複雑・ファジー小説
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- 心を鬼にして
- 日時: 2016/11/03 22:09
- 名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)
心に強い信念を持ち、だいじなもの、守りたいものをもつ者。
その者たちは、心に、≪鬼≫を持つと言われている。
その≪鬼≫を退治し、人間界を暗くさせようとする男、≪桃太郎≫とその一行
今宵、鬼と桃太郎との戦いが始まる
さぁ、心を鬼にして。
−−−
初めましてか何度目まして、凛太郎です
今日から書いていく作品は、鬼とか桃太郎とか、超有名昔話「桃太郎」の世界観を多少モチーフにしたバトル物の作品です
バトル物は今まであまり書かなかったので、ぎこちない部分があるかもしれません
でも、楽しんで読んでいただけるよう精一杯頑張ります
それでは、よろしくお願いします
目次
第1話「燃えろ熱血!赤鬼誕生」>>001>>002>>003>>004
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」>>005>>006>>007>>008
第3話「一緒に戦えない?青鬼の秘密」>>009>>010>>011>>012
第4話「青鬼の復帰!始動する期末テスト」>>013>>014>>015>>016
第5話「先輩の夢を叶えよう!県大会の始まりだ!」>>017>>018>>019>>020
第6話「魔の修了式!赤鬼、新しい力!」>>021>>022>>023>>024
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」>>025>>026>>027>>028
第8話「夏だ!海だ!合宿だ!サッカー部地獄の合宿開始!」>>029>>030>>031>>032
第9話「正体がばれちゃう!?鬼の決断!」>>033>>034>>035>>036
第10話「先輩の信念!緑鬼誕生」>>037>>038>>039>>040
第11話「夏の出会い!8月に咲く恋の花」>>041>>042>>043
- Re: 心を鬼にして ( No.24 )
- 日時: 2016/07/27 22:03
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第6話「魔の修了式!赤鬼、新しい力!」4
「どぉりゃああああああああああああッ!」
俺は刀に炎をまとわせ、鬼に切りかかった。
しかし、鬼の体は鋼のように固く、甲高い金属音と共に刀に僅かにヒビが入る。
すぐに鬼の腕に顔面をぶん殴られ、俺は地面を跳ねた。
「ガハッ・・・・・・!」
口から声が漏れる。
なんとか近くに刀が落ちているのが見えるが、脳震盪にでもなっているのか、上手く体に力が入らない。
「龍斗ッ!」
すぐに氷空が叫び、拳銃を構えた。
そこに鬼が迫り、氷空の顎を蹴り上げた。
俺より一回り小さな体は上空まで吹き飛び、やがてグラウンドにぶち当たる。
「そ、氷空ッ!大丈夫か・・・・・・ッ!?」
「ゲホッ!あ、ぁ・・・・・・ッ!大丈夫だ」
俺は地面を這い、氷空に近づいた。
所々が傷だらけで、頭からは血を流している。
致命傷、ではないかもしれない。でも、致命傷じゃないだけだ。そして、俺も。
その時、足音が迫ってきた。見ると、鬼が少しずつ近づいてくるのが分かった。
「はっははは!鬼の覚醒者も、これで終わりだなぁ!」
「・・・・・・おい。よく考えたらおかしくないか?お前たち桃太郎とやらの部下で鬼を倒す立場なのに、鬼を利用するとか、プライドどうなって・・・・・・」
「お前、自分が今どういう立場なのか分かってんのか!?」
なんとなく時間稼ぎで言ったら、クドツはマジギレしてきた。
だって、おかしいじゃないか。鬼を退治する立場が鬼生み出してどうするんだっていう。
しかし、そんなことを気にする立場じゃないのは理解している。
だって、もう目の前に鬼が迫ってきている・・・・・・。
「氷空。お前は逃げろ・・・・・・」
「は?何言って・・・・・・逃げるなら、せめてお前も・・・・・・」
「俺は戦うッ!たとえ、この命尽きようともなぁッ!」
叫びつつ、フラフラと立ち上がる。
しかし、どこか痛めたのか、すぐに膝をつく。
目の前には、すでに鬼が拳を振り上げてきていた。
「りゅーとに手を出すな!」
その時、赤い塊が目の前に出てきた。
それは鬼の拳を必死で止めている。
「アカト・・・・・・?」
「そら!りゅーとを連れて早く逃げるアカ!」
アカトの小さな体じゃ、鬼の拳は受け止めきれなかった。
多少は彼の力もあったのだろうが、拳は俺の鼻先を掠め、アカトを地面に叩き落した。
「アカトッ!」
俺はすぐに彼の小さな体を抱き上げた。
アカトは俺の顔を見て、ニッと笑った。
「りゅーと・・・・・・無事で良かった・・・・・・」
「馬鹿ッ!お前は鞄の中に入って俺等の戦いを見てりゃいいんだよッ!無理に戦うなよ!」
「でも・・・・・・りゅーとやられそうだったから・・・・・・」
「お前・・・・・・」
俺は思い切りアカトの体を抱きしめた。
その時、俺とアカトの間に赤い光が出てきた。
「龍斗ッ!それは・・・・・・?」
「分からねぇ」
その光はそのままヒビの入った俺の刀に近づき、やがて刀全体を包み込む。
かなり眩しかったので、俺はつい目を細めた。
しばらくして光が収まると、そこには刃が赤くなった刀があった。
「刀が・・・・・・進化した・・・・・・?」
「グオオオオオオオオオオオオッ!」
鬼の雄たけびに、俺はなんとか立ち上がり、刀を構えた。
すると、少しずつ力が湧き上がってくるのが分かった。
「この感覚・・・・・・ッ!」
俺は一気に踏み込み、刀を振り上げた。
業火に包まれた刀を振り上げ、鬼に振り下ろした。
燃え尽きる鬼を見ながら、俺は地面に足を着いた。
「龍斗ッ!大丈夫か・・・・・・?」
「りゅーと!」
「あぁ、大丈夫だ。にしても、この力・・・・・・」
真っ赤になった刀を眺めながら、俺はポツリと呟いた。
氷空は俺が持つ刀を見て、息をつく。
「まぁ、これに関してはもっと知っている人物がいるしな。今は、修了式だ」
「そうだな。行こう!」
俺たちは変身を解き、体育館に向かった。
そして俺たちの日常は、夏休みに突入した。
- Re: 心を鬼にして ( No.25 )
- 日時: 2016/08/03 21:01
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」
「ふむ・・・・・・」
僕は顎に手を当てつつ、テーブルに置かれた赤い刀を眺める。
今まで普通の刀だったのに、今の刀は刃が深紅に染まり、よく見ると、赤の濃淡や、オレンジや黄色を少しずつ使って炎の模様を細かく彩られていた。
「なぁー。それが何なのか分かるか〜?」
「さぁ・・・・・・分からないな。というか、ちゃんとした機械があるわけじゃないのに、細かいこととかが分かるわけないだろ?」
「氷空でもダメかぁ〜・・・・・・」
龍斗はそう言って肩を落とす。
ちなみに、龍斗の格好は鬼の姿だ。刀を出すためだけに変身してもらった。
僕は刀に手を伸ばし、刃を指でなぞってみた。
「おいおい。指とか切るなよ〜?お前たまに鈍くさいんだから」
「酷い言い方だなぁ。注意していればそんなことあるわけ・・・・・・」
龍斗に返事していた時、指を切ってしまった。
割と傷は浅いが、血が出てくる。
「あーもう、何やってるんだよ!」
龍斗は慌てて絆創膏を持ってくる。僕はそれを貼った。
少し絆創膏が赤く染まったが、その後は特に何も無い。
「そらはドジだアオ」
その時、背後から声がしたので振り返ると、手乗りサイズの青鬼が宙を漂いながら僕を見ていた。
僕はつい、ムッとしてしまう。
「なんだよ・・・・・・?いつも餌の時間以外はロクに話さないのに、妙に僕のこと分かったような口叩くじゃん」
「別に、今の状況見れば誰でもそう思うアオ」
「ぐ・・・・・・ッ!」
思えば、生まれて初めて論破なんてされたかもしれない。
僕達とのやり取りを龍斗とアカトが苦笑いしながら見ている。
その時、どこからか階段を上がってくる音が聴こえた。
「母さんか!?なんで・・・・・・」
「ちょっ、龍斗!早く変身解いて!僕はアカトと、えっと・・・・・・とにかくこいつら隠すから!」
僕は龍斗に指示を出しつつ、速やかにアカトと青鬼を回収し、背中の後ろに隠す。
龍斗は慌てて「鬼は外、服は内」と呟いた。
「龍斗〜?声聴こえたけど、誰か来てるの〜?」
それとほぼ同時に、龍斗の母親が入ってくる。
綺麗な茶髪の長髪に、整った顔立ち。
僕の記憶ではそこそこの年齢のハズだが、それを感じさせない若さ。
ふむ、相変わらず龍斗の母親は、美人だ。
「あ・・・・・・お邪魔してます〜」
「あら〜!氷空君お久しぶり〜!元気にしてた?」
「えぇ。おかげさまで」
「母さん!勝手に人の部屋入ってくるなよ〜!」
龍斗の言葉に、龍斗の母は「あらあら」と、おばさんみたいな声を出した。
いや、年齢的におばさんではあるのだろうが、見た目が若すぎてそれを忘れてしまうのだ。
「それじゃあ、少し寝てからまた出るから」
「はいはい。分かったよ」
龍斗母が出ていくのと同時に、龍斗はハァ〜とため息をついた。
僕はすぐにアカトと青鬼を放す。
「全く、いつも帰ってこねぇくせに、なんでこういう時だけは帰ってくんだよ・・・・・・」
「それが母親ってものじゃない?」
僕の言葉に、龍斗は「たしかになぁ」と同調した。
「寂しい時は帰ってこねぇくせに・・・・・・」
その時、僕にとってかなり聞き捨てならない言葉が聴こえた。
寂しい時?龍斗に、寂しい時なんてものがあるのか?あの龍斗だぞ?
「へぇ〜?龍斗にも寂しい時なんてものがあるんだ?」
「んなッ!?ちが・・・・・・ッ!さっきのは・・・・・・ッ!」
「それじゃあ、刀の調査を続けようか。ホラ、変身して」
「んがぁッ!」
龍斗の奇妙な声に、僕は笑い声をあげてしまった。
その時、妙に視線を感じた。振り返ると、青鬼が僕のことを見ていた。
「ん?何か用?」
「え?・・・・・・いや、なんでもない」
青鬼はそう言うと目を逸らした。
「・・・・・・変な奴だな」
僕はポツリと呟いた。
- Re: 心を鬼にして ( No.26 )
- 日時: 2016/08/04 21:40
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」2
「じゃあ、お邪魔しました」
「おう。また明日、部活でな」
龍斗はそう言って手を振る。僕も振り返した。
十分ほど歩いて家に帰ると、鞄の中から青鬼を出した。
彼はフワフワと浮かぶと、唐突に僕の机の上に座った。
「おい、何やってんだよ。そんなところに座ってたら、勉強できないだろ?」
「なぁ・・・・・・拙者達って、仲良くないよなぁ」
突然の一言に、僕はつい、「はぁ?」と言ってしまった。
確かに僕と彼は仲良くない。とはいえ、犬猿の仲というわけではないのだ。
ていうか、コイツの第一人称「拙者」なのか。忍者か?
「まぁ、仲良くもないし、悪くもないって感じだよな。それがどうかしたのか?」
「もしかしたら、あの新しい力を出すには、鬼と人との絆が大事になるんじゃないかと思ったからな」
「鬼と人との・・・・・・絆?」
僕は勉強道具を出しながら首を傾げた。
今更絆とか言われてもなぁ?僕は冷静に青鬼をどかしつつ、「気が向いたらな」とだけ言ってやる。
「気が向いたらじゃ遅いアオ!また強い敵が出てきたらどうするつもりだアオ!」
「と言っても、人外生物と仲良くしろといきなり言われても困るしなぁ」
僕はそう言いつつ、数学の問題集を開いた。
脳が勉強モードに切り替わった瞬間、僕の中で一つのアイデアが浮かんだ。
僕は青鬼を掴むと、笑って見せた。
「お前、この町のこととかよく知らないだろ?」
「え?まぁ、そうだけど・・・・・・」
「じゃあ、付いて来いよ。僕が案内してやる」
「あ、案内・・・・・・?」
困惑した様子の表情を浮かべる青鬼に、僕は荷物を軽くまとめながら言ってやる。
「まぁ、デートだよ。恋愛も友情も、相手のことを深く知るには、二人きりで出かけるのが一番だよ」
僕は薄手のパーカーを羽織ると、フードの中に青鬼を入れてやり、その下から滑り込ませるようにリュックを背負った。
そして、家の車庫から自転車を引っ張り出すと、漕ぎ始める。
−−−
「また負けちまったのかよ」
黄色いヨーヨーで遊びながら、キモンはぼやくようにクドツに言った。
クドツは軽く肩を揉むと、「うるせぇな」と煙たげに言った。
「まさか、変な力まで使えるとはな。よく分からない技使われて、倒されたよ」
「もう、あの餓鬼どもは計算で測れる強さじゃないってことか」
キモンはそういうと、器用にヨーヨーを回し、空中に放ってキャッチした。
「まぁ、ジーケが来るまでの時間稼ぎってところか。アイツが来れば、俺たちは必要も無くなるからな」
「それまでに倒せれば、桃太郎様は俺たちのこともちったぁ見直してくれるだろ」
キモンはテーブルにヨーヨーを置くと立ち上がり、息をつく。
「俺様ももう少し、頑張ってみるかな・・・・・・」
- Re: 心を鬼にして ( No.27 )
- 日時: 2016/08/05 22:36
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」3
しばらくして自転車を止めると、僕は青鬼に「着いたぞ」と言ってやる。
青鬼は恐る恐ると言った様子で僕の肩越しに僕の視線を追う。
そこにあったのは・・・・・・———真っ青な海だった。
「これは・・・・・・」
「海だよ。もう夏だからな、たまにはこういうのも良いだろ?」
とりあえず、他に自転車が留まっている辺りに自転車を留め、砂浜に行った。
柔らかい砂浜を歩いてしばらく行くと、人気のない岩場のような場所に着いた。
僕は青鬼を肩から掌の上まで持ってくると、岩に腰掛けた。
「綺麗だろ?僕、結構お気に入りなんだよね、ここ」
「あぁ。すごく・・・・・・大きいし・・・・・・綺麗だ・・・・・・」
青鬼は、目を丸くしながらそう言う。
僕は一度青鬼を膝の上に置き、リュックを下ろすと、中からコーラの入ったペットボトルを取り出し、ふたを開ける。
プシュッと音を立てて、自転車の震動が伝わっていたのか、泡と液体が微量噴き出してくる。
それをズボンでふき取りつつ、キャップの中にコーラを注いだ。
そのコーラも、また零れてしまい、僕のズボンを濡らした。
僕は零さないように慎重に、青鬼にキャップを渡す。
「これは?」
「コーラ。美味しいぞ」
僕はそう言いつつ、ペットボトルに口を付けて一気に4分の1ほど飲み干す。
口にシュワシュワした感覚が走り、少し遅れてコーラの味が広がる。
見ると、青鬼はキャップに口を付け、チビチビと飲んだ後で、顔をしかめた。
「そら。これなんか、辛いぞ。喉の奥が変な感じだ」
「辛い、か・・・・・・?甘くて美味しいと思うけど、まぁ、好き嫌いとかあるからな」
僕はそう笑ってやりつつ、海を見た。
「僕の名前の由来ってさぁ・・・・・・この海なんだって」
「え?そら、なのにか?」
「僕の両親、変わってるんだよ。僕が生まれた家って、元々海がよく見える場所だったんだよね〜・・・・・・あ、ホラ、あそこ」
僕はそう言いつつ、少し遠くにある高台の上の一ヶ所を指さす。
そこには、ホテルが建っていた。
「オーシャンビューのホテル建てるからって、買収されて追い出されちゃった」
「おーしゃんびゅー?」
「海がよく見える部屋のあるホテル、とでも言うのかな。僕もよく分からないんだけど」
僕はそう言いつつ、コーラを少し飲む。
口の横から垂れたコーラを手の甲で拭いつつ、「んで、名前の由来ね」と話を続ける。
「僕が生まれた日、その日はすごく良い天気だったんだって。それで、海に青空が綺麗に映って。だから、無限に続く空を写し出せるくらいに大きな海のように、広い心を持ってほしいって」
「でも、そらって漢字で書くと、氷に空、だろ?海はどこに・・・・・・」
「氷って、水に点を足したようなものだろ?だから、海の代わり」
「よく分からないぞ・・・・・・」
青鬼はそう言って、コーラを一飲みした。
苦手って言う割に飲むじゃん、と言おうと思った時、波がバシャッとかかった。
僕も青鬼もビショビショになり、青鬼のコーラはキャップごと攫われていた。
「あぅ・・・・・・そら、コーラが無くなっちゃったぞ・・・・・・」
「また分けてあげるよ。それより、濡れたし、もう帰るか」
僕はリュックを背負い(防水で良かった)、青鬼の体を持って岩の上を歩いて砂浜に出る。
スニーカーの中身もグショグショになっていて、正直気持ち悪かった。
「そういえば、コーラ嫌いって言ってた割には、ちょっと飲んでたよね。どういう心境の変化?」
気持ち悪さを紛らわすために、僕は青鬼に聞いてみた。
彼はしばらく考えた後で、答える。
「拙者は・・・・・・そらのことは、何も知らなかったアオ」
「まぁ、そうだな」
「今だって、まだ知らないことだらけ。でも、折角そらの鬼として生まれたんだから、そらともっと、仲良くしたいアオ」
青鬼の言葉に、僕はしばらくポカンとしてしまった。
「そうだよなぁ・・・・・・この名前みたいに、僕も、人外生物を受け入れる心の広さを持たなくちゃ、な」
僕が笑うと、青鬼は嬉しそうに目を輝かせた。
「あっ、そういえば、拙者の名前をまだ言ってなかったな・・・・・・拙者は」
「おうおう。鬼少年が一人でこんな所歩いてらぁ」
声がした方向を見ると、たしか、キモン、とか言ったか?金髪の男が、立っていた。
「一人じゃない!」
僕はつい叫んでしまった。
それを聞いたキモンは視線を動かし、僕の手の中にいる青鬼に目を向けた。
僕は咄嗟に彼を背中に隠した。
「はははっ!まさかお前、その鬼を戦力に数えるつもりか!」
嘲笑するキモンに、僕の中で何かが吹っ切れた。
僕はすぐに青鬼を放し、小声で「早く逃げて。ていうか龍斗を呼んできて」とだけ言い、左手を構えた。
キモンは辺りを見渡すと、ちょうど海から上がって来た男に丸い物体を食べさせ、黒い鬼を出現させた。
正直、僕一人で勝てるわけない・・・・・・。でも、龍斗が来るまで時間稼ぎをしないと!
空が紺色に染まる時には、僕は変身を終え、銃を構え鬼に向かって突進していた。
- Re: 心を鬼にして ( No.28 )
- 日時: 2016/08/06 18:02
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」4
「ガハァッ!」
岩に背中を打ち付け、僕の口からは息が漏れた。
当たり前とでも言うべきか、僕はあの鬼に敵うはずもなく、それでもなお立ち向かおうとしている。
そんな僕は馬鹿か?あぁ、馬鹿だ。勝てるわけがない敵に、本気でぶつかるなんて、馬鹿で阿呆でしかない。
でも、仕方がないだろう?逃げることもできないし、戦うという選択肢しかないのだから。
僕はなんとか立ち上がり、拳銃を向ける。
「無駄無駄無駄ァッ!」
しかし、なんとか僕が撃った銃弾は弾かれ、顔面をぶん殴られた。
僕の体は吹き飛ばされ、砂に塗れる。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・うぐッ・・・・・・」
それでもまた、なんとか立ち上がる。
顔を上げると、黒い鬼が金棒を担いで近づいてきていた。
「おォ・・・・・・らァッ!」
僕はなんとか突進し、体を鬼にぶつける。簡単に言えば、体当たりだ。
もちろん弾き飛ばされ、さらに砂浜を転がった。
顔を上げると、そこに鬼の金棒が飛んできていた。
顔面を殴られ、ついには海に突っ込んでしまった。
「さっさと諦めて倒されてくれりゃいいのによぉ」
「そうしたら・・・・・・お前は僕の鬼を、殺すんだろ!?」
「まぁ、そうだな」
ニヤリと笑って言うキモンに、僕はすぐに立ち上がり拳銃を構えた。
しかし、その拳銃は金棒で弾かれ、砂浜を転がる。
慌てて引き寄せると、そこにはヒビが入った拳銃があった。
「ッ・・・・・・クソッ・・・・・・」
僕は唇を噛みしめる。
ただでさえ絶望的な状況だったのに、これじゃあもう・・・・・・勝てないじゃないか・・・・・・。
目の前には、巨大な、漆黒の鬼。拳銃は、二丁の内一丁はヒビが入った上に、引き金がいかれて銃弾がでない。
「こんなの・・・・・・勝てるわけ・・・・・・」
弱音を吐きそうになった時だった。
突然目の前に、小さな影が躍り出る。
僕は咄嗟に顔を上げた。青鬼だった。
「なんで・・・・・・お前が・・・・・・ッ!?」
「そらには絶対、指一本触れさせない!」
青鬼の言葉に、黒い鬼は一度金棒を止めた。
しかし、すぐに動き出し、青鬼を殴ってしまった。
砂浜をバウンドする青鬼に、僕は慌てて駆け寄った。
「おいっ!何やってんだよ!龍斗は・・・・・・ッ!」
「りゅーと達は、すぐ、来る・・・・・・でもッ!そらは下手したら、もうすぐ倒されちゃうじゃないか!」
青鬼の言葉に、僕の胸は痛んだ。
僕が弱いせいで・・・・・・彼に無理をさせてしまった・・・・・・。
僕に、龍斗みたいな力がないから・・・・・・ッ!
「ごめん・・・・・・ッ!弱くて・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ッ!」
僕は青鬼の小さな体を抱きしめた。
その時、僕と青鬼の体の間に青く光る。
「これは・・・・・・まさか!」
その光は僕の拳銃を包み込み、やがてその拳銃は、青いものに変わる。
僕は一度青鬼を砂浜に寝かせると、黒い鬼に向き直る。
「まさか・・・・・・新しい力か・・・・・・ッ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
僕は叫び、拳銃を向けた。
引き金を引くと、銃口からは青い光が放たれ、やがてそれは空色の龍へと変わる。
二匹の龍が黒い鬼を包み込み、やがて大きな氷の塊が出来上がる。
僕が拳銃をしまうのとほとんど同時に、それは砕け散った。
「氷空ッ!」
その時、背後から声がした。
振り返ると、龍斗とアカトがこちらに向かって走って来ていた。
僕は慌てて「鬼は外服は内」と呟き、変身を解くと、青鬼を抱き上げて、龍斗の方に向かった。
「氷空!大丈夫か?」
「あぁ。僕も、多分コイツも大丈夫かな」
僕はそう言いつつ、青鬼の体を目の高さまで持ち上げて、龍斗に見せる。
その時、青鬼はハッと顔を上げた。
「あれ・・・・・・ここは・・・・・・?」
「あ、目覚めたんだ。おはよう」
僕の言葉に青鬼は僕を見て、キョトンとした。
その後、僕は自転車を引きながら、頭に青鬼を乗せて、帰路につく。
「でもさー、あの黒い鬼倒せたってことは、お前の新しい力手に入れたのか?」
「あぁ、うん。こいつのおかげでな」
龍斗の言葉に、僕は頭の上に乗せた青鬼を指さしながら言った。
その時、ふと思う。結局、コイツの名前聞いてないな。
「そういえば、結局お前の名前、なんなんだ?」
僕が聞くと、青鬼はしばらく黙った後で、「・・・・・・ヤ」と呟くように言った。
「え?なんて?」
「アオヤだよ!何度も言わせるな!」
「いやー。だって声小さかったし〜」
僕が茶化すように言ってやると、アオヤは照れたように僕の頭をポカスカと殴る。
それを見た龍斗とアカトは笑う。
アオヤはそれが恥ずかしかったらしく、すぐに僕の濡れた髪の毛を掴んで黙った。
僕はそれが面白かったので、彼の体を軽くつついてやった。