複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 心を鬼にして
- 日時: 2016/11/03 22:09
- 名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)
心に強い信念を持ち、だいじなもの、守りたいものをもつ者。
その者たちは、心に、≪鬼≫を持つと言われている。
その≪鬼≫を退治し、人間界を暗くさせようとする男、≪桃太郎≫とその一行
今宵、鬼と桃太郎との戦いが始まる
さぁ、心を鬼にして。
−−−
初めましてか何度目まして、凛太郎です
今日から書いていく作品は、鬼とか桃太郎とか、超有名昔話「桃太郎」の世界観を多少モチーフにしたバトル物の作品です
バトル物は今まであまり書かなかったので、ぎこちない部分があるかもしれません
でも、楽しんで読んでいただけるよう精一杯頑張ります
それでは、よろしくお願いします
目次
第1話「燃えろ熱血!赤鬼誕生」>>001>>002>>003>>004
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」>>005>>006>>007>>008
第3話「一緒に戦えない?青鬼の秘密」>>009>>010>>011>>012
第4話「青鬼の復帰!始動する期末テスト」>>013>>014>>015>>016
第5話「先輩の夢を叶えよう!県大会の始まりだ!」>>017>>018>>019>>020
第6話「魔の修了式!赤鬼、新しい力!」>>021>>022>>023>>024
第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」>>025>>026>>027>>028
第8話「夏だ!海だ!合宿だ!サッカー部地獄の合宿開始!」>>029>>030>>031>>032
第9話「正体がばれちゃう!?鬼の決断!」>>033>>034>>035>>036
第10話「先輩の信念!緑鬼誕生」>>037>>038>>039>>040
第11話「夏の出会い!8月に咲く恋の花」>>041>>042>>043
- Re: 心を鬼にして ( No.4 )
- 日時: 2016/06/14 18:23
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第1話「燃えろ熱血!赤鬼誕生」4
「龍斗、龍斗!」
声が聞こえる。俺はゆっくり目を開けた。
そこには、心配した様子の健二がいた。
「健二・・・・・・俺・・・・・・」
「お前、こんなにボロボロになってまで化け物追い払うなんて、すげーな。部室とかもほとんど被害なかったし、お前どうやって追い払ったんだ?」
あれ?と、俺は疑問に思う。
あの化け物は夢じゃなかったのか?でも、たしかに俺は怪我してるし、でも部室も爆散していたような気がする。
俺は恐る恐る自分の右手の甲に目を向けた。
そこには、鬼を模したような奇妙な紋様がハッキリクッキリとそこにあった。
「まさか・・・・・・夢じゃない・・・・・・?」
「何言ってるんだ?しかし、怪我してて焦ったけどこれなら数日で退院できそうだって先生言ってたぞ。良かったな」
「あっそう・・・・・・」
俺は曖昧な返事しか返せない。
あの化け物や、鬼になったりとかが、夢じゃないなんて・・・・・・。
俺はしばらく健二と話していたが、しばらくして彼は帰った。
もう外は真っ暗。俺みたいに怪我しないといいけど。
「にしても・・・・・・結局あれはなんだったんだ」
俺はベッドに仰向けになり、天井を見上げる。
真っ白な天井。それを見て、ため息を漏らした時だった。
目の前に、真っ赤な物体が現れた。
「あれは桃太郎一行の一人のキモンだアカ」
「うわぁ!?」
夢に出てきた(?)赤鬼だった。
急に現れるものだから、俺は驚いて急に起き上がってしまい、ソイツに頭突きしてしまう。
赤鬼は「痛いアカぁ・・・・・・」としばらくおでこを押さえていたが、やがてキリッと顔を上げると、俺の腹の上に乗り、正座をする。
「オイラの名前はアカト。よろしくアカ」
「あ、よろしくお願いします・・・・・・?」
俺も自己紹介するべきかと思ったが、化け物の前で一回堂々と名前名乗ったし、さっきも「りゅーと」と呼んできたので、多分いらないだろう。
アカトとやらは、コクッと頷き、姿勢を正す。
「それで・・・・・・えっと、何から聞けばいいのか・・・・・・」
「とりあえず、オイラのことを話してもいいか?」
「い、いいですけど・・・・・・?」
とりあえず、話の流れは彼(彼女?)に任せよう。
だって俺じゃどうしようもないし。
「オイラはりゅーとの中にいる鬼の分身だアカ」
「・・・・・・はぁ?」
そもそも俺の中に鬼がいることについて疑問が多いのだが。
「鬼って一体・・・・・・?」
「鬼ってゆーのは、心に強い信念を持つ者に宿るものだ。昔はどの人間にも鬼が宿って覚醒も済んでたんだけど、最近では鬼を持つ者はメッキリ減って、ほとんどいないんだアカ」
「なるほど・・・・・・?」
「理解したのか?」
「まぁ、なんとなくは・・・・・・」
「そうか」
アカトはそう言うと、悔しそうに顔を歪めた。
悲しそうな目で俺の顔を見上げる。
「頼む、りゅーと。オイラと一緒に、桃太郎たちと戦ってくれ!」
「話ぶっ飛びすぎだろ!まず桃太郎についても教えてくれよ」
「あ、そっか・・・・・・」
コホンと咳払いをするアカト。
コイツ、本当に大丈夫なのかな・・・・・・?
「桃太郎っていうのは、その強い信念を持つ、鬼を持つ人間を世界から消そうとしているんだアカ」
「なんでだ?」
「桃太郎は、元々世界の全ての人類を自分に従わせようと、昔に一回暴れたことがあったんだアカ。でも、その時は鬼を持った人間が多くて、邪魔されて作戦は失敗したんだアカ」
「つ、つまり、次は邪魔されないように、鬼を持つ人間を消そうとしてるってこと?」
「大正解なのだ」
「じゃあ、昔に比べて鬼を持つ人間が減ったのも、その影響?」
「そう。それで、このままじゃ鬼は全滅して、この世界は桃太郎に支配されてしまうのだ」
俺が知らない間に、この世界は桃太郎とやらのせいで大変なことになりかけていたのか。
俺の中では桃太郎って正義の味方なんだけどなぁ。世界は何が起こるか分からない。
「まぁ、俺も鬼持ってるってだけで殺されたくねえし、世界支配されるのも嫌だし、良いけどさ」
「ありがとうなのだ。ちなみに、殺されることはないぞ?」
「え?」
「基本的に近い未来自分が支配する世界を破壊したくないみたいで、ダゴビキの能力で、あそこでの被害は基本的にほとんどは現実世界には影響はないのだ。だから、あそこで殺されても、鬼が殺されるだけで、お前は生き続けることができる。ただし、信念とかはな状態でね」
「そういうことは早く言えよ。な?」
まぁ、それが分かったところで俺がやることは変わらない。
「でも・・・・・・良いぜ。一緒に戦おう。アカト」
「やったー!」
桃太郎とやらから世界を守り、俺の信念を突き通す。
それが、これから俺がやるべきことだ。
- Re: 心を鬼にして ( No.5 )
- 日時: 2016/06/14 16:22
- 名前: 凛太郎 (ID: CzRhDmzb)
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」1
「くっそぉ!鬼であんなことができるなんて聞いてねえよ!」
キモンは眉間にしわを寄せながら、近くにあったゴミ箱を蹴飛ばした。
蹴られたゴミ箱は、中に入っていたゴミをまき散らしながら転がり、壁にぶつかる。
怒った様子で肩で息をする金髪の男に、赤い髪の男はあきれた様子でため息をついた。
「情報不足なんて、戦いじゃよくあることじゃないか。そんなことでたかが少年一人に負けるなんて・・・・・・ただの君の力不足だと思うのだけれど?」
「あーはいはい。俺は弱いですよーだ。でも、そんな風に偉そうに注意できるレベルなんですか?クドツさんはよぉ」
「あぁ。すでに次の作戦は立ててある」
クドツと呼ばれた男はにやりと笑い、とある学校の監視カメラの映像を眺めていた。
その映像には、靴を履き替える少年、蒼井 氷空の姿が映っていた。
−−−
「ふっかーつ!」
俺は病院を出て第一声で、そう叫んだ。
それを見た赤鬼のアカトは、俺の頭を軽く叩いた。
「桃太郎一行にばれたらどうするんだアカ!まだ怪我も治ったばかりで、また襲われるかもしれないんだぞ」
「そんなビクビク過ごしてたら人生つまんねーじゃん。嬉しい時も寂しい時も怒った時も、バーッと叫んだ方がスッキリするじゃんか」
「今お前は中の鬼を狙われている身なんだぞ!もっと自覚持てよ!」
アカトはそう言って頬を膨らませた。
そう言われてもなぁ。実感ないっつーか、やっぱりピンとこねーよ。
そんなことを考えていたとき、視界に右手の甲の紋様がチラッと入ってきた。
そういえば、これは一体何なんだろうか?
病院では気にならなかったから、聞き忘れていたんだよね。
「そういやさぁ、俺のこの手の甲の紋様みたいなのって・・・・・・一体何なんだ?健二とかは気にしてなかったっぽいけど」
「あぁ。それは鬼を覚醒できた人にだけ現れる痣みたいなものなのだ。他の人には見えなくて、次からはそこに力を込めれば自由に変身できるのだ」
「へぇ。便利なんだな」
なんとなく気になったから聞いてみたのだが、とりあえずこれが何なのかは分かって良かった。
つまり、この紋様はよくある変身ヒーローの変身道具的なものってことか。
町を歩きながらそんな感じでのんびり雑談したりしながら歩いていた。
家の近くの交差点に差し掛かった時、左側から氷空が出てきた。
「うお!?」
「あっ・・・・・・龍斗・・・・・・」
氷空は呟くように言うと目を逸らし、そのまま立ち去ろうとする。
俺は咄嗟に彼の前に立ちはだかり、両手を伸ばして進行を止める。
そんな俺を見た氷空は、ムッとした表情になる。
「だから何度も言ってるだろ?僕はサッカーはしない」
「せめてその理由が知りたいんだ。なんでサッカーしないのかっていう理由を」
俺の言葉に、氷空は一瞬を目を見開き、すぐに目を逸らす。
「別に・・・・・・なんだっていいだろ?僕がなんでサッカーしないのかなんて」
「よくねぇよ。お前、高校でもサッカーするって、言ってただろ?なんでやらな・・・・・・」
「やりたくてもできないんだよ!
突然放たれた一言に、俺は一瞬固まってしまう。
やりたくても、できない?それって・・・・・・つまり、どういうこと?
固まる俺をよそに、氷空はしばらく視線を彷徨わせた後で、「もういいだろ?どいてくれよ」と俺を押しのけた。
呆然とする俺を除けることは、簡単だっただろう。
俺はコンクリートの地面を見つめたまま、固まっていた。
- Re: 心を鬼にして ( No.6 )
- 日時: 2016/06/14 22:01
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」2
「蒼井。お前は今回のテストもクラス最高点だったぞ。よく頑張ったな」
いつものごとく丸だけが書かれた答案用紙を見ながら、僕はため息をついた。
勉強なんて、少し頑張ればできるし、正直やり甲斐がない。
熱中できるものが欲しかった。でも、無い。
「一つだけ除いて、か・・・・・・」
僕はチラリと視線を前に向けた。
そこには、男子と一緒にテストの答案用紙を見せて、笑っている龍斗の姿があった。
その答案用紙は、丸もあればバツもある、点数もパッとしないごく普通のテストがあった。
赤桐 龍斗。彼だけは、僕を熱中させてくれた。彼と一緒にサッカーで競い合うのは、とても楽しかった。
「それももう、できないんだけどな・・・・・・」
僕は俯いてため息をついた。
サッカーは大好きだ。またやりたいとも、思う。
でももう、できないんだ。いや、やろうと思えばできるかもしれないが・・・・・・。
「やるわけには、いかない・・・・・・」
僕は拳をギュッと握り締めた。
目を瞑れば、瞼の裏には一人の少女の姿が映っていた・・・・・・———。
−−−
「はぁ〜。なんで氷空はサッカーやらねーんだろなー」
俺はボールを蹴りあげながら、そう呟いた。
隣でリフティングに苦戦している健二は、「んなこと、俺が、知るか、よ・・・・・・っと」とと言った。
まぁ俺も独り言のつもりだったんだが、それを言ったら彼が恥ずかしい思いをするだけだ。そのことについては黙っていよう。
にしても・・・・・・。
「どうしたものかなぁ・・・・・・」
ボールを胸の前まで蹴り上げ、それを両手で掴み、俺はため息を吐く。
そんな感じで今日の練習は終わった。
片付けやらを終え、帰路につきつつ俺は鞄の中からアカトを出した。
「はいおはよう」
「おはようじゃないアカ!すっごい狭かったのだ!」
「まぁまぁ。それより、氷空についてなんだけどさ・・・・・・」
「あぁ、あの鬼を持った奴か」
「え?」
「ん?」
今なんて言った?
「氷空って、昨日りゅーとがなんか帰りに話してた奴だろ?」
「分からないけど、多分合ってる。え、アイツ鬼持ってんの?」
「あぁ。しかも、お前と同等くらいの強さはあるやつだぞ」
「マジかよ!?」
驚きのあまり声を張り上げてしまった。
口を押さえ辺りを見渡し、静かに息を吐き、アカトに向き直る。
「・・・・・・マジか」
「おう。鬼があるってだけでどんな能力かとかは知らないけどな」
つまり、氷空にも強い信念があるってことか?
何に対して?もしかして、サッカーをやらないことに対しての信念だろうか。
「これは、尚更聞いてみないとな!」
俺が言うと、アカトは呆れた様子でため息をついた。
- Re: 心を鬼にして ( No.7 )
- 日時: 2016/06/15 16:44
- 名前: 凛太郎 (ID: CzRhDmzb)
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」3
今日も一日が終わった。
僕にとってそれは、まだ続く長い人生の内の、ほんの一場面が終わったという感覚であり、あくまで一つの結果。軌跡。記録でしかなかった。
熱中できることがあれば、それも多少は変わるのだろう。
だがしかし、少なくとも今は、それはできない。やりたくとも、できない。
「今日も・・・・・・楽しそうだな」
家の方向の影響で、グラウンドにある南門から僕はいつも帰る。
そのせいで、毎日サッカー部の練習を眺めることになるのだが、なんともまぁ楽しそうにサッカーをしている。
それを見るたびに、自分も参加したい、という気持ちにかられる。
僕は慌てて首を横に振り、その考えを吹き飛ばす。
「僕にはもう、サッカーをする権利なんてない」
それが僕の結論だ。
僕にはもう、サッカーをする資格も、権利も、何もない。
あるのは、好きなことを我慢する義務だけだ。
僕は足早に門を出て、病院に向かう。
総合病院の階段を上り、とある部屋の前でノックをする。中から返事はない。いや、あるわけがない。
心のどこかで、返事があることを期待している自分がいる。
僕はため息をつき、扉を開けた。
そこでは、機械などに囲まれた少女が一人、眠っていた。
「陽菜。今日は天気が良いよ」
僕はそう語りかけつつ、花瓶の花を入れ替える。
返事は無い。前までの彼女なら、笑顔で同調してくれたのかもしれない。
しかし、そんな彼女は眼を覚まさず、その整った顔で静かにベッドに横たわっていた。
僕はベッドの横の椅子に座り、彼女の頬を撫でる。
「君は・・・・・・その子に目覚めて欲しいのかい?」
その時、背後から声がする。
振り返ると、赤い髪の男が、顔をにやけさせながら窓の外に立っていた。
あれ?ここって3階なんだけど?
そう思って目を下に向けると、彼の足元には何やらツルツルした赤い変な生物がいた。
男は、その生物をまるで台にするように、そこにいた。
「あの・・・・・・えっと・・・・・・あなたは・・・・・・?」
「おっと。自己紹介が遅れたね。私の名前はクドツ。よろしく」
「あ、蒼井 氷空です・・・・・・」
とりあえず僕も自己紹介をしておく。
いやホント、誰だよコイツ。まるで至極当然のように、謎の生物の上に立ち、3階の窓の外に立ってるなんて。いつからこの世界はファンタジーの世界になったんだ。
「それはそうと、君はそこの少女に目覚めてほしいようだね?」
「え?」
突然、脈絡もなく言われた言葉。僕は、とりあえず頷いておいた。
すると彼はニヤリと笑い、「じゃあ、私と取引をしようか」と言った。
取引?何の?
「なに、簡単なことさ。ちょっと君の中の鬼を退治するだけ。そうすれば、君の大事なその子は助かるよ」
「僕の、鬼って・・・・・・?」
これまた唐突な謎の単語。
鬼は知っているよ?節分とかになると、豆をぶつけられちゃうやられ役だよね?
でも、それがどうした?
「詳しい説明をするのは時間が長くなるから省こう。ただ、君の中にある『悪いもの』を排除するだけさ」
「僕の・・・・・・悪いもの・・・・・・?」
「あぁ。ただ、ちょっとやり方が荒くなる。でも、それさえ済めば、君の大事なその子を助けてあげられる」
どういうことをするのかは分からない。でも、もし彼女が助かると言うのなら、僕は・・・・・・———。
「・・・・・・分かった」
僕はカバンを持ち、外に出た。
外に出て分かったのだが、謎生物はカニの姿をしていた。
すると、謎の巨大生物の大きなハサミが、僕の体をわしづかむ。
「な・・・・・・ッ!?」
「大丈夫。すぐに終わるからね」
言葉と同時に、ハサミに力が込もって・・・・・・———。
「危ない!」
赤い服を着た男が突然、現れた。
謎生物の腕を切り落とし、着地をする。
その男は奇妙な恰好をしていた。
妙に上着が長い学ラン。ズボンの裾はボロボロで、足は素足。
髪は逆立っており、額からは2本の真っ赤な角が生えている。
「なん・・・・・・あ、あなたは、一体何なんですか!?」
「あなたって・・・・・・俺だよ、わかんねーか?」
笑顔で自分を指さしてくる男。
いや、俺とか言われても・・・・・・あぁ、でも、こうして見ると、誰かに似ているような気が・・・・・・?
その時、男の頭を赤い鬼のような生物が叩いた。
「りゅーと!何正体ばらそうとしてるんだアカ!」
「いった!別にいいだろ?氷空は俺の友達なんだし」
「お前の正体が桃太郎一行にばれたら、ソイツどころか学校が危なくなるんだぞ!」
「でもよぉ、もうキモン?とやらに名乗ったし。あんまり意味なくないか?」
「うぅぅ・・・・・・でも、やっぱり人にばらさないっていう縛りがないと、どこでもかしこでも変身されたら困るし」
「そうかー」
まるでコントのような会話をする二人。
ていうか、りゅーとって・・・・・・まさか?
「もしかして・・・・・・お前、龍斗か?」
「おー!やっとわかったか!」
「ていうか、そこの赤鬼がそう呼んでたし・・・・・・」
「オイラのせいなのか!?」
「お前らこっちを無視するんじゃねー!」
その時、声がした。
見ると、クドツがかなり怒った様子で僕たちを見下ろしている。
「氷空。下がってて。俺が倒すから」
「はぁ!?」
「いーから」
そう言って刀を構える龍斗。
仕方がないので、小さな赤鬼を抱えて建物の陰に向かった。
「は!友達を庇ったつもりか!」
「そうさ!氷空はいずれ俺と一緒にサッカーをする義務があるからな!」
何を言っているんだコイツは。
でも、まだ諦めてなかったのか・・・・・・。
そう思うと少しだけ、心が軽くなった。
「じゃあお前ごとぶっ潰してやる!」
そう言って残ったもう片方の腕を振り上げる。
しかし、龍斗はそれをかわし、一気に距離を詰める。
すぐに炎を剣に纏わせ、攻撃・・・・・・というところで、ハサミに掴まれた。
ほんの数秒の攻防。それだけで、龍斗は捕まってしまった。
「龍斗!」
「はっはっは!あんな友達のことなんか見捨てて、さっさと逃げれば良かったのになぁ!」
クドツの言ったことは、皮肉にも正論だった。
僕のことなんか気づかず、ここに来なければ良かったのに。
そもそも、僕からすればどっちが悪いのかもよく分かっていないというのに。
「友達を見捨てることなんか・・・・・・俺にはできない」
でも、無意識に龍斗の味方をしていたのは、なぜだろう。
「氷空は俺の大事な友達で・・・・・・親友だから」
そうか。親友だから。
だから、僕は彼の味方をしていたんだ。
「親友を守るのは、当たり前のことだから!」
彼は今、僕を守るために危ない目に遭っている。
僕のせいで、負けそうになっている。
僕の、せい?
「おい、そこの化け物!」
僕は叫んだ。
クドツと、謎生物と、龍斗の視線が僕に注がれる。
僕は思い切り叫んだ。
「さっきの取引の続きをしようじゃないか!僕の鬼とやらを排除すれば、お前も満足だろう!?何なら僕の命を奪ってくれても構わない!だから、龍斗を離せ!」
「何を馬鹿なことを言っているんだ!やめろ!」
「へーえ。中々面白い少年がいるじゃないか」
クドツの言葉に化け物は龍斗を離し、僕の体を掴んだ。
「それじゃあお望み通りぶち殺してやるよ!せいぜい友達に別れの言葉を言うんだな」
目を見開かせ、笑いながら、クドツは言った。
それと同時に、僕の心に恐怖心が湧き上がってくる。
怖い怖い怖い怖い怖い。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
そんな恐怖を紛らわせるために、僕は龍斗に向かって叫んだ。
「龍斗!お前は本っ当に・・・・・・馬鹿野郎だな!」
僕は、笑った。無理やり口角を上げて、笑った。
それとほとんど同時に、僕の体を氷が包み込む。
不思議と冷たくはない。
やがてその氷がはじけ飛ぶと、そこには・・・・・・青い服を着た、鬼がいた。
- Re: 心を鬼にして ( No.8 )
- 日時: 2016/06/15 21:47
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」4
「わ、なにこれ・・・・・・」
僕は自分の格好を眺めて呟く。
龍斗が来ている学ラン風の服の青バージョンに、腰には鎖でつながった二丁の拳銃が提げられている。
なんだ、これは・・・・・・?しかもなんか、額からは青い角が一本生えてるし。
「おー!氷空の鬼が覚醒したー!」
地面にへたりこんだままの龍斗が目を輝かせながら言った。
鬼の覚醒?よく分からない。でも、友達を守るためなら!
「これが鬼の覚醒というやつか・・・・・・まぁいい。やれ!ダゴビキ!」
ダゴビキと呼ばれた謎生物は、カニ歩きで僕まで迫ってくる。
僕は咄嗟に横に飛んだ。
「うおお!?」
どうやら身体能力も上がっているらしく、かなりの速度で飛んでしまう。
慌てて地面に足を付けると、砂埃を巻き上げてしばらく滑る。
摩擦で足の裏が熱くなるかと思ったが、不思議とそんな感触はない。
その時、目の前にはすでにハサミが迫ってきていた。
「わ!?」
僕はそれを軽く横に飛びかわし、かわしたときの回転に合わせて回し蹴りを放つ。
すると、足は謎生物の甲羅にめり込み、数瞬後謎生物はぶっ飛んだ。
それを見て僕は呆然とする。
「何これ・・・・・・」
「今すぐ必殺技を使うアオ!」
その時声がする。見れば、小さな青鬼が僕に向かって叫んでいた。
「はぁ!?必殺技って・・・・・・」
「拳銃を取り出して、化け物への怒りとかをこめて撃てば良いアオ!」
今はもう、リアリティを求めるべきではないのだろう。
僕は拳銃を構え、怒りを込める。
親友を傷つけた罪・・・・・・償ってもらう!
「はぁぁぁぁあああッ!」
僕は叫び、引き金を引いた。
拳銃から飛び出した二つの青い水の塊は、一瞬で氷の刃に変わり、凄まじい速度を持ち化け物の体に吸い込まれていく。
やがてそれは突き刺さり、一瞬で化け物の体を凍らせた。
「これで、終わりだ」
僕が拳銃をしまうのと同時に、化け物の体は氷ごと崩れた。
僕はそれを見届けると、その場にへたり込んだ。
それと同時に、さっきまで暗かった空が明るくなっていく。
「すげーじゃん氷空!かっこよかったぞ!」
興奮した様子の龍斗が、目を輝かせながらそう言ってくる。
僕はそれを苦笑いで返し、フゥ、と息をつく。
そういえば、この服装ってどうやって戻るんだろう?
「なぁ、龍斗。この服装ってどうやったら戻るの?」
「え?俺も知らん」
当然のことと言わんばかりに彼は言う。
知らんって・・・・・・前回はどうやって戻ったんだよ。
「これだからりゅーとは・・・・・・まぁ前回はオイラが解いてやったからな。いいか?「鬼は外、服は内」って唱えれば戻るぞ」
「お、鬼は外服は内・・・・・・?」
僕が赤鬼の言葉を復唱すると、変身は解け元に戻った。
それを見て龍斗も真似して言って、変身が解けてまた騒いでいる。
僕はそれを横目で流しつつ、鞄を持った。
「あ、そうだ。氷空。折角二人で鬼になったんだから、この際だから二人でサッカー。やろうぜ?」
突然、龍斗がそう言ってくる。
僕はそれに一瞬、「いいよ」と言いかけたが、それが許されないことを思い出す。
まだ。まだ、ダメなんだ・・・・・・。
「・・・・・・やめておくよ」
「んな!?なんでだよ!俺たち鬼仲間じゃねえか!」
「じゃあその、鬼?もやめておく。一人で、頑張って」
僕はできるだけ感情を込めずに言っておき、鞄を持ち、その場を立ち去る。
胸の中に、重たい感情を抱きながら。