複雑・ファジー小説
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- (リメ)陰陽呪黎キリカ
- 日時: 2013/02/12 12:20
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
- 参照: 修復断念(オイ……
「第一章 序幕」(エロ描写注意)
時は平安。策謀渦巻き、人々の感情が絡み合う時代。京の都には多くの妖怪が百鬼夜行をなし、跋扈していた。
妖怪とは、人間達のが持つ不の感情と恐怖が、形を成した者達。
人々に不幸と災いをもたらし、時には命を奪う。人間達にとって、害悪でしかない輩だ。
文官として、天候を読み取り未来を占うかたわら、そんな人智を超えた神妙不可視の徒輩を、日夜調伏する影の英雄たちがいた。
その者達の名は陰陽師。力にて陰を打ち破り、聖なる光を都に注ぐことを職務とする、文武両道の者達だ。
——今宵、丑三つ時を過ぎたころ。貴族の男を連れた牛車が、不可視の化け物すなわち妖怪に襲われた。
恐らくは深夜に姫君と、逢瀬を楽しんでいたのだろう。
慌てふためく男の前に、地味な濃紺の狩衣を着た人物が舞い降りる。
髭面で筋骨隆々とした大男だ。彼が現れた瞬間に、貴族は慌てふためくのをやめた。目の前の男の実力を知るがゆえだ。
「この程度の妖に、私が負けるはずがあるまい!」
目の前にいる妖怪を雑魚と断じた巨漢は、奇怪な術を発動させ、一瞬にして土の蛇を作り、標的を滅ぼす。
「うっうむ、芦屋道満よ大儀で……って、これいくでない!」
貴族の男の謝礼など聞きもせず、道満と呼ばれた男は駆け抜けて行く。
彼こそが稀代の大陰陽師と謳われる、都最強の官人陰陽師安倍清明最大の好敵手。
民間陰陽師の雄、芦屋道満(あしやどうまん)だ。
今日もどうやら清明と妖怪退治で、競っているらしい。
「おらおらぁ、私の前に立つ妖怪共は、全て排除するぞぉ! これで二十体ぃ!」
風を足に纏(まと)わせ、韋駄天(いだてん)の如く速度で夜の平安京を走る。
術の効力を高める符(ふ)を使い、大量のカマイタチを発しながら、妖怪の群れを蹴散らしていく。
そのさま正に一騎当千。
彼以外に清明の相手は務まらないだろうと言わしめるほどの、苛烈(かれつ)な霊力を道満はみなぎらせていた。
貴公子を助けてから数十分、目的の場所へと向って、彼は都を疾走し続ける。
疲れて足を止めると、生活感を微塵(みじん)も感じさせない廃墟(はいきょ)が、視界に広がっていた。
道満は、ここで安倍清明と落ち合い、勝負の結果を言い合う約束をしている。
彼が居ないか、周りを見回す。
清明は勝負事に余り興味がなく、適当に煙(けむ)に巻くことが有るのだ。
幾ら探しても、清明の姿が見当たらず、忌々しげに道満は舌を打つ。
「逃げたか」
対戦相手が居なくなったのでは、勝負は成り立たない。
道満はこれ以上粘っても意味がないと、踵(きびす)を返す。
夜も遅い。そろそろ寝ないと、明日の業務に支障が出るだろう。
今回の勝負は水入りとなった。良くある事だ。
そう、己の心に言い聞かせ、清明等という適当で身勝手な男を、好敵手と認めた自分を責める。
道満が歩き出して、数秒後。突然、強大な気配を背後に感じたのは。
「相変わらず、あつっくるしいのぉ道満よ?」
「清明? お前は相変わらず、透かした腹立たしい顔だな?」
道満が振り返ると。崩れ落ち、蜘蛛の巣掛かった家屋の屋根上に。紫色の着物を着た男が立っている。
切れ長で、異性を誘うような優しげな瞳。理知的な雰囲気をかもし出す甘いマスク。非の打ち所のない、絵に描いたような美男子だ。
彼こそが安倍清明。道満が、唯一の好敵手と認めた男だ。
清明は暑苦しい道満に、冷やかな視線を送りながら、あくびをする。
そんな彼の態度に、業を煮やした道満がいきり立つ。
「まぁまぁ、夜も遅いし、勝負の結果を発表しないか? 私はここに到着するまでに、四十三体滅ぼした」
道満と清明が行った勝負。
それは、目的の場所まで到達するのに、何体の妖怪を討伐したかという、単純明快なものだ。
清明の提示した数に、道満は押し黙る。
力を押し隠し潜んでいただけで、本当は自分より速く目的地に到着した居たのだろう。
霊気の出現の仕方から、容易く推測できることだ。だというのに、自分より十体近くも多く滅している。
彼自身は、清明とさして実力差がないと思っていたのだから、愕然とするのも当然だろう。
「くくっ、はっはっはっはっは! それでこそ超え甲斐があるというものよ清明!」
「私も、お前のような強者がいないと詰まらないからな。お前が播磨(はりま)の国から上京してきたこと嬉しく思うよ?」
道満は怒鳴っても仕方ない事と心を律し、鬱屈した感情を吹き飛ばすように、大声で笑った。
そんな盟友を見て、清明もまた嬉しそうな表情で、彼を賞賛した。
清明と彼以外の陰陽師との実力の壁は、当時果てしなく大きかったのだ。
これは清明と道満の馴れ初めの頃である。
それから数年間、彼等は常に研鑽し賞賛しあい、高めあった。しかし、その関係は次第に悪化していく。
いくら修行しても、全く清明に追いつくことができないという、道満の焦り。
常に二位というのは、気持ちの良くないものだ。
次第に成長が遅くなっていき、彼は悶々とした日々を送るようになる。
彼自身も、清明に劣らぬほどの華々しい経歴をいくつもうちたてたが、実力ではいまだに全く及ばない。そんなある日だった。
"安倍清明は妖怪の血を引いているから、人間離れした霊力を持っているのだ”
という推論が、都内に伝播したのは。それが道満には許し難かった。
話によれば、金だけの大した才能も無い父親が、圧倒的な妖力(ようりょく)を誇る妖狐を、優秀な陰陽師を何人も雇い、捕縛したそうだ。そして、その妖狐に子種を植えつけたのだという。
その事を耳にしてから更に月日は経過し、彼の中の嫉妬心や憎悪は育っていった。
そして、ある時清明に道満で会う。
「清明、私はお前を見損なったぞ」
「何を言っている道満!? お前、あんな戯言を信じているのか!?」
道満は自分の思いのたけを、憤懣やるかたなし、といった風情で語り、清明に背を向けた。
清明は止めようとしたが、二度と彼の言葉に道満が答えることはしなかったという。
長年の友を、些細ないさかいで失った道満は、嘆き続けた。
自分の愚かさと、そんな清明に勝ちたいという、愚劣な情念を捨てきれない弱さを——
「清明! 清明ぃ!」
「まるで、呪うような口調だな。その怨嗟、凄まじい強さだ。知っているか、それが魔道の入り口ぞ、陰陽師?」
十年前に娶(めと)った妻はすでに家を出て、道満は一人空しく泣き続けた。
そんな日夜悲嘆に泣き暮れる彼に、掛けられる綺麗だが感情の無い空虚な声。道満は振り向く。
そこには当時大妖怪として、都内に名を轟かせる大物が立っていた。
茨木童子。半分に割れた仮面で、左顔面を覆った、鋭い目付きの男だ。
魔道か、それも良いと思いながらも、道満は陰陽師の理念に従い、茨木を滅そうと、印を結ぶ。
「何用だ!? 貴様知っているぞ、確か茨木童子といったな! 私の家に土足で踏み入るとは、自殺志願者か!?」
だが、すぐに術を発動させることは無く、用件を道満は問う。
茨木童子ほどの大物が、こうやって一人で赴(おもむ)くのだから、それなりの理由があると思ったのだ。
「げーんげん! そんなことないよぉ? 茨木童子は強いんだぞぉ優秀な陰陽師さん?」
強い声で恫喝(どうかつ)する道満の言葉に、妙な挨拶とともに現れた女が答える。
女の服装は露出度が高く、そこから覗く透き通るような白い肌は、挑発的な色香をかもし出す。
更に唇の下にあるほくろが、性欲をそそる。顔は少し幼いが、間違いなく美人だ。
聞き慣れない名前と、妖気の高さに、何者だと道満はいぶかしむ。
実力のある妖怪は、大半把握しているはずなのに、と。
「彼女の名は言々(げんげん)。強き渇望(かつぼう)に囚われし者よ。お前は正しい。安倍清明など妖狐の霊力が無ければ、何もできぬ平凡な術者に過ぎないはずだ。そんな邪道の輩がのさばり、人の身でここまで至ったお前がが日陰者とは、何と悲しいことだ?」
女の紹介を簡潔に済ませ、茨木童子が流れるような口調で話し出す。
言葉を切り出す場所が無く、道満は黙り込む。
そして、彼の言葉を聞いているうちに、清明への怒りが、再び沸々(ふつふつ)と湧き上がってくる。
彼の言っていることは、今の道満の心の全てに当てはまり、道満はそれが正しいことだと思い込む。
清明は、朝廷に恩を売り、全幅の信頼を得ることにより、裏から平安京を掌握せんとする悪逆の徒だと、自分に言い聞かせる。
“滅ぼさねばならない。友だなどと、最大の悪を見逃していた自分の罪滅ぼしのためにも”
彼はそう心に誓った。
その心情の変化、いや正確には覚悟の芽生えを敏感に察した茨木が、更に言葉を続ける。
「安倍清明は、帝を甘言でおだて、君等の愛する平安京を手中にせんとす悪逆非道の輩だ。正義を信奉(しんぽう)し、世界を光に満たさんとする、お前なら許すべからずはずだ。強くならねばならん。芦屋道満よ、お前は今までより、遥かに高みに至れる」
「それはっ! それは一体、どうすれば叶うのだ!?」
道満が掛けてもらいたかった言葉の数々が、茨木の口から、吐き出されていく。
すべてを見透かしているような態度に、本来の彼なら絶句し、疑念を抱くはずだが。
今の彼に、そんな余裕は無い。
ただ強くなれるという望みが目の前にあることを、疑いもせず手を伸ばす。
どこまでも暗い絶望の海で、初めて見付けた光明に。
「簡単だ。言々と性をまじわすだけでいい」
「えっ、そんな馬鹿な! 私に安倍清明の父親と同じ業に、手を染めろと言っているようなものではないか!?」
方法を問う道満に、言々と秘め事をしろと茨木は躊躇(ちゅうちょ)なく言い放つ。
それに彼は驚く。
いかに美女とはいえ、妖怪に手を出すなど、陰陽の者として有ってはならぬことだ。
そして、清明を超えた力を手にするために、その父と同じ罪を背負うなど、言語道断だ。
「断じて違うぞ、芦屋道満よ? 言々との間に、子を成すのではない。彼女は交わった相手に、妖力を受け渡す力を持っているのだ」
「なーに、迷ってるの素敵な叔父様? あ・た・し、もうアソコずぶ濡れだよぉ?」
逡巡する道満に、先程の覚悟に満ちた目はどうしたと、言外に口にしながら、茨木童子は本旨を説明した。その説明を聞いて道満は思い直す。
妖怪と交わること自体、陰陽師としては業深きことだが、今の彼にはそれはどうでも良かった。
安倍清明の父親と同じにさえならなければ良いと、思ったのだ。
なおも悩む彼を見て、一応の申し訳のために迷っているふりをしているだけだと、見抜いた言々が歩み寄る。
そして、彼女はピンク色の着物の上着を脱ぎ、上半身をさらけ出す。
大き目ながら綺麗な形をした乳房。桜色をした綺麗な乳首。
言々はそれをひけらかせながら、扇情的(せんじょうてき)な仕草で道満に絡みつく。
「あぁ、綺麗だ。もう、どうでも良い。力が欲しい」
道満は男の本能をあらわにして、獣のように言々を押し倒す。
強く胸を揉みながら、言々の小振りな桜色をした唇をむさぼる。
「あっ、あぁん。うっ、はぁはぁ。道満様ったら、野性的な容姿通り激しい人っ」
「言々よ。入れるぞ? 良いか? 良いと言わずとも、お前は濡れているといっていたではないか!」
猛々しく女の体などお構いなしに、道満は言々を犯し続けた。
下の履物を破りさり、一物を彼女の恥部にねじり込む。
そして、野獣のように激しく、後ろから彼女を突く。
十数分間の行為の末、彼は彼女の中に射精し儀式は終わった——
「はぁはぁ、道満様、素敵ぃ」
「堕ちたな。ふっ、我々はお前を歓迎するよ芦屋道満」
疲れきって倒れこむ道満を見下ろし、茨木は無感動な声で告げる。
息は荒く、立ち上がることもできない道満だが、確かに霊力の総量は言々を抱く前より、大きく上昇していた。
「これにて新たなる同士、芦屋道満の“呪黎(じゅれい)”の儀を終了する。言々、行くぞ」
「はぁはぁ、駄目、腰が抜けて……道満様本当に激しすぎて。凄い」
力無く倒れる裸の二人を背負って、茨木童子は闇の中に消える。
そして、物語は現代へと移ろう。
————————————————
「お終い」
次は、「第一章 第一話、幼き刃達 第一節」です
〜作者状況〜
執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。
題名、読み方は「オンミョウジュレイ キリカ」です。前スレで発言した通りリメイクします。
始めましての方は、初めまして。
いつも来てくださっている方々は有難う御座います^^
グロ要素やエロ要素は、ふんだんに入ると思います。
苦手な方や不快に思う方は、見ない事を推奨します。
最後に、更新速度は、亀以下になると思いますがお許しを。
お客様
旬様(雑談の方でお世話になってます! お客様第一号♪)
Walker様(まだまだ、小説の実力は高くないですが順調に成長しそうな人です^^楽しみ!)
羽風様(黒白円舞曲の方にもコメントくださって感謝です!)
白波様(凄く上手な文章を書くお方です! Fateシリーズは私も好きだぜ!)
いちご牛乳。様(自分の事を変体と評す辺り親近感を感じます! ビバ変態★)
檜原武甲様(格好良い名前ですな^^ 最近結構見かけるお方ですね)
火矢 八重様(ファジーの銀賞だか銅賞を取ったお方です! パチパチパチパチィ★)
月那様(プロローグに力を入れると言うのはいいことだと思いますよ!)
紫様(文才に秀でた真摯なお方です!)
猫飼あや様(一芸に秀でるものは多芸に秀でる……朔様と言い適用される言葉なのでしょうなぁ)
日向様(えっと、軍事系の小説を書いていられる珍しいお方です^^中々文章もお上手ですよ!)
トレモロ様(我が心の兄弟にして変態紳士です! 結構な有名人さんなので知ってる人居るかも?)
陽様(私の大事な友達です! いつも嬉しいコメントくれて有難う!)
朝倉疾風様(有名な方ですので知っている人も多いのでは? 凄く真面目なコメントを書いてくれます)
葵様(様を付け辛いよ……僕のストーカーさん★)
茜崎あんず様(陰陽師物書くんですか? 私も暇が有ったら覗いて見ますね?)
狒牙様(BLEACH仲間です! そして、同士です!)
汽水様(結構良く見かけますよね? 主戦場はコメディ?)
柚子様(柑橘系男子。長らく女だと思っていたと言ったら長らく男だと思ってたと意趣返しされた)
ゆぅ様(白黒円舞曲も読んでくださった方です!)
凛様(鑑定してくださいました!)
琥珀様(奇抜なキャラクタを主人公に面白い物語を展開しています★)
藤田光規様(同じく陰陽師系の小説書いてます!)
バンビ様(更新速度が速くて一話一話が短くて簡潔で憧れます!)
白月様(素敵で綺麗な文章をお持ちのお方です♪)
野宮詩織様(絵も上手で小説も上手で、趣味のよろしい楽しいお方です!)
世移様(パラノイアのほうはいつも感想ありがとうございます! 最近は更新滞ってましてすみません)
葉月涼花様(色々な漫画など知っている人です。コメントが何だか雰囲気あります)
黒雪様(私の企画板でお世話になっている人です。なかなかに素敵な小説を書いていますよ!)
柴犬様(ファジー版で書いていた作品は中々に奥深く共感できる良い作品でした!)
デミグラス様(久方ぶりの新規のお客様です! 軍記物を書いたいらっしゃるそうです!)
伯方の塩様(真面目な鑑定有難うございました! 大変ためになりました)
ルリ様(ずいぶん遅くなってしまい申し訳ありません。鑑定士さんです)
冬ノ華 神ノ音様(BLEACHを知っている友人として……お世話になりました!)
34名様
閲覧して下さったお客様方! 真に感謝です!
目次
第一章
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第一節】 >>1
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第二節】 >>5
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第三節】 >>9
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第四節】 >>13
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第五節】 >>23
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第六節】 >>29
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第七節】 >>33
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第八節】 >>46
第一章第一話 終了
第一章第二話 開幕
【第一章 第二話、迷え迷え 第一節】 >>53
【第一章 第二話、迷え迷え 第二節】 >>62
【第一章 第二話 迷え迷え 第三節】 >>73
設定資料及び小休止及び貰い物等
キネリ様作 キリカ絵 >>36
魔ん堂様作 蘭樹絵 >>42
キャラクタプロフィール >>52 随時更新
羽月リリ様作 言々絵 >>54
読者様投稿オリキャラプロフィール >>63 随時更新
月森和葉様作 魅剣クラン&夢氷絵 >>66
風マ様作 天月絵 >>67
月森和葉様作 天月絵 >>76
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 第一章第一話第一節更新 コメ求む ( No.3 )
- 日時: 2012/05/15 23:01
- 名前: 茜崎あんず (ID: 92VmeC1z)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=12699
こんにちは!
リメイクしたって前と変わらないのかな〜と思ってたら全然違ったのでびっくりでした!
すごく読みやすいのにしっかりしてて私は風猫さんの文章が大好きですo(^▽^)o
これからも見にいきますね!
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ二更新 5/20 ( No.7 )
- 日時: 2012/05/20 23:01
- 名前: 凛 (ID: WiTA9hxw)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
評価終了いたしました。
URLからどうぞ。
ご依頼ありがとうございました。
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ二更新 5/20 ( No.8 )
- 日時: 2012/05/21 18:00
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: C1yvORdk)
酉崎あんず様へ
リメ後初のお客様ですね^^ だから、何?って、話かもですが(苦笑
時々は、合作の方も覗いてくださいな。結構新しい意見も出てるので♪
そうですね。
リメイク前の第一話の前の話です。
キリカが生まれる時からやるとは……私が焼が廻ったのかもです★
リメ前の話からすると長い過去編みたいなものになるかと思いますが、宜しくです。
凛様へ
ご報告有難うございました!
返信しました!
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ二更新 5/20 ( No.9 )
- 日時: 2012/06/18 11:02
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: fr2jnXWa)
人通りの少ない縁側の下、三人の少年が語らっている。二人は紅みを帯びた髪をしていることから、魅剣家の縁者だろう。右端に座る人物は黒い髪をしているので、血縁ではないようだ。当家は一般人にも開放されているが、その厳然たる雰囲気から来客は稀だ。
彼も恐らくは、陰陽師縁の者だろう。話は自然と陰陽の話へと向くようだ。少年たちは身振り手振りを入れながら、夫々の主張を交わしていく。どうやら今回の主題は、陰陽の術の戦闘部門中核たる六行二柱についたてのようだ。
六行二柱とはこの平成の世の陰陽師が、陰陽五行説をもとにして作ったものである。すなわち木火土金水の祓霊にむかない金を省き、戦闘向けに改良した火木水風土を現代五行という。それに研鑽の末に到達した雷の領域を併せたのが、六行だ。最後に二柱とは陰と陽。光と闇の陰陽思想全般を指す。
「だーかーらぁ、陰陽五行説を妖との戦線に適応させたのが、今の六行二柱だって何度言えば分るんだよ!?」
「でもなぁ、何か可笑しいと思わへん? 二柱って陰と陽のことで最初から五行説に略して入れられてるんちゃう?」
赤髪で年不相応に厳しそうな顔立ちをした少年が、苛立たしげな顔で言う。それにたいし三人の中では一番幼く見える、蘇芳色に近い頭髪をした子供が異を唱える。苦虫を噛み潰したような表情をして、赤髪の少年は沈黙する。
「…………」
「幹也(みきや)、それくらいで黙るなよ。祝詞の類だろ? その柱が有ったほうが、六行に力が加わるんじゃないかな?」
助け舟とでも言うように、黒髪の眼鏡を掛けた少年が口を開く。どうやら厳然とした面持ちの少年は、幹也というらしい。ちなみに祝詞とは、紡がれる言葉のことである。陰陽師はこれを重要視するのだ。言語の組み合わせいかんで彼等は様々な術を発する。身に宿る霊力だけでは、技を発動するには足りないのだ。ゆえに彼等は常に言葉面に注意を払う。陰陽師という彼等を指す呼称にも、祝詞の念は少なからずあるのだろう。
「康弘(やすひろ)、それなら二柱など言わず陰陽六行のほうがいいのではないか?」
助かったと胸を撫で下ろしながらも、幹也は素直に感謝する気にはなれず、照れ隠しする。康弘と呼ばれた黒の短髪の少年は、眉根に皺を寄せ言いよどむ。それに対して今度は、幹也より深い赤髪の年少が答える。
「それは、陰陽五行との差別だと思うで? だって五行はあくまで木火土金水やん?」
「あっ」
少年の言葉を聞き二人は同時に声を上げた。どうやら基本中の基本を失念していたらしい。六行二柱はあくまで戦闘向けに加工された分派であり、本流ではないのだ。つまり、正当な陰陽を名乗れる立場にないということ。五行思想より下の立場である六行にまでその祝詞を使えば、恐らくはその名称同士が反発し合い、力がそがれてしまうだろう。
刹那の沈黙が流れた。最年少に図星を指摘され恥ずかしくなり、二人とも会話を切り出せない。
「あっ、お父さんの式や。うんうん、康弘も来ぃって」
そんなとき青い粘土作りの、ウグイスが舞い降りた。式と呼ばれるものだ。粘土や紙に呪を吹き込むことによって、生まれる彼等の従者である。戦闘力は無く、通信及び調査手段として使うのが専らだ。
「どうした蘭樹?」
「うん、ちょっと待っててや?」
どうやら伝言らしい。右拳に小鳥の式を乗せて、蘭樹(らんじゅ)と呼ばれた少年は言伝を聞く。しきりに頷く蘭樹が気になり他の二人は当惑している。名指しされた康弘が、「ひえぇ」などと素っ頓狂な声をあげ立ち上がった。それを見て彼は、小さく噴出す。
「一体どうしたんだ蘭樹?」
必死に康弘は、痴態に対する恥ずかしさを抑えながら、蘭樹に問う。彼は表情を曇らせながら言う。
「次期当主様が生まれたらしいで」
それきり蘭樹は沈黙する。康弘もだ。新たなる家族の誕生を、心の底から嬉しそうにしていたのは、幹也だけだった。
「どうした! 何で喜ばない? 魅剣家の安寧は確約されたのだぞ!?」
「…………」
意気軒昂とした様子で宣言する幹也に、そんな安易なものではないだろうと、心中で毒づき蘭樹は沈黙を突き通す。
陰陽呪黎キリカ【第一章 第一話、愛せ愛せ 第三節】
「それにしてもやっぱり、この屋敷って広いよな」
幹也の先導による道案内の途中、康弘がぼそりと言う。彼自身も陰陽師の名家出身だ。自分の家と比べるのは無理からぬ話だろう。それに彼の実家は狭い。親しい者の家が大きいことを羨ましく思うのは当然だ。
「我が魅剣家は陰陽五大家の中でも最も世間に認められているからな。先ず一般家系から便りにされる度合いが違うんじゃないか?それに政府側の援助も受けているみたいだしな」
上条の問いを大家に対する羨望と捉えた幹也は、自慢げに話す。陰陽五大家とは、魅剣家を筆頭に上条家、都境家、龍文寺家、加茂家のことを指す。まだ彼等の認知度が高い方である京都においても、陰陽師として認知されているのは、この五つだけだ。ちなみに康弘は上条家に縁のある少年である。
「はぁ」
「っていうか広い言うかて、良いことばかりやあらへんで? 迷うし、目的地行くのに時間掛かるし。時々寂しくなるし」
自分の家と見比べてか、それとも幹也の自慢げな口調に辟易したのか。康弘は盛大な溜息を吐く。それを見て蘭樹が指を口に当てながら、純粋に思っていることを口にする。どうやら蘭樹にとっては、精緻で巨大な実家の敷地が余り好みではないらしい。
「おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うわあぁっ!?」
木々が風に揺られて奏でるせせらぎの音さえ、大きく聞える静謐なる魅剣廷において、珍しい大音響が響き渡る。三人は突然の大音響に一瞬、挙動不審になる。
「赤ちゃんの声?」
「うん、そうっぽいね」
おどおどしながら、蘭樹が重い口を開く。廊下の左端を歩いていた康弘が、首肯する。三人は顔を見合わせ声のしたほうへと歩みだす。大部屋五つを超えた先の、障子戸を開くとそこにはアザリ達が居た。
「おぉ、丁度来たか? 驚かせてしまったかな? まぁ、我々も四苦八苦して居たところだよ?」
「どういうこと?」
額に汗を滲ませながらも安堵の表情を浮かべるアザリに、怪訝そうな顔で蘭樹が問う。彼は、一息漏らし喋りだす。
「あぁ、どうやら私の事を本能的に嫌っているようでね」
蘭樹は笑いながら言うことかと、批判しようとする。しかしそのまえに幹也が、「不届きな子供だ」などと毒づいたせいで、彼は出鼻を挫かれ沈黙した。そして心の中で蘭樹は思う。
『不届きも何も、マッサラな状態やん』
至極当然な反論といえるだろう。アザリが偉人であるなどという知識が、生まれながらに備わっている赤子など居るはずがない。
「魅剣家の次期当主様は男なの? 女なの?」
憮然とした表情をしている蘭樹を一瞥し、康弘がアザリに問う。なぜそのようなことを聞くのかと、幹也が怪訝に眉根を潜めるがアザリは柔和な表情を崩さず、いつもと変わらない語気で応じる。
「女の子だよ? 名前はキリカっていうんだ」
「え?」
その答えを聞いて蘭樹が眼を丸くした。名前のことはどうでも良い。否、陰陽師にとっては名前とは最も短い言霊として、特別されるものだが、今はどうでも良いということだ。彼はレディーファーストの気が強い。それに女性に対する呪黎は、男性のそれを遥かに超える苦痛を伴うと、事前情報で知っている。唇を震えさせながら、蘇芳色の髪を掻き分けて、強い口調で蘭樹は言う。
「お父さん、その子に呪黎を行うん?」
「あぁ……」
次男の問いにアザリは即答する。一瞬の間も無くだ。蘭樹は憤慨し言葉を重ねる。
「何でや! お父さん言うとったやん!? 女の子は大事にせぇへんといけないって! 何でそんなこと言っておいて」
強い語調で捲し立てるよう蘭樹。過去の自分の言葉を失言だったと反省する色も見せず、アザリは答えた。
「私とて嫌さ。だが、理を冒すというのは家族の命すら危険に晒すことなんだ。家長としてそのような冒険は許されない」
その言葉には、長きに渡り苦渋と辛酸を嘗めてき、たアザリの諦めの深さが滲み出ていた。上に立つ者の苦悩、現実という高い壁。蘭樹は冷然とした父の答えにそれを感じながら、諦めきれず口を開く。
「僕が、僕が次期当主に……」
「あぁ、蘭樹お前はその才能があるけど。“真紅の髪”の者しかなれない運命なんだよ」
前から気になっていたことだ。蘭樹の才能は魅剣家の当主に相応しいものと、方々から認知されていた。なのに呪黎を行おうとしない。ふと蘭樹は気付く。魅剣家において自分の目だけオッドアイではない事実。今までは目を背けていたが。
「もしかして、僕は魅剣家の正当な血縁やあらへんの?」
嘆くように言う蘭樹に、瞑目しアザリは答える。
「いや、お前は魅剣家の血縁だよ。しかし、なぜだか知らんが全く別の性質が出たんだ。頭髪が銀色だった時は驚いた」
髪の色が銀——。それは魅剣家においてありえないことだった。だが、確実にアザリとカルマの間で生まれた子だと彼は言う。蘭樹は沈黙する。“自分は呪われた子供だとでも言うのか”少年は嗚咽し崩れ落ちた。
『キリカ、キリカは僕が、護る!』
自分が呪黎を受け当主の依代になることが叶わないと知った蘭樹は、心の底から誓う。いかなる手段を用いてもキリカを護る、と。兄として一族の食い物にされる妹を守り抜くのが、自分の役目だと彼は心に刻んだ。
家族としての情や人間としての常識以上に古い因習を打ち破りたいという戦いの意思が、少年の胸中には有った。彼は絵図に出てくる竜の様なギラリとした双眸で、父アザリを睨んだ——
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【お終い】
次は、【第一章 第一話、愛せ愛せ 第四節】です
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ二更新 5/20 ( No.13 )
- 日時: 2012/06/18 11:02
- 名前: 風猫(別PCナウ) (ID: fr2jnXWa)
『キリカ、キリカは僕が、護る!』
魅剣家において唯一の年下であるキリカ。新しい家族を古い因習から解き放ちたい。蘭樹の中にあったのはそんな単純な感情だった。彼女を宿命というレールから、脱線させることが出来れば、古き陰陽師の固執を取り除きより良い未来を創れる。彼はそう信じているのだ。
「蘭樹、ちょっと来い」
「康弘?」
怒りに満ちた目で、アザリをみつめている蘭樹の肩を康弘が叩く。彼の手招きに導かれるままに蘭樹は歩き出す。途中で先程の言い合いが癪に障ったらしい、幹也が声を上げるが蘭樹はそれを無視し歩き続けた。今の彼は他者ただを盲従するだけの負け犬の言葉など聞く気にはなれないらしい。
「蘭樹! 父上にあのような物言い許されると……」
「…………」
忌々しげな顔で幹也は蘭樹を見続けていた。そんな自分の息子をアザリは諌める。彼は唇を尖らせてそっぽをむく。これ以上言葉を続けても愚かしいと、口を紡ぐ一方で幹也の表情は憤怒に満ちていた。
「幹也」
不貞腐れる子供を諭すような優しい口調で、アザリは幹也に語りかける。
「父上、父上は蘭樹を甘やかしすぎですよ! あいつ、陰陽師を馬鹿にして、僕を馬鹿にして!
そのうえ、父上に対する言葉遣いもなっていなくて! 本当だったらここに居ることだって——」
「なぁ、幹也」
幹也が康弘と一緒に部屋から出て数秒。足音が聞えなくなるのを待って、幹也は怒気を篭めて言う。今まで溜まっていた本音を。荒々しい口調で、吐き出すように。彼は嫌だったのだ蘭樹のことが。自分が信奉する陰陽道を古いと差別するような物言いや、心の奥底で馬鹿にしているのが丸分りの目付きが、この上なく嫌だった。彼は幹也を自分の信じている物や寄る辺のすべてを否定する、邪魔者だと心の底では思っている。
慟哭する幹也に、アザリは声を荒げた。ちょっとやそっとのことでは波風立てること無い彼が、目を細めていることに幹也は気付く。萎縮し少年は後退りする。そして心に自分は間違ったことを言っていないと言い聞かせアザリに向き直った。
「私はお前と蘭樹をそんなに極端に差別して扱っているか?
私はお前らを等しく愛しているし、二人の才能を把握し相応の成長を望んでいるつもりだが」
「…………」
"才能を把握し相応の成長を望む”幹也は、アザリのその言葉に強く反応する。分っているのだ。当家の髪の色たる赤ではない蘭樹に才覚で負けているということは。それを認め幹也に対し陰陽師としての才能以上に、成長を観望しないアザリを彼は恐怖しているのだ。
実に子供らしい話である。幹也にとって個を認めてもらうというのは陰陽の才能を認められるのに他ならない。嫌悪する蘭樹より自分が劣るということを、言外につげるその行為が彼にとっては、忌々しいのだ。
『父上は見向きもしていない。僕の陰陽の才など少しも……蘭樹が紅い髪と引き換えに才能のすべてを天授したに違いないんだ!』
肉に爪が食い込むほどに強く幹也は手を握った。そして項垂れながら、才能にも一族としての適性にも愛されているだろう赤子を見詰める。寂しさが胸中を駆け巡った。髪の色が特異だからと言って、血を分つ兄弟であることは間違えないのだなどと言う、アザリの分りきった言葉が耳に届くが、気に留めている力は無く幹也は頭を下す。彼は涙を一筋流した。
陰陽呪黎キリカ【第一章 第一話、愛せ愛せ 第四節】
「こんな所で何なの康弘」
まだ祝賀会を開催するまでにしばらくかかるだろうと考えた康弘は、人気の無い区画まで蘭樹を誘導していた。蘭樹は何でこんな人目の無いところに呼び出したのか訝しがり、眉根を潜ませながら呟く。
「あぁ、別にここまで人気無いところでなくても良いと思うんだけどな。俺はこの風景が好きなんだよ魅剣家じゃ一番」
「ふぅん、僕は別に」
家族の数に対して魅剣邸は圧倒的に広く、使われていない部屋も多い。特に西区は祟りなどが多く起った場所に近いため、使用されていないのだ。そんな西区で最も端に位置する場所に、今二人は居る。一応の掃除などはされているが、一切の調度品は無く静謐とした場所だ。蘭樹のはっきりとした返答に微苦笑しながら、彼は続ける。
「何だかお前を見てると俺に近いなって思うんだよな」
「どこが?」と、問おうと口を一瞬開くが心当たりが少ないわけではないので蘭樹はやめた。
「陰陽師に改革をもたらしたいって考える所とか一族内で実は忌避されていたりするところとか、さ」
「うん、僕も思うとる」
康弘の言葉に蘭樹は顔を何度も縦に振り首肯する。康弘は髪の色こそ上条家の形質である黒だが、才能の質が彼の在籍する家系としては異質だった。彼の系譜は代々、偵察及び追跡が得意だが康弘はどういうわけか戦闘の才に突出しているのだ。ほんの少しの性質の差で、人間は浮いてしまう。その孤独感を康弘は肌で知っていた。だから彼は昔から陰陽の一族の、閉鎖的で偏った考え方を変えようと大志を抱いていた。
「俺は多分当主にはなれないって言うか、いつか追い出される。だから外から壊していこうと思う。だから」
康弘は遠い目をしながら未来を語る。彼の言葉に古い習慣に囚われた陰陽師たちの中にも、同士が居るのだと勇気付けられ蘭樹は言う。
「じゃぁ、僕は中から……壊す! アザリ様は僕を捨てたりしないの分ってるから!」
蘭樹の眼の奥には燃え盛る劫火が確かに見えて。彼の信念の強さを顕わしているようだった。
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【お終い】
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