい。かの有名なマギの中に出てきた、『七海の覇王』と呼ばれるシンドリア王国の女たらしシンドバッドじゃないか?
お前一体何者なんやねん、教えてくれてもええやろー。とシンドバッドらしき少年を抱えながらゆっくりゆっくり前後左右に小さく揺れる。しがみつくとこ超可愛い。
『あのなー、名前ぐらい教えてくれや少年ー』
「……ド」
小さく呟いたそれに顔を近付けて耳を寄せると、小声でシンドバッドと返ってきた。そうか、やっぱりシンドバッドか。となると逆トリップの線が一気に濃くなった。
『なぁシンドバッド少年。分かっといてほしいんやけど』
「?」
確信となった幼いシンドバッドを抱き締めたままそう言うと、シンドバッドは顔だけこちらに向けてキョトンとした。あ、もう警戒はしてないようだ。早いな。名前教えてくれたことが切っ掛けかもしや。
『こっちはお前をさらった訳でもないし、お前のおかあさんをどうこうしたわけでもないからな。そもそも、こっちはなんで君がここに居るんかわかってないねん』
それだけは知っとって、と告げるとシンドバッドは少し考えたあと、ゆっくりこくりと頷いた。その可愛さたるや、自然と頬が緩む。
『あーもーシンドバッドは可愛えなー』
くしゃくしゃと頭を撫でていると、唐突にその感覚が無くなった。見ると服だけ残して幼いシンドバッドは消えていた。
若干名残惜しい気もしないでもないが。とりあえずマギをネットで検索したら一件もヒットしなかったのでこれはわりとヤバいのではと今更ながらに危機感を覚えた。
しかしまぁ、シンドバッド可愛かった。
『またな、少年』
- Re: 自己満足で書く ( No.25 )
- 日時: 2017/09/10 17:29
- 名前: ぜんざい改めマメツキ (ID: 9wv.1jV8)
実はちょっと私の作品『フレデリ・トリガー』とクロスってたり。
気がつけば迷宮のようなところにいた。あれ、ここどこ。
『……超展開や…』
どうしてかかなり幼い声と、動きにくい体。なぜか手元にあった家宝の日本刀を握り締め、周囲を見渡す。見たことのない地形、湿った生暖かい空気。キラキラと輝く泉に咲き誇る花。どこか幻想的と言える、大自然のような都市。
以前シンドバッドに会ったことから予測するに、ここはマギで出てくる迷宮だろう。まったく、厄介なところに来てしまったものだ。自分の適応能力が高くて本当に良かった。伊達に超人のいた学園を武芸トップで卒業してないわ。
さて、探索するかと足を踏み出すところりと転けた。あれ。
丁度近くの泉に転がったので姿を見てみると、パッと目に入ったのは幼い容姿。まだ十三、十四かそこらの、中学生のような。服装はスニーカーにニーハイ。短パンにズボンから裾が出ているワイシャツ、黒と赤の上着。以前の隊の服を小さくしたような。
『……は』
よくよく聞くと声もその当時のまま。どうやら若返りトリップなるものを体験したようだ。もとの世界の対天使大戦で似たようなことはあったからもう驚きはしない。驚いてなるものかこのやろう。
とりあえず今後の身の振り方より、目の前に立ちはだかるモンスターどもを、身の丈ほどある動かしにくい太刀に当たる日本刀で蹴散らさねばならないのか。
『久々に、ぶちかましてエエよな!』
顔に少しばかりの笑顔を浮かべて腕を振り上げる。直ぐ様立ち上がる火柱に顔の笑みを濃くして、刀を抜く。このトリガーを初めて使ったときに現れた今では家の家宝となっているこの刀。赤い鞘から抜き去れば、現れる深紅の柄にそのまま続く漆黒の半透明の刃。これがこっちの専用武具だ。
体術すらも使い、以前の元の体より幾分か小さい身体を存分に疲労して気持ちの悪い敵を叩き潰していく。
伊達に『剣帝』など呼ばれていない。とは言えなんだこの数辛い。ドカドカと気持ちの悪いモンスターは蹴り潰し、子竜を叩きのめし、ボスっぽいドラゴンすら焼き払う。もうがむしゃらだ。天使じゃないのが唯一の救いか。天使からの攻撃ならやられた傷は治らない。トリガー使いはただの攻撃なら回復力でカバーして命に関わる怪我でなければ二、三日で治るだろう。
そしてたどり着いた宝物庫、重苦しく扉を開けると、そこには石のガラクタがたくさんだったが、ジンの入ってるそれを触ればきれいになると知識があって良かった。
真っ先に、中央に突き刺さる大剣に手を伸ばして、触れれば。
『…う…っわ……!』
目映い光が大剣を中心に広がり、先程石だったものが高価な金属と変わり果てる。目の前に出来た大きな影を見上げれば、そこには青い魔神の姿があった。流石のこっちも驚きだ。こっちの世界も『七つの大罪』や『七つの属王』、『七つの色瓶』と選び選ばれ強大な力を得る契約はあった。しかしこっちはそれらに一度も触れたことはない。力を得るとはこういうことかと身を持って知った気がする。
現れた女のジンは言った。
«我が名はシュヴァルツシルト。寵愛と調教のジン»
彼女はそう告げたあと、シュルシュルと人間大のサイズになると腕を組んでジロジロと不躾な視線を寄越した。まるでこんなガキがとでも言うように。
«ねえ、王になるのは……貴女?»
『おん』
こくりと頷くと彼女はカラカラと笑いだし、おもむろにこっちの胸ぐらを掴むと低い声で「貴女みたいな子供があ?」とバカにしたように言い放つ。それを聞いたとたんこっちは『あ¨?』とメンチを切った。これには少し驚いたようで、彼女_シュヴァルツシルトは胸ぐらを離して身を引く。
«……まあ、この迷宮は子供がクリア出来るほど甘くはないものねえ……»
考え込む彼女にとりあえず来たんだから良いだろうがと視線を寄越すと、«私に怯えないのも肝が据わってるからよね»と一人満足した顔でうなずいた。まったく持って訳がわからん。
«分かったわ! 貴女を私の王と認めましょう! その日本刀を取り、受け取りなさい! 貴女の望んだ力よ!»
『……まあ、エエか』
成り行きで手にした金属器。もて余るトリガーの力、幼くなった体。
大変なことになってしまった。トリップとか笑えん。そう迷宮の外で財宝に囲まれながら苦笑いを溢した。
**
攻略した迷宮は第0迷宮らしく、これは原作には無かったなとイレギュラーと分類して財宝を全て売っ払ったこっちは水と食糧と小舟を購入して海に出た。
『いやぁ海が綺麗で眩しいねえ』
船の上で腕を広げてカラカラ笑う。いや、本当に第0迷宮が人に知られていなくて良かった。知られていたら今頃かのシンドバッドのようにお国を追われていただろう。あそこはこっちの国ではないが。
しばらくは海の上の生活を満喫しようか。
- Re: 自己満足で書く ( No.26 )
- 日時: 2017/09/10 23:19
- 名前: マメツキ (ID: 9wv.1jV8)
さてさて。船で生活しはじめて一ヶ月。漂流中の干物のように干からびた藍とも紫とも取れる形容しがたい髪色の少年を拾った。とりあえずこっちの船へと引きずりあげた。水も食糧も持たずとは命知らずな。おもむろに水をばしゃりと掛けた。
いやはやどこかで見覚えのある子供だな……。そう首を捻りながら少年を上から眺めていると少年がぱちりと目を見開いた。あ、既視感。金色の瞳を見てそう思ったのだが。
「うわっ!」
『ん¨んっ!』
目を覚ました途端目の前に人が居ることに驚いたのか、少年は声を上げて飛び起きる。運悪く避けきれなかったこっちは彼と額をぶつけ合わせ、お互いに悶絶する。
コイツ、シンドバッドや。確かにもう13か14ぐらいだが確かにシンドバッドや。
未だに額を押さえて唸る彼に「シンドバッド少年……?」と恐る恐る問い掛けてみると、彼はキョトリと涙目でこちらを向いた。うわ可愛い。
「……? 確かに俺はシンドバッドだけど……。少年って言われる程君と年は離れてなくないか?」
『……あー、せやな』
困った顔をする少年に覚えていないかと苦笑いしてとりあえず『でかなったなあ』と告げる。仕方ない、当時の彼は幼少だったからなあ。怪訝に見つられると気まずいからやめてくれ。
ずいぶんとしおれていたので水と食糧を渡すと彼は輝いた目でこちらを見て良いのかと問う。構わないと言うように手をヒラヒラ振れば途端に飯にがっつくから面白い。
どうやらシンドバッドは腹がいっぱいになったらしく、こちらを見て笑顔で告げた。
「それにしても助かった! 何せ忙しすぎて水と食糧を忘れてたんだ!」
『ホンマな。こっちもびっくりしたわー。干からびたもんが漂流しとったからなー』
「ははは! すまんすまん!」
へらへらとお互いに笑い合えば、突然シンドバッドが眉間に眉を寄せる。なんだどうしたシンドバッド。
しばらく考え込んだシンドバッドはハッと何かを思い出したように呟く。「あのときのお姉さんか?」と両手の人差し指を指してきた。
思わず目を点にすると、「いや、違うなら別に良いんだ」と目を逸らすシンドバッドに頬を緩ませる。いやはや覚えていたとは嬉しい限りだ。なんだこの超展開のご都合主義。
『……いや、あっとるよ。こっちとシンドバッドは一回会ったことある。なにせお前にとっちゃ十年ほど昔や。覚えてへんやろうとは思っとったんやけど』
パッと顔を輝かせたシンドバッドに「あ、コイツ超可愛い」と内心消えない熱をもって暴れまわる。
『こっちはイオリ。訳あってよう分からんまま子供になってこっちに来とった、お前の予想通りの人間や』
「っ、!」
そう名乗った途端ぱっと手を取られて、あのときの出来事を悉く謝ってくるシンドバッドに笑っていたら、シンでいいと言われてこっちもイオリで敬語もなくていいと告げる。
ああもうシンドバッド超可愛い。
『ところで。シンはどこに向かっとんや……?』
そう問い掛けるとシンドバッドは「行き先は決めていない!」と高らかに宣言した。彼の夢は国民が手を取り合って笑っていられる国を作ること。それだけを目的し動いてきたらしい。
とりあえず国を作るとか本当に頷いていればシンドバッドは満面の笑みで「わかってくれるかイオリ!」とこっちの手を握って上下にぶんぶんと振り回す。そして顔すら近い。なんかこの子女の扱いになれてるな……。いや、こっちも人のこと言えないか。
『シンはちゃんと夢があって偉いな……』
「? イオリにはないのか?」
『……ないな、叶えたい夢は向こうで叶えてきてもうたし、こっちでは特に……』
夢が無いのだと告げればシンドバッドは少し考えてからにぱっと笑った彼は声を高らかにして告げた。感情豊かやなあ。
「イオリも俺と来るといい!」
『……は?』
「俺の夢を叶えることをお前の夢にすればいいんだ!」
『えぇ……。……ちょっと雑やけど』
エエな、それ。とニヤリと笑う。そのまま彼から伸ばされた手を取れば、満足そうにシンドバッドは微笑んだ。そして友好のハグだと胸に飛び込んで来る。もちろん文字通りに。鼻の下伸ばしてこのエロガキ、ちゃっかりしとるわコイツ。可愛い。
ぎゅうぎゅうと腕の力を込めて顔を胸に埋めるシンドバッドの頭を撫でてからベリッと引き剥がすと残念そうな顔をされた。下心丸出しかコイツは。可愛い。言っておこう、こっちは14ぐらいの体でも胸はでかいほうだ。シャツがはち切れそうなぐらいには。以前巷で騒がれていた不老不死の雷くんの依存相手と同じ程度。まぁ服は特殊な布なので多分大人になっても着られるだろう。そこは心配していない。
相変わらず本能に忠実だコイツ。
『……ん?』
ポツリと降ってきた雫に顔をしかめる。シンドバッドが「! 雨だ!」とぱっとこっちをガン見してきた。あれか、服が濡れて透けるハプニングを期待してるのか、コイツ本当に14歳かよ。しかし残念だったな。こっちのトリガーは炎と言うより熱に近い。雨はこっちに当たる前にジュッと音を立てて蒸発していく。つまらなさそうに見てきたシンドバッドを鼻で笑った。ざまぁ。とりあえずシンドバッドは蒸発していくことに疑問を持て。
しかし、続けて降ってきたのは大量のヤシの木や魚たち。これにはシンドバッドと二人で「な、なんだー!?」『天変地異か!?』と騒ぐ。続けて降ってきたのは、蒼い髪の、大、男……。
……え?
- Re: 自己満足で書く ( No.27 )
- 日時: 2017/09/11 00:08
- 名前: マメツキ (ID: 9wv.1jV8)
案の定降ってきた大男に、船は轟音を轟かせて揺れ、こっちたち二人はとても色気のない叫び声をあげた、そのあと。
「……どうも……すみませんでした……。ま、まさか、こんな海の真ん中に人が、居るなんて思わず……」
ごめんなさい、としおらしく謝る大男。セルリアンブルーに近い青の長い髪は前髪すら長く目が見えないほどだ。とりあえず図体がでかくもう少し態度も大きくしてもいいだろうと思うのに。この男、内向的だな。うちの学園の死にたがりにそっくりな気がしなくもないが一緒にすると目の前の彼が可哀想だ。アイツはただのメンタルヘルスを患う、ただの厨二病装ったネガティブ野郎だ。両目すら隠すとは何事だ。
シンドバッドは目の前の大男が正座してうつむいて、此方を見てないのを良いことに腕で身長の差を確かめていた。シンドバッドは正座じゃないけど腰下ろしてるしなあ。でかいと思うのも無理はないだろう。顔にで、デカイ……!って書いてあるぞシンドバッド。
とりあえず彼には『気にせんでエエよ』とだけ言っておいた。シンドバッドの奇行もあるが、落ちてきたことにたいしての意味も含ませて。
『シンが食糧を食い果たしてもうてな。分けてもらえたからお互い様や』
「ああ! 助かったよ、ありがとう!」
シンドバッドと共に礼を言うと、目の前の大男は突然ぷるぷると震え出す。え、なんかしたっけ。怒ってるのか。
しかし、その疑問はすぐに解消された。
「はあああわああああ! 【ありがとう】なんて言葉久しぶりに聞いたよおおおお!」
正座した上体を折り曲げ、滝のような涙をおーいおいおいと流す大男にシンドバッドと驚愕しながら顔を見合わせる。とりあえず船が沈みそうだ。困る。
「お、おい! どうしたんだよ! いきなり泣き出して!」
シンドバッドの問い掛けに彼はようやく泣き止み、「ご、ごめん」と気を取り直す。ふむふむ、コイツわりとめんどくさいかもしれんぞ。
こっちは彼らに気付かれないように目を遠くさせ、シンドバッドは問題児だったなぁとついていくことに早くも後悔し始めた。悲しきかな。シンドバッド可愛いから離れがたい。
「俺はこんな貧弱な(?)体だし、日陰干しの魚みたいな性格だっていつも言われるからさ……人から感謝されることに慣れてなくて……」
『(……え、貧弱?)』
こっちから見ればずいぶんと逞しいように見えるんだが。まあ見識は人それぞれ。気にしないようにしよう。うん、そうしよう。
彼はぐずぐずと鼻をすすりながら、「今日も、アイツにこんなところまで吹っ飛ばされて来ちゃったし……妹にもいつも怒られてばかりで……」と愚痴る。妹居るのか、さぞ可愛いことだろう。生憎とこっちはマギしか読んだことがなく、外伝のシンドバッドの冒険は読んでないから内容は知らない。
シンドバッドが頬に脂汗を浮かべながら「……そうなのか?」と口にする。脳内ではどこが貧弱? とでも思っているに違いない。現にクエスチョンマーク飛ばしてるしな。可愛い。
大男が「う、うん、だって俺は……」と切り出そうとしたとき、遠くから「兄ぃーーー!」と言う大きな怒声が聞こえてきた。それに反応した大男が俺の妹だよ、とこっちだと手を振る。
「うちのっ!」
『(……え)』
「兄ぃが!」
「(……あれ?)」
「失礼をっ!」
ばしゃばしゃと沖の方から猛スピードでやって来た彼女は海面を蹴り、飛び上がって兄の頭を鷲掴み……。
「すみませんでしたああああああ!」
華麗なるダイビング土下座! シンドバッドなんて驚きで白くなってる。かく言うこっちも似たようなもんだろうけど。
それはさておき、シンドバッドも思ったことだろう。女の子も大きいと。
「アタシはピピリカ! イムチャックの部族が一人。で、こっちがあなたたちに迷惑をかけた兄です」
「…兄です」
ハキハキとものを喋る子やなあ……。第一印象はまさにそれだ。少々兄にたいして毒が有るような気もするが。
二人とも体が大きいからか船体が大きく傾く。咄嗟にシンドバッドが海に投げ出されないように腕を掴んで船から落ちかけていた彼の態勢をもとに戻す。笑顔が眩しいなシンドバッド。
元々イムチャック族は体の大きい部族らしい。ピピリカなんて成人女性と同じくらいの背は有るのに、まだこっちより下の13歳。で、兄の方が21、と。
シンドバッドはそれを聞いたあと、なるほどねぇ、とピピリカの手を取った。
「それでも、女性が美しいのは万国共通のようだね!」
ニコッと言う効果音の作った眩しい笑みに、しん…とする空気。うわ恥ずかしい。ピピリカも唖然だ。まぁまだ14歳なんだよなあ、シンドバッドは。対してピピリカは13だがシンドバッドより身長も高いから、そりゃ聞かない。
耐えきれずに思わずブッ、と吹き出すとシンドバッドが「何笑ってんだよイオリ!」とテンパリながら怒鳴ってきた。こっちは顔を努めて真顔にすると、シンドバッドの目を見て告げる。
『シンドバッド……そう言うのはもうちょっと成長してイケメンになってから言った方がエエよ、ぶふっ』
「なんだとおおおお!? 真顔で笑われるとむかつく! これでも故郷の近所のおばさんにはモテてたんだぞ!」
『ほー。向こうの世界やったらこっちは同い年ぐらいの女子にモテとったで』
なんだとだのなんだのキャンキャン吠えるシンドバッドを放り、白けた顔を此方に向けている二人に兄の名前は無いのかと問う。しかし返ってくるのは「兄は名無しだ」と言うピピリカの言葉。
どうやらイムチャック族の男は生まれた時の名前とは別に、成人の儀を終えて大人になった証に授かる、『成人名』、第二の名前があるらしい。ピピリカのお兄さんはその成人の儀をまだ終えられていないらしく、名無し扱いだと言う。
目の前で今日もアイツに吹っ飛ばされて! 今日はいいところまで行ったんだよー。勝たなきゃ意味ないだろ! と言うピピリカ優勢の兄妹喧嘩が開始されたが、シンドバッドが苦笑いしてなだめる。
「……アイツ?」
先程から二人の間で聞こえるアイツとは。とシンドバッドが疑問を持つ。ピピリカは言う、成人の儀とはすなわち度胸試し。アバレイッカクと言う海の魚を討ち取った時。成人として認められるらしい。
シンドバッドはアバレイッカクすら知らなかったようだが。無知とは罪なりやで、シン。
- Re: 自己満足で書く ( No.28 )
- 日時: 2017/09/12 00:46
- 名前: マメツキ (ID: 9wv.1jV8)
兄の描いたアバレイッカクの絵はまさにドラゴンのようなものだった。妙に絵が上手いぞコイツ。シンドバッドはそんなもの居るわけがないとカラカラ笑ってるが、お前迷宮攻略したならドラゴンなりなんなり見てるだろうがよ。ちなみにピピリカの描いたアバレイッカクには口を揃えて「それはバケモノ」とだけ言っておいた。兄殴られてるが大丈夫か、大丈夫そうだな。よし。
「そもそも絵なんて描いてるから女々しいんだよ! 兄ぃがもっと男らしければあの人だって振り向いてくれたかもしれないんだよ?」
『おっとこれは兄として心にクる一言』
殴られて頭からぶすぶすと煙とたんこぶを生えさせて横たわる兄のトドメを刺したピピリカには流石に苦笑いしか浮かばない。シンドバッドに至っては倒れる兄に同情の視線を向けて「兄ちゃん意中の娘がいたのか……」としくしく泣く彼を指でつついている。お前ホンマに同情しとんやんな……?
そんな様子の兄は放置かピピリカよ。
「兄ぃには高嶺の花だったんだ……強くて可憐で女のアタシも憧れる……なんてったってイムチャック一の美人なんだから。
成人の儀を終えてプロポーズしたとしても、無駄だよ」
これまたバッサリ切り捨てるねピピリカは。これじゃあ兄を諦めさせたいのか応援しているのかよくわからないぞ。いや、兄想いだとは分かるけど。
シンドバッドと二人でピピリカの話を聞き、なるほどそんなことがと頷くと兄は言った。
「そんなことない……! アバレイッカクを倒して立派な戦士になれば、きっとあの人にも想いは届くんだ! だからそれまで! 村には帰らない!」
なんと言う固い決意の表れ。泣いてまで諦めないと言うのは、本当に真剣にその人を想って居るからだろう。向こうの元の世界でこっちはそんな後輩を何度も見てきた。
『甘味好きの似た者同士』の二人の両片想いと、その『似た者同士』の片方が愛しくてやまない『男女』。心を閉ざした『女の子』と元気はつらつな京都の『跡継ぎ次男』。両依存だと理解しながら二人で永遠を生きると誓った『不死の子』二人。恋人が殺人鬼だったと言うのに、それでも尚想い続けて彼女を待ち続ける『隻眼の男の子』。人を愛すると愛した人が死ぬ呪いを持つ少年の『甘味好きの似た者同士』の少女を密かに一途に想い続けた『少年』。一人の少女を好きになってしまった『親友の二人』。自分は女であるのに女の子を好きになってしまった『少女』。お互いがお互いを大切にし、幸せな日常を送る『美女』と『イケメン』。愛妻家の『強欲』の欲しがりな男と愛夫家の『性欲』のシたがりな女。『嫉妬』の少女と武闘派な『奇跡の医者』。『人類最強』になってしまった一般人の風紀委員長と儚い『美少女』。笑顔が可愛らしい『一般人』を好きになった、『主人公』のような天才の少年。
それらの幼いながらも強い意思を持った相手を想う気持ちと、彼の気持ちは些か似ているように感じられる。彼はいい人なのだろう。うまくいけば良いと思った。
ピピリカもえぐえぐと泣く兄の背を撫でて手伝うと焦った顔で告げ、それをシンドバッドは腕を組んでうんうんと頷く。
問題は今船の下でうごめく巨大ななにかだ。シンドバッドがこれに気づいてこれがもしかして、と言葉を漏らすもその前に船の目の前で水飛沫を上げられてこっちらはもうびちょ濡れだ。心底熱のトリガーでよかったと思う。
しかし、水飛沫をあげる際見えたのはアバレイッカクのようだ。確かにでかかったなあ。
「うぅ……またやられた……」
「アバレイッカクめ、アタシたちをなめてるんだよ」
悔しそうな顔をするイムチャックの二人に対し、シンドバッドは頬を紅潮させてわなわなと震えている。確かに気持ちは分かる。あんなのがこの世界には人工で作られた訳でなく、『自然』として存在しているのか。すげえわ。
「あれがアバレイッカク……すごいな! アイツと戦うなら俺も手伝う! イオリもやるよな! な!」
『……あーうん、やるやる』
「「え……ええー!?」」

