BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- GL 『宿縁』(完結)
- 日時: 2013/07/20 16:35
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
参照してくれてありがとうございます。あるまです。
タイトルは「シュクエン」と読みます。
主人公のナナミ視点で、女子中学生どうしの、清らかな恋愛を描いていきます。
着想から完成まで半年ほどかかり、途中でしばらく中断し、前半と後半で雰囲気もだいぶ変わりましたが、なんとか完結までアップできました。
参照数を見る限り、何人かは読んでくれたと思います。
本当にありがとうございました!
______あらすじ______
ナナミは真面目な優等生で、いつもカエの面倒ばかり見ていた。しかしそれが幸せだった。
ところが学校の制度はどんどん厳しくなり、受験を意識して、成績優秀な者とそうでない者を分けたクラス編成にすることが、検討されていた。
冬のテストでナナミは成績上位に入ったが、カエは圏外だった。
ナナミは将来もカエとずっと一緒に居たいと思い、カエに勉強を教えようとするが……。
______プロローグ______
「きっと何かの因縁だよね、あたしたちが惹かれ合ったこと」
カエの表情が弾けるように明るくなった。
一瞬、わたしの背筋に電流が走る。
因縁。
おそらくそれは、生まれる前から、わたしたちが結ばれると決まっていたってことだろう。
屋上の空気はいっそう冷えて、昼間だというのに、やたらと静まり返っていた。
- Re: GL 『宿縁』(12月5日開始) ( No.2 )
- 日時: 2012/12/05 20:05
- 名前: 甘月 (ID: SnkfRJLh)
はじめまして、甘月と申します(・ω・)
あるまさんというお名前だけは知っていたので、来てみましたー!
優等生とおバカちゃんって良いですよね……!!
ナナミちゃんみたいに面倒見が良い感じの子も好きなんですが、カエちゃんも可愛いですねv
私のストライクゾーンど真ん中だったのでびっくりしましたw
これからも更新頑張ってくださいね!
- Re: GL 『宿縁』(12月5日開始) ( No.3 )
- 日時: 2012/12/06 18:06
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
コメントありがとうございます。
そして、はじめまして。よろしくお願いします。
私の名前をご存知だったとはw
おどろきです。
甘月さんに誉めていただいたように
二人のあたたかい雰囲気を保ちつつ、良いお話にできればいいな、と思っております。
- Re: GL 『宿縁』(12月5日開始) ( No.4 )
- 日時: 2012/12/11 20:54
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
二
家に帰ると空腹でもう倒れそうだった。
カエと一緒にアイスを食べていれば、きっと楽しい時間になっただろうに。自分の真面目さを後悔した。
夕飯ができるまでの間、カエのマフラーを修繕することにした。
このマフラーは去年のバレンタインにわたしが編んでカエにプレゼントしたものだ。
カエも最初は「ちくちくして首が痒い。ナナミもまだまだだね!」なんて、辛口なことを言ってわたしをヘコませたのに、すぐにマフラーを手放せなくなっていた。
カエはお礼として、わたしにチョコレートをくれた。
バレンタインに女どうしでプレゼントを贈り合っていても、違和感はなかった。それくらいわたしとカエの仲は自然だった。
でも冷静になってみれば、不思議な縁だ。
わたしとカエは、性格が似ていない。
見た目も、一見すると不釣合いな二人かもしれなかった。
カエに初めて会ったのは小学校五年生の時だ。
色が白くて、髪はなぜか金色に染められていて、襟足のところにやたらとウェーブがかかっていた。
不思議な子だ、と思ったが、後で知った話では、カエのお母さんがそういう髪型をさせていたのだった。
わたしは、髪を染めるようなひとはおっかないひとだと思っていたから、最初はカエが怖かった。
でも話してみるといい子で、一緒にいる時間が、とても楽しく感じられるようになった。
「よし、これで完成」
マフラーの修繕がおわった。
わたしは試しに、自分の首に巻いてみた。
そして、カエがいつも口が隠れるくらいマフラーを巻きつけているのを思い出し、その巻き方を真似た。
カエの鼻や口の当たっていた部分を確認し、わたしも自分の鼻と口をそこに重ねた。
わずかに、つばの乾いたようなにおいがする。
「カエ……」
「お姉ちゃん、ご飯できたよ!」
「わッ……ちょっと、いきなり入ってこないでよ!」
妹の声でわたしは妄想の世界から現実の世界に戻ってきた。
- Re: GL 『宿縁』(12月14日更新) ( No.5 )
- 日時: 2012/12/14 18:42
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
三
わたしには兄がいる。父はまだ仕事から帰らないから、母と妹を含めて四人での夕飯だった。
誰も見たい番組があるのではなく、テレビはなんとなく国営放送のドキュメントを流していた。
世の中は今、大変なことになっているらしい。
世界的に不況だとか、就職難だと言っている。
それがいったい何を意味するのか、わたしにはよく分からなかった。
わたしの生まれた国が、およそ二十年前までは世界でいちばんと言っていいくらいの経済大国だったと言われても、それはなんだか遠い過去の話で、今の自分たちには関係ないことのような気がした。
おじさんやおばさんの世代からすれば、そういう過去は輝かしいものだったらしいけれども……。
「今日はどこ行ってたの」
食事をしながら、母が兄に聞いた。
「べつに。ちょっと遊びに行ってただけだよ」
「もう大学は行かなくていいの?」
「ほとんど単位を取っちゃったから、しばらくは週に二回くらいしか行かないでいいんだ」
「そうなの。じゃあバイトでもしなきゃね」
「今のところバイトする気はないけど」
「だって、遊んでるだけじゃ時間の無駄じゃないの。アルバイトだってなんだって、やっておいた方がいいでしょ」
「俺、他にやりたいことあるから」
「それを遊んでるっていうんじゃない。大学も週二回しか行かないんじゃ……もったいない。あなたも早く稼げるようになって、お金を返して欲しいわ」
兄は大学三年目だ。
父は放任主義で何も言ってこないけれど、母は最近ではいつもこんな感じにピリピリしている。
七時を過ぎてチャンネルを変えるとクイズ番組が始まった。
一般教養とか、常識問題ばかり出されるクイズ番組で、わたしはちょうど現役の学生なだけに、分かる問題が多かった。
それにしても、ちょっとクイズに正解できないくらいでバカと呼ばれたり、その正解をたまたま知っていたくらいで得意がったりするのだから、世の中っていうのはずいぶんと狭いものだ。
わたしの住んでいる世界って、そういうものなのだろうか。
自然とカエの顔が頭に浮かんだ。
今ごろ何してるだろう。
カエのお母さん、カエにきちんとバランスの取れた食事を作ってあげてくれているだろうか。
カエのお兄さん、エッチな本をカエに見つからない場所に隠してくれているだろうか。
カエのお父さん、カエより先にお風呂に入ったりしてないだろうか。
ダメだ。心配で仕方ない。
『今日渡したノートご覧になって? マフラー、もう直しておきましたから、あなたもわたしとの約束、守るんですのよ』
わたしは部屋に戻ると、カエにメールを送った。
- Re: GL 『宿縁』(12月21日更新) ( No.6 )
- 日時: 2012/12/21 15:40
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
四
食事の後で眠くなってしまったけれども、勉強しなくては。
ただでさえ今年度から授業時間数が増えたのに、最近は宿題まで増えている。午後にもなれば集中力はキレギレだ。
兄さんが高校生の頃には、今ほど授業時間も多くなかったらしい。土日も休みだったって聞くし。
それに勉強が苦手でも怒られたりしなかったらしいから、もしわたしとカエがその時代に生まれていれば、ずっと仲良くしていられたかもしれない。
でも時代は変わったんだ。そういうことにしておく。
そう思って自分を納得させるしかない。
「ふぁーあ……」
あくびをかみ殺す。ノートを埋める文字がにじんだ。
わたしはいったい誰のために勉強しているんだろう。
その誰かのために勉強しているのであれば、後できちんと、わたしを幸せにしてくれるとでもいうのだろうか。
わたしはカエと一緒でさえいられれば他には何もいらないとさえ思うのに。
眠気から来るイライラもあってか、ついノートを取る筆圧が強くなった。

