BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- プリキュアのGL小説。(あきいち多め)
- 日時: 2017/08/17 20:32
- 名前: シーチキン (ID: TeXDu9yk)
初めまして、魚が大好きなシーチキンと申します。
今回、気分転換という理由でこちらの方に百合、すなわちGLを書くことにしました。
基本的にはプリキュアを書こうと思っております(というかプリキュアの百合書くために来た)。
創作や他アニメも書くかもしれません。
〜書く予定のもの〜
キラキラ☆プリキュアアラモードより
あきら×いちか(あきいち)
ゆかり×いちか(ゆかいち)
あきら×いちか×ゆかり(あきいちゆか)
魔法つかいプリキュア!より
みらい×リコ(みらリコ)
創作も書く予定。
などなど、プリキュア中心でいく予定です。それにしてもプリアラ、一貫しすぎてない?いちかちゃん受けで。趣味バレバレやん。
リクエストは創作のみ受け付けております。よろしくお願いします。m(_ _)m
- Re: プリキュアのGL小説。(あきいち多め) ( No.30 )
- 日時: 2017/10/30 13:42
- 名前: シーチキン (ID: NhgkHXib)
「赤き狂戦士」
間違えて、ではなさそうだ。なら、どういった理由で攻撃を仕掛けてきたのか。それが分かれば剣を抜く必要など無いというのに。
「あなたを不審に思った、が一番の理由かしら?」
「不審?」
人間でいることがおかしいのか。人間と人間ではない者が仲良くなるなどあまり無い、いや、あってはならないことになってきている世の中。不審に思われるのは仕方ないのか。
久しぶりに触れる、見た目は綺麗な少し重い剣に多少の違和感を感じるが、ゆっくりと鞘から抜く。沢山の血を浴びた刃は綺麗に洗い流されキラリと光る。
「あとは……私のいちかのハートを奪おうとしていることへの敵対心、かしらね」
「敵対心って……」
私の、を強調するゆかりに、確かにいちかちゃんは可愛いけど、ハートを奪うなんて、と自分自身にも言い訳をする。隙が見えたからか、一気にあきらとの間合いを詰め、懐から杖を取り出す。そのままあきらへ向けると、咄嗟に剣を横にし杖を抑えた。
「っ!」
「あら、いい反応速度ね。かなりの腕かしら?」
「これでも船長やってたからねっ!」
力で杖を跳ね返すと、剣を左右に振ってからゆかりへ向けて構えを作る。
「……あら」
そこで、ゆかりはあきらの雰囲気が変わったことに気付いた。ただの人間で優しそうだったのが、まるで目の前の敵を倒すことだけを考えている狂戦士__バーサーカーのように。明るく澄んだ赤い瞳が、深く濁った、まるで血のような真紅の瞳に変わっていた。
この城に来れただけで“ただの”人間ではないことは承知の上だが、厄介な相手かもしれない。いちかの為にも早めに情報を集めないと。遊び半分だったゆかりも、本気を出すことにした。
「はぁっ!」
上から力強く振り下ろされる刃を横へ避けると、空いている腹部目掛けて氷の刃を数本飛ばす。あきらは振り下ろした反動で氷の刃を横一線に切り落とした。こんな簡単な魔法、序の口にも入らない。こんな魔法を食らってもらっては困る。と、ゆかりの口角が上がった。
あきらの片手は鉤爪。足元を狙えば、必ず体勢を崩すはず__。なるべく足を狙って衝撃波を放てば、あきらはまるで踊るように華麗に避けていく。
色々と考えて攻撃を仕掛けるゆかり。一方あきらは、ほとんど何も考えていなかった。目の前の敵を倒す。それだけを考え、相手の攻撃を避けて反撃する。ただそれだけだ。
ゆかりが矢の形をした水を放つ。物凄い速さで飛んでくる水の矢を、剣を振り避けながら間合いを詰めると、杖が邪魔だと思ったのか、下から上へと剣を振り上げ、杖を斬り飛ばす。
勝った__あきらは剣を振り上げた。だが。
「水よ!!」
ゆかりが叫ぶと、床でただの水となった矢があきらの方へ飛んでいく。避けることも出来ずに顔の前で剣を構え、敢えて食らう。それが仇となったのか。ゆかりはまた叫んだ。
「サンダー!」
「ぐああっ!」
水は電気を、電気は鉄をも通し、あきらの全身へ強力な電流が流れた。あまりの痛みに剣を手放すと、カラカラと床を転がっていく。
「これで最後よ」
ゆかりは火の玉を創り出すと、あきらへと放つ。
「くっ……!」
両手で顔を覆うと、火の玉は鉤爪の左手へと直撃。その直後、予想だにしない出来事がゆかりを襲った。
「炎を……吸収した!?」
鉤爪が、火の玉を吸収したのだ。だめだ。そう思い、あきらは床に転がる剣を掴み、攻撃することで誤魔化す。
「うおお!」
気付かれたくない。気付かれてはいけない。今気付かれてしまえば、皆も、私でさえも“奴”に飲み込まれてしまう。
驚くゆかりへ剣を向け、思い切り振り切る。直前で。
「ストォーップ!!」
突然の大声に、あきらはハッとして剣を止める。
「何やってるんですか、二人とも!」
「……いちか、ちゃん?」
スゥッと真紅の瞳が元の明るい赤に戻っていく。
「ごめんなさい、驚かせちゃって。ちょっと手合わせをしていたの。ねぇ?」
「あ、あぁ。驚かせてごめんね」
剣を鞘に収めながらそう言うと、いちかはホッとして肩を下げる。
「なら良かったです。でもほんとにビックリしましたよ!」
「来るの遅いなって思って来てみたら二人で戦ってるんだからさ」
「こ、怖かったです……」
「ごめん、悪かったよ」
頭を撫で、慰める。あの時食らった電撃で手が痺れているが、バレないよう平然とする。
「ご飯冷めちゃいますよっ!」
「フフッ、それなら私の魔法でどうにかなるわ、早く食べましょうか」
いちか達を連れ、ゆかりは食堂へと向かう。立ち止まり、左手を見た。炎を吸収した鉤爪は、いつも通りだ。まさかあんなことになるとは思わなかった。
「……まだ、気付かれてはいけないんだ」
そう呟く。鉤爪は、それに応えるように小さく炎を出した。
あきらの隠す事。それに気付かれれば、この旅の真実を知られることとなる。
- Re: プリキュアのGL小説。(あきいち多め) ( No.31 )
- 日時: 2017/10/30 21:21
- 名前: シーチキン (ID: NhgkHXib)
「人間だった海賊の話」
ゆかりに貸してもらった部屋に入ると、ふぅと息を吐いた。椅子に座り、近くにある燭台に火を灯す。どうも、ゆかりと戦った後から気分が悪い。何とも言えない嫌な予感が頭を廻る。
食事の後にいちかちゃんがゆかりに言った。あきらさんだと魔女の村に行けないので、ゆかりさんの魔法で何とか出来ませんか、と。答えはNo。テレポートにはゆかり本人もいなければならないが、ゆかりは天敵となる紫外線等を遮るために、城を覆う闇と同じ魔法をかけなければならないらしく、それには時間がかかるとのこと。
いちかちゃんの師匠さんも心配しているだろうし早めに帰りたいと悩むいちかちゃんに、私は村のある大陸まで送るのはどうだろう、と提案した。その提案に全員一致で賛成。明日の朝にはここを出る予定だ。
だから、例えゆかりに気付かれても、時間的に大丈夫なはず。
何故、私は友達相手にこのように悩まなくてはならないのだろう? それは……私が元々人間だから。こういう運命なんだ。
やはり、魔女と人間は、決して仲良くなることは許されないんだ。でも、今の私は?
……私は、人間じゃない。“今は”。だから、彼女と__いちかちゃんと一緒にいたっていいんだ……いいん、だよな。
元々人間だった私が彼女といるためには、この呪いはかけたままにしておかなければならない。そうすることで、私はただの人間ではなくなるから。しかし、この呪いは魔女を排除するためのもの。
「……なんだよ」
震えるほどに、強く、拳を握る。
「どう足掻いたって、私といちかちゃんが一緒にいることは、許されないっていうのかよ……」
燭台で小さく燃える炎の灯りに反射して輝く鉤爪を睨む。
共に居ることが許されないというのなら。運命の言う通りにしなければならないだろう。全ては私が望んで起こった事だ。例え、彼女との絆を引き裂いてでも。
それが、中途半端な私に出来る事だ。
「船長、なんだか嵐が来そうだ。どうする?」
海の見張りをしていた仲間がそういうと、あきらは冷静に指示を出す。
「なら、帆を降ろして、なるべく近くの大陸まで移動しよう。皆、準備頼むよ」
了解、とそれぞれ仕事を探して行動する。その間にも、雲行きが怪しくなっている。なんとか皆、無事生き延びることが出来るようにしなければ。その思いであきらは行動する。
海が荒れ狂い、痛みを感じるほどの雨があきら達海賊団を襲う。
「船を止めて、嵐が止むまで待つんだ! 早く屋内に入れ!」
船員達は次々と船の内部へ逃げ込む。だが、一人の船員が、海を見たまま動かなかった。
「おい、どうした!?」
「せ、船長……海に、何かいる!」
荒れた海に、大きな影が動き回っている。まさか。あきらの背中に冷や汗が流れた。
「早く隠れ……!」
ドォン! という衝撃音と共に、船が大きく揺れる。何事かと出てくる船員達に、あきらは必死に叫んだ。
「出てくるな!」
しかし、もう遅かった。大きな影が、海から正体を現す。
「……ここらへんの海にいるって噂の、海の主だ」
気味の悪い色をした体を持った、巨大海洋生物。海の主と言われる怪物は、あきら達に向かって威嚇の声を上げた。
小さく舌打ちをし、あきらは剣を抜く。船員達も、負けてたまるかと剣を構えた。
恐ろしい怪物だった。斬りかかる船員達を薙ぎ払い、船ごと潰す勢いで牙をむくのだ。
「皆下がってて! 私が倒す」
船員達に任せていては被害者が出るだけだと考え、一人で主へと剣を構える。
「はああっ!!」
大きな体へ剣を振り下ろすと、僅かながらに切れ込みが入る。同じ場所を何度も斬りつければ、流石の主も耐え切れないのかフラフラと揺れる。
最後の一発__刃を向けると、主は横へ避けた。予想していなかった動きに戸惑うも、主はあきらを襲おうとしているのではない。他の船員だ。
仲間を失うわけにはいかない。必死の思いであきらは駆け出す。
「うおおっ!」
狙われていた船員を押し飛ばす。主の牙がすぐそこまで迫り、あきらも何とか手を引く。しかし。
「ぐっ……!」
遅れて引いた左手は、主の腹へと持っていかれたのだ。あまりの痛みに気を失いそうになるも、なんとか堪えて主の体を斬りつけた。
嵐が過ぎ去った頃。海に浮かぶのは、一隻の船だけだった。
「すまん、船長! 俺がすぐ逃げなかったせいで……」
「気にしないで。皆が助かってよかったよ」
奇跡的にも、あの嵐の際に命を落としたのは誰一人としていなかった。あきらはそのことに喜びながらも、無くなった左手を見た。
「私こそ、この海賊団の功績に泥をぬってしまったよ」
あきら率いる海賊団は、狙った財宝は必ず手に入れる、同じ海賊からも海軍からも有名な海賊団だった。小さいことながらも悔しむあきらに、船員は慰める。
「でも、片手だけじゃ不便だ。皆に手間をかけてしまう」
悲しそうにそう話した。
それから数日後。あきらはその海賊団を抜けることにしたという。
町で購入した鉤爪にも慣れてきた頃。一人で航海をしていると、とても小さな島を見つけた。まるで誰かが意図的に作ったかのようなその島が気になり、あきらはそこへ入る。
中は広い空間があるだけ。その中心に、壺が置いてあった。封印の札が貼られており、見るからに怪しい。と、突然カタカタと揺れると、壺から声がした。
「そこにいるのは誰だ? まぁ誰でもいい。この壺を開けてくれないか」
「お前、封印されてるんじゃないのか」
「そうさ。憎き魔女によってな」
憎しみや怒りがこもったその声に、あきらは危険だと感じる。
「なら、私は開けない。何も無かったと、このまま立ち去ろう」
そう言って、あきらは後ろを向き歩き始める。関わらないのが一番だ。
「まぁ待て。一つ面白いことを教えてやろう」
あきらは足を止め、壺を見る。
「私を出してくれれば、強い力をやる。なんだっていい。不便なことや、悩むことがあるか?」
不便。自然と鉤爪に触れていることに気付き、あきらは聞いた。
「……なんだって、いいのか」
「ああ。なんでもご自由に」
「なら……」
“左手が無くても、前と同じように楽に生活がしたい”
素直な願いだった。寝るにも町を歩くにも不便な左手には苛立ちを募らせていた。それが、解消できれば。
「それくらい簡単なことさ。その為にも私を出せ」
「何を、するつもりだ?」
気が付けば、あきらは一歩ずつ壺に近づいていた。
「私は魔女を火炙りにするための炎の呪い。さぁ、私を取り込め」
あきらは壺を開ける。すると炎の呪いは姿を現し、あきらの全身を通り左手の鉤爪へと姿を留めた。
『私を取り込んだことによって、お前は人間じゃあ無くなった。私の力で普通の人間よりも強く、そしてなにより左手が無くとも前と変わらず自由に生活できる。安心しろ。私はほとんど何もしない。魔女がいない限りはな』
こうして、炎の呪いを体内に取り込んだあきらは、左手が無くとも不便さを感じない代わりに人間ではなくなった。これでいいんだ。その瞬間、あきらの頭からは以前の海賊団のことが消え去っていた。
- Re: プリキュアのGL小説。(あきいち多め) ( No.32 )
- 日時: 2017/11/09 18:48
- 名前: シーチキン (ID: 91b.B1tZ)
「パルフェな心に隠れた悲しみ」
「テレポーテーション!」
そう唱えると、一瞬にして村に着く。いちかも後から来るだろう。ふぅと一息ついてから、シエルは村のはずれまで歩いて行った。
誰も近くにいないことを確認し、ポンッという音と共に元の妖精の姿に戻る。自分が元々妖精だということは、今の村の中ではいちか以外に知る人物はいない。何となく、隠しているのだ。ふよふよと宙に浮きながら向かったのは、小さな祠。石の台座の上に、綺麗な水晶が置いてある。バスケットボール程の大きさの水晶の中には、シエル__妖精の姿ではキラリンに似た妖精が眠っていた。
キラリンは水晶に触れ、一言呟く。
「早く戻って、ピカリオ……」
小さな涙一粒、水晶に弾けて地面へ落ちた。
双子の妖精であったキラリンとピカリオ。二匹の夢は人間になることだった。その為に妖精の村を出て旅を初め、様々な修行を積んできた。最中であったが。
「キラーーー!!」
「ピカーーー!!」
二匹の悲鳴が森の中に木霊する。二人が死に物狂いで飛んでいる後ろには、カラスの群れが。どうやら縄張りに入ってしまい、追いかけられているようだ。
「悪気はないキラ! 許してキラー!」
「誰か助けてピカー!」
その時であった。
「風よ!」
その一言が聞こえた途端、カラスは風に包まれるようにくるくると回る。
「カラスや、もう許しなさいな」
優しい老婆の声が聞こえる。風が止むと、先ほどとは一変、カラスは何事もなかったかのように方向転換をして飛んで行った。
「大丈夫かい? 可愛らしい妖精さん」
老婆を見る。とても優しそうに微笑み、キラリンたちを見ていた。
「ありがとうキラ、人間のおばあちゃん!」
「助かったピカ!」
人間という言葉に目を大きく開けるも、どういたしましてと微笑んだ。
「こんなところでどうしたんだい?」
「実はキラリンたち、人間になりたくて……」
「そのために旅をしてたピカ!」
「なるほど、人間にねぇ……」
老婆は困ったように微笑んでから、なら、と提案する。
「私があなたたちの師匠になるわ」
「ほんとうキラッ!?」
「ただし」
老婆は人差し指を伸ばす。
「人間にはなれないの」
「どういうことピカ?」
老婆はふわっと宙に浮き、言った。
「私が、魔女だから」
それから、老婆と二匹の修業が始まった。魔女である老婆には、二匹を天敵である人間にすることは出来ない。しかし魔女にすることは可能なので、そのために魔力を上げ、魔法を使えるように育てた。二人は覚えがよく、どんな魔法でも簡単に習得してしまった。
修行を初めて二年が経ったある日のこと。キラリンが先に、魔女になることに成功した。
「やったわ!」
「キラリン、すごいピカ! 僕も早くなりたいピカ!」
二人で喜び合い、ベッドで横になる老婆に話しかける。
「師匠、見て! 私魔女になれたわ!」
随分と年老いた老婆。ゆっくりと魔女になったキラリンに顔を向けてから、微笑む。
「おや、キラリン。よくやったわねぇ」
「師匠の修行のおかげよ、ありがとう、師匠」
手を握る。しわしわな細い手は、冷たかった。
「そうかい。ピカリオも早くなれるよう、頑張るんだよ……」
「当然ピカ! 師匠?」
老婆の息が止まる。キラリンが包んでいた手が、力なくするりと布団の上に落ちた。
「師匠、師匠!!」
老いた老婆は、この世を去っていった。
それから一年後にはピカリオも人の姿になれるようになり、二人はいつしか村で一二を争う天才魔女となっていた。村で頼られるようになり、ほかの魔女との交流も多くなった。しかし二人の心の中には、師匠であった老婆の姿が忘れられなかった。
「ピカリオ、見て、これ」
「これは……師匠の本?」
老婆の使っていた部屋を掃除していた時。本棚から一冊の本が落ち、その表紙を見た二人は驚愕した。その本は、老婆が書き込んでいたと思われる魔法の書だった。
「もしかしたら、この本に師匠を生き返らせる魔法が載ってるかも……」
「おい、あったとしても、それは危ないだろ」
ピカリオは一応止める。しかし二人は、老婆を今一度蘇らせて、魔女となった姿、天才と呼ばれるようになった魔法の実力を見てもらいたいという純粋な思いであふれていた。
「……あった」
最後のほうに、小さくだが載ってあった。魔女を蘇らせる方法。だが。
「危険って、書いてあるぞ?」
その横に、大きく骸骨と×の印が書かれていた。
「ど、どうしよう、ピカリオ」
「俺に聞くなよ!」
おろおろと慌てる二人。
「えっと……二人の魔女の魔力を極限まで使い、数分だけ魂を呼び戻す……」
「なら簡単なんじゃない?」
「おい、失敗したら大変なことになるって書いてあるぞ」
うーんと悩む。キラリンは震えた声で言った。
「だ、大丈夫よ、私達は天才って呼ばれてるのよ?」
「……そう、だよな、失敗しないよな」
揺れる心のまま、二人は魔法の発動の準備に取り掛かった。
成功すれば、もう一度師匠に会える。ドキドキと鳴る心臓を押し留める。
だが二人は気付いていなかった。その下に書いてある魔法こそが、真の蘇らせる魔法だということに。
結果。二人は魔法の発動に失敗し、その代償としてピカリオが妖精の姿で水晶に閉じ込められることとなった。
キラリンはいちかの修行をしながら、あの魔法の解除魔法を探している。しかし、一向に見つからないまま。涙を拭うと、そうだと思い出し、テレポートである場所へ飛んだ。
ある場所。それは以前、キラリンが炎の呪いを壺に封印した島。島自体見つけにくいし、あの封印がそうそう解かれることはないだろうと安心しきって一年以上は様子を見に来なかったが、大丈夫だろうか。
「キラッ!?」
島に入り、キラリンは驚きの声を上げた。
「ツボが……割れてるキラーーーッ!?」
封印の札は破れており、壺も原型を留めていない。これはいけないと、キラリンは人の姿になりテレポートで修行の場所へ向かった。
「いちかが、いない!?」
修行の場所に、いちかの姿がなかった。祈りながら今度は村へと戻る。
「ここにもいない!?」
村の隅々を探してみても、いちかの姿がないのだ。壺が割れていたとなると、高い確率で人間が取り込んだのだろう。村の外にいれば危険だというのに、一体どこに行ったというのだろう。いちかを探しに行こうと箒に乗るが、まずは壺を直さねば。封印するものがなければ、例え見つけても意味がない。
「無事でいて、いちか……!」
もう何も失いたくはない。だからどうか、無事に戻ってきてくれと、シエルは祈った。
- Re: プリキュアのGL小説。(あきいち多め) ( No.33 )
- 日時: 2017/11/09 19:31
- 名前: シーチキン (ID: 91b.B1tZ)
「左手に隠れた秘密」
二人を乗せた舟は、吸血鬼の城を背に進む。向かう先は、魔女の村があるとされる大陸。
「あきらさんとゆかりさんが戦った時はびっくりしましたよー」
「はは、ごめんね」
もうあんなことしないでくださいよ! と頬を膨らませるいちかにごめんよと苦笑いを浮かべる。ゆっくりと、だが確実に目的地へと進んでいる。目的地へと辿り着けば、もうこんな風に話すことは出来ないのだと考え、あきらは疼く左手を抑えた。チラ、と見ると、城の方から黒い雲が覆ってきているのが見えた。まだだ、まだもう少し。せめて、大陸に着くまでは。
「あきらさん?」
いちかの声にハッとし、あきらは笑みを作る。
「どうしたの? いちかちゃん」
「いやいや、あきらさんがどうしたんですか? 深刻な顔してましたけど、具合悪いんですか?」
「ううん、なんでもないよ。気にしないで」
そう返すと、なら良かったですといちかは微笑む。いちかは気付いているのだろうか。いや、この様子からすると、恐らくまだ何も気付いていないだろう。ほっとして心を落ち着かせる。
__ごめんね、いちかちゃん。
数十分経ち、大陸は目と鼻の先。もういいだろうと、あきらは指をさす。
「……もしかして、あれが魔女の村かな?」
「はい、そうで……え?」
いちかは飛び上がる。背筋が、氷を押し当てられているかのように冷たい。あきらはつい先程とは異なる、陰りがある笑顔でいちかを見る。その目は、城で一瞬だけ見た、光の灯らない目のようで。
「ほら、舟で立ったら危ないよ」
いつもなら手を差し伸べるあきらだが、その手もない。危険だと、いちかは思った。
舟を停めると、自然とあきらとの距離を置く。
「どうせなら村の中まで行きたいなぁ」
「……あの、あきらさん」
「ん?」
太陽が雲に覆われかけ、薄暗くなる空。震える体を止めるように、いちかは言葉を発した。
「魔女の村は、人間には見えないんですよ?」
あきらはいちかの真っすぐな目を見てから、そうか、と仮面を取り出す。島の探索にしか使わなかった仮面。まさかこんな形で使うとは思ってはいなかった。
「やっぱり、隠し通すことは無理だったんだ。最後は、ここへ来なくてはならないから」
仮面を被ると、とうとうあきらの目からは光が消え、その目は血を求めるように深く濁っていく。鉤爪がキラリと光ると、一気に両腕が炎に包まれる。消えることのない、憎しみの炎。
「ごめんね、いちかちゃん。私は君と出会う前から、人間なんかじゃない」
炎を纏った剣を抜き、構える。
「化け物なんだ」
「ゆかりさん、それっぽいの見つけました!」
「見せてちょうだい」
難しそうな古い本が並べられている城の一室で、三人はとある一冊の本を探していた。
「にしても、なんで突然呪いに関する本なんか……」
「今必要だから探しているの。……あった」
ゆかりが開いたページを二人も覗く。
「火炙りの呪い……? なんですか、それ?」
ゆかりはひまりの問いに答えるように文章を読んでいく。
「魔女を忌み嫌う人間たちが作り出した魔女にだけ効く炎……人間はそれを取り込むことで自由に操ることが出来る」
「うひゃー怖いな、それ」
あまり興味がわかないのか、あおいは簡単な感想を述べる。ゆかりはある一文に目が行った。
「炎を取り込んだ人間は人間という部類から外れ、化け物と化す。見分ける判断は、戦いの際に見せる血のような目……やっぱり」
乱暴に本を閉じ、ゆかりは立ち上がる。
「ゆかりさん、どこに行くんですか?」
「いちかのところよ。急ぎなさい」
「いや、なんで?」
失敗した。二人だけで行かせてしまった。もし、あきらが本来の姿を現したのだとしたら。
「……いちかが危ないわ」
本を探す間に広げていた雲が広がるのを待ちきれず、ゆかりは二人を魔法で浮かせ、魔女の村へと急いだ。
「どうか無事でいて、いちか……!」
- Re: プリキュアのGL小説。(あきいち多め) ( No.34 )
- 日時: 2017/11/25 10:35
- 名前: シーチキン (ID: JcmjwN9i)
「呪う炎の運命」
剣を一振りすれば、炎が横一線にいちかへと向かう。浮遊魔法で飛び退けると、必死に叫んだ。
「なんで戦わなくちゃいけないんですか!?」
すると、今まであきらの左腕を包んでいた炎が形を成していく。それはまるで、物語に出てくる悪魔のような。炎は血のように赤い目でいちかを睨む。
『お前は……魔女の小娘か。だが、私を封印した魔女ではない……』
「あなたは、一体……!?」
『私は魔女を火炙りにする為の炎の呪い……この時を待っていたよ、魔女』
炎の呪い。聞いたことがある。人間が取り込むことで力を持つ、最恐の悪魔。
まさか、といちかはあきらを見る。冷や汗が一滴流れた。あきらは呪いと同じ、血のような真紅の瞳でいちかを見ている。心臓が、いつもの倍の速さで脈を打っているのが分かる。
「……なんで、ですか」
「私は力が欲しかった。仲間を助けたことで失った力……。私は仲間を捨て、力を手に入れたんだ」
あの時の情景が目に浮かぶ。焦り、恐怖、痛み……。そして、楽しかったであろう仲間達との記憶。それらが全て、炎に焼かれて消えていく。それを惜しむ様子もなくあきらは淡々と告げた。
「私がこいつを取り込み、君が魔女……。どうすることもできない運命なんだ」
その言葉に、いちかは目を見開く。周りは炎に囲まれているはずなのに、あきらの目は冷気を放ち、いちかの心へ氷の刃が突き刺さる。
あの、優しかった眼差しが。心が落ち着くような声色が。愛おしかった、あきらの全てが。
音を立てて、崩れていく。
『さあ、憎しみの炎で灰と化せ、魔女!!』
「でも、私は……!」
真紅の瞳から目をそらす。受け入れたくない、真実。
あきらは剣を構える。もう、以前の姿は見受けられない。ただ、目の前の敵を倒すことだけを考える、狂戦士。いいや、ゆかりと戦った時よりも残酷な、炎の化け物。
剣を振り上げた。炎は剣先へと溜まっていく。そらしていた目を正面へ向け、いちかも杖を構えた。理不尽な運命に抗う、最初で最後の戦い。
***
「強い……」
いちかの魔力も尽きてきた頃。ボロボロのいちかとは反対に、あきらは一切傷ついていない。手に入れた呪いの力は本物だったようだ。
『おや、そろそろ終わりのようだな、魔女』
炎の呪いが、喉を鳴らして笑う。
「まだ……あきらさんを、元に戻すまで……!」
『生憎、それは無理だ』
呪いがあきらの周りを一周する。口角を上げ、面白げに話す。
『私とこの人間は、完全に同化したからなぁ』
え、と。息が一瞬止まった。一気に絶望の淵に叩き落された気分になった。希望の道が、全て絶たれた。
『私を倒そうものなら、間違いなくこの人間も同時に死ぬだろう。それでも小娘、まだ杖を向けるのか?』
このままでは、あきらを取り戻すどころかこちらまでやられてしまう。しかし、もし勝ったとしても、あきらは永遠にこちらへは戻れない。逃げるか戦うか。究極の二択がいちかに迫っていた。
『悩む時間があると思ったか?』
あきらはいちかの目の前まで歩き、剣を振り上げた。膝から崩れ落ちる。ああ、だめだったんだ……。諦めたその時だった。
「風よ!!」
誰かの声がした。あきらが後ろを向いた瞬間。
「っ!」
かまいたちとも呼べるような突風があきら目掛けて吹く。ギリギリのところで避けるも、突風を掠めた仮面が飛ばされ、大きく散らばり地面へ落ちた。
キッと睨むと、そこには長い金髪の魔女。呪いは三日月のような紅い目を大きく開いて驚く。
『お前は……私を封印した……!』
「やっと見つけたわ、炎の呪い!」
呪いがシエルを見た途端、あきらの纏う炎が先程よりも大きく燃え盛った。怒りを表しているのだ。
『お前からやってくるとはな……探す手間が省けた』
「あなたには、もう一度封印されてもらうわ」
シエルが杖を振りかざすと、あきらは虹色の光に包まれる。だんだんと小さくなっていく炎。手を動かし炎を放とうと思っても、炎は出てこない。
『身動きがとれん……魔法をかけおったな、魔女……!』
「呪いの力は一時的に止めた。あとはこの人間をなんとか……」
「待って、師匠!」
「いちか?」
よろよろと立ち上がり、手で制す。
「あきらさんは私の友達なの。今のあきらさんは呪いと同化してる。呪いに何かしたら、あきらさんの命が……」
「そんなっ……じゃあどうしたら」
あきらは呪いの力が使えないことにいら立ちを覚え、小さく舌打ちをする。
「いちか、危ない!!」
シエルは咄嗟にいちかを押し飛ばした。魔法で防壁を作り、あきらの攻撃を止める。呪いを抑えても、あきらの動きは止められなかってのだ。強い力に押し負けている。
「強い……!」
防壁にひびが入った。あきらは更に圧をかけ、防壁を破ろうとする。その時だ。
「氷よ!」
新たな声と共に、氷の刃があきらへと降り注ぐ。この刃は。
「ゆかりさん!」
ようやくたどりついたゆかり達だった。
「間に合わなかったようね」
しかし。あきらは増援のゆかりに目もくれず、シエルにばかり剣を振る。
「まさか、呪いの意思を!?」
足がもつれた一瞬。あきらは一気に間合いを詰め、剣を引く。
「あっ……!」
時がゆっくりと進む。シエルへと剣が突き刺さる。はずだった。
——あきらさん。
その声があきらの耳に届いたのは、剣を刺した後のことであった。本来の標的であるシエルとは別の、薄い橙色の髪が、あきらの視界に広がる。そこでようやく何が起こったのか理解し、同時に血のような真紅の瞳が、いつもの明るい赤へと戻った。
ばたりと倒れ、刺した重みが消えていく。
「……いちか、ちゃん?」