複雑・ファジー小説
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- 【完結!】『“私”を見つけて』
- 日時: 2014/08/19 11:28
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
初めまして、マヒロといいます。
カキコで小説を書くのは二度目です。以前とは名前が違いますが…
そのときは完結できずに自然消滅してしまったので、今回はしっかりと完結させることを目標に頑張りたいと思います!
長ったらしいと私が持たないので、そんなに長くはないと思います。
中編くらいの量ですが、どうぞお付き合いください^^
※本編『“私”を見つけて』では、戸籍などに関して説明が入る文章があります。
ネットでつけた知識をもとに私が都合のいいように改変したものですので、フィクションということになります。
少し暗めの話になりますので、以上の要素が含まれていてもいいという方は下記のあらすじを読んでください。
【あらすじ】
エスカレーター式の高等学校に通う一之宮菫(15)
彼女がこの学校に通い始めたのは小学校からであった。しかし、それまでの記憶がない。
財閥夫婦曰く、交通事故のショックでそれまでの記憶を失ってしまったらしい。
事故にあうまでは内気な娘だったと聞く。
それまでの家族との思い出など、事故までの記憶は全てなくなっていた。
だが本人はそのことに全く不安や不満を持たず、今の幸せを楽しんでいたのだ。
——だがそんなある日、彼女の学校に男教師(23)が現れた。
そして彼は言った「君の記憶を探してみないか?」と。
毎日が幸せだがなにか刺激が足りないと思っていた彼女は、すんなりと男の手を取った。
【登場人物】
一之宮 菫(いちのみや すみれ)
一之宮 浩樹(いちのみや こうき)
一之宮 小梅(いちのみや こうめ)
五十嵐 鈴菜(いがらし すずな)
三宅 蓮(みやけれん)
九野 楓(くのかえで)
【目次】
プロローグ >>1
本編 >>2>>3>>4>>5>>7>>11>>13>>17>>18>>20
>>23>>24>>25>>26>>27>>28>>29>>30>>31>>32
>>33>>34>>37>>38>>39>>40
エピローグ >>41
登場人物イメージ画 >>10>>14>>19
140413~140819
- 『“私”を見つけて』01 ( No.2 )
- 日時: 2014/04/25 19:22
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
入学から一ヶ月程が経ち、クラスにも馴染めた私にはとても気の合う友人がいた。私とタイプは異なるものの、一緒にいて安心する。そんな友人だ。彼女の席は私の前であり、授業中や休み時間はほとんど一緒に過ごしていた。
艶やかな短い黒髪を揺らし、奥二重の瞳で私を見つめる彼女の名前は五十嵐鈴菜。いつも笑顔の可愛い女の子だ。
「菫ちゃん、今日ね、新任の先生が来るんだって!」
「この時期に新任の先生が来るなんて珍しいね」
「数学の千葉先生が産休入っちゃったからじゃないかなあ。男の先生だって言うから、イケメンだといいねっ」
「……良い先生だといいね」
この面食いめ。と思いながらも、顔立ちが良い人ならそれはそれで少々嬉しい気もする。私だって花の女子高校生なのだ、そんな淡い期待くらいはする。
教室はその話で持ちきりらしく、いつもより騒がしい。だが、その雰囲気を壊すように教室の扉がガラリと開いた。そこから出てきたのは担任教師と——色素の薄い髪を持ったメガネ男だった。
メガネ男は俗に言うイケメンで、クラスの女子が興奮したように再び騒がしくなる。担任教師が静かになるように注意すると、皆は文句を言いながらも静かになった。
「産休でお休みの千葉先生の代わりに来ました。このクラスの副担任になる三宅蓮です。よろしくお願いします」
手短に新任教師の紹介が終わると、特に連絡はなかったようでホームルームはすぐに幕を閉じた。一時限目は数学だ。三宅先生は数学担当らしく、この教室に留まって生徒に質問攻めを受けていた。
「本当にイケメン教師来たね! ふふっ、これから数学の時間が楽しみだよ」
「数学嫌いなのに、先生が変わったくらいで好きになる? どうせ三日もすれば慣れるよ」
単純な頭の持ち主である鈴菜を羨ましく思いながら、私はもう一度三宅先生に目を向けた。目鼻立ちが少しくっきりとしていて、日本人にはない美しさを持っている。だがその笑みはどこか不自然な感じがして、いくらイケメンで優しそうだといっても私は好きになれなかった。
***
実は中学三年生で書いたものを掘り起こしたものです
あ、今は高二なんですが;
だからちょっと変なところとか、辻褄があっていないところもあるとは思いますが、ご容赦ください^^
- 『“私”を見つけて』02 ( No.3 )
- 日時: 2014/04/22 17:49
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
翌日にはイケメン教師が来たという浮ついた話は校内中に広まっていて、三宅先生は皆の注目の的だった。彼が廊下を通る度に女子の騒がしい声が響き、やはり親友が言ったようにイケメン教師の威力は絶大だと思い直した。
そんな大人気先生様に、私は日誌を渡さなければならない。なんで私が日直の日に限って担任が出張なんだろう。それを知った友人たちが私の日誌を横取りしようとしたのはつい十分ほど前の話だ。
目的地である職員室に着く。私が扉を開くと同時に、内側からも扉が開かれた。
「わっ」
「あ、大丈夫ですか? ——って、一之宮さんじゃないですか」
「どうも。あの、これを届けにきました」
なんと職員室から出てきたのは三宅先生だった。手に持っていた日誌を早々と渡すと、今思い出したとばかりに目を丸くし、それを受け取った。
「日誌を持ってきてくれたんですね。日直お疲れ様です」
「いえ。じゃあ、私はこれで」
「あ、ちょっと待ってください」
そう引き留められて、私は上手く丸められて屋上に行った。
職員室から屋上までの数分、互いに黙って歩いていた。三宅先生は相変わらず笑み浮かべていて全く何を考えているのか読めない。なんでわざわざ屋上に移動するのかとか、今まであまり関わりのなかった私に何の用だとか、いろいろ考えても答えは出なかった。
そうしている内に、屋上に着いてしまった。三宅先生はフェンスに背を預けて、私の目を見た。
「君、六歳までの記憶が無いんだってな」
突然放たれた言葉に、心臓がドクンと大きく脈打った。三宅先生の喋り方や雰囲気が変わっていることなんて全く気にならないほど、何故か心の余裕がなくなっていた。
「なんで、そんなこと」
「俺は副業で探偵をしている。——君の記憶を探してみないか?」
「えっ……」
「気にならないのか? もしかしたらその記憶の中にとても大切な思い出があるかもしれないのに」
心地好い声で私を誘惑する三宅先生。彼の差し伸べた手に、私は恐る恐る自分の手を重ねた。
——私は両親の話でしか昔を知らない。今まであまり気にしていなかったけど、やはり自分の記憶として思い出を焼き付けたいという思いもあったのだ。もし、本当に記憶が戻るなら……この探偵さんと一緒に頑張ってみるのも、悪くないと思った。
***
最初は長めに01+02で掲載しようと思ったのですが、やっぱり短めに区切りました;
- 『“私”を見つけて』03 ( No.4 )
- 日時: 2014/05/24 20:20
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
記憶探しをすると決めてから、一週間が経った。とりあえず一番最後の記憶を三宅先生に教え、今のところ特に進展はないといった感じだ。というより、今の時期はそれどころじゃない。
何故ならもう二週間もしないうちに私たち一年生は初めての中間テストがある。生徒である私も、教師である彼も忙しかった。
「テストなんて嫌ー! なんで数学がⅠとAの二つもあるの?」
「なんでだろうね。まあ、一週間前になってから勉強すれば大丈夫だよ」
「そうかなあ?」
「ふふ、さあね」
私が曖昧な返事を返せば、鈴菜は不安な表情を見せた。コロコロ変わる表情が可愛いからついからかってしまう。今日の持ち物を確認すれば、今回のテストに出る教科の教科書やノートもルーズリーフも入っている。
じゃあ、一緒に勉強する? と聞くと、鈴菜は二つ返事で了承した。
◇
「——だから、ここはpじゃなくてqだよ。それにここの符号逆」
「ええ? なんで?」
「公式をよく見ればわかるよ」
善は急げ。ということで、約束を交わしたその日の放課後に私たちは二人きりの教室に残っていた。
まずは鈴菜の苦手科目の数学から取り掛かったのだが、もうかれこれ一時間半は経っている。理解は早いと思うのが、なんせケアレスミスが多い。本当にちょっとしたことなのに勿体ない。そう思いながら懸命に教えていたことにより、なんとか試験範囲の半分以上の課題が終わった。
「あー、菫ちゃんがいて良かったー」
「大袈裟だよ。そろそろ帰ろうか」
「うん」
そうやって帰る準備をし始めた時、教室の扉が開いた。担任の教師からは戸締りを任されたので、わざわざ教室に来る人なんていないはず——
「あ、レンレン!」
「五十嵐さん、一之宮さん、残って勉強していたそうですね。もう帰るんですか?」
「うん。聞いてよ先生、あたし二次方程式わかるようになったんだよ!」
鈴菜は三宅先生に懐いているらしく、今日の成果を嬉しそうに報告した(ちなみにレンレンというのは三宅先生のあだ名だ)。そんな彼女を見ていれば、教えた甲斐があったというものだ。私はその間にいそいそと身支度を整えた。
「菫ちゃんの教え方上手なんだ!」
「一之宮さんが? それは、今回のテストの結果が楽しみですね」
「あはは、一応数学が得意なので」
そうやって少しだけ三人で世間話をしてから、私たちは帰ろうかと声をあげた。三宅先生は生徒の前と探偵の仕事をしている時では雰囲気が違う。私はそのギャップにまだ慣れていなくて、出来れば校内での会話は避けたかった。何よりこの記憶探しの件が他者に漏れるのは嫌なのだ。鈴菜もこれに例外ではない。
しかし、私のそんな思いを三宅先生が知る由もなく、堂々と私を呼びとめた。
「一之宮さん、そういえば七尾先生が呼んでいましたよ」
「ええ? 菫ちゃん何か悪いことしたのー?」
「……身に覚えはないよ。でもごめんね、先帰ってて」
「うん、また明日ね!」
七尾先生とは私たちのクラスの担任教師だ。恐らく七尾先生が呼んでいたというのは嘘だろう。何か情報でも掴んだのだろうか。
鈴菜はあっさりとこの嘘を信じて帰った。
- 『“私”を見つけて』04 ( No.5 )
- 日時: 2014/04/22 17:52
- 名前: マヒロ ◆eRcsbwzWZk (ID: g2Ez2oFh)
教室には私と蓮さんの二人きりになる。彼は相変わらず胡散臭い笑顔を貼って、口を開いた。
「こんな時間まで居残りなんて真面目なんだな、菫さん」
「何ですか、わざわざ嘘までついて」
「少し聞きたいことがあってな。彼女——五十嵐さんとは、いつから仲が良いんだ?」
私は意外な質問に驚いた。記憶探しの件に関係のある話なのかと彼の目を見つめたが、何も読み取れない。
関係あろうがなかろうが隠すほどのことでもないので、素直に質問に答えた。
「入学式からです。席が隣だったので、それがきっかけで」
「じゃあこの高校に入学してから知り合ったのか?」
「はい。多分中学までは廊下ですれ違ったりしていたんでしょうけど……」
何故そんなことを? そう聞くと、三宅先生は曖昧な笑みを浮かべた。言うつもりがないんだろう、少し間が空いてから話を切り替えられた。
「そんなことより、せっかく仲良くなったんだから“三宅先生”って呼ぶのは他人行儀だと思わないか?」
「そんなこと思いませんけど」
「せめて二人で話をするときには先生って呼ばないで……そうだな、“蓮さん”って呼んでくれよ」
余計彼の考えていることがわからなくなった。なんなら“三宅さん”と呼ぶだけで十分ではないのか。わざわざ名前で呼ばなければならないのか。
「必要性を感じないので却下です」
「あ、その敬語も外して。記憶探しなんていつ終わるかわからないんだ、ついでに仲良くしようじゃないか」
「……記憶探しの期限は決まっています。あなたがこの学校に赴任している期間だけです」
「じゃあ千葉先生が帰ってくる年明けまでってことか? 一年もないじゃないか。それだけの期間で記憶探しをしようって? それは甘いんじゃないか、菫さん。本当は君、記憶なんて探したくないんだろう」
最後の問いは、確信めいたものだった。何故こうもこの教師は他人のことがわかるのだろうか。
実は記憶探しの話を持ち掛けられたときに、私は迷っていた。何故かとても嫌な予感がするのだ。記憶をなくす前の私が思い出してと叫んでいても、もう一人の誰かが全てを思い出すなと叫んでいるようで、思い出すのが、怖い。もしかしたら思い出さなくてもいいような嫌な記憶なのかもしれない。
「……意地悪しすぎたか。まあ、当人である君がそう言うなら俺は無理矢理続けることなんて出来ない。でも忘れないでくれよ? 君が他人に知られたくない情報を俺は持っていて、今はその情報を学園中に流せる立場なんだから」
「っ、脅しですか!?」
「いいや、そんなつもりはない。ただ、俺は君と仲良くなりたいだけだ。これからの為にも、な?」
「……わかったよ、蓮さん」
「うん、いい子いい子。賢い子は好きだぞ」
蓮さんは満足げに私の頭を撫でた。
そこで私は気付いた。私に最初から選択肢は存在しなかったのではないかと。私が記憶探しを断ったとしても、彼は今やったように私を脅して強制的に参加させるつもりだったのではなかろうか。ただ、そこまでして他人の記憶探しをする理由はわからない。彼はまだ私に話していない、重要な秘密があるのでは——と私は悟った。
***
静かーに物語が進んでおります;
- Re: 『“私”を見つけて』 ( No.6 )
- 日時: 2014/04/22 21:26
- 名前: 未来 (ID: ???)
好きなタイプ最高だよ