二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 10 ( No.10 )
- 日時: 2023/11/19 20:29
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-魔法の森-
何もない「FRIENDLY DEATH!」
魔理沙の首に斧が迫った。
その瞬間、辺りに鈴の様な音が鳴った。
魔理沙「...なんだあれ!?」
音と同時に-何もない-が縄で首を締められた。-何もない-の後ろには黒い羽が集合して出来た絞首台があった。
魔理沙の後ろにはいつの間にか罰鳥達がいた。
魔理沙「助けに来てくれたのか...!」
審判鳥が-何もない-に天秤を突き出して攻撃していた。-何もない-は、縄を解こうとその場で暴れていた。大鳥が意識を失った霊夢を頭の上に乗せて永遠亭の方向へと向かっていった。罰鳥は-何もない-の頭に近づいた。すると、罰鳥の胸の赤い模様から巨大な嘴が出現し、-何もない-の頭に喰らいついた。
魔理沙「あんな事出来るのかよ!?」
しかし、罰鳥の攻撃は効いていなかった。
何もない「Oh...OMG!...HELP!」
-何もない-が雄叫びを上げながら縄を引きちぎった。
何もない「GOOD BYE.」
拘束を抜け出した-何もない-は審判鳥に接近し、斧を振りかぶった。審判鳥の右腕が大きく裂けてしまう。罰鳥が再度-何もない-に嘴攻撃をしようと飛びながら突進する。
何もない「HELLO?」
しかし、左手から射出された棘に直撃してしまい、罰鳥はその場に落ちてしまった。
魔理沙「やめろ!」
罰鳥に向かって右手の混紡を振り下ろそうとする-何もない-に弾幕を放って注意を引いた。
魔理沙「霊夢が助かるなら...私は...」
既に大鳥は魔理沙達のいる所から離れていた。魔理沙は八卦炉片手に捨て身の攻撃を仕掛けようとしていた。
魔理沙は八卦炉からマスタースパークを放った。-何もない-はビームに直撃するも、突進を辞めなかった。魔理沙に再度、斧が振り下ろされた。
紫「そこまでよ怪物。」
突如現れた-八雲紫-の攻撃によって、-何もない-の攻撃が邪魔された。
魔理沙「紫...!」
紫「悪かったわね...別の用事もあってね」
紫は結界を魔理沙の周りに張って、-何もない-の攻撃を無力化しながら喋った。
紫「霊夢は永遠亭に送ってあるわ。あの鳥のおかげね。」
魔理沙「良かった...」
何もない「Oh...HELPHELPHELP!」
だが、-何もない-は持ち前の火力で結界を強引に破壊した。
紫「あら、もうちょっと持つと思ったんだけど。」
紫が周りにスキマを開けると、スキマの中から無数の細いビームが飛び出した。ビームは-何もない-の体を軽々と貫通していく。
何もない「魔理沙!魔理沙!」
-何もない-は自身の体を再生しながら突進してくる。
紫「回復はさせないわよ?」
-何もない-の右側からスキマが開いた。スキマの中からは式神の八雲藍が出現し、藍は目の前にいる-何もない-の顔を軽々と殴り飛ばした。
何もない「HELLO?」
すかさず棘を射出するが、すぐさま結界を張った事によって、藍への攻撃は全て防御された。
何もない「GOOD BYE.」
紫「...ッ!」
だが、-何もない-が狙っていたのは紫であった。藍へ攻撃しながら紫の目の前まで走り、斧を振りかぶった。
魔理沙「紫!」
-何もない-の攻撃によって、紫の左腕は半分程裂けた。
紫「あの怪物...空間事切り裂くとはね...幻想郷から立去れ。《廃線・ぶらり廃駅下車の旅》」
紫の横に出現した巨大なスキマから廃電車が飛び出し、-何もない-を轢いていった。-何もない-はすぐに起き上がるが、今度は-何もない-の後ろに出現したスキマから廃電車が轢いて行った。
何もない「HELP...HELP!OMG!?」
よろよろと立ち上がった-何もない-に真上から最後の攻撃が飛んできた。スキマから出てきた錆びた機関車のような物が-何もない-に正面から衝突した。-何もない-の姿は小さな卵の形となり、どこかへ消えていった。
魔理沙「最後の車両...おかしくなかったか?」
紫「そうかしらね?それよりも、魔理沙は薄々気づいているだろうけど、最近出現し始めた怪物達は異変によるものよ。」
魔理沙「だろうな...」
紫「そうね...幻想体とでも言いましょうか。幻想体達は人間自身やその欲望や恐怖が具現した姿よ。幻想郷の中だとさらに能力が強まるみたいね。」
魔理沙「アイツはなんだったんだ?」
紫「人間の臓器や肉体が融合したモノだったわね...もしかすると、人間という-存在と意思-の成れ果てかもしれないわね。」
紫と魔理沙は永遠亭へと向かって行った。
-永遠亭-
魔理沙「大丈夫か霊夢!」
霊夢「魔理沙...?」
魔理沙が病室に入ると、そこにはベッドに横たわる霊夢の姿があった。胴体には包帯が巻かれており、包帯には滲み出た血がべったりと付いていた。
永琳「もう血は止まったわよ。安静にしてれば治るわ。」
魔理沙「良かった...私があの時、感情を抑えていれば...」
霊夢「もう良いのよ。魔理沙が怪我しなくてよかったわ。」
紫「魔理沙も霊夢に感謝するのよ?私が霊夢を見つけた時、瀕死の自分より魔理沙が死ぬかもしれないって、私に魔理沙を助けるように泣いてすがりついて来たんだから。」
霊夢「ちょっと紫!余計な事言わないで!」
魔理沙「...ごめん。」
皆が騒いでいると、扉からもう一人の医師が入ってきた。
魔理沙「ん...誰だ?」
ペスト医師「これはこれは幻想郷の皆さん、こんにちは。貴方達を病気から守るためにやって参りました。名はペスト医師と言います。」
魔理沙「霊夢の傷も直せるのか?」
ペスト医師「いかにも...」
そう言って、霊夢に翼を広げるが紫に邪魔される。
紫「その必要は無いわ。もう霊夢の措置はされている。貴方が治療しなくとも次第に良くなるわ。」
ペスト医師「...そうですか。」
そう言うと、ペスト医師は永遠亭から出ていった。
魔理沙「どこに行くんだぜ?」
ペスト医師「永琳さんからも聞きました。私はこの幻想郷を病から救いたいのです。そのためには私が各地を回るのが一番だと思ったのですよ。」
ペスト医師はより多くの人妖を救済するために、一人で旅を始めて行った。
続く...
- Re: 東方幻収録 11 ( No.11 )
- 日時: 2023/11/20 23:58
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-迷いの竹林-
魔理沙「妹紅!」
妹紅「久しぶりだな魔理沙。」
-何もない-との戦闘に勝利してから一週間が経った。今日は永遠亭へ霊夢のお見舞いに行くついでに妹紅のいる小屋へ魔理沙は立ち寄った。
妹紅「霊夢の体調は大丈夫そうか?」
魔理沙「あぁ、一ヶ月もすれば完治するってさ。」
妹紅「それなら安心だな。」
魔理沙「そういえば、妹紅の後ろにいるその鳥はなんだ?」
妹紅の振り向いた先には、竹の枝に止まった黒い鳥がいた。全身が黒色に包まれ、動く気配が全く感じられないが、その目と胸のマークから放たれる金色の閃光は、その鳥に眠る闘争心を表していた。
妹紅「この前、輝夜と殺し合ってた時に飛んできてな...あの時は火を纏ってたのにな。」
魔理沙「火を纏う?」
妹紅達の戦いに乱入した-火の鳥-の姿はまるで鳳凰のようだったと妹紅は言った。
妹紅「あいつは闘争とか狩りを求めているのかもな。私の弾幕を楽しそうに避けてやがった。」
---------------
かつて、火の鳥は人間の村から遠く離れた森で暮らしていた。そんな中、火の鳥の噂が広まり、
誇りと名誉、羽を目当てに狩人達が森に入ってきた。。
それに伴って冒険家や旅人までが鳥の棲まう森に訪れるようになり、静かな森は人間と火の鳥の狩り場となった。
最初こそ狩人は誇りと名誉、火の鳥は邪魔する人間を追い払う事が目的で戦っていたが、いつしかその目的は変わっていた。
狩人と火の鳥は共に、死闘の中に見出す事の出来る純粋な闘争を求めた。狩人も火の鳥も全力で戦った。
火の鳥を討伐した者は英雄。羽を手に入れる事は狩人達にとって、この上ない凄腕の証であった。
しかし、その勢いは炎の様にゆっくりと消えていった。
もはや伝説上の存在になりつつあるとき、鳥の目に激痛が入り、見えなくなってしまったのだ。共に戦いに明け暮れた狩人はもういない。
長い時を経て、火の鳥は新しい森を見つけた。
そこには人間が住んでいて、鳥はすぐにかつてのような「狩り」が始まることを火の鳥は望んだ。
--------------
そう願い続けた火の鳥は妹紅達の闘争に引っ張られる様に幻想郷に辿り着いた。
輝夜との戦いに勝ち、火の鳥との狩りに勝った妹紅は-名誉の羽-を受け取っていた。
妹紅「あいつを倒したらくれたんだ。」
妹紅の地面から突如吹き出した炎から五本の羽の形をした弾が展開された。
魔理沙「凄ぇ...」
妹紅「だろ?...って、道草食ってる場合じゃないぞ!」
魔理沙「あぁそうだ!霊夢の所に行かないと...じゃあな!」
箒に跨って、魔理沙は急いで永遠亭の方へ向かった。
妹紅「さてと...もう一回やるか?相手してやるよ。」
妹紅の言葉に答える様に、火の鳥の全身が黄金に輝いた。炎の中から鳳凰のような見た目をした火の鳥が現れた。
-紅魔館-
レミリア「それが本当の姿なのね...」
紅魔館にまたもや来客者が来た。客は自らをペスト医師と言った。しかし、レミリアの思い浮かべる黒い姿とは別で、マスクは外され、全身と羽が白く変化し、胎児の見た目をしたペスト医師がそこにいた。ペスト医師は紅魔館に入った瞬間、その場に止まって何か呟いた。
ペスト医師「...我が使徒達よ、目覚めよ。そして我を迎えるのだ。」
そう言った瞬間、紅魔館の外から数体の怪物が侵入してきた。
皮膚が無く、白と赤を基調にした筋肉を持ち、灰色の羽を首に巻きつけ、一対の白い羽、ハイヒールの靴、輝く黒い目、大きな脚と長い鼻、鋭い歯を持った怪物の名は-使徒-という。使徒は全員、幻想郷を回ったペスト医師が洗礼を施した人妖であり、名と髪型はそのまま残り、自我を無くしていた。
使徒達はそれぞれ、十字架のような黒い杖の鎌に似た武器を持っていた。
白夜「我が名は白夜。この幻想に穢れてしまった哀れな者達を救済しに来た。安心しろ。我が使徒達が救済する。」
周りの使徒達は見境無く近くにいた妖精メイドを掴み、首を切っていた。
レミリア「これが救済?天使を偽った怪物でしょう?」
白夜「汝に私の理想は伝わらない。それを理解するならば、私の教えに続きなさい。」
レミリア「勝手にメイド達を殺し始めたお前に誰が従うか!」
周りには美鈴やパチュリー、咲夜が白夜を取り囲む様に立っていた。
白夜「あぁ...哀しき者達よ。我の使徒が今すぐに救済を...」
そう言いかけた瞬間、妖精を持ち上げる使徒の一体が粉々に砕けていった。
フランドール・スカーレット「使徒ってかなり脆いんだねー」
白夜の気配を感じ取り、フランが地下室から出てきたのだ。
レミリア「フラン!どうしているのよ!?」
フラン「ちょっと楽しそうだったから。」
白夜「吸血鬼に我の救済の意味が理解出来るわけが無いだろう。」
フラン「何が救済よ。人間を殺したって何も変わらないわ。」
白夜「人は死に、罪を償う事で赦され、魂はようやく救済されるのだよ。」
フラン「ふーん...それじゃぁ」
その瞬間、フランの右手が握られたのと同時に使徒が全員粉々に砕け散った。
フラン「私が殺してもそれは救済になるのかしら?」
続く...
- Re: 東方幻収録 12 ( No.12 )
- 日時: 2023/11/21 21:39
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
フラン「私が殺してもそれは救済になるのかしら?」
フランが狂気の目で白夜を睨んだ。それに返すように白夜が勢い良く目を開ける。それと同時に白夜から放出された紅い波動が紅魔館内に放たれた。すると、倒れていた使徒達が波動に反応した。肉体が完治し、何事も無かったかのように鎌を持ち始めた。
白夜「汝らよ。我に抗うというのか?」
レミリア「当たり前でしょ?さっさと殺してやるわ!」
レミリアとフランが紅い槍を持ち、咲夜は2丁拳銃を構えた。パチュリーの周りには魔法陣が展開され、美鈴は向かって来る使徒を挑発している。
今まさに戦いが始まる寸前で、扉が開いた。
レミリア「お前...久しぶりじゃないか。何をしに来た?」
ノスフェラトゥ「やぁやぁ旧友よ。この館が恋しくなってな...そう睨むなよ。吸血鬼同士仲良くしようと思わないのかい?」
咲夜「吸血鬼?」
ノスフェラトゥ「君は人間のようだね...いない間に屋敷も広くなっている気がするが。」
レミリア「無視して良いわよ咲夜。裏切り者に答える筋合いは無い。」
美鈴「...パチュリー様は知ってますか?」
パチュリー「私に聞かないでよ...あの異変を知ってるでしょ?」
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かつて、外の世界のとある所に位置していた紅魔館には、数人の吸血鬼とパチュリーが住んでいた。その時、数多の吸血鬼の家系の主は、新天地を求めて幻想郷にやって来た。スカーレット家のレミリアを主軸として、たくさんの吸血鬼達が妖怪を配下にしながら幻想郷を攻めたのだ。
この戦争はとある大妖怪によって鎮められ、スペルカードルールの起源となり、後に吸血鬼異変と呼ばれた。
最終的に吸血鬼側が負ける際、レミリア達を裏切って真っ先に逃げたのがノスフェラトゥであった。
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ノスフェラトゥ「負けると分かったのに戦い続ける理由は無いからね...それと」
レミリア「フン、他に言い訳でも?」
ノスフェラトゥ「喉が乾いて仕方が無い...同じ吸血鬼だろ?喰われる運命も公平だ!そう思わないかい?」
その言葉と同時にノスフェラトゥが咲夜を見つめ始めた。
レミリア「まさか...咲夜!逃げなさい!」
咲夜「え...」
レミリアの前からノスフェラトゥの姿が消えた。レミリアが慌てて見渡すと、エントランスホールの階段の上で咲夜の首を掴むノスフェラトゥの姿があった。
レミリア「貴様...!」
ノスフェラトゥ「人間も久しく見ていなかった...食事を愉しむ時間だ!」
そう叫んだノスフェラトゥは咲夜を抱えると、図書館の方へ逃げた。
レミリア「待て!」
レミリアが翼を広げて飛ぼうとするが、使徒の一体が斬りかかって妨害されてしまった。
白夜「汝よ...恐れてはならない、私はあなたと共にある。私があなたを許すまで、去ることはできない。」
レミリア「...何だと!」
-紅魔館・大図書館-
ノスフェラトゥは図書館に入り、周りを見渡していた。
ノスフェラトゥ「居心地も悪くない...レミリアを始末すればこの館も私のものに...!」
小悪魔「だ...誰ですか!」
ノスフェラトゥ「ん?」
小悪魔「吸血鬼...って、咲夜さん!」
咲夜「ぐっ...離せ!」
ノスフェラトゥ「五月蝿い奴らだなぁ...!」
ノスフェラトゥが片手を前に向けると、巨大な目玉に翼のついた真紅の蝙蝠を召喚した。
ノスフェラトゥ「あの悪魔を殺せ。」
真紅の蝙蝠達は小悪魔に勢い良く突進し始めた。
小悪魔「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
突進で骨を折られながら倒れた小悪魔のもとにノスフェラトゥが近づくと、突如、怪物のような姿に変身して小悪魔の体を貪り始めた。
ノスフェラトゥ「やはり人間の血肉よりまずいな...」
人の姿に戻り、口についた血を拭うと、その場に放置させていた咲夜へと近づいた。
咲夜「動くな!」
2丁拳銃を構えて威嚇するが、ノスフェラトゥは気にせず歩み寄った。
ノスフェラトゥ「このまま殺すのも惜しいな...なあ娘よ。私の眷属にならないか?おいで...そなたを歓迎する段取りは十分だ。」
咲夜「私は人間のままでいると誓っているのよ?断るわ。」
ノスフェラトゥ「儚い希望は棄て去り、人間の上張りなぞ忘れてしまえ。レミリア共は助けに来ないぞ?」
咲夜に飛びかかり、体の自由を奪って銃を取り上げた。
咲夜「や...やめて...」
体を拘束して首に顔を近づける。咲夜は必死に抵抗しているが、逃げる事は出来なかった。
咲夜「この!」
何とか隠し持っていたナイフで顔に斬りつけるが、効果は全く無かった。
ノスフェラトゥ「この渇きから逃れられる術は無いぞ?諦めるんだな!」
咲夜「がっ...!」
咲夜の首に牙が突き刺さった。ノスフェラトゥは咲夜の血を吸い始めた。
咲夜「だ...誰か...」
手先の感覚が無くなり始め、意識が遠のいて行く。体は青白く変色していった。
ノスフェラトゥ「哀れな人間だ...あの吸血鬼に従っているからこんな事になったんだぞ?」
咲夜の耳に自分の名前を呼ぶレミリアの叫び声が聞こえた。美鈴やパチュリーの飛ばした弾幕の音がする。
ノスフェラトゥ「運命に抗うな。お前の主人が良く知っている事だろう?」
咲夜「私は...」
--------------
永夜異変の頃
レミリア「そういえば妹紅って不老不死の薬を飲んだのよね?」
妹紅「そうだけど...やめた方が良いぞ。」
レミリア「私は咲夜一人死なせるなんて嫌よ。咲夜も不老不死になってみない? 私の眷属になればずっと一緒に居られるわよ。」
咲夜「私は一生死ぬ人間ですよ。大丈夫、生きている間は一緒に居ますから。」
レミリア「ふーん、咲夜がそういうなら仕方が無い、残念ね。でも一つ約束してよね?」
咲夜「なんですか?」
レミリア「私のいない所で死んだりしないで。私が貴方の死に様をこの目で見届けてあげるんだから。」
咲夜「...そうですか」
-------------
咲夜「...まだ...死なない...」
ノスフェラトゥ「まだ力があるのか...?」
咲夜「お嬢様に悲しい思いは...させない!」
体内から殆ど血が抜けて、もはや片腕しか動かせなかったが、咲夜は何とかポケットから取り出す事が出来た。
咲夜「......私はレミリア様に見届けられながら...寿命で死ぬわ...今ここで死ぬわけにはいかないのよ...!」
仰向けになった体から天井に手を伸ばす。手には蒼い弾丸が握られていた。
咲夜「...この吸血鬼を殺して!」
図書館の中に咲夜の声が響いた。それを呆然とノスフェラトゥが聞いていた。
ノスフェラトゥ「ハハハハハ!一体誰に言っているんだい?殺せるもんなら殺して見ろ!」
ノスフェラトゥが怪物の姿に変わり、咲夜を丸呑みしようとする。
-迷いの竹林-
一方、魔弾の射手は死んだ蝶の葬儀と一緒に幻想郷を旅していた。
魔弾の射手「畜生...この竹林はどこに続いてんだよ。お前について行っちまったのが間違いだったぜ!」
死んだ蝶の葬儀「会話出来る幻想体が他に居なくて退屈とか言って勝手について来たんでしょう?」
魔弾の射手「うるせぇ...って...咲夜の依頼が来たな...」
魔弾の射手はその場に立ち止まって、真剣な表情で声を聞いた。
魔弾の射手「......お前の願い、しかと受け取った!」
魔弾の射手は一言呟くと、愛用のマスケット銃を目の前の虚空へ向け、直立した姿で構えた。
銃の先端に四つの魔法陣が展開され始めた。魔法の弾丸は探知、転送、貫通、加速し、確実に獲物を仕留めるだろう。
魔弾の射手「狙いは...吸血鬼の脳天だ。」
とどのつまり、悪魔が欲するものは絶望である。
時には困っている人々を救い、また時には悪と対峙する人々を助けたが、これらはすべて善意によるものではなく、自らの衝動に駆られてのものに過ぎない。彼を正義の狩人、血生臭い狙撃屋と呼ぶ者もいた。彼を喜ばせるためなら弾丸は何者をも撃ち抜くだろう。それも永遠に。
しかし、この狩人は初めて、自らの正義と善意で満ちた蒼穹色の弾丸を撃った。
ズドォォォン!
蒼い閃光を帯びた正義の弾丸が六発、銃から放たれた。
-紅魔館・大図書館-
ノスフェラトゥが咲夜に襲いかかった瞬間、顔面の前に魔法陣が現れた。
ノスフェラトゥ「何だこ...」
言い終える前に、吸血鬼の脳天を六つの弾丸が貫いた。
ノスフェラトゥ「あがっ...がぁぁぁあぁあぁ!?」
変身が解け、その場に仰向けになって倒れ込む。ノスフェラトゥの頭部はぽっかりと穴が空いていた。
咲夜「...ありがとう」
吸血鬼が死んだ瞬間、咲夜の意識は消えていった。
-紅魔館・エントランスホール-
白夜「汝め...まだ抗うか...」
レミリア「私達の力を舐めるなよ!」
白夜は疲弊していた。美鈴の近接攻撃とパチュリーの魔法攻撃を立て続けに受けていたからだ。使徒達はフランの能力でいくら復活しても殺されてしまう。
白夜「...私は最初から躊躇させられていたのか?奇跡を起こしていたのは...私では...」
その瞬間、白夜の全身から紅い光が溢れ出た。使徒達は自らの鎌を腹に刺して自害していた。
白夜「...汝よ...質問がしたい...」
レミリア「遺言なら聞いて上げるわよ。」
白夜「......汝らは...さらなる怪物達と戦う事になるだろう...」
白夜は自身のEGOをレミリアの前に差し出した。
白夜「...汝ら...いや、この幻想は......終末の黄昏に果たして立ち向かえるのか?」
紅い光が館全体を包んだ瞬間、白夜は消滅した。
美鈴「やっと...勝てた」
パチュリーと美鈴はへなへなと座り込んだ。
レミリア「終末の黄昏...どういう事?」
フラン「ねぇねえお姉様。」
レミリア「どうしたのフラン?」
フラン「咲夜は大丈夫なの?」
レミリア「...忘れてたぁぁぁ!!」
この後、レミリアは泣きながら咲夜を永遠亭まで連れて行くのであった。
死体達の笑顔は皆、悲しみに満ち溢れていた。
続く...
- Re: 東方幻収録 13 ( No.13 )
- 日時: 2023/11/23 10:17
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
白夜が撃破されてから一ヶ月が経った。
霊夢の傷は完治し、いつものように神社の縁側で休んでいた。ここ最近は早苗が代わって幻想郷の警備をしていたらしいが、特に異変も起こらなかった。人間も妖精も妖怪達も、出会った幻想体達と平和に暮らしていた。
人里はただ一つを除いて平凡な生活を送っていた。
-人間の里-
霊夢「久々に来たわね...一ヶ月ぶりかしら?」
魔理沙「もっとじゃないか?入院する前だって、あの異変以来は来てないだろ。」
霊夢「そうね。」
二人で鈴奈庵に立ち寄ると、小鈴と阿求が楽しそうに談笑していた。
小鈴「あ、霊夢さん!怪我は治ったんですか?」
霊夢「もう大丈夫よ。」
阿求「そういえば、霊夢さんが解決したあの異変ってどうなったんですか?」
霊夢「あの異変?」
阿求「豪邸の事件ですよ。」
魔理沙「命蓮寺の連中が死者達の葬儀を行うって話じゃないのか?」
阿求「それが...来ていないんですよ。」
魔理沙「は?来てないのかよ!?」
阿求によると、あの豪邸の異変で死んでしまった者達の後処理や葬儀は村の長によって命蓮寺が任されたらしいのだが、寺の方で怪我人が出てしまって延期。霊夢に頼もうとしたが、-何もない-の攻撃によって永遠亭送りを余儀なくされたため、今日まで死体は放置されたままだったらしい。
小鈴「今もあの豪邸に死体の山ができていると思うと怖くて...誰も掃除しようとしないんですよ。」
霊夢「なら今すぐに...」
ガァアアァ゙ァァアアァアアァアァアアァ゙ァ゙ァアッ!!
その時、里全体に巨大な咆哮が響き渡った。周囲の人間達は不安そうに周りを見渡していた。
阿求「あの豪邸の方から聞こえましたね!」
魔理沙「まだ妖怪が残っていたのか?」
霊夢「いや...妖魔本も全て処分しているわ...まだいるなんてあり得ないわ!」
豪邸の前に着くと、中からバタバタと地面を揺らす程の足踏みが聞こえてきた。
魔理沙「って...なんでお前らもついてきてんだよ!」
小鈴「少し気になって...」
魔理沙「妖怪に殺されるぞ?阿求、連れて行ってく...」
魔理沙が喋りかけた瞬間。
魔理沙「...避けろ霊夢!」
豪邸の門から勢い良く何かが飛び出した。そして、-何か-は目の前にいる霊夢に襲いかかった。
霊夢「...ッ!」
咄嗟に張った結界で攻撃を防いだ。
魔理沙「...おい、-あいつら-は何なんだ?」
霊夢達の前に現れた怪物は、妖怪では無かった。そもそも誰一人いない豪邸から妖怪が出現する筈が無かった。
霊夢達の前に立っていたのは、-死体-だった。
それは様々な部品や家の残骸で覆われた黒い球状の塊の姿を持っていた。血に塗れた巨大な歯と口を持ち、下部には手足が二本生えてる。そして、表面には白く変色し、歪んだ表情を見せる無数の人間の死体の顔が浮かび上がっていた。
阿求「なんで...あんな物が生まれて来たの...?」
その顔達は生前、豪邸で暮らしていた住人の顔であった。その表情は生前に見せる事の無かった絶望、狂気した笑顔が浮かび上がっていた。まるで、妖怪に襲われる寸前の顔だった。
その悍ましい姿に震えていた小鈴に怪物が突進した。
霊夢「しまった!」
既に小鈴の目の前には、口を大きく開けた怪物の姿があった。
阿求「小鈴!」
しかし、阿求が横から押し倒した事によって小鈴は救出された。だが、怪物の狙いは阿求に変わっていた。
阿求「...え」
声を上げる暇も無く、阿求は怪物に喰われてしまった。
魔理沙「阿求!」
怪物は阿求を丸呑みにすると、そのまま牙で肉体を噛み砕いていった。小鈴の耳には怪物の咀嚼音と砕かれる阿求の骨の音だけが聞こえた。
小鈴「いやぁあぁぁぁあぁぁあぁぁ!!」
目の前で友達を殺されて、絶叫した小鈴はどこかへ走り出してしまった。
魔理沙「待て小鈴!」
魔理沙の横を通り過ぎて、怪物は逃げた小鈴を追った。
小鈴「なんでこっちに来るのよ!」
小鈴は既にパニック状態であった。そして、小石に躓いた所で怪物に両足を引き千切られた。
小鈴「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」
小鈴の顔に巨大な口が接近する。口の中に、笑顔を浮かべる阿求の顔が見えた気がした。
ボリッ...バリッ...グブブッ…オィシイ…ニク…目ノ前…ニ…
小鈴をその場で喰い終えた怪物の周りは、逃げ惑う人間達でたくさんだった。怪物は本能のままに目の前を走る肉に食い付いた。
哀しくも、怒りにも似た笑みを見せ、-笑う死体の山-は咆哮を上げた。
ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!
その場にいた人間達を喰い終えると、いつの間にか死体の山が増えていた。2つ目の山には巨大な口と、死んだ人間達の渇望する様な無数の目が生えていた。
死体の山は途中で出会った人間を喰いながら、里の郊外へ飛び出していった。その後を霊夢達が追った。
-命蓮寺-
魔理沙「響子!」
笑う死体の山を先回りした霊夢達は命蓮寺へ訪れた。
響子「魔理沙?そんなに慌ててどうしたの?」
魔理沙「早く聖を呼んで来い!お前も殺され...」
聖「あら、何かあったのですか?」
魔理沙に気がつき、聖と寅丸、風雲僧が出てきた。
魔理沙「ここに怪物が近づいて来て...」
霊夢「来たわよ魔理沙!」
魔理沙「話してる途中なのに...!」
命蓮寺の門から笑う死体の山が侵入してきた。その姿を見て風雲僧が魔理沙達を庇うように前に立った。
風雲僧「あやつは拙僧と同じ怪物だ。殺されるぞ!」
魔理沙「やっぱりか...」
魔理沙の頭に-何もない-の姿が浮かび上がった。
風雲僧「人間が相手をして良い様なモノではない...」
風雲僧が餓鬼の姿になって死体の山に噛み付いた。
笑う死体の山「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!」
2つ目の球体から耳を劈くような咆哮が放たれた。風雲僧はそれに反撃するように口を開けて、死体の山の一部を引き千切る。
笑う死体の山「ゲボボッ…ガボッ……グ…アぁア……!!」
しかし、風雲僧は死体の山に呆気なく丸呑みにされてしまった。笑う死体の山の体の中から風雲僧の呻き声が聞こえるが、次第にそれは消えていった。
魔理沙「畜生!《恋符・マスタースパーク》!」
八卦炉を向けてビームを放つが、お構い無しに死体の山は魔理沙に突進する。
聖「魔理沙!」
魔理沙の前に立って聖が魔力を込めた拳を死体の山に振りかぶる。
笑う死体の山「...ガボッ゙...肉喰ワセロオォ゙ォ゙!」
聖「ぐっ...!」
聖の左腕が死体の山に食いちぎられた。
魔理沙「聖!」
聖「霊夢...魔理沙、他の人妖達に知らせて!」
魔理沙「でも...」
霊夢「早く行くわよ魔理沙!」
霊夢は魔理沙を寺の外に連れ出した。
霊夢「私は山の方に行くから!魔理沙は竹林の方に行って!」
魔理沙「分かったぜ!」
-妖怪の山・守矢神社-
霊夢「早苗!」
神社の境内で早苗は掃除していた。
早苗「あ、霊夢さん!傷が治ったんですね!どうしたんですか?」
霊夢「寺の方で怪物が暴れてるのよ!早く来て!」
文「どうされたんですか?」
その場に文も入ってきた。
霊夢「寺の方で怪物が暴れてて...とにかく助けて欲しいのよ!白狼天狗達の部隊があるでしょ?貸しなさいよ!」
その場から逃げようとする文の首を掴んで脅し始めた。
文「ま...待ってくださいよ!少し前に山にも怪物が出没して、その時に殆どの天狗が死んでしまったんですよ!」
霊夢「嘘でしょ...?」
文「残念ながら今いる部隊で精一杯なんですよ...人員が足りないので今は河童にも山の警備に回ってもらっていて...」
霊夢「早苗!諏訪子達はいないの?」
早苗「今は地獄で起きた異変を対処してて...私なら行けますよ!」
文「...しょうがないですね。椛も呼んできます。」
笑う死体の山が脱走している中、地獄でも異変が起きているらしい。
文、椛、早苗を連れて、霊夢は紅魔館へ向かった。
-迷いの竹林-
魔理沙「妹紅!」
妹紅「また何かあったのか?」
魔理沙「その通りだけど...寺で怪物が...」
妹紅「分かった分かった。ソイツをぶっ飛ばしてほしいんだろ?ついて行くぞ。」
魔理沙「助かるぜ!ついでに輝夜も...」
妹紅「私で十分だろ!」
-紅魔館-
一方、霊夢は紅魔館でレミリアに協力を求めていた。
レミリア「だから霊夢...今は無理なのよ。」
霊夢「どうしてよ?咲夜はどうしたの?」
レミリア「咲夜は今休んでいるわ。少し前に死にかけて動けなくなったからね。」
どうやら咲夜は白夜達の時に受けた怪我が癒えていないため、今は寝込んでいるとの事。
レミリア「私なら出てやっても良いけどね!」
失楽園を取り出して笑みを浮かべた。
霊夢「それなら問題無いわね。」
霊夢達が寺へ向かおうとすると、それと同時に魔弾の射手と死んだ蝶の葬儀が入ってきた。
霊夢「え...誰?」
魔弾の射手「こっちのセリフだ赤服野郎。赤ずきんみたいな見た目だ...痛ててて!」
霊夢は魔弾の射手の首を掴んで壁に押し当てる。
霊夢「ねぇレミリア。こいつ誰?」
レミリア「少し前に来た...幻想体とか言う奴らよ。そいつらも連れて行けば?」
霊夢「なるほど...じゃぁアンタも一緒に手伝って。」
魔弾の射手「なんで見知らぬ奴に脅されないといけねえんだよ!」
霊夢「黙って来なさいよ!強そうな見た目してるし...」
魔弾の射手「見た目かよ!」
霊夢は魔弾の射手をズリズリと引きずって外に出ていった。
死んだ蝶の葬儀「私は用事を思い出したので帰りま...」
レミリア「あなたも来なさい。」
死んだ蝶の葬儀「え?」
-太陽の畑-
魔理沙「幽香!」
魔理沙と妹紅が訪れたのは、風見幽香のいる太陽の畑であった。
幽香「貴方が来るなんて珍しいわね...どうしたのよ?」
魔理沙「寺の方に怪物が...」
幽香「私も今困ってるのよ。行けないわ。」
魔理沙「何に困ってんだよ?」
幽香が無言で花畑の方を指差した。その向こうには、花畑の真ん中に浮かんでいる幻想体がいた。
花達に紛れ込んだ-ポーキュバス-は、魔理沙達の方をじっと見つめていた。
魔理沙「あいつか...」
幽香「近づいても危害は加えて来なかったし...後で手伝ってくれるんだったら行くわよ?」
魔理沙「ついてきてくれ!」
魔理沙は幽香を連れ出して寺へ戻り始めた。
-命蓮寺-
霊夢「皆揃ったわね...」
命蓮寺の門の前には霊夢と魔理沙が連れて来た八人の人妖が集まっていた。
魔理沙「集められる戦力は集めたぜ。」
霊夢「よし...行くわよ。」
一斉に寺の中へと入って行った。
早苗「うっ...血の匂いが充満してますね...」
魔理沙「聖達は......おい霊夢!」
霊夢「え...?」
命蓮寺の者達は全滅していた。響子達の姿は消えており、動かなくなった寅丸と聖が壁に寄りかかって倒れていた。
妹紅「全滅かよ...あいつがその怪物か!」
寺の真ん中には笑う死体の山が立っていた。球体は3つに増えていた。
魔弾の射手「無謀な奴らだな...あいつは人間を喰らう程強くなるんだぞ?」
死んだ蝶の葬儀「ほぼ手遅れですね。ここは私が皆さんを救済して...」
レミリア「それは駄目よ?」
レミリアが葬儀屋に失楽園を向けて笑顔で答えた。
死んだ蝶の葬儀「全く...傲慢ですね...」
霊夢達は戦闘態勢に入った。
霊夢「皆...死なないでよね?」
文「連れて来といて何言ってんですか?勝つ事を前提に来たんですから。」
魔弾の射手「しょうがねぇ...援護してやるよ。」
笑う死体の山は咆哮し、やがて来る血の匂いを待っていた。
続く...
- Re: 東方幻収録 14 ( No.14 )
- 日時: 2023/11/25 21:25
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-命蓮寺-
最初に椛と幽香が笑う死体の山に接近戦を仕掛けた。死んだ蝶の葬儀と魔弾の射手は何かを準備するように、寺の外へ出ていった。霊夢達は弾幕を放って援護を始めた。
幽香「中々のパワーね...何人の死体が混ざっているのやら。」
笑う死体の山の突進を両手で止めると、そのまま勢い良く後ろに投げ飛ばした。笑う死体の山が起き上がる所で椛が追撃をした。横から黒い塊の中央へ斬撃を飛ばして笑う死体の山のバランスを続けざまに崩した。
椛「今だ!」
文「OK!行きますよ二人共!」
いつの間にか、魔弾の射手と死んだ蝶の葬儀を持った文が笑う死体の山の頭上で浮いていた。両手にぶら下がっていた魔弾の射手と死んだ蝶の葬儀を笑う死体の山へ投げつけた。
魔弾の射手「穿け、魔弾よ!」
魔弾の射手は空中でコッキングすると、無数の弾丸を死体の山へ集中砲火した。笑う死体の山の体に次々と穴が開いていく。
死んだ蝶の葬儀「成仏出来ない哀れな者共に...哀悼の意を示そう。」
死んだ蝶の葬儀が開いた棺桶から大量の蝶が笑う死体の山に群がり、その体の動きを鈍らせた。
笑う死体の山「ガァ゙ァァァ゙ァ゙ァ゙!?」
蝶達を貪って拘束を抜け出そうとする所でレミリアの繰り出した失楽園の攻撃によって笑う死体の山を串刺しにするように使徒達の鎌が地面から突き出した。
霊夢「《夢想天生》!」
魔理沙「《魔砲・ファイナルマスタースパーク》!」
早苗「《奇跡・白昼の客星》!」
隙が生まれた笑う死体の山に三人が最大火力の攻撃を叩き込んだ。辺りに砂煙が立ち込めた。
魔理沙「よし...効いてるぜ!」
煙の中から出てきた笑う死体の山は球体が一つ切断されていた。落ちた死体の塊は溶けて蒸発していた。
笑う死体の山「戻ラナキャ……急ガナ…キャ……」
欠けてしまった死体を探すように、笑う死体の山は寺の入り口へ逃げようとする。
魔弾の射手「させるか!団子野郎!」
魔弾の射手が笑う死体の山に生える足を素早く撃ち抜いた。笑う死体の山はその場に倒れ込むが、再生して別の死体の足が生えてきた。
魔理沙「まだ逃さないぜ!《星符・ドラゴンメテオ》!」
里の方向へ向かおうとする笑う死体の山の目の前に上からビームを撃ちながら接近し、八卦炉でビームを至近距離で撃ち込んだ。後ろから追い打ちをかけるように幽香と椛が接近している。
笑う死体の山「ミン゙ナ...片付けテ殺ル...ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!」
二個目の塊の巨大な口から寺全体に咆哮が響き渡った。
霊夢「うっ...!」
咆哮は耳を塞いでも、体の奥を蝕むように響いた。
早苗「一旦...離れないと!」
早苗が霊夢を抱きかかえて笑う死体の山から遠ざかる。椛や幽香も後退した。
魔弾の射手「おい!あの白黒がまだいるぞ!」
霊夢「魔理沙!」
笑う死体の山の目の前に立っていた魔理沙を咆哮が襲った。
魔理沙「ぐぁぁぁあぁぁあああぁあ!?」
その場に膝をついて必死に耳を抑えながら藻掻いている。
霊夢「早く助けないと...!」
その時、霊夢の耳に赤ん坊の泣き声が響いた。
霊夢がハッと手を見ると、赤ん坊の泣き声は消え、いつの間にか黄色のヘッドホンを持っていた。
霊夢「いつの間に...まぁ良いわ!これで魔理沙を!」
いつの日か霊夢が殺した-無名の胎児-のEGOを装着して魔理沙のもとに駆け寄る。
霊夢「魔理沙!今助けるわ!」
魔理沙を笑う死体の山から引き離して、寺の外へ避難させた。ヘッドホンを取って魔理沙の肩を揺さぶる。
霊夢「魔理沙!」
早苗「大丈夫ですか!?」
霊夢と早苗が魔理沙の元に近寄って様子を見る。その間に咆哮は止み、幽香達が攻撃を始めていた。
魔理沙「.........黙れ」
霊夢「...え?」
魔理沙「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!近寄るなぁあぁあぁああぁあ!!」
魔理沙の目は血走っており、極度の興奮状態-殺人性パニック-に陥っていた。
霊夢「しっかりしてよ魔理沙!一体どうして...」
早苗「あぁ...私が気づいていれば魔理沙さんは助かったのに...」
後ろの早苗が魔理沙を見て震えだした。
霊夢「早苗まで...」
早苗「...こんな所で死にたくない...外の世界に返してください...」
早苗の額に大量の汗が流れ出した。全身を震わせながらその場に立ち尽くして-自殺性パニック-に陥っていた。
魔理沙「ハハハハハ!」
魔理沙が八卦炉を霊夢に向けるが、腕を掴んで射線をずらす。
霊夢「どうしたら...あ、二人共!助けて!」
奥の方にいた葬儀屋と魔弾の射手が霊夢の元に駆け寄る。
魔弾の射手「パニックか...精神力が尽きてるな。」
死んだ蝶の葬儀「ならば私が救済して...」
魔弾の射手「お前が触ったら死ぬだろ葬儀屋!」
霊夢「どうすれば治せるの!?」
魔弾の射手「WHITE属性のEGOがあれば良いんだが...準備する時間が無い。とにかくその緑服は拘束しとけ。そのままにしてたら自分で首を折ろうとするぞ。白黒は...俺がなんとかしてやる。」
霊夢「分かったわ!」
霊夢は早苗の腕を掴んで拘束した。
早苗「離してください!私は死にたいんですよ!」
霊夢「ごめん...絶対に助けるから!」
魔理沙「そこをどけ悪魔!誰でも良いから殺したくてたまらないんだぜ!」
魔弾の射手「黙れ!動いたら撃つからな!」
魔弾の射手は銃口を魔理沙の口に突っ込んで睨んだ。その様子を見ている葬儀屋にレミリアが近づいた。
死んだ蝶の葬儀「おや、戦わないのですか?」
レミリア「あの三人が霊夢達の様子が心配だから見て来いって言われたから来たのよ...話は聞いたけど、WHITE属性って何よ?」
死んだ蝶の葬儀屋「私達-幻想体-は自身のエネルギーから生まれる武器や服...EGOと呼ばれる物も生み出せるんだ。前に私がメイドに渡した2丁拳銃は私のEGOだ。」
幻想体達の攻撃には属性が別れている。と葬儀屋は語った。
RED属性は-暴力- 物理攻撃などに当たる属性。
WHITE属性は-精神- 精神攻撃に当たる属性。
BLACK属性は-身体と精神- 物理と精神攻撃の複合に当たる属性。
PALETTE属性は-死- 相手の魂を直接攻撃する威力の高い属性。
死んだ蝶の葬儀「私のEGOはBLACKとWHITEの両方が宿る武器なので...持っていれば二人を治せるのですが...」
レミリア「それなら咲夜に借りて持ってきたけど。」
死んだ蝶の葬儀「それなら話が早い!精神力が尽きてパニックになってしまった二人をそれで撃ってください!」
レミリア「えぇ...大丈夫なの?」
半信半疑で数発早苗に撃ち込むと、早苗は我に返った様に周りを見渡した。
早苗「あれ?私はなにを...」
レミリア「本当に治ったわね!それなら...」
続けて、魔理沙に銃弾を撃ち込んだ。
魔理沙「...がっ!なんでお前が!」
魔弾の射手「お、目ぇ覚ましたか。」
銃を口から抜くと、魔理沙は咳をしながら立ち上がった。
魔理沙「口に銃入れる必要は無いだろ!」
魔弾の射手「そうでもしないと八卦炉を向けてくるからだぜ。仕方ないだろ?」
霊夢「皆戻ったわね...もう一度攻撃を」
その瞬間、寺の壁が破壊され、横から全身傷だらけの幽香が飛んできた。
魔理沙「おい、大丈夫か!?」
幽香「油断したわ...天狗が両方喰われた...」
そう言って、幽香は気を失ってしまった。
霊夢「嘘...文と椛が死ぬなんて...」
その時、笑う死体の山が姿を現した。
魔理沙「手遅れか...」
塊は3つに増えていた。口には一本の腕が咥えられていた。
笑う死体の山「ゲボ… ゴプッ…全部……喰い尽くス……!」
続く...