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文スト 太中 【文豪ストレイドッグス】
日時: 2016/06/19 07:20
名前: ハフェズ (ID: 9KS5hO21)

注意

太宰×中也書こうと思います
(思ったよりシリアス展開です。太宰さんが病んでます)

太中(中太)嫌いと言う方は御遠慮下さい
全て自己責任でお願い致します

初投稿になりますので、誤字脱字、その他色々な
御迷惑をお掛けするやもしれません。御了承下さい

評価に限らずコメントなど頂けると嬉しいです
太宰・中也について共感し合いましょう!

多分ですが、数ヶ月の間更新することができません
できるだけ早くここに来て、続きを書けるようにがんばります



【2016.1/31 参照1000突破致しました!ありがとうございます!】
【2016.3/14 参照2000突破致しました!ありがとうございます!】
【2016.4/14 参照3000突破致しました!ありがとうございます!】
【2016.4/23 参照4000突破致しました!ありがとうございます!】
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Re: 文スト 太中 ( No.10 )
日時: 2015/11/28 19:02
名前: ハフェズ (ID: Zxn9v51j)




私は今中也と話してたんだけど。
太宰は、二人きりの空間に邪魔者が入ってきたとしか思っていなかった。けれども中也が居る手前、彼女達の頼みを無下に断る事も出来なくて。太宰は仕方無しに、とびっきりの笑顔を取り繕って振り向いた。

「勿論良いとも!解らない問題と言うのは、どれだい?」

中也は人好きのする笑顔を振り撒く太宰の傍、笑顔の裏に隠れた思いを一人感じて冷や冷やして居た。確かに180度の態度の切り替えっぷりは見事ではあったのだが…。
(女性には、優しく接するんじゃなかったのかよ…)
いつか太宰が「全て女性は愛すべき存在だよ」と言っていたのを思い出す。

「ねぇ中也、これで合ってるよね?」

太宰に話を振られて、中也ははっとして応えた。

「え?あ、あぁ。合ってると思う」

「だって。この分野だと私よりも中也の方が詳しいから、今度からは中也に訊ねると良いよ」

そう言って太宰は又ニコッと笑うのだった。女子達が一斉に中也を見る。え…今何も聴いてなかったよね、と思っているに違いない。自分が面倒な事は俺に押し付けて来るの辞めろ!と中也は心の中で叫んだ。それに彼女達は実のところ、解らない問題を訊きに来たのもあるがそれ以上に太宰に会いに来たと言っても良かった。だからもう、変な事を言うのは避けて欲しい。

中也が本気で逃げ出そう、と思った時、丁度チャイムの音が鳴った。その音に中也は救われた気分になる。結構長い時間彼女達と話して居た様だ。女子達はぞろぞろと自分達のクラスへと戻って行った。

「邪魔が入ったけど」

太宰が中也を見据える。

「まぁ、そう言う事で」

さっさと自分の席に戻って行く太宰に、何だか嵌められた気がする中也であった。

Re: 文スト 太中 ( No.11 )
日時: 2015/11/29 01:09
名前: ハフェズ (ID: Zxn9v51j)



放課後。
空は段々と夜へと近付いていた。時刻は五時。今の季節、空が一番綺麗になる時間帯だ。太宰は窓の側の机に腰掛けて、美しい青と赤のコントラストを眺めて居た。陽はもう見えなくなって仕舞ったが、未だ少し明るくて、西の山の方は赤く燃えているのだが、東は濃い青に染まっていた。刻一刻と変化して行く夕空は、そのどれもが綺麗で、時々感じる儚さや孰れは暮れて仕舞う事への愛しさは…太宰は嫌いでは無いのであった。寧ろ、儚いからこそ美しいのだと思った。
中也はと言うと、てきぱきと帰り支度をしていた。少しくらいゆっくりしたって良いのに。

「もう準備は済んだ?」

「おう。…帰るか?」

「…帰ろうか」

太宰は鞄を持ち、教室を出る中也の後に付いた。



「見てご覧よ、空がほら」

校門を過ぎた辺りで、太宰が空を見上げて言った。釣られて中也も見上げる。

「こんなに綺麗…」

「本当だ、気付かなかった…」

「何日振りだろうね、こんな空を見るのは」

「さあなぁ」

それきり二人とも黙り込む。何を話そうかと、話題になる様な事を考えていた。妙に心地よい間であった。先に切り出したのは、太宰だった。

「…中也はどうせ、帰ってからも勉強するんでしょう?」

「あぁ。そうだ」

「良かったら一緒に勉強しないかい」

「え…?」

「太宰治の家で、勉強しない?」

中也は思わず立ち止まった。無言で太宰を見詰めると、太宰も足を止めて話し出した。

「中也が居れば、解らないところ訊けるし、もしも寝て仕舞ったら中也が起こして呉れるし。一石二鳥だよ」

「何で俺が手前を起こして遣らなきゃなんねぇんだよ…」

「夕飯も御馳走するから。ねぇ」

「別に…良いけど」

「本当!?じゃあ、急いで帰ろう」

目を輝かして太宰が言うものだから、中也は断るに断れなくなって仕舞い、大人しく太宰に従う事にした。


(続きまた書きます)

Re: 文スト 太中 ( No.12 )
日時: 2015/11/29 16:19
名前: ハフェズ (ID: Zxn9v51j)




大通りを曲がった所に、一軒家や高層マンションが立ち並ぶ場所がある。市内程人が多くて賑わっている訳じゃないけれど、洒落た店が集まって来る人気の街だ。太宰が現在暮らしているマンションはその中の一つ、しかも、一番背の高いやつだった。
中也は此処へ来るのは初めてではなく、以前何度か太宰の家に邪魔した事があってか道に迷う事は無かった。しかし幾ら見慣れたとは言え、現役高校生の太宰が如何してこんな高級住宅街に住まう事が出来ているのか甚だ疑問である。太宰は、寂れた街、垢抜けた街の何方に居ても、不思議と良く馴染む様な気がした。
こう言う時…中也はどう言う訳か不安心が募るのだ。良く考えてみると俺は太宰を何も知らねえんだなぁ、と。親がいるのか。生活費はどうしてるんだ、とか。知らない事だらけだ。対して太宰はと言うと、中也の生い立ちから姐さんや芥川の居る舞姫荘の事だって、何から何迄知っている。それこそフェアじゃ無いと中也は思った。

「ただいま〜」

「…お邪魔します」

最新のセキュリティが完備されたエントランスを抜け、何事も無いかの様に普通に最上階へと到着する。中也は一寸した空の旅をしている様な気がした。本当に、お前は一体何者なんだと訊きたくもなった。太宰はくすりと笑うと、

「そこは〝ただいま〟で良いんだよ」

「でも、」

「良いから良いから。お帰り、中也。さ、上がって」

「…ただいま」

矢張り最上階の部屋は広かった。そのままパーティー会場にする事も出来そうだ。太宰は「手を洗うならあっちね」と言って自分は飲み物を取りに行って仕舞った。別に迷う事も無いので中也は手を洗うと適当に座り込んだ。暫くすると太宰が盆を手に持ってやって来た。炭酸系は切らしてたと報告する。

「悪ぃな、ありがと」

「どう致しまして。ええと、門限は」

「八時だ。七時半には此処を出る」

「了解。…始めようか」

それから二人は勉強をしたり、菓子を摘んだりジュースを飲んだり、時々眠りに堕ち掛ける太宰を叩き起こして遣ったりと、それなりに楽しい時間を過ごした。若干、勉強以外の時間の方が長い気がしないでもない太宰と中也であったが、遊びに飽きて来ると勉強に集中してお互いに口数が少なくなった。そうして只黙々と手を動かす中、太宰がぽつりと喋り出した。

Re: 文スト 太中 ( No.13 )
日時: 2015/11/29 17:28
名前: ハフェズ (ID: Zxn9v51j)

「太宰治は二、三君に伝える事があるのだけども」

「んー?何だ?」

「先程の夕食で家にある食料を全部使っちゃったから、明日の朝食が無くなった」

「はァ?どんだけお前ン家の食料庫は貧しいんだよ」

「本来ならば明日の分も残る筈だったんだけど、中也が来たから…」

「俺の所為なのか!?少しは余裕持たせとけって」

「うん…そうだね。次の買い出しからは、少し多めに買うとするよ」

太宰が口籠る。中也は如何した、と言って彼の顔を覗いた。あのね…と太宰は控え目に、大事な事を告白する様な感じで言うので、中也は訳もなく身構えた。

「とても、言い難いんだけどね…」

「な、何だよ…」

太宰は伏せていた眼を中也の方に向けた。ぐっと躰に力が入る。

「その…、もう八時なんだけど」

「っ!?」

太宰の吐いた言葉に反論もせず、中也はばっと壁に掛かった時計を仰ぎ見た。
八時二分。
も、門限が……!!

「それを先に言えぇっ!!!」

「ごめん、何て返されるか怖くて」

「手前の朝食の話なんかしてる場合じゃ無ぇだろ!?莫迦太宰!!!」

ものが滅茶苦茶になるのも構わないで、手に取ったものを乱雑に鞄の中へと放り込む。中也はこれ以上無い位に焦っていた。顔面蒼白、と言った感じだ。

「酷いな、次の日の食に困るなんてそうそう無い状況じゃないか。十分大切な話だよ」

「だァもう面倒な奴だな!俺は帰るぞ!」

「あ、待って!中也は先に行って、太宰治が荷物を持って後を追うから」

解った、と言って中也は疾風の如く走り去って行った。太宰はやれやれと思ったが、中也の鞄を抱えると彼の後を追った。焦る中也とは対照的に、太宰は笑んでいた。
どんなに急いでももう手遅れだろうなぁ…などと思いながら。

Re: 文スト 太中 ( No.14 )
日時: 2015/11/29 20:50
名前: ハフェズ (ID: Zxn9v51j)





「はぁっ…っはぁっ…」

太宰のマンションから舞姫荘迄は、どんなに走っても二十分は掛かる。その間当然中也は全力疾走で駆け抜ける。肺が潰れそうだ。だが、一秒でも早く戻らなくては己の命が危ない。腕時計を見る。走っている(それも全力で)ため、ブレて大変見難いが、凡そ八時二十分を越えた辺りだろう。嗚呼、姐さんが怒った時の恐ろしさと言ったら!最早絶対に間に合わないと頭では解っている。解っているが、走るしかないのだ。走れ中也。太宰を半殺しにするのは、その後だ。

「っはぁぁ…」

やっと着いた。中也は門に手を付いて肩で息をする。苦しさの余り顔が歪んだ。門には既に鍵が掛けられていた。糞っ、矢っ張り駄目だったか…と、その場に踞み込んだ時だった。じゃり。庭の砂利を踏む音がしたかと思って顔を上げると、其処に居たのはーー。

「此れは又随分と遅い帰りじゃのう、中也」

「っ姐さん…!?」

中也の背中が凍り付く。今一番会ってはならぬ人物だ。出来れば芥川に、そうで無くとも鏡花に其処に居て欲しかった。てっきり、余りの憤りに鬼の様な形相をした姐さんを思い浮かべて居たのだが、しかし目の前に居る姐さんの口角は上げられていて、其れが逆に中也を震え上がらせた。コレは、思いの他機嫌が良いか相当怒っているかの何方かだ。…多分、後者なのだが。

「ちが、こ、これは…っ!」

「門限は暮れ五つ、詰まりは午後八時じゃ。その刻限に遅れた者は…解っておろうな」

着物の袖を翻して姐さんが去って行く。十数米先の玄関からは温かそうな光が延びていて、鏡花だと思われる影が、此方の様子を窺って居た。


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