BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- GL 『宿縁』(完結)
- 日時: 2013/07/20 16:35
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
参照してくれてありがとうございます。あるまです。
タイトルは「シュクエン」と読みます。
主人公のナナミ視点で、女子中学生どうしの、清らかな恋愛を描いていきます。
着想から完成まで半年ほどかかり、途中でしばらく中断し、前半と後半で雰囲気もだいぶ変わりましたが、なんとか完結までアップできました。
参照数を見る限り、何人かは読んでくれたと思います。
本当にありがとうございました!
______あらすじ______
ナナミは真面目な優等生で、いつもカエの面倒ばかり見ていた。しかしそれが幸せだった。
ところが学校の制度はどんどん厳しくなり、受験を意識して、成績優秀な者とそうでない者を分けたクラス編成にすることが、検討されていた。
冬のテストでナナミは成績上位に入ったが、カエは圏外だった。
ナナミは将来もカエとずっと一緒に居たいと思い、カエに勉強を教えようとするが……。
______プロローグ______
「きっと何かの因縁だよね、あたしたちが惹かれ合ったこと」
カエの表情が弾けるように明るくなった。
一瞬、わたしの背筋に電流が走る。
因縁。
おそらくそれは、生まれる前から、わたしたちが結ばれると決まっていたってことだろう。
屋上の空気はいっそう冷えて、昼間だというのに、やたらと静まり返っていた。
- Re: GL 『宿縁』(12月21日更新) ( No.7 )
- 日時: 2012/12/23 11:44
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
五
数週間後、テストの順位が廊下に貼り出された。
「さっすがだね、ナナミは! すごいじゃん!」
カエがわたしの背中を叩く。わたしの順位は四位だった。前回の六位よりさらに上がっている。
「ダメよ……こんなんじゃ」
「え?」
「カエの名前がないじゃないの! あなた、わたしとの約束はどうしたの!」
「んなこと言ったって……上位三十人になんて、入れっこないよあたしは」
テストの結果は上位三十人だけ公表されていた。わたしの学年は六十数人だから、およそ半分だ。
わたしはクラスでトップの成績だったらしく、次のホームルームで、先生がみんなの前で誉めてくれた。クラスのみんなもわたしに拍手を送ってくれた。
「上位に入らなかった生徒も、次はもっとがんばるように。学校の方針としては、次は五十位までを公表しようかなんて話し合っているから」
先生は教室を見渡しながら言った。
「もしかすると、来年からは成績別で教室を分けるかもしれない。君たちも受験生になるからな。目標の近い者どうしでくっつけた方がいいんじゃないかと。これからもお互いに競い合って、自分を磨くように」
教室が一瞬、ざわめいたが、先生が、「話は以上だ。授業を始めるぞ」と言うと、みんな静かになった。
わたしはその日の授業のことを全く覚えていない。
- Re: GL 『宿縁』(1月1日更新) ( No.8 )
- 日時: 2013/01/01 01:22
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
六
どうしよう。来年から、カエと別々のクラスになってしまう。
何が「目標の近い者どうし」だ。わたしはそんな目標を持った覚えはない。成績が上がったって、カエと離れてしまうのでは、本末転倒ではないか。
ああ、ちょっと前までわたしたちも新入生だったのに、今度はもう受験生になるのか。
めまぐるしい。文字通り、目がぐるぐるまわりそうだ……。
「ダメよダメよダメよ! 目をまわしてる場合じゃないの!」
わたしは、ガバっと顔を上げた。
机に顔を伏せていたから、額が汗ばみ、頬は、腕を押しつけていたせいでジンジンしていた。
「なにがダメなの? 目をまわしてるって、ナナミはどっか具合が悪いの?」
カエがそこに居た。時計を見ると、もう放課後。
「目、まわってないよ?」
カエの無邪気な目が、わたしの瞳を、じっと見つめている。
「カエ、さっきの先生の話、聞いたでしょ?」
「ごめん。ナナミ寝てた? たまにはあたしが代わりに聞いといてあげなきゃだけど、あたし、授業の内容が分っかんなくて……」
「授業の中身じゃありませんわ。HRでのことよ。来年からは成績別でクラスを分けるって言ってるのよ?」
「そうみたいだね」
「そうみたいって、カエ、このままだと来年からはわたしと別々のクラスになっちゃうかもしれませんのよ?」
「それは残念だけど……仕方ないと思うよ」
カエはわたしから視線を逸らし、頬をぽりぽりかいた。
「仕方ない……ですって?」
「ナナミに劣らないくらいの成績を出し続けるの、あたしにはとうてい無理だよ。むしろ分けてくれちゃった方が、こっちとしても気が楽かもしれない」
「そんな……分けるだなんて……そんな」
わたしは下を向いて、肩をふるふるいわせた。にぎった拳に、力が入る。
「ナナミは気にしてないのかもしれないけど、よくできる子からしてみれば、あたしらみたいなバカと一緒に授業を受けるのも、嫌なんじゃないかな。来年からはもっとピリピリしてくるだろうし」
「そんなの、わたしが許しませんわ!」
「わッ!」
思い切り顔を近づけた、わたしの形相に、カエがたじろいだ。
「あなたはバカじゃないはずよ! 自分で自分のことバカなんて言わないで!」
「いや……だってよく言われるもの。バカだよ、あたしは」
「やめてやめてやめて!」
わたしは自分の頭をかきむしった。どこへ解き放てばいいのか分からない怒りが、沸き立つようだった。
「カエ! やっぱりわたしは、あなたのことを放っておけませんわ。やっぱり遠くに居ちゃダメなのよ。わたしの家に来なさい!」
「は?」
「今までは、授業のノートを渡したり、メールで監督するだけだった。でもそれじゃダメだわ。家に帰ったらもう何して遊んでるか分かりませんもの。家庭教師が必要よ!」
「家庭教師? 誰が?」
「わたしがよ! さっきもちらっと言ってたけど、カエ、あなたもう授業の内容にはついていけてないでしょ? あなたの分かるところまで時間を巻き戻して、そこから教える必要があるわ」
「えー。もう一年生の問題とか、やるのやだよー。せっかく終えたのに」
「一年生からやる必要があるの? こうしちゃいられないッ。さあ、わたしの家に来るのよ!」
- Re: GL 『宿縁』(1月10日更新) ( No.9 )
- 日時: 2013/01/10 22:44
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
七
わたしは、まるで気乗りしないカエを引きずるようにして、自分の家に連れてきた。
わたしは今まで自己チューだったと思う。自分さえよければそれでいいって思ってた。
自分は自分。カエはカエだなんて、そんなわけにはいかない。一緒にいたいのなら、カエが堕落するのをただ見ているだけではダメだ。
「ナナミの家に来るの、何日ぶりかなー。家には誰もいないの?」
「里奈がもう帰ってるはずですわ」
わたしは玄関のドアにカギをさしこんだ。何かおかしい、と思ったらカギは開いていた。
「もう。妹ったら、カギはしっかりかけとかないと、危ないって言ってるのに」
玄関をあがり、リビングをのぞいてみる。テレビの音がしていたのだ。妹かと思った。後ろではカエが「お邪魔しまーす」と言って靴を脱いでいる。
「あれ? やだやだッ。カエ、まだ入ってこないで」
「ん?」
わたしは手を前にかかげて、カエをストップさせた。慌ててリビングに入ると、ドアをしっかり閉めて、
「ちょっと、兄さん、帰ってらしたの?」
小声で兄に言った。
「んだよー、俺が居ちゃ迷惑か?」
兄は顔が赤くなっていた。ソファにだらしなく腰をうずめて、足下には空き缶がゴロゴロしている。
「もう。お酒を飲むなら、部屋でやってよ」
わたしは腰をかがめ、転がる空き缶をひろい集めた。
「AT-Xはこの部屋じゃないと見られないからな。せっかく、うるさい母さんも夜まで帰ってこないんだ。お前まで俺のことでいちいち文句言うな」
兄は機嫌がとても悪かった。わたしは空き缶の数を数えて、
「兄さん、もう何時間もこうして飲んでらしたの? 今日は企業面接があるんじゃなかったの?」
「あんなもの、俺には無理だ無理! ほっとけ!」
「もう……」
わたしは軽い頭痛を感じ、眉間をおさえた。
「今日はわたしの友だちが来てるから、みっともない姿を見せないでね」
「なんだよ? 俺みたいな兄が居るのは、お前の恥だっていうのか?」
「いいから! せめて、その伸ばしっぱなしのヒゲくらいは剃ってよね!」
わたしは胸にかかえた空き缶をビニール袋に入れ、台所の隅に置いた。兄が飲んだくれてるのを見たら、母がまた機嫌を悪くしてしまう。
兄だって、自分が酔っ払っているのをわざわざひとに見せつけることもないだろうに。有料チャンネルが見たいからリビングに居るって言うけど、本当なのだろうか。
あんな、だらしなくヒゲも伸ばしたままで……。
成人してから、兄はカッコ悪くなった気がする。
- Re: GL 『宿縁』(1月18日更新) ( No.10 )
- 日時: 2013/01/18 17:25
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
八
玄関に戻ってみると、カエはまだ靴も脱がず、座り込んでいた。
カエは癖っ毛で、後ろ髪はパーマをかけたみたいにウェーブしている。
でも前髪は切りそろえられていて、幼い感じだ。
冷たい玄関でじっと待たされて、不機嫌そうなカエの横顔を、わたしは見ていた。
「ん?」カエはこちらに気づいて、振り向く。「なんだよ、居るなら声かけてよ。寒いんだよここ!」
「ごめんなさい」
カエは怒っているのに、わたしの表情はほころんだ。
カエったら、ほんの数分でも、大人しく待っていられないのだ。
「もー。なんでナナミは笑ってるんだよ。上がるからね? お邪魔します」
二人の足音が階段をゆらした。
自分の部屋で、カエと二人っきりになれるなんて、わくわくしてしまう。
「お姉ちゃん? カエお姉ちゃん?」
と思ったら、そうもいかないか……。
二階の、わたしの部屋の前に、妹が立っていた。
「なんだ。姿を見ないと思ったら、二階に居たのね」
妹の里奈は、わたしを真似た髪形をしていて、わたしのちっちゃい版みたいだ。でもわたしよりずっと穏やかな顔をしている、と思う。
「チィーッス! 里奈よ! 元気にしとったかね?」
カエが里奈と目線を合わせ、気さくに話しかけた。
「うん。里奈は元気だよ。カエお姉ちゃんも元気?」
「元気だとも。里奈ちゃん家の、ナナミお姉ちゃんは最近どうかね?」
「どうかねって、あなたとわたしは毎日学校で会ってるでしょ」
「ちゃうちゃう。あたしが知りたいのは、家でのナナミだよ」
カエがパタパタと手を振って、いたずらっぽい笑みを見せる。
「お姉ちゃんはねえ」妹はもじもじ、身体をくねらせて、「お風呂が長くなったーって、お母さんに言われてるよ」
「ちょっと里奈!」
わたしはとっさに怒鳴っていた。
なんて恐ろしい。里奈ったら、わたしのどんな恥ずかしい秘密をカエにバラすか、分かったものではない。
- Re: GL 『宿縁』(3月9日更新) ( No.11 )
- 日時: 2013/03/09 07:12
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
九
「あー、長風呂ねぇ」カエは相変わらずのいたずらっぽい笑みで、「思春期だもの。色々と気を配るよねー」
「まったく。余計なこと言わないでちょうだい」
わたしは溜息をつき、額をおさえた。確かに今は、自分の身体の変化にも、とまどう年頃だと思うのだ。色々と気を配った結果、お風呂も長くなってしまう。
「お姉ちゃん、巻尺買ってきたから、これ使って」
里奈が、どっから出したのか、巻尺を差し出した。
「いりませんわ!」
わたしはようしゃなく、里奈の手を弾いた。カエが「あ」とだけ声を出し、巻尺が廊下の隅に転がっていくのを目で追った。
「ふむふむ」
カエがあごに手を当て、わたしの首から下を、品定めするような目で見てくる。
「な、なんですの?」
わたしは自分の身体をかばうように、腕を上体に重ねた。
「ナナミは、ふくよかな身体をしてるねー。抱き枕みたい!」
「いやですの。あんまりじろじろ見ないで……」
「抱きついてみてもいーい?」
カエのパチクリした目が、わたしの目と交錯した。語尾の「いーい?」と同時に首をかしげる仕草に、電流が走った。
「ななな! ダメですわダメですわ! 抱き合うだなんてそんな……」
「なんだよ。冗談に決まってんじゃん。そんなに嫌がらなくてもいいのに」
カエが冷静に言った。わたしったら、ついオーバーに反応してしまった。おそらくカエと里奈には変に見えただろう。
それにしても、なんて失敗だ。せっかくカエと抱き合うチャンスだったのに。女の子どうしなら、抱き合うなんて、よくあることじゃないか。
「ま、まあ……カエがどうしてもっていうなら、いいのよ。さあ、わたしの胸に飛び込んでらっしゃい」
「ところで里奈はどうしてそんな薄着なんだい?」
カエの方を向いて両腕を広げるわたしを無視し、カエが素朴な疑問を口にした。
里奈はミニのジャンスカを着ていて、靴下は穿いていない。膝から下が、寒そうに見える。
「里奈は今まで、オコタで寝てたの。だからあったかいんだよ」
「コタツ? 里奈の部屋にはコタツがあるのか。いやー外は本当に寒くてね。では里奈、お前のあたたかさを分けてくれ」
そう言ってカエは里奈に抱きついた。里奈の小さい身体が、すっぽり包まれる。
「カエお姉ちゃん、つめたい」
「いやー、里奈のほっぺはあったかいね!」
カエが妹に頬ずりする。外で冷えきった手は、里奈の服のすき間へと侵入していった。
「ちょっとカエ、いい加減にしなさい!」
二人がべったりくっつくのは、見るにたえなかった。わたしはつい腕に力が入り、里奈が「痛い痛い」と小さく叫んだ。