複雑・ファジー小説
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- ANIMA-勇者伝-【完結】
- 日時: 2014/12/23 17:00
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: uz6Wg9El)
古くから残る書物が一つある。
それは神が誕生し、この世界が出来るまで、そして大きな事件まできっちりと書かれている。
擦り切れた表紙からは魂の温かみを感じ、生きとし生ける者たちはそれを学び、記し、語って行く。
そう、これは歴史だ。
多くの者が血を流し、繁栄した時代に生きる影響者達の一生が描かれている。
そんな歴史書の数ページが何者かにより失われていた。空白の歴史が語る事実はなんだろうか?
その時——世界が動いたのだ。
◆◆◆◆
初めましての方は初めまして、そうでない方はありがとうございます愛深覚羅と申します
もう投稿して何回目でしょうか……懲りずにまたやって行きたいと思います
今回は王道ファンタジーを久々に書いて行こうと思ってます
そして今度もゆっくり更新ながら完結目指して頑張って行きたいと思います!
オリキャラも募集していますのでよければご参加ください
※御指摘・御要望があれば遠慮なく言ってやって下さい。
◆本編
登場人物/用語 >>4
プロローグ >>5
□第一章
第一話 不思議な黒猫〝リーブル〟 >>23
第二話 樹の中に…… >>27 >>28 >>33
第三話 守る者達 >>37 >>40 >>41
第四話 出発の朝 >>46 >>54 >>55
第五話 桜は血を吸って美しく咲き誇る >>63 >>66 >>70
第六話 例えば…… >>71 >>74
第七話 笑顔 >>77 >>78
第八話 無邪気 >>86 >>95
第九話 藪の中 >>96 >>97
第十話 七色の蝶 >>101 >>106
第十一話 遭い会い逢い >>110 >>113 >>114 >>115
第十二話 魅入られる >>119 >>120 >>121
第十三話 犬猿の仲 >>125 >>129 >>130
第十四話 意味 >>135 >>140
第十五話 噂の真相 >>147 >>154 >>157
第十六話 彼はなんだ? >>160
第十七話 秘宝を賭けて >>163 >>167 >>168
第十八話 ここはどこですか? >>173 >>178 >>179
第十九話 家出少女と旅芸人 >>187 >>191 >>192
第二十話 強くなりたいか? >>197 >>201
第二十一話 怪盗と追いかけっこ >>202 >>203
第二十二話 怪盗の回答 >>204 >>205
第二十三話 道端 >>211 >>212 >>213
第二十四話 海へ! >>216 >>221
第二十五話 船の上の生活 >>224 >>232 >>233
第二十六話 幻の島ヒストリア島 >>236 >>237 >>243 >>246 >>252
第二十七話 いざ行かん、戦場の地へ >>255 >>259 >>260
第二十八話 放浪の末 >>264 >>270 >>275
第二十九話 エターナル王国へ >>276 >>277 >>278 >>279
第三十話 探し人、見つかる >>283 >>287
第三十一話 女王と国王 >>294 >>297
第三十二話 列車の旅 >>300 >>303 >>304 >>305
第三十三話 パルメキア王国の策略家 >>308 >>309 >>310
第三十四話 罠 >>313 >>317 >>318 >>321
第三十五話 対面 >>323
第三十六話 パルメキア王国の王女 >>324 >>325 >>326
第三十七話 合間 >>327 >>330 >>331 >>332
第三十八話 最前線基地 >>336
第三十九話 ゼルフ・ニーグラスと言う男 >>339 >>340
第四十話 終焉の狼煙 >>343
第四十一話 あの場所 >>344
第四十二話 戦後 >>345
□第二章
第四十三話 リベンジ >>367 >>368 >>369
第四十四話 ダンジョン探索 >>370 >>371 >>372
第四十五話 勝利の行方 >>375 >>376
第四十六話 伝説の魚人 >>381 >>382
第四十七話 噂の人魚 >>383 >>386 >>387
第四十八話 全ての元凶がそこに >>388 >>389 >>390 >>393 >>394
第四十九話 動く >>395
第五十話 走る >>396 >>397
第五十一話 レイヤル王国 >>401 >>402 >>403
第五十二話 世界を覆う >>406 >>407
第五十三話 意志と意思 >>410 >>411
第五十四話 境界線にある真実 >>412 >>413 >>414 >>415
第五十五話(最終話) 空白の歴史は動き始めた >>422 >>425 >>426 >>427
□エピローグ
とある国に伝わる歴史書 >>428
□特別番外編
EPISODE1 生命の息吹 >>349 >>350
EPISODE2 神々の…… >>355
EPISODE3 砂漠と恋の風 >>356 >>358
EPISODE4 桜吹雪 >>362
EPISODE5 幻と共に >>365
□お知らせ
>>348 >>366
□アトガキ
>>431
◆オリキャラ様
オリキャラ募集用紙 >>6
檸檬さん >>7 >>43 キコリさん >>8 芳美さん >>10
コッコさん >>11 >>25 >>34 >>42 >>44 >>61 >>72 >>99 >>108 >>149 >>158(仮) >>171 >>188
不死鳥 >>12 七竈さん >>13 010さん >>14
ばっちゃさん >>15 ブルーさん >>20 はるさん >>21
紫蘭さん>>24 大関さん >>29 凡さん >>49
モンスターさん >>52 calgamiさん >>56 >>174 >>175 トールさん >>58
モンブラン博士さん >>79 >>89 >>117 >>145 >>169
恒星風さん >>82 サニ。さん >>87 >>152 珈琲さん >>91
.オリキャラ募集一旦〆切です。
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.163 )
- 日時: 2014/03/16 22:05
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: bVlGyEWK)
第十七話 秘宝を賭けて
翌朝、エースに連れられてグライト達はアルバン帝国を出た。
砂漠の真ん中を横切り、ひたすらにエースの後を続く四人。丁度中心だと言われ、立たされた場所はどう見ても砂しかなかった。
グライトは周りを見渡しながらエースに確かめる。
「本当にここであってるの?」
「あってるよ。まぁもうちょっと待ちなよグライト君。もうちょっとしたら……」
エースの言葉を遮る様に砂に変化が現れた。
砂漠の砂はだんだん中心がへこんで行く。俗に言うアリ地獄という状態だ。
不安に思いつつ、グライトはエースの反応を待った。エースはその砂の上からどこうとしない。
グライトを尻目に、しびれを切らしたソラはエースに喧嘩腰で尋ねた。
「危なくないか? 大丈夫なのか本当に」
「安心して。もうちょっとだから。この下に行くにはこの方法しかないんだよ。何を思ったのかグレイシアがそう作ったんだから仕方ないよ」
苦笑いでエースはソラを見る。
砂はだんだん五人を吸い込んで行く。グライト達は息を止め、目を瞑った。
一瞬だった。
足元にある砂がグライト達の足を吸い込んだと思ったら、砂が吹き荒れだした。
そして——気付けばそこは砂の下、地面の中だった。
目を開けるグライト達。キョロキョロとあたりを見渡し、上を見上げた。
「うわぁ……! すごい、なんか綺麗だ!」
グライトはそう言ってはしゃぎ出す。五人の辺りに広がっていたのは高い天井、砂、砂で出来た柱や壁だ。
グライト達の上に広がっている砂の屋根。そこから光は少ししか届かないはずなのに洞窟はキラキラと光っていてお互いの位置を簡単に確認できる。
グライトは無邪気にエースに尋ねた。
「これって何が光ってるの?」
エースは穏やかな笑みで答える。
「光苔。この洞窟には沢山あるから松明とか人が手を加えた物はいらないんだ。それに上からの微かな光もあるしね」
エースはそう言って先陣切って歩き出す。複雑に入り混じる迷路のような洞窟の道に目印なんてない。だがエースは迷わずどんどん奥へ足を進めた。
◆
洞窟を進む途中、たびたび大きな生物が目に入るようになってきた。
そのグライト達よりはるか大きな虫の様な生物はキョロキョロとあたりを窺ったり、上へと頭を出したりしていて面白い。
だがユーノは虫が苦手なのか、苦い顔だ。
「気持ち悪いよぉ〜……グライト、待って!」
「ユーノ虫苦手なの?」
「うぅ〜……気持ち悪いし可愛くないもん」
ユーノはそう言ってグライトの腕にしがみつく。
そんなユーノを見て一歩前を歩いていたミキは一匹指差して説明をしてくれた。
「これはウバ。砂漠一体に広がっている突然変異種の虫ですよ。元々ちっちゃかったのがおっきくなって、驚異的な速度で繁殖したって言われてたり、元々この大きさだけど砂の下に住んでるからおっきくなったウバは人の目に映らなかったって言われてたりする不思議な虫です。主にこの虫が砂漠の問題であるアリ地獄や広がる洞窟の原因だったりします。今僕達が歩いている所はウバが作った洞窟なのか、守護神グレイシア様が作った道なのか……」
ミキはそう言ってはるか前方を歩いているエースを見る。
「エースさんなら知っているかも知れませんね。詳しい話しは彼に聞くといいでしょう。きっと面白いですよ。あとウバにはあまり手を出さない方がいいと思います。彼らはこの砂漠では比較的穏やかなんですが、一匹やっつけてしまったら群れで仇を取りにくるみたいなので……」
にっこりと笑ってミキは足を速めた。きっと興味が出たのだろう。エースの元へ足を進めた。
ミキの話を聞き終えてユーノはまたさらに恐ろしそうな顔でウバを眺めている。グライトはそんなユーノを気遣って声をかけてみる。
「まぁもうすぐつくだろうし、ユーノ虫苦手なら俺の腕掴んどくといいよ。それで気が和らぐなら……」
だが、グライトが言うまでもなく、ユーノは腕をきつく締めあげる様に掴んだ。心底苦手らしい。
「ちょっと、痛い……かな」
「ご、ごめん」
そのままグライトとユーノは足を速めた。遠くではエースが手招きをしていた。
◆
白い石で出来た扉を開けると、ぽっかりとただ空いているだけの穴が出てきた。その奥で一人の女性が椅子に座り、こちらの様子をうかがっている。
気の強そうな瞳、だが上品で明朗な雰囲気がそれを緩和している。エースは真っ直ぐその女性、グレイシアの元へ歩く。
「エース! 来てくれてありがとう。今日はお客様も一緒なのね」
グレイシアは手を合わせてグライト達をしげしげと眺める。
「この人たちはグレイシアに用があるみたいだよ。よかったら話を聞いてあげてくれないかな?」
グレイシアはエースの言葉に大きく頷き、グライト達の前へ立つ。
「初めまして。私はこのサブリア大陸を守る守護神、グレイシアです。で、話って何?」
グレイシアはそう言って小首を傾げた。
なんだかアメリアやダリダンとはまた違う、人に近い守護神だとグライトは少し思う。
ミキは前へ一歩足を踏み出した。
「僕からいいですか? 僕はこの歴史書を書いた人物を探しているんです。知らないですか?」
ミキがとりだしたのはライムに手伝ってもらって見つけ出した不思議な歴史書。相変わらず茶色の革表紙に金の文字でただ歴史書と書かれているだけだ。ミキは相当読みこんだのか、ところどころ紙が煤切れていた。
グレイシアはその歴史書をじっと見つめて考える様に瞳を揺らす。
「知ってる……はずなのに思い出せないわ。なんでだろう? エースは知ってる?」
「いいや、見たことないよ。その歴史書、そんな重要なものなの?」
二人して顔を見合せてミキを見る。ミキは少し肩を落として最後のページを開いた。
「ここ、空白なんです。この歴史書、まるで全部見て来たように書かれていいるんですが、何故か此処だけが真っ白で……で、この次のページ破り取られているんですよ。おかしいと思いませんか? 今まで細かいところまで詳しく書かれていたのにここだけないのか……そして何かを隠すように破られている……あ、僕は歴史とかそういうのが好きなので勝手に調べているだけなんですが、どうも腑に落ちない所があって……でも知らないなら仕方ありません。どうせ興味本位なので。ありがとうございました」
ミキはそう言って頭を下げる。
グレイシアは「気にしないで」とほほ笑み、それだけかと尋ねてくる。
グライトは手を上げて慌ててミキの後を継ぐ。
「あ、あと俺! 俺は秘宝を集めてるんだ。リーブル……黒い猫なんだけど今日はいないみたい。その黒い猫について行ったらモート大陸の守護神アメリア様に頼まれたんだ。七つの秘宝を集めなさいって……で、その秘宝、グレイシア様の所にあるはずなんだけど……譲ってもらえないですか?」
グライトはそう言って懇願するよう手を合わせた。
秘宝と言う言葉に、先に反応したのはエースだ。エースは眉間にしわを寄せてグライトを見る。
「そんな貴重なもの、譲ってくれって言われて譲れるわけないよ。アメリア様に頼まれたって言うのも疑わしいのに……」
そう言って首をふるエース。だがグレイシアは小首を傾げて何かを図る様にグライトを見ているだけだ。
少しの間、グライトの説得は続いた。頑なに渡さないと言うエース。何も言わず、ひたすらグライトとエースの口論を見守るグレイシア。
終わりのない話しに、とうとうグレイシアが口を開いた。
「私はいいんだけど……なにせ妹に頼まれたって言われちゃったら信じたくなるから。でもエースが納得いかないって言うならこういうのはどう? エースとグライト君で戦って勝った方の意見を聞き入れるっていう方法! このサブリア大陸、弱肉強食の世界……欲しいものは実力で奪い取って見せて?」
グレイシアは心底楽しそうにそう告げた。
グライトはうろたえる。エースはいかにも実力がありそうだ。カジノで二人の男を諌めた事もある。
グライトは不安げにミキ達を見た。
「それでいいなら頑張れグライト。後腐れなくて俺はいいと思う」
「ちょっと危険ですが……グライト君が決めるといいと思いますよ」
「そんな危ない事! グライトの代わりにボクが戦ってあげる! 怪我しちゃうじゃん!」
意見はバラバラだ。グライトはうーんと唸る。
エースはそれでもいいらしい。負けても勝ってもうらみっこなし、だが負ける気はないと言った様子だ。
グライトはグレイシアを見た。
「うーん……どうしてもそうじゃないとくれないんだよね?」
「そうね、そうなる。エースも準備万端みたいだし、後はグライト君の意思次第よ」
グライトはそう言われ、渋々と言った様子で頷く。
「わかった、じゃあそうするよ。でも俺の持ってる武器、リーブルいないとただのゴミだからなァ……お手柔らかにお願いします」
グライトはそう言ってエースに頭を下げた。
エースは笑顔で頷く。武器はグレイシアが貸してくれるようだ。
グライトはグレイシアの出してきた武器の中から比較的軽そうな細身の剣を選ぶ。それをもって少し振って手に馴染んだのか、エースと対峙することにした。
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.164 )
- 日時: 2014/03/17 01:31
- 名前: calgami (ID: AJl9c6xx)
グうわライトvsエースだと!?うわぁグライト勝てるかな?続きが気になるーー!!
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.165 )
- 日時: 2014/03/17 19:40
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
愛深覚羅さんへ
じゃどうとろでぃがついに対決ですか〜。はくりくんが一枚上手だったようで・・・でも、ろでぃも警官の一種ですからね−。下手するとぐらいとくんたちも捕まっていたかも・・・たぶん彼のことですからまたどこかで決闘しいているかもしれませんね!ろでぃの破天荒ぶりも最高です!本気を出したじゃどうが見てみたいですね!再登場も期待しつつ更新をたのしみに待っています
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.166 )
- 日時: 2014/03/17 21:05
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: bVlGyEWK)
>>calgamiさん
頑張って今考え中です!どっちを勝たせるか……ですね!
グライトに勝機はほとんど皆無に近いですがなんてったって相手は百発百中の猛者……どうするか……
>>モンブラン博士さん
薄利は一枚上手と言うか避けてただけですねww
多分力ではかなわないでしょうと私は予想する!
はい、捕まるというルートも考えてみたんですが捕まっちゃえば冒険終わっちゃうので私がこまります
と言う事で今回は逃げました!逃げるが勝ち!
本気出したジャドウさんを止めれる相手が出てくれば多分出しますよww力ランクで言えば上の方と言う意識が高いのでww
グライトに力をつけてほしい所ですが……力つけちゃった主人公ってチートかな、と思う所がありまして
まぁどうにか出したいですね!長く続く話の予定なのでアイディアの女神が私を見染めてくれればだしますね
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.167 )
- 日時: 2014/03/18 14:18
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: bVlGyEWK)
◆
何度か響く鉄と鉄がまじりあう音。耳をつんざく様な音は確実に勝敗を決めつけている。
グライトは疲れてきていた。
それというのも、エースが思った以上に強かったからだ。エースは主に拳銃で戦う。風の精霊と聞いていたグライトは、てっきり魔法で戦うものだと思っていた。
エースは息が上がっているグライトを見て畳みかけるよう拳銃を撃つ。グライトはそれを始め避け切れず、腕や足をかすめていたが、今はタイミングを掴んだのかうまく刀で薙ぎ払う。
「だんだんわかってきたの? でもまだまだ序の口だよ」
「えぇ……やっと掴んできたのに……!!」
グライトは悔しそうに前へ足を踏み出す。力強くエースの近くまで飛んで行き、思い切り刀を振りあげた。
「おっと……!」
エースは一瞬反応が遅れたがうまく利き手を守り、傷を最小限に抑えた。
「面白いねキミって。なんだか強くなってきているみたいだ。器用なのかな?」
「わかんない。でも力仕事なら村でよくしてたよ」
会話を交えつつ、両者攻撃は止めない。
エースがまた拳銃を放つ。グライトは刀でその弾を切りつつ、その弾が速くなっている事に気が付いた。
その事を疑問に思いつつも横から切り上げる。エースは簡単に避けて綺麗に着地し、攻撃した後で隙があるグライトにまた弾を飛ばした。グライトはその速さに避け切れず、まともに腕に食らった。左片腕がやられた。力が入らない。両手で持っていた真刀は、右片手で持つ事になる。
元々平均以上の力がないグライトは、真刀を両手持ちにして力を二倍にしていたのだが、これではそうもいかなくなった。
その上畳みかけるようにエースの拳銃の弾が強く、速くなっている。グライトはそれを感じ取り、一瞬焦りを見せた。
「……!! やっぱり速くなってる! って……え、なんで?」
首を傾げるグライトを、少しからかうようにエースは笑った。
「僕は風の精霊だよ? 弾の速度を上げる、そんなこと周りの風を使えば簡単にできる。そうだろう? 速度が上がれば攻撃力も自然と上がる。そういうこと」
グライトはそれを聞いて「え」と苦い声を上げる。顔もちょっとひきつっていた。
「でも僕の弾をうまく避ける人はグライト君が初めてかなぁ。なんか悔しい……だから手は抜かないよ」
エースはそう言って何発かグライトに向かって撃ちこむ。グライトはそれと同時にそこから横へ飛び退いた。
弾は見事グライトの立っていた場所に穴をあける。数を数えれば六発になるだろう。グライトはそれを見て苦笑いだ。
「安心するのは早いんじゃないかな?」
エースは挑発的にそう言った。その時にはもう次の六発が撃ち込まれていた。
「いっ……!!」
弾は見事グライトに当たる。腕、足、肩、それぞれ複数の弾が穴をあけた。
思わずグライトは倒れそうになるが、ぐっと耐え、苦笑いの後何を思ったのか噴き出した。口は「いいこと思いついた」とでも言っているように動いた。
だがエースはそれに気づかない。
「何がおかしいの? 痛すぎて頭がマヒした? 大丈夫、僕はこう見えても治癒魔法も得意だから、後で治してあげる。だからこの勝負、僕の勝ちでいい?」
そう労わるエースだが、グライトは返事をしない。代わりに力強い踏み込みが繰り出された。
エースの近くまできたグライトは思い切り腕を振り上げる。エースはそれを拳銃で受け止めようと構えた。
だが、気付けばグライトの姿は真上には無く、横にあった。低姿勢でエースを見上げるグライト、左手には懐から取り出したのだろう、折れた木刀が握られていた。
木刀はそのままエースの横腹に見事入った。エースは目を見開く。
「かはッ……!!」
勢いよく木刀で薙ぎ払われたエース、思わずその場に崩れそうになるが、力を込めて横に飛んだ。そして苦々しい顔でグライトを見る。
「やるなぁ」
しかしそれだけでは致命傷には至らない。グライトも撃たれた左手を無理矢理使ったせいか、血が噴き出していた。エースは弾を入れ直し、容赦無く二発撃った。
二発の弾はグライトの真刀を持っている右手と、機能が失われていなかった右足を貫いた。
真に受けたグライトは小さく呻く。
「……へへ、勝てる気しねぇー……」
グライトはそう言って足から崩れた。目はうつろだ。出血多量で意識も朦朧としている。
そんなグライトを見て、思わずユーノは駆け寄る。ミキとソラも後を続いた。
「グライト! 大丈夫か?」
「す、すとっぷ! それ以上グライトを傷つけたらボクが許さないよ!!」
「二人ともあまり雑に扱うと出血量が増えます」
ユーノとソラはグライトの肩を抱えた。ミキはそんな二人を落ち着かせる。
駆け寄った三人を見てエースは手を上げて力無く笑う。
「僕も悪人じゃないから瀕死の人間を畳みかけないよ……治癒してあげるよ」
エースはそう言ってグライトにゆっくり近づく。ミキは困り顔でグレイシアに視線を送った。
「仕方ない……勝者エース! 秘宝は渡せない」
グレイシアはそう言って審判のように赤い旗を上げる。ミキはそれを見てほっとし、エースに指示を促す。
「グライト君を横に寝ころばせて。ゆっくりだよ、ゆっくり……」
エースが治癒しようと手を伸ばした。グライトはうっすら目を開けてその手を静止させる。
「ま、まって……まだ、まだ戦える気がする……ここで諦めたら……」
「もう無理だよ、グライト君の体は動かない。ちょっとじっとしてて、すぐ治るから」
エースは起き上がろうとするグライトを無理矢理寝ころばせると、呪文を唱えた。黄緑色の光が傷口へと集まる。
それが数秒続いたと思ったら、グライトの体にあった無数の傷は癒えていた。
「……ふう、治った。戦った後の治癒魔法はきついな……」
エースは呟き、ぐっと体を伸ばした。パキパキと骨の音が小気味よく鳴る。
そんなエースにミキは疑問を投げかけた。
「やっぱり秘宝はグライト君に譲ってもらえないのですか?」
エースは困ったように笑う。
「やっぱり秘宝って言うのはさ、膨大な魔力があるわけでしょ? それにこのサブリア大陸に存在している秘宝は他の秘宝と違って魔力が強いらしい。まぁ広いサブリア大陸の形を全て見守っているんだから、当たり前だよね。そんな力の強い秘宝を、まだ力をしっかり扱えていないグライト君に託すのはちょっと不安だよ。せめて僕に勝てるようになったら託しても問題ないだろうけど……」
ねぇとグレイシアに視線を送るエース。グレイシアも頷いて困ったように笑顔を向けた。
ミキは「そうですか」と納得したように顎に手をやる。
「まぁいつでもおいでよ。僕とグレイシアはずっとここに居るから、リベンジにでもさ。遊びにでもいいよ。それに僕は強くなったグライト君ともう一度戦ってみたい。今度は僕もグライト君もお互い本気でね」
その言葉にユーノとソラは顔を見合わせて首を傾げる。
「グライト、本気だったよね? ボクにはそう見えたんだけど……」
「あぁ俺も。余裕は見えなかった」
そんな二人の少女にエースは笑顔を向けて言う。
「いや、グライト君はもっと強くなるよ。素質がある様に僕には見えたし、せっかくある秘宝の力を使っていなかったからね。秘宝って言うのは一個所有するだけでもかなり魔力と力を使うんだよ。そういうものなの。きっと秘宝の使い方をしっかり理解すれば僕なんて一捻りさ」
快活に笑うエース。いまいちわかっていないようなユーノとソラの顔。ミキは理解したのかうーんと唸っている。
数秒後、グライトは目を覚ます。自分の体に穴が無い事を確認し、驚きの顔をしていた。
そんなグライトにエースは優しく笑いかけて言った。
「グライト君。またリベンジまってるよ」
その言葉を合図に、グライト、ミキ、ソラ、ユーノの周りに砂煙が立ち込める。
砂煙はエースとグレイシア、そして周りの景色を包み込み、四人の視界をわるくする。
エースとグレイシアはお互い信頼を向けるようにほほ笑みあっていた。そこに親密な空気が流れているような気がするのは気のせいでは無いだろう。
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