BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- GL 『宿縁』(完結)
- 日時: 2013/07/20 16:35
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
参照してくれてありがとうございます。あるまです。
タイトルは「シュクエン」と読みます。
主人公のナナミ視点で、女子中学生どうしの、清らかな恋愛を描いていきます。
着想から完成まで半年ほどかかり、途中でしばらく中断し、前半と後半で雰囲気もだいぶ変わりましたが、なんとか完結までアップできました。
参照数を見る限り、何人かは読んでくれたと思います。
本当にありがとうございました!
______あらすじ______
ナナミは真面目な優等生で、いつもカエの面倒ばかり見ていた。しかしそれが幸せだった。
ところが学校の制度はどんどん厳しくなり、受験を意識して、成績優秀な者とそうでない者を分けたクラス編成にすることが、検討されていた。
冬のテストでナナミは成績上位に入ったが、カエは圏外だった。
ナナミは将来もカエとずっと一緒に居たいと思い、カエに勉強を教えようとするが……。
______プロローグ______
「きっと何かの因縁だよね、あたしたちが惹かれ合ったこと」
カエの表情が弾けるように明るくなった。
一瞬、わたしの背筋に電流が走る。
因縁。
おそらくそれは、生まれる前から、わたしたちが結ばれると決まっていたってことだろう。
屋上の空気はいっそう冷えて、昼間だというのに、やたらと静まり返っていた。
- Re: GL 『宿縁』(3月10日更新) ( No.12 )
- 日時: 2013/03/10 10:45
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
十
「部屋に戻ってなさいよ。邪魔しないで」
里奈はつまらなそうに自分の部屋に戻っていった。カエが「乱暴すんなよ。あんな小さな妹に」と、妹をかばっているのが気に入らない。
ガスストーブの音だけが低く響いている部屋で、わたしたちは勉強に集中した。カエは一年生レベルの問題集を黙々と解いている。このくらいはできるみたいで、よかった。
「はい。今日の分の授業ノート、写しておきましたわよ」
カエのノートに、授業の要点をまとめたわたしの文章を、書いて渡した。
「ありがとぉ」
「ほんとは自分でやるしかないんだけど、仕方ないわ。古典のテストは持ち込み可だから、そのノートに書いたままを解答用紙に書けば、なんとか通るわよ」
カエの実力を考えたら、すべての科目をそつなくカバーするのは難しい。苦手な科目は、せめてテストだけでも通ればいいと思って妥協するしかない。
「古典の先生は甘いもんね。ナナミ、他のテストでは、攻略法とかってないの?」
「そんなものありません。日々の真面目な積み重ねが大事なのよ……と言いたいところだけど、ありますわ」
あきらめ半分で、わたしがこうもらすと、予想通り、カエが「教えて教えて!」と、くいてくる。
「例えば、選択問題ね。世界史の先生は優しいから、難しい問題は、Aで答えておけばほとんど当たるはずよ。生徒に良い点を取らせたいんでしょうね。前のテストでも、BやCは珍回答ばかりだったし」
「へー、気づかなかったよ。あたしなんて、分っかんないから、鉛筆を転がして答えてた」
なるほど。鉛筆の側面にAとかBとかCとか書いて、転がして出た目をそのまま解答用紙に書く方法か。
「そういうのがもったいないのよ……」わたしは呆れた表情で額を押さえて、「分からなくても、少しは考えてみなさい。これは絶対に違うだろって選択肢を外すだけでも、二択にはなるでしょ。あなたはすぐに考えることを放棄するから。その性格だけでもだいぶ損してるはずよ」
「んー! だって机に向かって文字とにらめっこしてると、頭の中がオーバーヒートしちゃうんだもん! ねえ、他には攻略法ないの?」
「ないわよ……」わたしは溜息をついてから、カエの目を見て、「例えば、論述問題で答えが分からない時は、『分からなくても自分なりに一生懸命に考えました』っていうのをアピールするの。そうすると、自分で思っていた以上に高得点がもらえる時があるわよ」
「そうなの? じゃあ、分からない時はそう書けばいいんだね?」
「え? 『分からなくても自分なりに一生懸命に考えました』って書くってこと? そんなわけないでしょ。考察のあとがうかがえるような文章を書きなさいってことよ」
「……コーサツ?」
カエがポカンとした表情で、首をかしげた。
「はあ……。理解が遅いんだから、こっちも苦労するわ」
わたしがそう言うと、カエは「んだよー、もう」と頬をふくらませた。が、そのあとですぐ気が変わったように、
「でもナナミって、あたしが困って聞くと、だいたい何でも答えてくれるよね。すごく面倒見がいいっていうか。だからさ、ナナミの彼氏になるひとは幸せだね?」
話題を転じてきた。しかも、わたしなんかとは縁がないっていうか、興味のない話題だ。
「わたしは面倒見がよくなんかありませんわ。里奈にだって、姉らしいことなんかしてませんし……」
わたしはそんなに、他人のことを思いやれる人間ではない、と思う。
ただカエにはそう見えているだけだ。だってカエったら、わたしが面倒を見てあげないと、どうなってしまうのか分からないもの。わたしがいないと、カエはきっとダメになる。
「ナナミにはさ、きっとA級の彼氏が合うよ。だってナナミはA級の女子だもん」
「そんな、わたしがA級だなんて」
わたしは、相手がA級だろうがB級だろうがC級だろうが、気にするつもりはない。
だって相手はもうずっと決まっているんだから。
学校内のどの男子でもなく、目の前のこの子だって。
「あーあ、あたしはこんなんだしなぁ」
カエはペンを放り出して、机の上に両腕を伸ばした。そしてわたしの目を見て言った。
「あたしは、一緒になるんだったら、自分と同レベルの彼がいいな。なんていうか、対等な関係っていうか」
「え……」
カエの言葉は、わたしに動揺を与えた。
- Re: GL 『宿縁』(3月10日更新) ( No.13 )
- 日時: 2013/03/27 17:35
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
場面がとつぜん変わりますが、以下から「後半部」とします。
実は行きづまってしばらく放置してました。
流れを変えるため、テスト当日から再開します。
- Re: GL 『宿縁』(3月10日更新) ( No.14 )
- 日時: 2013/03/27 17:38
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
『宿縁』(完結編)
一
「では今から50分間です」
教師の一言を合図に、クラスの全員が一斉に問題用紙をめくった。
バサバサバサ、紙を表にして問題を確認する音。そのあとは、机にペンを走らせる音だけが、時間に追われるように落ち着きなく鳴り響く。
テストの内容は、「〜〜について説明した上で、自身の考えを述べよ」といった類のものが三つ。
これならできないことはない。わたしは昨日までのテスト勉強の成果を実感した。
窓の外を見ればいつもと変わりない、くっきりした青空が見える。
真っ白なシーツにくるまってお昼寝でもしたら、きっと気持ちいいだろう。
再び教室内に目を向けると、廊下側の生徒はやはり寒いらしく、教師も黙認している膝掛けを使っていた。
男子は持参するのが面倒で使ってないひとが多いけれど、女子には人気のアイテムだ。
隣の席の新井君が、まばたきも忘れるくらいに集中した目つきで、机にかじりつくようにペンを走らせている。普段はだるそうに授業を受けている彼も、テストばかりは必死だ。
それもそうだ。わたしたちの中学二年生は、もうすぐ終わる。
そして三年生になったら、成績によってクラスを分けることになっている。
よくできる子は、よくできる子たちだけで集めるみたいだ。
今回のテストの成績も、もちろん大きな影響を与えるはずだ。
それなのに、どうしてあの子は来ていないんだろう。
わたしは斜め前の、一つ空いた席を見つめる。
昨日までそこに座っていた子が、今朝はまだ来ていない。
——ごめん、まだぜんぜん支度できてないの。きっと追いつくから、先に行ってて。
今朝、わたしがカエの家まで迎えに行くと、あの子はそう言っていた。
せかしても悪いと思って、わたしは先に行くことにしたが、やっぱり待っていた方がよかったのか。
——カエ、昨日までせっかく一緒に勉強してきたのに、本番で来ないでどうするの。
わたしは落ち着かず、廊下の方をちらちら見る。
もしかしたら、教室に入りづらいカエが、ドアからこっちをのぞいてるんじゃないかと思った。
テストの途中で入るなんてことになれば、きっと怒られるから。
でもドアの向こうにはなんの人影もなかった。
ふと、教師がこっちを見ているのに気づいた。
怖そうな先生と目が合ってしまった。
テスト中だというのに、わたしがちっとも手を動かさず、あたりをきょろきょろ見ているのが悪かったのかもしれない。
仕方ない。テストに集中しよう。
こういう記述式の問題は、ただ文字数をうめればいいってものじゃない。
要点だけをまとめて、分かり易く、てきぱきと書けばいいのだ。
わたしは指定された文字数で、きっちり問題に答えた。
- Re: GL 『宿縁』(毎日更新予定) ( No.15 )
- 日時: 2013/04/12 06:19
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
二
わたしとカエは小学校五年生の頃から仲好しだ。
出会ったばかりの頃、カエはなぜか髪を茶色く染めていて、そのふっくらした髪は、肩のあたりで大きなウェーブがかかっていた。
いつもカラフルな服を着て、ショートパンツから伸びる脚は色白で細くて、とにかく綺麗だった。
身体は小さい方なのに、ランドセルの似合わない、オシャレな感じの子だった。
カエはわたしには優しかったけれど、時々、怖い目つきでひとを睨んだ。
それが誰かれ構わない。
大人に対しても、時おり反抗的な目つきで睨みつけた。
わたしは、この子は不良なんじゃないかと思って、最初は怖かった。
わたしの親は、わたしがこんな子と友達だって分かったら、怒るんじゃないかと思った。
でもカエはだんだん大人しくなっていった。
出会った当初の、あのギラギラした目つきはなんだったんだろう。
今では、勉強の苦手なあの子を、朝が苦手なあの子を、なんでもだらしのない怠けものであるあの子を、わたしが面倒見てあげている。
あの子が自分の頭に手を乗せながら、
「いやー、あたしいっつもバカばっかりで、ごめんね」
なんて笑いながら首をかしげると、わたしはつい「しょうがないわね」と許してしまう。
三年生になっても、わたしはあの子と同じクラスでいたい。
この中学校だって、本当は入るのが難しかったんだけれど、わたしがカエを机に縛りつけてどうにかこうにか入ることができたのだ。
——今まで一緒だったんだもの。これからも一緒でいられるよね。
「はい50分経ちました。手をとめてください」
先生が声をかけると、教室にはざわめきとともに、解放感が広がった。
カエが事故にあったと聞いたのは、次の休み時間だった。
- Re: GL 『宿縁』(毎日更新予定) ( No.16 )
- 日時: 2013/03/28 22:51
- 名前: つくし (ID: X2wsDvW1)
早く更新してください!!!
気になって眠れません!!!
カぁ〜エぇ〜