複雑・ファジー小説
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- 日常における超能力の影響(不定期更新)
- 日時: 2016/10/24 18:21
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第0話 ゼロ・リアクション(無反応)
スーツを着た男性は、公園のベンチで座っていた
「貴方は超能力を手にした時、何をしますか?世界征服。正義の味方。私利私欲に走る。後は……世界を良い方向に変えるとか?とはいえ、全てフィクションです。超能力の実例はほぼ無く、超能力があってもマジックの様なインチキでしょう。必ず何故か金儲けが重なります。それでも楽しませれば良いのかも知れませんが。……私も超能力系の漫画、ラノベ、アニメ等は好きです。厨二病って言われますけど、それで片づける奴が馬鹿って思うくらい。まあ、一人でこんな事を語ってる時点で私の方がおかしいのかもしれませんが。
……現実で超能力を手に入れてしまったら私の様な順風な人生を送っていた者には大迷惑です。超能力を隠して生きていないと駄目ですからね。現実は超能力者同士のバトルなんて起こりませんし、ロマンティックな展開はありません。つまり、超能力なんて現実にはいらないんです。あー……何でそんな非現実的な話をしてるのかはすぐに分かりますよ。
だって私、超能力者ですから」
男性は拳を公園の木に向かって何十発も殴る。拳には血が滲んでいる。
「私の能力は自分の身体の場合のみ作用・反作用の、反作用を作動させない能力。……人間社会に影響は出ないですね。この能力により、私の拳は全く痛くありません。血は出てるので止血が必要ですけど。そういえば、自己紹介が遅れました。私の名前は空木(うつぎ)。30歳。ただの独身正社員サラリーマン。平凡な人生をこのくだらない超能力により一時期、考え怯えてしまった小心者です」
時は戻り、三日前。
空木は残業をせずすぐに帰宅を始める。
「空木君。もう帰るのか?」
「……申し訳ありません。失礼します」
空木はその場を去り会社を出る。
「ウチの会社は残業が当たり前と言う風潮。こんな古汚い風潮が残るから過労死が増えるんですね。まあお陰で人間関係はボロボロです。友達30歳で一人もいません」
空木は書店に行き、漫画を買う。
「私はとにかく漫画が好き。一時期、不良漫画にハマって髪型を変える程に。今の髪型はツーブロックのショート、黒。気に入っています。今買ったのは超能力者が集まる高校で何か超能力バトルすると言う物語。良いですね〜」
空木は漫画をビニール袋に入れる。
「私はこの時、まだ超能力に目覚めてません。いつ目覚めたかと言うと……」
空木はシャドーボクシングをし始める。
「そう、私は漫画に出てくるキャラクターの真似を暗いトンネルでノリノリでしていた時に超能力に目覚めました」
空木は気合いを入れ過ぎて、トンネルの壁に拳をぶつける。しかし拳は全く痛く無かった。
「そう、この時に私は疑問を感じたんです。この時は超能力なんて分かりません。と言うか、漫画とかでそうですけど何で自分の能力を理解出来てるんですかね。物語だから、で済みそうな馬鹿な質問ですけどね。
私は今起こった現象を確かめる為、もう一度壁に殴りました。
結果は拳を痛める事はありませんでした。これで偶然により起こった現象と言う候補は無くなります。と言うか、正直何か神経の病気かと思いました。神経が死んで、感覚が無くなったと。しかし、握った時やその他の場合では感覚や痛みがありましたのでそれは違うと判断しました。まあ、病院は金かかるんでいかないですが。
今度は逆に特定の壁を殴ると痛くないと考えました。つまり他の壁で殴れば普通に痛いと。
結果は他の壁でも痛くありませんでした。私は拳で殴った場合のみ痛みが消えると考えました。その為今度は足のつま先で壁を蹴りました。結果、痛みは感じませんでした。つまり、拳限定の能力では無い。そう言った感じですね。
こうして自分の身体を調べて、超能力の内容に辿り着く事が出来ました。結論は結局、何も役に立たない能力です。人殴って拳の痛みを感じずに殴れるとかしか役に立ちません。まあ、マイナス効果をもたらす超能力よりはマシですね」
空木は公園を去る。
「これが電気を操る等の強力な超能力なら私の人生はもう、テロリストくらいしか道は残されていなかったでしょうね……。と言うか超能力に自覚出来ただけマシですか。超能力は日常にいらないですね……。日常で役に立つ能力なら良いんでしょうけど。浮遊能力でゴミを浮かせゴミ箱に入れられるとか」
第0話 ゼロ・リアクション(無反応)完
日常における超能力の影響は、あまり無い者から大きく関係する者まであまたあります。それをひたすら書き込みます。
思いついた超能力をただ書くだけなので不定期更新です。そんなに力入れてません。なので軽ーく見て頂ければ幸いです。
また一話ごとに、主人公違います。世界観は共通してますけど。
書き込む予定の超能力。
コントロール不可の自然発火。
鎖と呼べる物を操れる。
インクで書かれた記号等を取り出す。貼りつける事が出来る。
自分のみ、時の速さを速める事が出来る。
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.19 )
- 日時: 2016/12/03 15:13
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第十五章 カラーミスト(十人十色の正義)
女性は霧の中にいた。
「私は夜宴って言うの。んで……今……」
夜宴の目の前には死体が転がっていた。
「超能力で人殺しちゃったよ……私の言う事聞けないんだもん。いらない奴隷くんは死んで当然でしょ?」
夜宴はガスマスクを付けて話す。
「私の超能力は身体から霧を出す事。霧は色を成分によって変化出来るの。
紫の霧を出せば毒効果。とかね。
これなら殺人ガスとかも噴出可能。身体は目から指の先まで何処でも出せちゃうのよ。
勿論、私も霧を吸えば効果が出るからガスマスクで対策を」
夜宴は現在、霧状の腐敗ガスを噴出。死体はみるみる腐る。
「いらない人間は……腐らせるに限るね〜」
夜宴はリストラされたOL。世界への復讐の為にリストラさせた上司達を殺していた。
「こういうのってさ、大体探偵だの有能デカさんが来るんだけどね〜。現実は非常だね〜」
この事件が後にカラーミスト事件と呼ばれる。理由は簡単。
夜宴の目の前には大量の死体と腐りかけの正義がいた。
「緊急!緊急!また、ガスマスクが……」
夜宴の犯行はいつも警察が来てから行われる。そして見せしめに霧を噴出させ殺す。
警察の一人は夜宴を見て叫ぶ。
「抵抗を止めろ!何人の罪の無い人を殺している!……あいつは超能力者ですよ。最悪のケースだ。鎖使いの囚人殺し、神の暴行事例はあったけど……世間に恨みを持ってるって奴が一番太刀が悪い」
「超能力者なんていないだろ。現実を見ろ」
「今見えてる現状を見ろよ。現実じゃなくて現状見ろよ!」
「……クッ」
夜宴は見下す。
「これは私の正義だ。もはやこの世界の秩序は黒い霧により覆い被さっている。それを私直々に天誅を下しているだけ。何が悪いのかな〜?理不尽を見逃すこの社会に警鐘を!ヒャハハハ!」
「……」
「この世は馬鹿が多すぎる。その遺伝子を受け継ぐ馬鹿。馬鹿の螺旋が頭を構築しこの世が誕生する。
まだロボットがこの世を管理した方がマシだよ〜。私を快楽殺人犯に仕立て上げる馬鹿どもよ。せいぜい笑ってろ。お前等が間違ってる事を……死んで証明させてやるよ。馬鹿」
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.20 )
- 日時: 2016/12/07 18:47
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
夜宴は呟く。
「この世は黒い霧で国民を騙している。こんな国滅べば良い。だからな……」
警察は叫ぶ。
「黙れ!お前のやってる事はエゴだ!自分の怨みを世間のせいにして肥大化させ都合が良い様に暴れているだけだ!
良いか!
弱者が超能力手に入れました。はい、世間に復讐。世界変えちゃうぜ。
超能力アニメあるあるで、大体ちょっと病んでるんだよな。首領格が。
あのな、身分とかならまだ分かるけど、この平和な国で何言ってんだ!贅沢な!お前!自分の人生どうでも良いからって世界変えるなよ!
それで、世界変えてどうすんだよ!新世界の政策は決まってるのか?」
「……」
「考えておけよ!大体、弱者は他人の事ばっかりグチグチうるせえんだからよ。頭良い訳ねーだろ!頭良かったら弁護士になって人を救えよ!」
「……」
「馬鹿はこれだからいけねえ。馬鹿なテロリストと何も変わってねぇんだよ!
バーカバーカ。超能力アニメみたいな事二度とすんな!やるなら、もっと考えろよ!馬鹿に付き合ってるほど警察暇じゃねえんだよ!」
「ひ、ひどーい!何、その言い方!こ、これが本性ね!霧で……」
「お前は霧ばっかしか見てない。理不尽な奴だってこの世に何人もいる!
だけど、耐えて生きてる奴もいるんだよ。頑張って頑張って頑張って!
そいつがいる世界をお前は壊すのか?」
「……」
「止めよう。地球が泣いてる」
「……」
周りは呟く。
「何で急に地球?」
「それに、理不尽な奴って耐える理由無く無い?理不尽なんだから。夜宴に壊してもらった方が耐えなくて済むじゃん」
「すみませんでしたー!」
夜宴は自首する。
「テロリストは狂信者か馬鹿ばかりだよ。今回は馬鹿で良かった。超能力で興奮してたんだろ。ぷっ……やっぱ、馬鹿。馬鹿は家族とか地球とか言ってれば感動するんだよ」
「そんな単純かな?」
「革命家はいつも口だけ。それについて来る馬鹿が多すぎるだけ。
どこの国も同じだよ。
印象さえ残れば大統領にだってなれる。
何かを変えてくれるかもしれない。おお、神様!あの口は正直者だから信じますー!
口だけの金持ちに何が出来る。出来ると思ってる馬鹿が神輿担いで騒いでいるのが今の世界だよ。選挙で多数決を取っているのは最大の失敗だ。
政治も知らない馬鹿が権利を貰った所で何が出来る。知識も無い。責任も無い。そんな馬鹿がこの世界を支えている。
ああ!神様!超能力をくださーい!」
「……ど、どうした?大丈夫か?」
「まともに何かを見ようとしない奴に俺の考えに引かれては困る。
所詮、この世は馬鹿で出来た霧ばかり。超能力が無くても分かる」
第十五章 カラーミスト(十人十色の正義) 完
夜宴は刑務所にいた。
「……弱者でも、犯罪者ならどうかな?警察さん」
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.21 )
- 日時: 2016/12/09 20:32
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第十六章 ステンレスハート(脆い心に愛の慰めを)
警察の一人は、机の上で叫ぶ。
「俺の名前は後藤。能力は心の強さを見極める事。
全く、もって弱い。
だが、俺は……馬鹿じゃない。
テロリストまがいのカラーミストや自分が選ばれた人だと思っているコネクト・チェーンでも無い。
人の心の弱さを知る時、俺は強くなれる。
世の中は、馬鹿ばかり。勿論、俺は天才や権力者なんて思っていない。
俺は自分の身分も弱さも知っているからな。
だが、俺は馬鹿では無い。自分の事は一番自分が分かっているからな。
自分がクソだと言う事も。それを分かった上で今、発言をしている。
俺は自分の心の強さも見る事が可能だからな。
そう、この弱い能力で俺は何が出来るか?光も出せない。霧も出せない。ああ、神様!私にはどうしてこんな不幸が!……俺なら、神に祈らず、その不幸を幸せに変えるね。
心の強さは色んな物質に例えられる。ガラス、強化ガラス、鉄、ステンレス、機械仕掛け。
だが、超能力を持った人間や動物を見ると心の強さに色んな波長が見られる。つまり、ガラスと鉄以外の物質が心臓に巻き付いているんだ。
俺には見える。俺の目は超能力者を見極められる。
この能力が使えれば、どんな奴でも。
心を打ち砕く方法が分かり、俺の人生は……ははっ。選挙方法は変わらなくても、それなりにシアワセな人生を送れる訳だ。
どいつもこいつも、学業が全てと思っている奴ばかり。
受験で数値しかみて無い様な学
校が多いからイジメが多い。根本
的にクズは、社会更生施設にぶち込め
ばいい。俺がその施設に行っ
ていたら、どれだけ、幸せ
な生活を送れたのか。イジ
メられた奴もイジメる奴が
いなければどれだけ救われた
のか。
教師も教師だ。馬鹿な教師の授業等、念仏だ。
親も馬鹿な遺伝
子を受け継ぐから馬
鹿が生まれるんだな。全く、子供の尊さを学んで来
い。だから虐待が増える。ま
ず、国が親の負担を軽減するべきだ。まあ、出来
ないのは税金の無駄遣いが多いからか。
……おっと、俺は演説が好きでね。ああ、勿論取調室の机の上で叫んでも何も変わらない事は知っている。
俺は国の心の強さを見れるんでね。こんな無意味な発言をついつい話したくなる」
後藤は普通の人間だった。しかし、超能力に目覚めてから、自分以外を馬鹿と思い始める。彼は心しか見なくなった。
彼は弱い。だが、恐ろしい。
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.22 )
- 日時: 2016/12/12 14:44
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
後藤は心の強さを見る。
「カラーミスト。彼女の心は霧だ。そう、霧が心臓を覆っている。自分の正義以外を信じず、自分の世界のみ正しいと勘違いしている。つまり、馬鹿なテロリスト」
後藤は監視対象にされている、神と言う人物に会いに行く。
「私は神!」
「ゴールデンソウルギア。彼の心は黄金。そう、決して砕ける事の無い精神。有効活用出来れば良いんだが。残念ながら、この馬鹿とは相性が悪い様だ。魂を吹き込む事が出来ると言うのに……。物に命が宿ってたまるか」
後藤は無表情で机の上に昇る。
「ちなみに、心の弱い美人を落とす事も可能。
どいつもこいつも、楽に生きてる人間ばかり。今日、机の上で踊っていればそれで良いのか?ああ、神様に祝福を!笑わせるな、宗教なんて科学を否定するゴミにしか過ぎない。いや、金儲けか?宗教に金をやる暇があるなら素晴らしい科学の発展に投資しようとは考えないのか」
彼は自分が弱い事を知っていた。
弱い事を認めてから、初めて自分の存在とは何かが分かる。
「自分も知れない馬鹿が超能力を扱ってどうする。
どうせ、単純な破壊的活動しか能が無いだろう。どれだけ素晴らしい能力を手に入れてもな。
いかに応用部分で超能力をどのように扱えるのかが重要……」
後藤の後ろには夜宴がいた。
「その結果、私は正義を選んだ。そう、この世の腐った霧を晴らす為に」
夜宴の周りには催眠の霧に覆われた囚人達がいた。
「彼等が世界を変えるのよ!」
「君は霧しか見て無い。心を見ていないんじゃ人を動かすなんて出来ない。
皆はただの大量殺人犯にしか見えないよ。革命家以前の問題じゃないか」
後藤は心の強さを見る。
「世間に不満を持ち、神様に祈る事しか出来ない哀れな馬鹿よ。
きっと超能力が無かったら自殺していた馬鹿よ。
社会に何かをしようとする弱者的考えは止めろ。私はイライラするんだよ。
政策も何も考えていない未熟な革命家気取りが狂信者を使って自爆テロをさせるのがね。今の世の中に住んでいる一般人を殺した所で国は、悠々とステーキを口に運び、髪をセットし世論の様子を確かめ、鼻で嘲笑い、死体の上を歩き適当な発言をする。
国はああ見えてとても強い。私は知っている。馬鹿の集まりでも金と権力があれば自爆テロを過去の事に出来る。
その為に君達は死ぬのか?人生を棒に振るのか?愚かな人生だ。この国以下の腐ったやり方だ」
「……なら、お前はどうなんだよ」
「……この国が終わっているなら、終わるまでなるべき強い権力にしがみ付く。私は警察になり、ある程度の地位を獲得。官僚にもその気になればなれるが、理想と現実の違いに私も弱者的考えに陥る事は容易に想像出来る。
私はこの国を変える政策を持っている。だが、国はそれを認める事は出来ない。世間の評価が一番大事だと表面上では思っているからな。
なら、国に何故黒い霧が存在しているのかが疑問だがね」
「……」
「私と君は同じだ。だが違うのは馬鹿か凡人かだけだ。国が腐ったなら、それに適応する事が一番人生で良い考えだと思う」
「国を救えないのか!?」
「夜宴。国を救う何て事は出来ない。出来ても、政策が無いんじゃ混乱し、今まで以上に荒れるだけだ。そう、皆、馬鹿だからだ」
「……」
「これは必然だ。国も責任を持たない馬鹿。国民も責任を持たない馬鹿。
なら、凡人は馬鹿に付き合うしかない。
ああ、神様!神は馬鹿しか生んでいない!私は祈ります〜!
神は何を生んだんだろうな?いや、何は神を創造したんだろうな。
俺は科学を祈るよ。凡人だからな」
「……」
夜宴の周りには大量の警察が立っていた。
「時間稼ぎはこれくらいか?」
後藤は銃を夜宴に向ける。
「……」
「祈れよ。神に。革命家さん」
夜宴は撃たれる。
「神は心が弱い者の幻だ。自分を信じて生きないと。俺は出来ないけどね」
後藤は自分を弱さを知っている。自分の権力も才能も何も無い事を全て知っている。
だから、彼は恐ろしい。彼は心しか見ていない。心を知らない人間より心を知りつくした人間の方がとても恐ろしい。
そして彼は心を見る。
「……」
彼も人間だから。
第十六章 ハート・ブレイカー(脆い心に愛の慰めを)
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.23 )
- 日時: 2016/12/13 16:40
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第十七章 サイクル・ライト(廻る光)
少女は蝋燭の火をクルクル回す。
「私の名前は、蹈鞴。発光体なら、なんでも回す事が出来ます」
どんどん溶ける蝋燭の上に立つ火は消える事無く回転を繰り返し、真っ暗な部屋を灯台の様に照らす。
「あ!今、微妙な能力って思いました!?良いですよ。私、その気になれば太陽も回せるんですから。……どんな効果があるのか分からないですけど。少なくとも、宇宙関係に衝撃が走る程度かな?」
蹈鞴は豆電球に向かって能力を発動する。豆電球の光の部分がパトカーのサイレンの様に廻り始める。
「この能力は……綺麗だな〜って感動出来る能力です!……私だってもっと強い超能力が欲しいですよ。まあ……私は野蛮では無いですので、暴れたりテロリストの様な行為はしませんよ。世間に不満はありますけど。
……税金高いよ!親が宝くじ当てた成り金だから今、金の感覚狂ってるけど、このままだと金無くなっちゃうよ!」
親は金の欲に負けていた。高級な家を買い、服を買い、翌年の事も考えずに遊びまくった。
「このままだと来年の税金が……払えなくなる……」
所得税と言う税があるが……これは話すと長いので省略する。
蹈鞴は懐中電灯を持ち光を回転させる。
「星とかも回転出来るのかな?しないけど」
蹈鞴はスマートフォンの画面を見る。
「は!この光が回転するとどうなるんだろ!」
画面の光はクルクル回り、画面がぐちゃぐちゃになってしまう。
「も、戻さなきゃ!?え〜!」
蹈鞴は超能力さえ怯える事無く、悪用する事無く、日常に迎え入れた。彼女自体が素晴らしい光だった。回転し人々の道標となる。
すると、親が蹈鞴の能力に気付く。
「もう、宝くじの金が無い。なら、この女売り飛ばそうぜ?」
「違うわよ。この娘、光を操る能力を持ってるわ。インチキでも何でもいい。売り出して儲けるのよ」
「そう簡単に行けるかよ……事務所とかは信じてもらえないだろ?」
「……コネがある。宝くじで私がどれだけ男転がしてるか分かる?アンタも女で遊んでるんだからそれなりに人脈創ってるでしょ?成り金はただでさえ馬鹿にされるんだから」
「……あ、ああ……。女優とかと寝たし……」
彼女の光は利用される。道標とされた光は金の為に光る。
しかし、光は続く事も輝く事も無く周りから馬鹿にされてしまう。
「おい……あれは?」
「ああ、後藤さん。イベントで子供が超能力を披露するらしいですよ。どうせインチキだ。売れる訳ねえよ。しかし、後藤さん。夜宴達30人の囚人を前に凄いですね……。俺なら逃げたよ……恐ろしい」
「心の強さは殺意も見える」
「え?」
後藤は蹈鞴の心の強さを見る。ガラスで出来たハートだったが、中に光が見えていた。回転し、決して消えない光が。
「……光を見失い限りあの子供は大丈夫だろ」
「へ?」
「それより、超能力者を探している奴がいるらしい。何が目的だが知らんが……」
「……大丈夫ですか?」
蹈鞴はイベントで頑張っていた。
どんな環境でも光を見失ければどうにかなる。腐っていても。
後藤とは全く違う考えだが、終着点は同じだった。
「何も考えない彼女の方が幸せだろうな。俺は……」
第十七章 サイクル・ライト(廻る光)