二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 37 ( No.37 )
- 日時: 2024/02/10 20:55
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-博麗神社-
紫「これで最後ね。」
太陽が真上に登った昼頃、神社内には参拝客の代わりに紫が一人立っていた。霊夢が差し出した-陰と陽-を手に持って、スキマへと放り込んだ。
紫「幻想郷に侵入した幻想体は殆ど元の次元に送り返したわ。」
霊夢「魔弾の射手とか葬儀屋はまだいるの?」
紫「まだ彼らの言う-試練-が来るかもしれない。魔法少女達とも既に協力関係を結んでいるわ。」
霊夢「私が会った以外で幻想体っていたかしらね。」
紫「いたわよ...どれも私達に悪影響しか及ぼさなかったけど。」
終末が過ぎた後、試練の合間にも新たな幻想体達が侵入していたと言う。霊長園では、-肉の偶像-という十字架が出現し、それに対をなす埴輪神の袿姫が消滅しかけたとの事。他にも、他の妖精達に紛れて人間を捕食する-妖精の祭典-など、少なからず被害はあったようだ。紫は藍を連れて、隠岐奈と共に幻想体を元の世界へと返し終えたのだった。
紫「それに試練は...今まさに始まったそうよ。」
霊夢「ッ!?」
その時、神社の地面から物凄い振動が伝わってきた。境内の石畳から土煙が舞い始め、危険を感じた二人は空へと上昇した。そして、危機は訪れた。
霊夢「これが新たな試練!?」
地面から現れたのは、巨大な口であった。身体にまだら模様の琥珀の様な物が浮かんでいる。先程霊夢達が居た地面を食い潰すのは、土の様な殻、岩の様に硬い歯を持つ巨大な芋虫-永久の食事-だ。地上に出現した永久の食事は琥珀を破裂させ、-食物連鎖-達を生み出した。
霊夢「あの虫...地獄でも見たわよ!」
生まれたばかりの食物連鎖達は霊夢達に見向きもせず、自ら産み出した完全食を貪り食っていた。完全食達もそれに反抗するかの様に食物連鎖へと噛みついていた。
紫「互いが互いを食べるために闘争する...私達と彼らはどちらが上でしょうね?」
紫は前に片手を出すと、周りから無数のスキマを出現させ始めた。永久の食事が身体を捩り、紫に噛み付こうとするが、スキマを開いた途端、そこから何百発もの蒼い弾丸が閃光を残して永久の食事の身体を貫通していった。永久の食事は雄叫びを上げながら身体についた無数の穴から大量に血を流し、息絶えた。食物連鎖と完全食達もお互いの身体の大半を食い尽くして死んでいた。
紫「いつでも試練に立ち向かえる様に私が-依頼-しておいたのよ。」
霊夢「で...この地面はどうするの。」
紫「地面の境界を結べば元通りよ。」
霊夢アンタの前じゃ、試練も数秒で退場ね。」
紫「強いほうが生き残る。ただそれだけの話よ。」
続く...
- Re: 東方幻収録 38 ( No.38 )
- 日時: 2024/02/17 21:52
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-裏路地-
最近、路地裏から掃除屋達が消えた。親指の代行者...特色フィクサーに爪。頭の命令によって、そいつらは25区(翼は26ある)全ての裏路地を一斉に襲撃し、掃除屋を皆殺しにしたのだと言う。掃除屋に代わって親指が裏路地の管轄を全て掌握したようだ。今、俺が住んでいるのはL社の地区だが...翼は折れちまったらしい。お陰様で、脱走した幻想体の駆逐作戦に参加出来た。そこそこに給料を貰ったし、十分満足だ。俺の仕事はフィクサー...便利屋とも言えるな。雑務、移籍探索に殺し...相応しい対価が支払われるなら速やかに仕事を遂行する。それが俺だ。外郭の戦利品を見つけた俺は今、ここらじゃ-黒の便利屋-なんて言われている。黒い衣服に不気味なハンマー...特色では無いし、協会が認めた訳でも無いが...俺は事務所に所属してなくて、単独で行動している便利屋なんだ。掃除屋の駆逐作戦で知り合った-赤の便利屋-、-白の便利屋-、-青の便利屋-と名乗る奴らと手を組んでるのさ。L社が折れた今、この区画は親指と俺達の管轄内ってわけだ。
赤の便利屋「よくもそう長々と会話出来る物だな。一体誰と話している...」
黒の便利屋「独り言さ。良いじゃねえか。今までの人生を見直すってのは悪い事じゃないぜ?」
黒の便利屋と会話するのは、裏路地の技術によって開発されたパワードスーツ、光学技術に関する特異点を付与された銃を身に着けた赤の便利屋だ。そのすぐそばに座り込み、二人の会話に呆れているのは、遺跡の遺物を装備した白の便利屋。三人を遠巻きに眺めながら、愛用の銃を撫でるのはついさっき、L社の特異点を奪った青の便利屋であった。
白の便利屋「私達、親指には黙認されてるけど、正式に便利屋として協会に登録されてないのよ?爪とかにバレたら殺されるわ。」
黒の便利屋「俺も外郭の戦利品を装備しただけだしな...赤の便利屋はどうなんだ?」
赤の便利屋「裏路地の組織に所属していたが...裏切られた。」
青の便利屋「僕も所属していた翼にクビにされちゃってさ。僕の事を気に入らない奴が陥れたらしい。まぁ、ここから逃げる方法はあるけどね。」
そう言って、青の便利屋は小さな丸い機械を取り出した。
青の便利屋「V社とF社の特異点を合わせて作ったワープ装置さ。使えるのは一度きりだ。この機械は俺達が暮らしていけるという別の世界に転送する事が出来る代物だ。」
黒の便利屋「別の世界って...その機械、本当に大丈夫なのかよ!?」
青の便利屋「止まる事の無い惨劇が繰り広げられるこの世界に存在し続けたいと思うか?それなら、これを使った方がマシだろう?」
赤の便利屋「覚悟は出来ている。」
白の便利屋「私もついて行く。」
黒の便利屋「確かに爪とか調律者とはおさらばだが......畜生、ヤケクソだ!」
四人は互いの手を掴み、眼を閉じた。機械は四人の真上に浮遊し、金色の閃光が路地裏を包んだ。数秒後、機械は破裂し、空中には紫色のスキマがこじ開けられた。四人はスキマに吸い込まれ、人々から忘れ去られた者達の暮らす世界-幻想郷-へと飛ぶのであった。
青の便利屋の起動した機械は、V社の空間移動の特異点。そして、F社の閉じられているという概念を持つ全てのものを開けられる特異点だ。空間移動によって、元の世界から幻想郷に繋がるほんの数ミリの境界を特定し、そのスキマ、博麗大結界をもこじ開ける。特異点の力によって、便利屋達は幻想郷への侵入に成功した。
-幻想郷-
便利屋達は丘の上に立っていた。最初に起き上がった黒の便利屋は辺りの景色を見渡した。元の世界とは違い、美しい自然に包まれた幻の様な世界を前に期待を膨らませた。
黒の便利屋「うおお!マジかよ!?本当に別世界に来ちまったのか!?」
赤の便利屋「空気汚染度0%だと...こんなに綺麗な空気を吸うのは初めてだ。」
白の便利屋「生い茂る草木に小鳥達のさえずり...まるで楽園ね。」
青の便利屋「あの薄暗い世界に二度と戻る事は無い。ようやく平穏に暮らせる...」
四人は早速、人里の方へと向かっていった。
-人間の里-
里の中はたくさんの人が行き交い、和気あいあいとした光景が広がっていた。便利屋達は絶対に見る事は無かったであろう夢や希望、幸福に満ちた笑顔を見て呆然とした。
白の便利屋「都市の人達とはまるで違う...新鮮な雰囲気がするわ。」
青の便利屋「あの店に行ってみよう...って、他の二人は?」
気がつくと、赤と黒の便利屋が消えていた。
白の便利屋「二人は別々の方向に走っていったわよ。」
青の便利屋「なんで教えてくれないんだよ...」
白の便利屋「呼んだ所で戻らないだろうし、好きにさせれば?」
青の便利屋「まぁ...汚れ仕事ばかりしてきたもんな...」
便利屋達は頭の監視から外れたという解放感から安心しきっていた。青と白の便利屋は早速、団子屋に入っていった。
白の便利屋「何と言うか...和風な建物よね。どこと無く落ち着くわ。」
青の便利屋「のどかで良いよな。路地裏の景色なんてもう見たくない。」
二人は報酬として受け取っていた貴金属をあらかじめ質屋でお金と交換していた。二人は団子を頼んでのんびりと食事を始めようとするが、青の便利屋は何かに気づいた。
青の便利屋「...あの機械は」
団子屋には見慣れない機械-蓋の空いたウェルチアース-がそこにあったのだ。
青の便利屋「まさか幻想体じゃあないよな...」
白の便利屋「...少し調べてみましょう。」
二人は食事を済ませると、足早にその店を去った。着物以外の服を着ているので、周りの人々から物珍しそうな視線を感じるが、歩みを止める事は無かった。
青の便利屋「この世界の情報が必要だ...」
便利屋達は捨てていた自らの夢と希望をもう一度掴み取り、新たな人生を歩もうとしていた。
さぁ、探せ。幻想郷の創設者...この世界の条理...今まで通り、武器を手に取り、その身に刻まれた力で諦めた未来を掴み取れ。
続く...
- Re: 東方幻収録 39 ( No.39 )
- 日時: 2024/02/21 17:45
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-紅魔館-
黒の便利屋「巨大な館だなぁ...門に誰かいるぞ?」
黒の便利屋は三人とはぐれて自由に行動していた。幻想郷に来て、騒ぐ便利屋を美鈴は注意深く観察していた。
美鈴「何か彷徨いてる...人かな?」
しばらくすると、美鈴の元に黒の便利屋が歩み寄ってきた。背中に背負うハンマーを見ながら、戦闘態勢に入る。
黒の便利屋「ちょっと待て!別に戦う気は無いぜ!?」
黒の便利屋は美鈴の気迫に圧倒されたのか、両手を上げた。美鈴も相手を脅してしまった事に謝る。
美鈴「す...すみません。怪しそうな服を着ていたので...」
真っ黒な服に口元を隠す様な布...不気味に輝くゴーグルに巨大な眼の様な物を持つハンマーを持っている姿は誰がどう見ても、不審者そのものだった。
黒の便利屋「悪い悪い。俺の名は黒の便利屋...この世界はどんな場所なんだ?」
美鈴「世界?もしかして外来人かなぁ...って、咲夜さん見てたんですか!?」
門を開けて、黒の便利屋を睨みながら、咲夜が歩いてきた。
咲夜「魔弾の射手が窓から彼を見て騒ぎ始めてしょうがないのよ。」
黒の便利屋「魔弾?聞いた事のある幻想体だ...この世界にも幻想体がいるなんてツイてねえな...」
咲夜「この世界にも?貴方、同じ世界から来たのかしら。」
黒の便利屋「もちろんさ。取り敢えず、この世界について説明してくれないか?」
咲夜「...良いでしょう。」
少女説明中...
咲夜「そして、私はこの紅魔館のメイド長を務める人間...十六夜咲夜よ。
黒の便利屋「咲夜...幻想郷...良い響きしてるぜ。まさに楽園じゃねえか!」
咲夜「感想は良いわ...貴方は幻想体の元いる世界の人間でしょう?こっちは情報を与えてるんだから、そちらも説明しなさい。」
黒の便利屋「良いぜ。ギブアンドテイクだ。」
咲夜は黒の便利屋の話を興味深そうに聞いた。
黒の便利屋「それで...L社って分かるか?俺は元々、仲間達と一緒にその会社を深夜に襲撃しようとしてたんだ。その前に会社が崩壊しちまってさ...幻想体の情報だけ持ってるわけ。」
咲夜「便利屋ねぇ...うちの館で働かない?雑用はいくらでも出来るわよ?」
黒の便利屋「今、お前たちに縛られる理由は無いぜ...と言いたい所だが、妖怪に出くわして死ぬのもごめんだしな...お前の言った-弾幕ごっこ-で蹴りをつけようぜ。俺が負ければ、館に住み込んで雑用でも何でもしてやる。」
美鈴「なら、私が相手に...」
咲夜「私が出る。私も人間だけど、弾幕ぐらい撃てる。貴方は弾幕撃てないでしょ?」
黒の便利屋「そこで頼みたい。俺にはこのハンマーしかないが、お前はどんな事をしてでも距離を置いて貰って構わない。絶対に追いつけるからな。」
咲夜「妙に自信があるじゃない。」
黒の便利屋「そこらの底辺フィクサーじゃあないぜ。俺も一級ぐらいの実力は持っている。」
黒の便利屋の戦闘能力は嘘では無く、本当である。しかし、黒の便利屋自身、幻想郷の事について説明してもらった咲夜が能力を持っていないのだと考えていた。
黒の便利屋「お前は横の野郎と違って、人間なんだろう?妖怪じゃないなら楽勝だ。」
咲夜「へえ、随分と呑気ね。」
黒の便利屋「当たり前だろ?たかがメイド...弾幕を撃てた所で身体能力は俺の方が上だ!勝たせてもらうぜ!」
黒の便利屋はハンマーの柄の部分についた針を咲夜の首目掛けて勢い良く振った。しかし、次の瞬間、咲夜は黒の便利屋の後ろに立っていた。
黒の便利屋「何ッ!消えた!?」
咲夜「人間でも能力を持つヤツはいるのよ。」
黒の便利屋「クソッ!騙したな!」
咲夜「幻想体と同じ世界に住んでいたんでしょう?素直に敵の能力を教えるわけないわ。」
黒の便利屋「瞬間移動がお前の能力か?」
咲夜「さぁね...でも、一つだけ言っておくわ。時は加速すると。」
その言葉と同時に咲夜は目で追えないスピードで黒の便利屋の周りを走り始めた。
黒の便利屋「加速がアイツの能力か!?ならば...」
すると、黒の便利屋は唐突に自分のハンマーを地面に突き立てた。
黒の便利屋「この世界にも幻想体はいるんだろう?このハンマーは地面に突き刺さった時、幻想体達が不快に思う超音波を発する!」
ハンマーについた眼の模様が点滅したと同時に、周囲に鳥の鳴き声が響き渡った。
-紅魔館・内部-
フラン「あれ?魔弾さんどうしたの?」
魔弾の射手は自分の周りに魔法陣を開いて、狂った様に弾丸を撃っていた。
魔弾の射手「離れてろ!気分が悪くて銃を乱射してるんだよ!」
フラン「ふーん、変なの。」
魔弾の射手「畜生!耳が痛い!」
-紅魔館・外-
黒の便利屋がハンマーを地面に突き刺してしばらくすると、周囲に複数の魔法陣が出現し、弾丸の雨が降り注いだ。
黒の便利屋「ハハハ!本当に魔弾の射手がいるなんてな!俺の装備はBLACK免疫...つまり、この場で弾丸攻撃を喰らうのは十六夜咲夜!お前だけだ!」
そして遂に、死角から飛んできた弾丸に咲夜は当たってしまった。幸い、足を掠めた程度だが、同時に速度が鈍ったその隙を黒の便利屋は逃さなかった。
黒の便利屋「終わりだ!」
ハンマーを思いっきり振りかぶって、咲夜に突進する。黒の便利屋が勝利を確信したその時、咲夜が何かを呟いた。
咲夜「やれやれね...思い込みってのは良くないわ。《幻世 ザ・ワールド》!」
黒の便利屋が咲夜の眼の前に来た所で時が止まる。咲夜は黒の便利屋の周りにナイフを数本投げて、その場から回避した。
咲夜「時は動き出す...」
同時に、黒の便利屋の身体にナイフが突き刺さった。
黒の便利屋「痛ってぇぇぇぇ!?」
激痛から手が緩み、ハンマーを落としてしまった。倒れた黒の便利屋の前には咲夜が立っている。
咲夜「私は時を操る程度の能力を持つ。自分の時を加速させたり、時間を止める事が出来るのよ。」
そう言って、咲夜は美鈴を連れて、紅魔館の中に戻って行った。
咲夜「雑用係の募集はしてないのよ。永遠亭にでも行ってきたら?」
黒の便利屋「畜生...仲間達も連れてきてやるからな!」
刺さったナイフを抜いた黒の便利屋はよろよろと歩き始め、紅魔館を後にした。後日、銃を乱射した魔弾の射手は咲夜にシバかれて、煙草を没収されるのであった。
-妖怪の山・玄武の沢-
理解プロセス達の残骸をにとりが一人で掃除していた所、パワードスーツに身を包んだ人物が現れた。
にとり「うわっ!またメカメカしい奴が来たよ...天狗達の警備は最近ぬるいからなぁ...」
赤の便利屋「メカメカしくて悪かったな。それはそうと、この世界について知りたいのだが...」
にとり「外来人?しょうがないなぁ。」
赤の便利屋もまた、幻想郷の住人に弾幕勝負を挑んで、負けるのであった。後日、永遠亭で二人が再会するのはまた別のお話...
続く...
- Re: 東方幻収録 40 ( No.40 )
- 日時: 2024/02/22 20:21
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-人間の里-
青の便利屋と白の便利屋はこの世界の事を調べるために通行人達から情報を集めていた。そして、自分達を外来人と知った一人の村人から鈴奈庵と言う本屋に行く事を勧められ、二人で鈴奈庵へと向かうのであった。
青の便利屋「ここが鈴奈庵か。」
マミゾウ「いらっしゃい。珍しい服を着ているねぇ。」
カウンターらしき場所に座っていたのは、眼鏡を身につけたマミゾウだった。
青の便利屋「あんたらの言う外の世界から来たもんで。」
マミゾウ「そうかい、ここについて知りたいなら、これを読みなさい。」
そうして、青の便利屋に渡されたのは、幻想郷縁起と書かれた書物であった。
青の便利屋「アンタが店番かい?」
マミゾウ「今はね...」
白の便利屋「前の店番もいたんですか?」
マミゾウ「お主等には関係無い。その本はくれてやるから、去ってくれ。」
青の便利屋「すまない...」
幻想郷縁起を手に入れた二人は、幻想郷についての知識を身に着ける事が出来た。
白の便利屋「妖怪に神もいる世界なんて...あちらと似ていますね。」
青の便利屋「度々起こる異変とやらが気がかりだが、博麗の巫女という者が対処に当たるらしい。」
白の便利屋「それで、これからどうしますか?」
青の便利屋「あの二人を探す。あいつらの事だ。妖怪に喧嘩でも吹っかけているんだろう。」
-永遠亭-
青の便利屋「まさか本当に喧嘩していたとは思わなかった。」
二人が里を出てすぐ、はたてが配っていた新聞を貰い、黒と赤の便利屋が紅魔館や玄武の沢で騒ぎを起こした事を知った。どっちも幻想郷の住民達に返り討ちにされたようで、永遠亭で休息していた。
黒の便利屋「だって、人間が時を止める能力なんて持ってると思わないぜ!?」
赤の便利屋「あの河童...見ただけで吐き気のするEGOを所持していた...」
青の便利屋「勘弁してくれよ。この世界にも幻想体がいるなんて...」
永琳「元からいた訳じゃないわよ。」
青の便利屋「あんたが医者...月の民か。」
永琳「元ね。幻想体達が出現したのは何ヶ月も前からよ。幻想郷のあらゆる場所で事件が起きて、こっちは迷惑してるのよ。」
青の便利屋「L社が潰れた影響だろうか?」
永琳「そっちの話は良く知らないわ。貴方達が起こした訳じゃないでしょ?」
青の便利屋「幻想体なんて数十年前に消えたと思われていた。L社なんて、つい最近思い出したしな。巣の物語は今も止まらないだろう。」
黒と赤の便利屋の生存を見届けて、青と白の便利屋は永遠亭を後にした。
-魔法の森-
魔理沙「あの鳥達も紫が返しちゃったし、また孤独になっちまったな〜」
珍しく掃除をしたので、部屋の中は清潔であった。魔導書や実験器具は棚に飾り、地面に落ちていた紙切れや茸は全て捨てている。玄関に立つスタンドには、白黒の帽子と-黄昏-のEGOが掛かっていた。
魔理沙「暇だし、茸でも取ってくるか。」
白黒帽子を被り、黄昏を身に着けて、籠を片手に扉を開ける。家の近くの切り株に立てかけた箒と黄昏の剣を背中に背負って森の奥へと進んだ。
魔理沙「...なんだあれ?」
しばらく歩いていると、魔理沙は暗い森の中で小さく光る何かを見つけた。それを覆っていた草木をかき分けてみると、中にあったのは紫色に光る石板であった。ひとりでに振動する石板に興味を持った魔理沙は、ふと石板に右手をかざした。
その瞬間。
魔理沙「何ッ!?」
魔理沙の後ろには巨大なポータルが出現していた。魔理沙が振り向くと同時に、ポータルから紫色の棘が射出された。反射的に黄昏を使って防御するが、かなりの威力なのか、数メートルふっ飛ばされた。
魔理沙「あの石板...ッ!まずい!」
魔理沙が体制を立て直そうとした時、ふと頭上を見ると、空から巨大な石板が落ちてきていた。咄嗟に八卦炉からビームを放ち、その反動で石板を回避する。
魔理沙「畜生...石板が幻想体そのものなのか!?」
無機質でいて、生命を持つかの様に淡く光ながら振動する石板達から何かが聞こえた。魔理沙には、ただ一つの言葉。-愛を下さい-という言葉が頭の中に伝わってきた。
魔理沙「気味悪いぜ...ッて、うわぁ!」
いつの間にか、魔理沙の足元には紫色の臓器の様な怪物-理解の果実-がうじゃうじゃと徘徊していた。魔理沙はその中で一番大きな石板を睨み、黄昏を向けて叫んだ。
魔理沙「お前が親玉なんだろ?掛かってこい!」
数ある黒い石碑-愛を下さい-の中で唯一横に石板を広げ、不気味な程に強く発光する石板。
魔理沙は石板の正体が何であれ、己の頭脳で理解しようとした。幻想体である事に変わりは無い。パニックになりかけた精神を落ち着かせ、自分自身が崩れないために。理解できないこと、届かないことは許されないがゆえに。
-作られた神-との戦いが始まった。
続く...
- Re: 東方幻収録 41 ( No.41 )
- 日時: 2024/03/14 20:44
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
声に反応して理解の果実が魔理沙に這いずり寄った。それを黄昏で切り刻んで-作られた神-へと進むが、周りの-愛を下さい-の触手が行く手を阻んだ。
魔理沙「うげぇ...気持ち悪いぜ」
不気味に光る触手に破裂した-理解の果実-の粘液。魔理沙の体力と精神力に微々たるダメージを与えていた。しかし、それぐらいで魔理沙は怯まなかった。
八卦炉で周りの触手を焼き払い、今度こそ石板へ接近した。
魔理沙「喰らえ!」
石板に強烈な一撃を叩き込む。黄昏は全属性ダメージを一度に与える大剣であった。石板の真ん中に若干のヒビが入る。だが、-作られた神-もタダでやられるわけでは無かった。突然、魔理沙に向かって2つの紫色のポータルが開かれた。ポータルから突き出るのは、魔理沙を狙う巨大な棘であった。
魔理沙「やべっ!」
箒を持って急上昇し、間一髪で棘の攻撃を回避した。避けていなければ串刺しにされていただろう。
魔理沙「危ねぇ...」
ポータルは間髪入れずに魔理沙に向かって出現した。魔理沙は右に左に避けきり、もう一度石板に近づいた。しかし、魔理沙の背後にはポータルが一つ出現していた。紫色の巨大な棘が魔理沙の背中を抉る寸前。右に大きく旋回して避ける。しかし、避けた方向にもまた、ポータルが出現していた。
魔理沙「チッ...先読みされていたか。でも、先に死ぬのはお前だぜ!」
その言葉と同時に、ポータルから突き出た棘が-作られた神-の真ん中に直撃した。魔理沙は石板に棘が当たる様に誘導していたのだった。
自らの攻撃で石板は砕け落ち、周りの試練達も塵となって崩壊し始めていた。
魔理沙「これで一件落着だ...」
しかし、まだ試練は終わっていなかった。
魔理沙「ッ!?」
魔法の森の上空で、-それ-は魔理沙を見つめていた。透き通る様な美しい巨大な目が浮かんでいた。その目は魔理沙の魂を少しずつ吸い取っていた。魔理沙はその美しさに意識を奪われていった。
魔理沙「う...動かない...」
魔理沙は視線を反らしたくても反らせなかった。危険だと分かっているのに、命の危機が迫っているのにも関わらず、無意識に見つめてしまう。魔理沙の意識が朦朧とするにつれ、背後に鎮座する水色の石板が淡く光っていた。
魔理沙「...誰か...」
魔理沙は助けを求めたが、魔法の森の奥に誰も来るはずが無かった。
今を除いて...
青の便利屋「おい!こっちで何か聞こえたぞ!」
白の便利屋「何か嫌な予感を感じる...そもそも何故、森なんかに来たんですか...」
青の便利屋「幻想体が入ってきた世界だ。何か見つかるかもって...あの石板は!?」
便利屋の二人が永遠亭から偶然、魔法の森に来ていたのだった。
白の便利屋「恐らく幻想体...でも、何か違いますね。」
青の便利屋「属性はPALEと見た。悪いが相手してくれ。」
白の便利屋「分かりましたよ。」
青の便利屋はPALE属性に免疫を持っているため、魔理沙を連れて安全な所まで連れて行った。白の便利屋はWHITE属性。水色の-作られた神-には相性が良かった。背中に背負うEGOから真っ白な霧を勢い良く噴出し、青い目を包む。霧のかかった目は混乱する様に眼を忙しなく動かした。
白の便利屋は石板を見つけだし、EGOを石板に撃ち込んで破壊した。空に出現した眼は最初からそこに無かった様に、消滅した。
青の便利屋「お嬢さん...怪我は無いか?」
魔理沙「おかげで助かったぜ。何者だ?」
青の便利屋「何者か...便利屋とでも言っておくよ。」
魔理沙「便利屋ぁ?同業者か?」
青の便利屋「まぁそうかもな。」
魔理沙が問いただす前に、青の便利屋は白の便利屋と一緒に魔法の森を出ていってしまった。魔理沙は散らばった石板の欠片を興味深そうに見ていた。
-旧地獄-
小町「いやぁ...困ったなぁ。」
小町は今日、映姫の許可無く休暇を取って、旧都の居酒屋で飲んでいたのだが、突如現れた赤色と白色の石板の戦闘で手間取っていた。
小町「ついてないなぁ〜白い触手に触った勇義が暴れだすし、赤い腕に何人か連れ去られるし...」
数十分の戦闘の末、見事石板を破壊した小町だったが、旧都で起きた戦闘は魔法少女達の目にも止まっていた。小町が石板を破壊したという噂は広まり、彼女の頭にはもはや、無断休暇の始末書で追われる未来だけしか見えていなかった。
最後に崩壊するのは、決まって幻想体であった。
-博麗神社-
霊夢「石板が出現した?それも試練なのかしら?」
作られた神が全て鎮圧されて2日後、魔理沙と霊夢は神社で談笑していた。
魔理沙「分からない。便利屋って奴に助けてもらったんだけど、どこに行ったのかなぁ。」
霊夢「紫が石板の破片を持ってたけど、試練って奴はもう無いのかしら?」
魔理沙「あの石板が最大脅威って魔弾が言ってたし、あれが最後なんじゃないか?」
霊夢「だと良いけど...」
魔理沙「そろそろ時間だな。紅魔館に用があるから、私は失礼するぜ。」
霊夢「そう、またね。」
-紅魔館-
魔理沙「よう美鈴!今日は起きてんだな。」
美鈴「いつも寝てるみたいに言わないで下さいよ!」
葬儀屋「本当に寝てるから否定は出来ませんよね。」
美鈴「ちょっとぉ!」
魔理沙「葬儀屋も随分丸くなったな。最初は死が救済とか言ってた癖に。」
葬儀屋「あの会社での話ですよ。今は美鈴さんに代わって庭の整備をしてますよ。」
魔理沙「そうか、私はパチュリーに用があるから...またな。」
-大図書館-
魔理沙「よお、久しぶり。」
パチュリー「貴方がちゃんと入ってくるなんて少し変ね。」
魔理沙「前に約束してただろ!?」
パチュリー「冗談よ...それで、用事は?」
魔理沙「前にも話したあれだぜ。」
パチュリー「本当にやるの?前にアビリティカードが流出して大変だったじゃない。」
魔理沙「今回は大丈夫だ。」
魔理沙はポケットから一冊の本を取り出した。
魔理沙「呪文を書き込んで、幻想体達を限定的に召喚出来るこの本があれば、スペルカードルールに次ぐ面白い戦いが出来る筈だぜ!」
パチュリー「しょうがないわね...私も手伝うわよ。」
後日、紅魔館の図書館では度々、接待と呼ばれる戦いが行われた。大図書館に眠る強力な魔導書を巡って、便利屋達や妖怪が集まった。主催はパチュリーと魔理沙。スペルカードルールに次ぐ決闘として、人気になったとか。
-完-