複雑・ファジー小説

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黒き聖者と白き覇者 −小さな蛇と大きな巨神の戦いへ−
日時: 2012/02/09 22:02
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: bJXJ0uEo)

 バチバチバチ。

 在り来たりな音を出しながら、蒼白く輝く電流が小さい木製の小屋を包み込む。放電が始まってきている電流は、魔法人の中を飛び出し近くにいる黒いローブを被った人物と、薬ビンがたくさん詰め込まれた木製の棚をも飲み込み始めた。

 口元しか見えることの無い黒いローブの人物は、小さく口元をあげ呟いた。

 ——白き覇者が生まれたか、と……。

 西暦382年。世界では魔法や龍、錬金術などが用いられていた。どの町にも多くの人が住み着いていた。今まで自然が残されていた場所にまで人間は進出し、森や川や海に住んでいた不思議な生物たちの棲み処は無くなっていく一方だった。
 そのなかでも栄えていたのがエリアノエルと呼ばれる帝国だった。この帝国の周りには沢山の店や住居が立ち並んでいた。エリアノエル城には延べ9480万人の軍人が日夜、【ノエルの一族】と呼ばれるエリアノエル城の城主家族を守り続けていた。

 その一人息子である【リオン=ディ=ノエル】の将来が歪んだものになるとは知らずに——。

*

■「>>36」にてオリキャラ募集中なりっ


□お客さま
*風猫殿(ファジーでもシリアスでも小説を書いている凄腕作者様!)
*狒牙殿(ファジーで面白い能力系小説を書いている作者様!)
*ryuka殿(独創的な小説の設定がとても素敵! コメディとファジーで書いている作者様!)
*月那殿(月那と書いてルナと読む! さぁ、読めた人はいるかな^ω^←)
*檜原武甲殿(ファジーで活躍している作者様! とても面白くて秀逸な作品を書いております!)
*はぜのき殿(複雑板で金賞をとられた凄腕の書き手様! みなさんご一読あれ!)

*
□頂いたキャラクタどのっ
*ギル・イレイサー「>>038」=檜原武甲殿


□挨拶
作者の柚子と申します。
よければ覗いていって頂ければいいなぁ、と。
さらに気に入っていただければ、コメントを残していただけると嬉しいです。

□ルール
:荒らし・チェンメはご遠慮ください。
:蝸牛速度の更新となります。
:グロ表現や魔法が使われた小説になります。苦手な方はお引取り願います。

□めにう
序章【 黒と銀 】
:第一話:
>>001」「>>002
:第二話:
>>008
:第三話:
>>009
:第四話:
>>014
:第五話:
>>017」「>>019」「>>020
:第六話:
>>021」「>>022

第一章【 黒と銀と夢と赤と青 】
:第一話: 
>>029」「>>032」「>>033
:第二話:
>>034」「>>35」「>>37」「>>40」「>>044」「>>046

*

ちょっとしたキャラ紹介のページ
第一弾「>>005」第二弾「>>013

ちょっとした詳しいキャラ紹介のページ
第一弾「>>028

ちょっとした用語たちのページ
第一弾「>>018

作者の思考の跡
>>027

□お知らせ
□ちょみっと大事そうで大事じゃないお知らせ「>>045

スレ建て日2012年01月04日

*参照100突破/2012年01月10日
*参照200突破/2012年01月21日
*参照300突破/2012年01月30日

みなさま有り難う御座いますっ!

Re: 黒き聖者と白き覇者 −参照200突破感謝ですっ!− ( No.30 )
日時: 2012/01/21 18:14
名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
参照: 頑張りましょう

お久しぶりです。檜原武甲です

描写が神ですね。というかうらやましい。うらやましい


ガロン気に入ったな〜 場をぶち壊す人間は大好きです(球磨川の空気を読めないような感じ)


頑張ってください。

以上。

Re: 黒き聖者と白き覇者 −参照200突破感謝ですっ!− ( No.31 )
日時: 2012/01/21 22:32
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: kx1LgPV4)

檜原武甲殿

お久しぶりで御座りますなのです。
私的、檜原武甲殿のキャラの性格等々が羨まし過ぎて溜まりませぬ。
個性的なキャラを人一倍作るのが苦手なもので。

描写神、とは恐縮です^^;

自分も、球磨川の性格などは好きです♪

でわ、コメント有り難う御座いましたっ!

Re: 黒き聖者と白き覇者 −参照200突破感謝ですっ!− ( No.32 )
日時: 2012/01/22 20:47
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: kx1LgPV4)

 二人が目指した修道院は、庭園と同じように緑に囲まれていた。修道院の前の道も、修道院の庭も色とりどりの花が咲き乱れていたのだ。遠くから見ても分かるほど鮮やかな花の色は、何処となく近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

「お母さん!」
「ただいまっ!」

 大きな正門が、正面にあった。それは“あった”だけで“入った”などと表現される事はなかった。二人が入ったところは、背面に設けられた小さな扉。小さな子供一人がやっと通れるほどの高さと、幅しかない小さな小さな扉だった。
 使う人がこの二人しかいなければ、この扉を知っているのもこの二人くらいしかいなかった。
 二人がこの扉を使うようになったのは、ドリーム・ウォーカーという職業の人に出会ってからだった。ドリーム・ウォーカーという職業は大きく二つできることがある。一つは、相手の夢を覗く事。もう一つが未来の出来事を知る事が出来るということだった。シルクとシルアの二人は今よりも小さい頃にこの『夢歩き』という職業に就く人と出会い、未来の事を見てもらっていた。彼等が見てもらって未来は、彼等がもう少し大きくなってからの未来で、今現在のことだった。シルクもシルアもショックで、涙を流していた。
 夢歩きは、その涙に共感しともに涙を流していた。
 きっと、大人ならば未来を予想し本当の未来を見るように、勧めないだろう。それが、育ての母親でなく本来の母親ならば、の話しだが……。

「あぁ、シルアにシルク。またそこから入ってきたの?」
「正門からは、入れないもん……」
「夢歩きの人が作ってくれた扉だし……。それに、他の大人たちははいれないから」

 後ろに見える小さな扉を、チラチラ見ながら二人は話す。その様子を見て母は小さく溜息を吐きながら微笑をうかべる。この子達に自分たちの境遇を理解して、考えて行動しているのね、と内心では二人に少し感動をしていた。
 それにしても、と母は最近疑問を感じていた。
 禁忌の子と、虐めに受けるべきなのはシルクだけなのに、なぜシルアまでも虐められなければいけないのだろう、と。答えは、彼女の中でもう生まれていた。それでも信じたくないと感じたのだろう。

「お母さん、今日誕生日って言ってた……よね?」

 両手を後ろに隠しながら、おずおず話しかけるシルクに先程よりも優しさを表にした、慈愛に満ちた顔を彼女は向ける。その表情が肯定を意味するものだと、シルクもシルアも感じ取った。

「「誕生日、おめでとうっ!」」

 小さな石造りの部屋全体に響くように、二人は声を張り上げる。他の人からしてみれば煩いと怪訝に思うその声も、彼女にとっては嬉しいと感じる材料以外のなにものにも変わる事はなかった。
 二人なりのサプライズプレゼントの色とりどりの花弁に、彼女は目尻に涙を溜めながら「ありがとう」と呟き、涙した。

Re: 黒き聖者と白き覇者 −参照200突破感謝ですっ!− ( No.33 )
日時: 2012/01/23 21:21
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: bJXJ0uEo)
参照: ——嗚呼。体調が優れない

 この日の夜は生まれて初めてといってもいい位、幸せな日を過ごしたと彼らはにこやかに言うだろう。きっと、きっと何があっても笑顔で今日の事を語るに違いないと彼女は幸せそうに奥のベッド眠る二人を眺めながら心の中で呟いた。それが今、彼女に出来る事だったのだ。否、彼女にはそれしかすることが出来なかった。
 彼女は脇腹に作られた大きな傷を利き手ではない右手で強く抑えていた。彼女の手のひらや、洋服にはべったりと酸素が欠乏しどす黒く変色した血と元気よく、それも際限無しに滴り落ちる新鮮な血とが混ざり合っていた。彼女が血を流している原因となったのが、他のエルフ族による迫害の一つだということは、他の種族などには分かる筈も無いだろう。
 エルフ族は、団結力が強く仲間思いだとこの世界では認識されている。それは間違いないことであった。ただ団結力が強く仲間思いであるが故にこうした迫害を受ける事になるのだ。『皆でやれば、大丈夫』『仲間を助けるために異端者を始末する』そんな考えが浸透していたのだろう。
 彼女は歩く事も精一杯な体を無理に動かし、天子の寝顔をうかべている少年少女の下へと歩み寄る。
 
 一歩歩けば傷口からぶしゅっと血が噴出し、唯でさえ大きな傷口がさらに広がろうとする。それは激痛を伴うものでもあった。それでも彼女が求めたのは、自分の生が終わる前に純粋で無垢な輝きを放つ二人に最後の別れをしなくてはいけないと感じたからであった。
 左手に持ったカラフルな便箋にはシルク宛の手紙と、シルア宛の手紙とが入れてあった。 
 この手紙を書きながら彼女は幾度か「まだ……どうか……」と呟いた。せめて彼らが成人を迎えるまでは生きていたいと、心の底から思っていたのだった。

「シルア、シルク……起きては、いないわよね……」

 当たり前よね、と呟いた彼女の目にはたくさんの涙が溜められていた。瞬きをすれば全てが堕ちていってしまいそうほど、大量な涙が……。
 それから、彼女は言葉を紡ぎ続けた。
 二人と出会った当初は驚いて、困る事もあった、それでも何時の間にか本当のお母さんのように成れた気がしたの、と——

 彼女は昔の事を思い出し、それを丁寧に、丁寧に、紙芝居を聞かせるようにして二人に語りかけた。
 その思い出話が終わったとき、彼女の生も静かに静かに幕を閉じようとしていた。

Re: 黒き聖者と白き覇者 −小さな黒と大きな白の物語− ( No.34 )
日時: 2012/01/27 15:27
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: bJXJ0uEo)
参照: 近々、入院っぽいど……かも。skypeが使えないorz

第二話

 次の日、先に目を覚ましたのはシルクだった。
 何時もと変わらぬ朝、何時もと変わらぬ目覚め、何時もと変わらぬ毎日が今日は違った。彼の目前には青白く、血の気の引いた顔をしながら眠っているかのような表情を浮かべる母の姿があった。瞬間、母の命がいまこの世にはないことを彼女は悟った。目に大粒の涙を溜めながら触れた母の骨ばった手の甲の冷たさは、そう考えるほか仕方が無かった。
 彼女は、泣かなかった。涙を塞き止めていたダムにたくさんひびが入っていても彼女は泣かずに耐えていた。それが、ドリーム・ウォーカーとの約束だからなのか、シルアが起きてくるまで泣いてはいけないという彼女の中の一つの決まりごとが邪魔しているのか、彼女にも分からなかった。

「……ん……」

 シルアの目が覚めたのはそれから何時間かが経ったときだった。彼の目には、何処となく哀愁を漂わせるシルクの丸めた背中が映った。時より、少し上下に動くその背に隠れている母の亡き姿までは彼は見ることが出来なかった。

「……シルア?」
「シルク? どう、したの?」

 彼の耳に聞こえたのは、ひっくひっくと嗚咽を交えながら話すシルクの声だった。何時もは明るく元気で頼りになるシルクが泣いているのにシルアは不思議な感覚がした。その不思議な感覚の正体に、彼はすぐ気付いた。どんな辛い事にも、どんな痛いことにもシルクもシルアも耐えてきた。それは、自分たちとは関係のない部外者たちからの執拗な嫌がらせであったものが今は異なり、身内の中で亡くなった者が出たことによった。それが、よりによって最愛の母であるということが今まで感じた事もないほど強い辛さがシルクを襲ったんだ、と。
 
 シルアも、シルクも言葉にしきれない涙を流し続けた。その涙には悲しみと怒り以外のものは含まれてはいなかった。母が亡くなる悲しみはやはり何にも変えがたいほど酷く悲しいものだった。母の死が、たとえ他のエルフたちの仕業だとしても、彼等に対して憎しみや怒りは覚える事がなかった。それでも二人が怒りを感じたのは、自分たちに対してだった。物心が付いた時から『自分たちがお母さんを守る』と誓い続けてきた事を、今日にして守ることが出来なくなってしまったのだ。それに、母の痛みに気付いてやる事さえ二人は出来なかった。自分たちが寝たときには、既に傷はあったはずなのに、とシルクが小さくか細い声で呟く。シルアもそれに、頷く事しか出来なかった。泣く二人の手には母が握っていた手紙がそれぞれ握られていた。

「おい!」

 不意に正門を力の限りドンドンと叩く男が現れた。その後ろからは「でてこい!」や「今すぐ開けろ!」などと罵声を飛ばす声が聞こえた。二人は直ぐに勘付いた。『大人たちが自分たちをも殺めようとしている』ことに。勿論、そう気付いてしまっては二人は出るに出れなくなってしまった。否、動く事が許されなくなっていたのだ。扉を開ければ、くわや鎌などで攻撃を受ける。かといって扉を開けなければ、彼らは扉を破りズカズカと無遠慮にこの家に入ってくることだろう。

「俺たちは、その婆の亡骸を始末しにきただけだ!」

 これを人は“悪魔の囁き”とでも言うのだろうか。
 幼い二人は“甘美な餌に釣られた天使”とでも比喩するべきだろう。
 
 悪魔が天使を貶めるための策を講じ、行動に移し始めた。


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