複雑・ファジー小説
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- (リメ)陰陽呪黎キリカ
- 日時: 2013/02/12 12:20
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
- 参照: 修復断念(オイ……
「第一章 序幕」(エロ描写注意)
時は平安。策謀渦巻き、人々の感情が絡み合う時代。京の都には多くの妖怪が百鬼夜行をなし、跋扈していた。
妖怪とは、人間達のが持つ不の感情と恐怖が、形を成した者達。
人々に不幸と災いをもたらし、時には命を奪う。人間達にとって、害悪でしかない輩だ。
文官として、天候を読み取り未来を占うかたわら、そんな人智を超えた神妙不可視の徒輩を、日夜調伏する影の英雄たちがいた。
その者達の名は陰陽師。力にて陰を打ち破り、聖なる光を都に注ぐことを職務とする、文武両道の者達だ。
——今宵、丑三つ時を過ぎたころ。貴族の男を連れた牛車が、不可視の化け物すなわち妖怪に襲われた。
恐らくは深夜に姫君と、逢瀬を楽しんでいたのだろう。
慌てふためく男の前に、地味な濃紺の狩衣を着た人物が舞い降りる。
髭面で筋骨隆々とした大男だ。彼が現れた瞬間に、貴族は慌てふためくのをやめた。目の前の男の実力を知るがゆえだ。
「この程度の妖に、私が負けるはずがあるまい!」
目の前にいる妖怪を雑魚と断じた巨漢は、奇怪な術を発動させ、一瞬にして土の蛇を作り、標的を滅ぼす。
「うっうむ、芦屋道満よ大儀で……って、これいくでない!」
貴族の男の謝礼など聞きもせず、道満と呼ばれた男は駆け抜けて行く。
彼こそが稀代の大陰陽師と謳われる、都最強の官人陰陽師安倍清明最大の好敵手。
民間陰陽師の雄、芦屋道満(あしやどうまん)だ。
今日もどうやら清明と妖怪退治で、競っているらしい。
「おらおらぁ、私の前に立つ妖怪共は、全て排除するぞぉ! これで二十体ぃ!」
風を足に纏(まと)わせ、韋駄天(いだてん)の如く速度で夜の平安京を走る。
術の効力を高める符(ふ)を使い、大量のカマイタチを発しながら、妖怪の群れを蹴散らしていく。
そのさま正に一騎当千。
彼以外に清明の相手は務まらないだろうと言わしめるほどの、苛烈(かれつ)な霊力を道満はみなぎらせていた。
貴公子を助けてから数十分、目的の場所へと向って、彼は都を疾走し続ける。
疲れて足を止めると、生活感を微塵(みじん)も感じさせない廃墟(はいきょ)が、視界に広がっていた。
道満は、ここで安倍清明と落ち合い、勝負の結果を言い合う約束をしている。
彼が居ないか、周りを見回す。
清明は勝負事に余り興味がなく、適当に煙(けむ)に巻くことが有るのだ。
幾ら探しても、清明の姿が見当たらず、忌々しげに道満は舌を打つ。
「逃げたか」
対戦相手が居なくなったのでは、勝負は成り立たない。
道満はこれ以上粘っても意味がないと、踵(きびす)を返す。
夜も遅い。そろそろ寝ないと、明日の業務に支障が出るだろう。
今回の勝負は水入りとなった。良くある事だ。
そう、己の心に言い聞かせ、清明等という適当で身勝手な男を、好敵手と認めた自分を責める。
道満が歩き出して、数秒後。突然、強大な気配を背後に感じたのは。
「相変わらず、あつっくるしいのぉ道満よ?」
「清明? お前は相変わらず、透かした腹立たしい顔だな?」
道満が振り返ると。崩れ落ち、蜘蛛の巣掛かった家屋の屋根上に。紫色の着物を着た男が立っている。
切れ長で、異性を誘うような優しげな瞳。理知的な雰囲気をかもし出す甘いマスク。非の打ち所のない、絵に描いたような美男子だ。
彼こそが安倍清明。道満が、唯一の好敵手と認めた男だ。
清明は暑苦しい道満に、冷やかな視線を送りながら、あくびをする。
そんな彼の態度に、業を煮やした道満がいきり立つ。
「まぁまぁ、夜も遅いし、勝負の結果を発表しないか? 私はここに到着するまでに、四十三体滅ぼした」
道満と清明が行った勝負。
それは、目的の場所まで到達するのに、何体の妖怪を討伐したかという、単純明快なものだ。
清明の提示した数に、道満は押し黙る。
力を押し隠し潜んでいただけで、本当は自分より速く目的地に到着した居たのだろう。
霊気の出現の仕方から、容易く推測できることだ。だというのに、自分より十体近くも多く滅している。
彼自身は、清明とさして実力差がないと思っていたのだから、愕然とするのも当然だろう。
「くくっ、はっはっはっはっは! それでこそ超え甲斐があるというものよ清明!」
「私も、お前のような強者がいないと詰まらないからな。お前が播磨(はりま)の国から上京してきたこと嬉しく思うよ?」
道満は怒鳴っても仕方ない事と心を律し、鬱屈した感情を吹き飛ばすように、大声で笑った。
そんな盟友を見て、清明もまた嬉しそうな表情で、彼を賞賛した。
清明と彼以外の陰陽師との実力の壁は、当時果てしなく大きかったのだ。
これは清明と道満の馴れ初めの頃である。
それから数年間、彼等は常に研鑽し賞賛しあい、高めあった。しかし、その関係は次第に悪化していく。
いくら修行しても、全く清明に追いつくことができないという、道満の焦り。
常に二位というのは、気持ちの良くないものだ。
次第に成長が遅くなっていき、彼は悶々とした日々を送るようになる。
彼自身も、清明に劣らぬほどの華々しい経歴をいくつもうちたてたが、実力ではいまだに全く及ばない。そんなある日だった。
"安倍清明は妖怪の血を引いているから、人間離れした霊力を持っているのだ”
という推論が、都内に伝播したのは。それが道満には許し難かった。
話によれば、金だけの大した才能も無い父親が、圧倒的な妖力(ようりょく)を誇る妖狐を、優秀な陰陽師を何人も雇い、捕縛したそうだ。そして、その妖狐に子種を植えつけたのだという。
その事を耳にしてから更に月日は経過し、彼の中の嫉妬心や憎悪は育っていった。
そして、ある時清明に道満で会う。
「清明、私はお前を見損なったぞ」
「何を言っている道満!? お前、あんな戯言を信じているのか!?」
道満は自分の思いのたけを、憤懣やるかたなし、といった風情で語り、清明に背を向けた。
清明は止めようとしたが、二度と彼の言葉に道満が答えることはしなかったという。
長年の友を、些細ないさかいで失った道満は、嘆き続けた。
自分の愚かさと、そんな清明に勝ちたいという、愚劣な情念を捨てきれない弱さを——
「清明! 清明ぃ!」
「まるで、呪うような口調だな。その怨嗟、凄まじい強さだ。知っているか、それが魔道の入り口ぞ、陰陽師?」
十年前に娶(めと)った妻はすでに家を出て、道満は一人空しく泣き続けた。
そんな日夜悲嘆に泣き暮れる彼に、掛けられる綺麗だが感情の無い空虚な声。道満は振り向く。
そこには当時大妖怪として、都内に名を轟かせる大物が立っていた。
茨木童子。半分に割れた仮面で、左顔面を覆った、鋭い目付きの男だ。
魔道か、それも良いと思いながらも、道満は陰陽師の理念に従い、茨木を滅そうと、印を結ぶ。
「何用だ!? 貴様知っているぞ、確か茨木童子といったな! 私の家に土足で踏み入るとは、自殺志願者か!?」
だが、すぐに術を発動させることは無く、用件を道満は問う。
茨木童子ほどの大物が、こうやって一人で赴(おもむ)くのだから、それなりの理由があると思ったのだ。
「げーんげん! そんなことないよぉ? 茨木童子は強いんだぞぉ優秀な陰陽師さん?」
強い声で恫喝(どうかつ)する道満の言葉に、妙な挨拶とともに現れた女が答える。
女の服装は露出度が高く、そこから覗く透き通るような白い肌は、挑発的な色香をかもし出す。
更に唇の下にあるほくろが、性欲をそそる。顔は少し幼いが、間違いなく美人だ。
聞き慣れない名前と、妖気の高さに、何者だと道満はいぶかしむ。
実力のある妖怪は、大半把握しているはずなのに、と。
「彼女の名は言々(げんげん)。強き渇望(かつぼう)に囚われし者よ。お前は正しい。安倍清明など妖狐の霊力が無ければ、何もできぬ平凡な術者に過ぎないはずだ。そんな邪道の輩がのさばり、人の身でここまで至ったお前がが日陰者とは、何と悲しいことだ?」
女の紹介を簡潔に済ませ、茨木童子が流れるような口調で話し出す。
言葉を切り出す場所が無く、道満は黙り込む。
そして、彼の言葉を聞いているうちに、清明への怒りが、再び沸々(ふつふつ)と湧き上がってくる。
彼の言っていることは、今の道満の心の全てに当てはまり、道満はそれが正しいことだと思い込む。
清明は、朝廷に恩を売り、全幅の信頼を得ることにより、裏から平安京を掌握せんとする悪逆の徒だと、自分に言い聞かせる。
“滅ぼさねばならない。友だなどと、最大の悪を見逃していた自分の罪滅ぼしのためにも”
彼はそう心に誓った。
その心情の変化、いや正確には覚悟の芽生えを敏感に察した茨木が、更に言葉を続ける。
「安倍清明は、帝を甘言でおだて、君等の愛する平安京を手中にせんとす悪逆非道の輩だ。正義を信奉(しんぽう)し、世界を光に満たさんとする、お前なら許すべからずはずだ。強くならねばならん。芦屋道満よ、お前は今までより、遥かに高みに至れる」
「それはっ! それは一体、どうすれば叶うのだ!?」
道満が掛けてもらいたかった言葉の数々が、茨木の口から、吐き出されていく。
すべてを見透かしているような態度に、本来の彼なら絶句し、疑念を抱くはずだが。
今の彼に、そんな余裕は無い。
ただ強くなれるという望みが目の前にあることを、疑いもせず手を伸ばす。
どこまでも暗い絶望の海で、初めて見付けた光明に。
「簡単だ。言々と性をまじわすだけでいい」
「えっ、そんな馬鹿な! 私に安倍清明の父親と同じ業に、手を染めろと言っているようなものではないか!?」
方法を問う道満に、言々と秘め事をしろと茨木は躊躇(ちゅうちょ)なく言い放つ。
それに彼は驚く。
いかに美女とはいえ、妖怪に手を出すなど、陰陽の者として有ってはならぬことだ。
そして、清明を超えた力を手にするために、その父と同じ罪を背負うなど、言語道断だ。
「断じて違うぞ、芦屋道満よ? 言々との間に、子を成すのではない。彼女は交わった相手に、妖力を受け渡す力を持っているのだ」
「なーに、迷ってるの素敵な叔父様? あ・た・し、もうアソコずぶ濡れだよぉ?」
逡巡する道満に、先程の覚悟に満ちた目はどうしたと、言外に口にしながら、茨木童子は本旨を説明した。その説明を聞いて道満は思い直す。
妖怪と交わること自体、陰陽師としては業深きことだが、今の彼にはそれはどうでも良かった。
安倍清明の父親と同じにさえならなければ良いと、思ったのだ。
なおも悩む彼を見て、一応の申し訳のために迷っているふりをしているだけだと、見抜いた言々が歩み寄る。
そして、彼女はピンク色の着物の上着を脱ぎ、上半身をさらけ出す。
大き目ながら綺麗な形をした乳房。桜色をした綺麗な乳首。
言々はそれをひけらかせながら、扇情的(せんじょうてき)な仕草で道満に絡みつく。
「あぁ、綺麗だ。もう、どうでも良い。力が欲しい」
道満は男の本能をあらわにして、獣のように言々を押し倒す。
強く胸を揉みながら、言々の小振りな桜色をした唇をむさぼる。
「あっ、あぁん。うっ、はぁはぁ。道満様ったら、野性的な容姿通り激しい人っ」
「言々よ。入れるぞ? 良いか? 良いと言わずとも、お前は濡れているといっていたではないか!」
猛々しく女の体などお構いなしに、道満は言々を犯し続けた。
下の履物を破りさり、一物を彼女の恥部にねじり込む。
そして、野獣のように激しく、後ろから彼女を突く。
十数分間の行為の末、彼は彼女の中に射精し儀式は終わった——
「はぁはぁ、道満様、素敵ぃ」
「堕ちたな。ふっ、我々はお前を歓迎するよ芦屋道満」
疲れきって倒れこむ道満を見下ろし、茨木は無感動な声で告げる。
息は荒く、立ち上がることもできない道満だが、確かに霊力の総量は言々を抱く前より、大きく上昇していた。
「これにて新たなる同士、芦屋道満の“呪黎(じゅれい)”の儀を終了する。言々、行くぞ」
「はぁはぁ、駄目、腰が抜けて……道満様本当に激しすぎて。凄い」
力無く倒れる裸の二人を背負って、茨木童子は闇の中に消える。
そして、物語は現代へと移ろう。
————————————————
「お終い」
次は、「第一章 第一話、幼き刃達 第一節」です
〜作者状況〜
執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。
題名、読み方は「オンミョウジュレイ キリカ」です。前スレで発言した通りリメイクします。
始めましての方は、初めまして。
いつも来てくださっている方々は有難う御座います^^
グロ要素やエロ要素は、ふんだんに入ると思います。
苦手な方や不快に思う方は、見ない事を推奨します。
最後に、更新速度は、亀以下になると思いますがお許しを。
お客様
旬様(雑談の方でお世話になってます! お客様第一号♪)
Walker様(まだまだ、小説の実力は高くないですが順調に成長しそうな人です^^楽しみ!)
羽風様(黒白円舞曲の方にもコメントくださって感謝です!)
白波様(凄く上手な文章を書くお方です! Fateシリーズは私も好きだぜ!)
いちご牛乳。様(自分の事を変体と評す辺り親近感を感じます! ビバ変態★)
檜原武甲様(格好良い名前ですな^^ 最近結構見かけるお方ですね)
火矢 八重様(ファジーの銀賞だか銅賞を取ったお方です! パチパチパチパチィ★)
月那様(プロローグに力を入れると言うのはいいことだと思いますよ!)
紫様(文才に秀でた真摯なお方です!)
猫飼あや様(一芸に秀でるものは多芸に秀でる……朔様と言い適用される言葉なのでしょうなぁ)
日向様(えっと、軍事系の小説を書いていられる珍しいお方です^^中々文章もお上手ですよ!)
トレモロ様(我が心の兄弟にして変態紳士です! 結構な有名人さんなので知ってる人居るかも?)
陽様(私の大事な友達です! いつも嬉しいコメントくれて有難う!)
朝倉疾風様(有名な方ですので知っている人も多いのでは? 凄く真面目なコメントを書いてくれます)
葵様(様を付け辛いよ……僕のストーカーさん★)
茜崎あんず様(陰陽師物書くんですか? 私も暇が有ったら覗いて見ますね?)
狒牙様(BLEACH仲間です! そして、同士です!)
汽水様(結構良く見かけますよね? 主戦場はコメディ?)
柚子様(柑橘系男子。長らく女だと思っていたと言ったら長らく男だと思ってたと意趣返しされた)
ゆぅ様(白黒円舞曲も読んでくださった方です!)
凛様(鑑定してくださいました!)
琥珀様(奇抜なキャラクタを主人公に面白い物語を展開しています★)
藤田光規様(同じく陰陽師系の小説書いてます!)
バンビ様(更新速度が速くて一話一話が短くて簡潔で憧れます!)
白月様(素敵で綺麗な文章をお持ちのお方です♪)
野宮詩織様(絵も上手で小説も上手で、趣味のよろしい楽しいお方です!)
世移様(パラノイアのほうはいつも感想ありがとうございます! 最近は更新滞ってましてすみません)
葉月涼花様(色々な漫画など知っている人です。コメントが何だか雰囲気あります)
黒雪様(私の企画板でお世話になっている人です。なかなかに素敵な小説を書いていますよ!)
柴犬様(ファジー版で書いていた作品は中々に奥深く共感できる良い作品でした!)
デミグラス様(久方ぶりの新規のお客様です! 軍記物を書いたいらっしゃるそうです!)
伯方の塩様(真面目な鑑定有難うございました! 大変ためになりました)
ルリ様(ずいぶん遅くなってしまい申し訳ありません。鑑定士さんです)
冬ノ華 神ノ音様(BLEACHを知っている友人として……お世話になりました!)
34名様
閲覧して下さったお客様方! 真に感謝です!
目次
第一章
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第一節】 >>1
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第二節】 >>5
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第三節】 >>9
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第四節】 >>13
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第五節】 >>23
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第六節】 >>29
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第七節】 >>33
【第一章 第一話 愛せ愛せ 第八節】 >>46
第一章第一話 終了
第一章第二話 開幕
【第一章 第二話、迷え迷え 第一節】 >>53
【第一章 第二話、迷え迷え 第二節】 >>62
【第一章 第二話 迷え迷え 第三節】 >>73
設定資料及び小休止及び貰い物等
キネリ様作 キリカ絵 >>36
魔ん堂様作 蘭樹絵 >>42
キャラクタプロフィール >>52 随時更新
羽月リリ様作 言々絵 >>54
読者様投稿オリキャラプロフィール >>63 随時更新
月森和葉様作 魅剣クラン&夢氷絵 >>66
風マ様作 天月絵 >>67
月森和葉様作 天月絵 >>76
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ三更新 5/23 ( No.15 )
- 日時: 2012/05/23 21:54
- 名前: 琥珀 (ID: .X/NOHWd)
この前の返信ありがとうございました!琥珀です!
いや、風猫さんの作品凄いです。
私も続き楽しみにしてます!
風猫さんにまた読んでもらえたら嬉しいです。
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ三更新 5/23 ( No.18 )
- 日時: 2012/05/25 18:56
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 2WH8DHxb)
- 参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
テストも終わって、それらがすべて返却されて、
キリカに会いたいと、お気に入り小説で
貴方の小説を開いたら、まさかのロックで
しかもリメイクでおままー!となった朝倉です。○
リメイクとあって心もウキウキ気分ですが、
読んでさらにウキウキになりました。ウキ。
キリカは産まれたときからその宿命を
背負わされているのだと、改めて
実感しました。 次世代の当主。
その期待を一心に受けてきたのですね。
未来のために、心を鬼に、ですか……。
ふと思ったのですが、陰陽師の設定、
例えば現代五行とかはご自分で設定
されていらっしゃるのですか?
あまりにも設定が組み込まれすぎていて、
ひどく関心しています。
あと蘭樹が可愛いです。
家族とひとりだけ違うというのは、確かに
気にもします。
ひどいコンプレックスでしょうね…。
呪われた、なんて悲しいことを言わないで
ほしいですが…。
外から壊す者と、中から壊す者ですか。
朝得な設定がきたので、るんるんです。
あと、やっぱり関西の喋り方が良すぎます。
そうだ、京都に行こう。
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ三更新 5/23 ( No.21 )
- 日時: 2012/06/04 23:39
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: OXm6els4)
よしっ!やっと【○】ついてないっと・・・。
こんばんわ。藤田光規です。
読みました。全部読みました。もう凄いです!
文の作り方(?)がとてもプロです!見ててなんか、こう。圧倒されました。もう芸術と言ってもいいほど。
読んでいてこれがホントに一般の方なのかな・・・と思いました。(失礼ですが。)もう今からプロになってもいいと思いました。
情景描写がもう綺麗で綺麗で。リアルを極めています。
内容も、もうなんていうか・・・陰陽師とかそこら辺の奇々怪々なものが大好きな僕にとってはたまりません。
最高です。もう神ですよ。もう。今から土曜9時のドラマにこの作品が出てもいいぐらいのクオルティと思いました。
最初から最後まで変態みたいな文章ですいません。貴方の文が素晴らしすぎるからいけないのです(笑)
これからも更新頑張って下さい。恥ずかしながら僕も応援していきます。
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ三更新 5/23 ( No.22 )
- 日時: 2012/06/06 10:02
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: fr2jnXWa)
琥珀様へ
着て下さって有難うございます!
凄いだなどと、まだまだですよ(笑
更新頑張って下さい^^
朝倉疾風様へ
何だかいつの間にかリメイクした風猫。まぁ、理由は小説鑑定で連続で駄目だしされたからなんですが(笑
あぁ、テストお疲れ様です! 成績は聞きません。
うきうきして下さって有難うございます。餓鬼幹也んや子供上やん、チビ蘭樹と過去の時代の話です♪
アザリ様がマジ主人公みたいな感じになるかと(笑
そうですねぇ。こういう一族って存続のために色々大変なんだろうな、と考えながら書いてみました。
陰陽師の設定は資料を有る程度読んでいます。加茂家とか土御門とか、そういうのも出す予定ですね。加茂家は出てるか(苦笑
蘭樹は今まで分らなかったですからね。アザリ様は実は蘭樹に教えているのですが彼自身が全否定して忘れていた、という。
コンプレックスを抱いて歪んでいくんですかね少年は?
上条さんはリメ前の通りです。正直、リメイクではしばらく康弘は音沙汰なしかもですね。
京都、私も行かねばとか思ってます!
藤田光規様へ
この【〇】システム面倒でごめんなさいです(汗
短いですが読んで貰えると嬉しいです^^
何だか嬉しい限りの言葉の連続! 文章などまだまだです(汗
とくに心情描写が少ないと嘆いている所です。一般人にも私程度の人は一杯居ますよ♪
カキコ内にも勿論ね^^
陰陽師は私も好きなのです^^ まだまだ陰陽師らしさが出てませんが(苦笑
ドラマよりはアニメとかじゃないかなぁ? 深夜アニメ枠★
これからも時々でいいので覗いてやってください!
- Re: (リメ)陰陽呪黎キリカ 一章 一ノ三更新 5/23 ( No.23 )
- 日時: 2012/06/18 11:03
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: fr2jnXWa)
「康弘」
春口らしい清涼な風が頬をくすぐる。気付くと辺りは夕焼け色に染まり、太陽もずいぶんと沈んでいた。そろそろ蘭樹の妹であるキリカの出産の記念会が始まるだろう。蘭樹は眼を細めて、康弘の名前を呼ぶ。
「ん? どうしただ蘭樹?」
その声はとても優しくて感謝に満ち溢れていて。康弘は小さく微笑んだ。一応というように次の言葉を彼は促す。
「ありがとなぁ。気が楽になったで」
照れたような口調で蘭樹は言う。蘭樹自身が素直じゃない性分なのか、今まで彼の口からお礼の言葉を康弘は聞いたことがない。上擦ったわけでもなく、自然な発音の感謝の言葉に戸惑いながら康弘は口を開く。
「俺もだよ」
康弘もまた、胸のうちに秘めた思いを吐き出して楽になれた。蘭樹に感謝しない理由などない。年下に感謝する気恥ずかしさにか、彼の頬は少しばかり赤らんでいた。
「今日、早速行動してみようと思うんやけど……」
「どんな?」
そんな嬉しそうな兄貴分を穏やかな瞳で見詰めながら、蘭樹は言葉を紡ぐ。それに対して康弘は、優しい口調で続きを促し話を聞く。
「正直上手くいくかいかないかって言うたら、ほとんどゼロなんわかっとるんねんけど」
ギクシャクした風情で言葉を詰らせながら話し出す蘭樹。本当なら余り言いたくないのかも知れない。そう思いながらも好奇心旺盛な年代である康弘は、やはり興味が先行してしまう。
「何をするんだよ?」
言いよどむ蘭樹を康弘は急かす。そんなに聞きたいのか、康弘自身に覚悟があるのなら本人としてさして言い辛いことでもない。そう思って蘭樹は口角を上げ犬歯を剥き出しにする。それはまるで康弘に聞かなかった方が良かったと後悔しないか、と警告しているようだ。
「せやなぁ。魅剣家の現当主って僕のお父さんやん?
それって、あの人が現陰陽師最強ってことやろ?」
人差し指を唇にあて淀みない口調で蘭樹は話し出す。その言葉は現代陰陽師としては当然の、知識だった。最も戦闘力に秀でた陰陽集団である魅剣一派の頂点だるアザリは、当然苛烈な霊力を秘め圧倒的な力を有している。
「それがどうしたんだよ?」
だがそれだけでは話の趣旨を理解するなど当然できず、康弘は首を傾けた。
「倒して式にして……言うこと聞かせるんや」
「正気かよ? 人を式にするなんてそもそも無理だろ?」
次の瞬間、蘭樹は想定外の言葉を口にする。康弘は驚愕し瞠目する。式。それは粘土や紙から生まれた単純なもののことばかりを指す言葉ではない。優れた陰陽師は強大な力を持つ妖を使役し、戦闘や情報収集といった事柄に利用するのだ。
しかし、愕然としていた康弘はすぐに正気に戻る。妖怪を式にする事例は古文書や現実で幾つも目にしてきたが、人を縛、使役した例は見たことは勿論聞いたこともない。つまり出来ないのだろうと仮定し彼は批判する。
「出来へんとも書かれてへんやん? どんな本にも……そもそも、妖怪を式にするのも人を呪う呪術の発展やし」
それにたいして蘭樹は小さく噴出して、事実を歌うように流麗に反論した。康弘は沈黙する。彼の言っていることは正しい。どの古文書を見ても“人を式に出来ない”などという趣旨の言葉は無いし、真実人を呪術で呪うことから、使役術は考案された。
「人を妖怪と同等に扱うって話か?」
とうの昔から康弘も薄々は感づいている。人間も妖怪と同じに、操れるであろうことを。それを陰陽の者達がしないのは、彼等のプライドや道徳観ゆえだろう。目尻を奮わせ震えた声で、彼は蘭樹に問う。人間として当然持つべき疑問を。
「康弘も頭固いなぁ? それこそ妖怪からしたら反論の的や?」
それに対し人として踏み外してはならない境界など無いのだと、言うかのように蘭樹は軽快に指を振る。その口調はどこか皮肉が篭っているようでいて、心底妖怪と人間に対する尋常ではない差別を嫌っているようだ。
「そうかも知れないけど、いやそうじゃなくて結局アザリ様を式にしてどうするんだ?」
七歳にして十歳の自分より知識量で上回る蘭樹に対し、歯噛みしながらなおも康弘は抵抗する。蘭樹はそんな彼の行いに、さっき陰陽師を変革すると約束したばかりなのに何を怯えているのだと、苛立ちをあらわにして口を動かす。
「あの人は陰陽会の中核や。頂点言うても良い。それに魅剣キリカの全てを決める権利がある魅剣家の当主や」
「…………」
自分の父を使い魅剣家のみならず陰陽会に対しての発言力まで手に入れようと、蘭樹は言う。良い遊び道具を見つけたときの子供のように、臆面も無くとてつもないことを淡々と述べる。当主の力を使い託宣に現れた言葉を無視し、無理矢理キリカに普通の人間としての生を歩ませようというのだろう。更に陰陽師の暗部すらも最強の力を持つ術者の技を持って制圧する気なのだ。理(ことわり)など完全に無視した世俗に塗れた大人では絶対に思いつかない手段。
『正気かよ?』
康弘は眩暈を起しよろめく。彼は想像以上に獰猛な蘭樹の純粋さに、恐怖を感じ沈黙する。それと同時に蘭樹の才気と、若いゆえに世の中のルールや道徳を無視することのできる、ある意味で合理的な蘭樹の考えに賛同する。
幼いゆえに恐怖を知らない天才の暴走に、少し年上でほんの一ミリ程度だけ世界の常識に聡い康弘は心酔してしまった。この日を境に二人の歪な関係は続く。古きわだかまりに満ち溢れた陰陽の世に新風を吹き荒らすことを目的として——
陰陽呪黎キリカ【第一章 第一話、愛せ愛せ 第五節】
酉の刻を少し回った頃、辺りは夜の帳に満ちていた。家族及び使用人が宴会室に集う。親族や他の流派の者達は呼ばれず、盛大とは言い難い慎ましい雰囲気が漂っている。元来、陰陽師はそれほど大きな宴を催すことはない。どのようなときでも一族でのことは、身内で済ませるのが普通だ。
「…………」
しかし、彼らも人間だ。やはり盛り上がり騒ぎはする。念願の次期当主の誕生ともなれば尚更だ。ある者は隣同士で晩酌をかわしながら談笑しあい、またある者は歌を歌ったり踊っている者も居る。
最後尾の方に列席している蘭樹はその光景に苛立ちの目を向けていた。キリカを人柱にして責任逃れしているのに、そんなことは億尾にも出さず人一人の不幸を喝采している呆れた愚図共許すまじ。自然と憎悪が顔を出す。
『俺達、呪黎を受けないで良い立場で良かったよなぁ、何てうそぶいてる家族皆腹立たしかったんや』
今までの人生を振り返り苦虫を噛んだような表情をする。誇りが有るのならせめてそんなことを口にするな、心底思った。
「どうしたんだ蘭樹? 肉食べないんなら自分が……」
「構わへんよ。僕食欲あらへんから」
蘭樹は些細なことに苛立ち、激情に身を燃やす。そんなとき幹也が彼から発散される怒気など、全く読まずに声を掛けてくる。蘭樹はそれ幸いとばかりに、人酔いしたから少し風に当ってくると、適当に言い訳をして席を外す。
「何だよアイツ? おめでたい席で仏頂面しやがって、これだから蘭樹は度し難いんだよ」
唇を尖らせ憤りながらも、蘭樹の席の肉を頬張る幹也。それを傍目に蘭樹は出口を目指して黙々と歩く。そんな光景をカルマは、適当に親族と談笑しながら盗み見ていた。
「あっ、丁度お酒が切れたみたいなのでお持ちしますね」
「相変わらずカルマさんは気が聞くねぇ」
カルマはお猪口に酒を注ぐと、最後の酒瓶が空になったことを確認し踵を返す。去り際にもっともらしい言葉を口にして速足で歩く。いつもの風景なので、誰も特に気にすることは無くい。
飲み物やつまみなどが有る場所とは、反対側の通路を彼女は歩く。その先には物憂げな顔で月を見上げる蘭樹の姿があった。
「どした? まぁ、余りこういうの好きじゃないのは分ってるけど」
蘭樹に気さくな口調で問い掛けてくる、良く耳に馴染んだ声。相手は母だとすぐに気付き少年は面を上げる。
「お母さん?」
「何か悩みでもあるなら言ってみな? 心の中に押し込んでおくだけじゃ、何にも解決しないから」
カルマは接待で忙しいはずなのに、何でここにいるのだろうかと怪訝に思い蘭樹は眼を細めた。それを察したのか彼女は、細かいことは気にするなと手を振りながら伝える。そして、甘い声で優しく囁く。
「気に食わへんのや! どいつもこいつも詰らないしがらみに捕らわれた振りして、
本当はタブー言われた機械やらなにやらに手ぇ染めて! 矛盾してるんや!」
有りっ丈の力を篭めて腹の底に渦巻く汚物を吐瀉するように、蘭樹は叫ぶ。世界の激動に合わせて、変えるべき物と変えてはならぬ物の取捨選択を何度も繰り返してきた結果だろうことは、想像に難い。常に未来へと動き、利器は進化していく。いつまでも古い物に縋っていては、いつか振り落とされる。だが、人としての根本的な思想や慣わしは、伝え護っていこうと振り落とされずにすむ。いわば外の部分と中の部分、その差だ。幼い少年にはその区別が付かない。
「うん、そうだね。可笑しいね……機械を受け入れるだけじゃなくて新しい思想も受けれるべきだよね?」
カルマは蘭樹の子供染みた痛嘆を正さず、ただ賛同し彼の頭を優しく撫でながら、諭す。
「でも、ほとんどの人は中を見られるのが嫌なように、中を入れ替えるのも怖いものなんだよ」
カルマは微笑みながら言う。
「分っとるよ、だから強引にでも……」
口ごもりながら蘭樹は、数時間前上条康弘とした約束を思い出しながら語る。正直彼は大批判されるのではないかと、内心冷や冷やだ。しかし、カルマは母性に満ちた聖女のような笑みを彼に向けてくる。
「良いんじゃないかな? 私もそう思ったことがあるよ?
二十年くらい前に嫁いできて、自分だけ髪の色も目の色も違ってた。
そりゃぁ、浮くし変な目で見られるわでね。居場所なんて無くて、全て変えてやるって憎んだよ」
魅剣カルマもまた、当家内においては異質に映る存在だった。近縁結婚は禁則とされているので、魅剣の血が直接的には流れていない者も居るのだが、実際数は少なく浮いてしまうため大体は髪を染めるのだ。だがカルマは髪を染めても、霊力が拒絶し黒に塗り替えてしまう。そんな彼女の異質も相俟って彼女は長らく不遇されてきた。第一子である幹也が生まれるまでは、当主アザリ以外は彼女を軽蔑の目で見ていたのだ。
「私にはその力も無かったししがらみも多すぎた。でも蘭樹はしがらみなんてほとんど無いし天才だ!」
自分の何もかもを包み込み肯定してくれるような母の言葉に、蘭樹は酔い痴れていた。魅剣アザリに戦いを挑むという決意が、胸中で息を吹き入れられた風船のように膨れ上がっていく。だがカルマの双眸に慈愛の心など無く、愉悦の感情が浮んでいることなど喜びに舞い上がる彼が知る由は無い。
「母さん、ありがとう」
蘭樹は無邪気な笑みを浮かべて、感謝の言葉を口にする。蘭樹に礼を言われたカルマは、本心からの笑みを浮かべた。心中ではどす黒い探究心を渦巻かせながら——
『本当に人間って面白いな』
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【お終い】
次は、【第一章 第一話、愛せ愛せ 第六節】です