複雑・ファジー小説
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- 日常における超能力の影響(不定期更新)
- 日時: 2016/10/24 18:21
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第0話 ゼロ・リアクション(無反応)
スーツを着た男性は、公園のベンチで座っていた
「貴方は超能力を手にした時、何をしますか?世界征服。正義の味方。私利私欲に走る。後は……世界を良い方向に変えるとか?とはいえ、全てフィクションです。超能力の実例はほぼ無く、超能力があってもマジックの様なインチキでしょう。必ず何故か金儲けが重なります。それでも楽しませれば良いのかも知れませんが。……私も超能力系の漫画、ラノベ、アニメ等は好きです。厨二病って言われますけど、それで片づける奴が馬鹿って思うくらい。まあ、一人でこんな事を語ってる時点で私の方がおかしいのかもしれませんが。
……現実で超能力を手に入れてしまったら私の様な順風な人生を送っていた者には大迷惑です。超能力を隠して生きていないと駄目ですからね。現実は超能力者同士のバトルなんて起こりませんし、ロマンティックな展開はありません。つまり、超能力なんて現実にはいらないんです。あー……何でそんな非現実的な話をしてるのかはすぐに分かりますよ。
だって私、超能力者ですから」
男性は拳を公園の木に向かって何十発も殴る。拳には血が滲んでいる。
「私の能力は自分の身体の場合のみ作用・反作用の、反作用を作動させない能力。……人間社会に影響は出ないですね。この能力により、私の拳は全く痛くありません。血は出てるので止血が必要ですけど。そういえば、自己紹介が遅れました。私の名前は空木(うつぎ)。30歳。ただの独身正社員サラリーマン。平凡な人生をこのくだらない超能力により一時期、考え怯えてしまった小心者です」
時は戻り、三日前。
空木は残業をせずすぐに帰宅を始める。
「空木君。もう帰るのか?」
「……申し訳ありません。失礼します」
空木はその場を去り会社を出る。
「ウチの会社は残業が当たり前と言う風潮。こんな古汚い風潮が残るから過労死が増えるんですね。まあお陰で人間関係はボロボロです。友達30歳で一人もいません」
空木は書店に行き、漫画を買う。
「私はとにかく漫画が好き。一時期、不良漫画にハマって髪型を変える程に。今の髪型はツーブロックのショート、黒。気に入っています。今買ったのは超能力者が集まる高校で何か超能力バトルすると言う物語。良いですね〜」
空木は漫画をビニール袋に入れる。
「私はこの時、まだ超能力に目覚めてません。いつ目覚めたかと言うと……」
空木はシャドーボクシングをし始める。
「そう、私は漫画に出てくるキャラクターの真似を暗いトンネルでノリノリでしていた時に超能力に目覚めました」
空木は気合いを入れ過ぎて、トンネルの壁に拳をぶつける。しかし拳は全く痛く無かった。
「そう、この時に私は疑問を感じたんです。この時は超能力なんて分かりません。と言うか、漫画とかでそうですけど何で自分の能力を理解出来てるんですかね。物語だから、で済みそうな馬鹿な質問ですけどね。
私は今起こった現象を確かめる為、もう一度壁に殴りました。
結果は拳を痛める事はありませんでした。これで偶然により起こった現象と言う候補は無くなります。と言うか、正直何か神経の病気かと思いました。神経が死んで、感覚が無くなったと。しかし、握った時やその他の場合では感覚や痛みがありましたのでそれは違うと判断しました。まあ、病院は金かかるんでいかないですが。
今度は逆に特定の壁を殴ると痛くないと考えました。つまり他の壁で殴れば普通に痛いと。
結果は他の壁でも痛くありませんでした。私は拳で殴った場合のみ痛みが消えると考えました。その為今度は足のつま先で壁を蹴りました。結果、痛みは感じませんでした。つまり、拳限定の能力では無い。そう言った感じですね。
こうして自分の身体を調べて、超能力の内容に辿り着く事が出来ました。結論は結局、何も役に立たない能力です。人殴って拳の痛みを感じずに殴れるとかしか役に立ちません。まあ、マイナス効果をもたらす超能力よりはマシですね」
空木は公園を去る。
「これが電気を操る等の強力な超能力なら私の人生はもう、テロリストくらいしか道は残されていなかったでしょうね……。と言うか超能力に自覚出来ただけマシですか。超能力は日常にいらないですね……。日常で役に立つ能力なら良いんでしょうけど。浮遊能力でゴミを浮かせゴミ箱に入れられるとか」
第0話 ゼロ・リアクション(無反応)完
日常における超能力の影響は、あまり無い者から大きく関係する者まであまたあります。それをひたすら書き込みます。
思いついた超能力をただ書くだけなので不定期更新です。そんなに力入れてません。なので軽ーく見て頂ければ幸いです。
また一話ごとに、主人公違います。世界観は共通してますけど。
書き込む予定の超能力。
コントロール不可の自然発火。
鎖と呼べる物を操れる。
インクで書かれた記号等を取り出す。貼りつける事が出来る。
自分のみ、時の速さを速める事が出来る。
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.4 )
- 日時: 2016/11/01 15:51
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第四話 ロングタイムワールド 精神と時の世界(部屋)
寺にある、賽銭の上に住職が乗っている。住職は祈るように手を合わせている。
「私は下槌(したつち)。26歳にしてこの寺の住職をしている。そう毎日が修行の日々。私は仏に仕えているのだから当然だ」
しかし寺は驚くほど寂れていた。
同じ坊主が下槌の元へ行く。
「下槌さん。おみくじ、絵馬、賽銭を行わないと江戸時代から続いたこの寺の存亡の危機に関わります。寺の維持費を稼がないと!」
「……そんな物、仏教に必要無い。皆が仏を信じれば誰でも願いが叶い救われる。其処に金銭を要求する等愚かな事だ。それはカルト教団と同じなのだ。私の様に悟れ。そうすれば、仏様が不思議な能力を与えて下さる」
「……否定したいけど、自分も仏教徒だから否定出来ない……」
「私はいずれ仏になる」
「……そうですか……」
「え?」
「ロングタイムワールド (精神と時の世界)」
下槌は扇子を持ちながら寺の中に入る。
「私は仏様のお力により超能力を持っている。能力は自分のみ時の速さを速める事。
どう言う事かと言うとこの地球、此処は日本だから日本の時計の秒針の時を、自分の意識で速める事が出来る。範囲はいくらでも。
もっと分かりやすく言おう。
私は最低限の能力で、2倍の速度で物事をこなす事が可能」
下槌は自分の腕を振る。
「これを2倍の速度で行う事が出来る。原理は私自身の秒針を日本の秒針とずらす事が出来るからである。
つまり、1秒で出来る事を私は0,5秒で出来ると言う事になる。仕事では多少便利になる程度の能力だ。しかしこれはあくまでも最小限の能力。仏に選ばれた私はこんな程度の能力等では無い。
3倍、4倍、5倍、6倍、それ以上」
下槌は下駄でかなりの高速移動をする。
「足が痛くなることも無い。高速移動する能力では無いからな。私の中の時を少し変えただけに過ぎない。問題点は自分のみしか時の流れを動かせる事が出来ない事だ。食べ物の時の流れを動かせれば腐敗させる事も可能であるからな」
下槌は扇子を高速で仰ぐ。
「そして私の能力の本髄を見せてやろう」
下槌は近くにいた坊主の元へ行く。坊主は動かない。
「人が1秒でやる事を私は測定不能になる程の時の速さで動く事が可能だ」
下槌の付けている腕時計の秒針が止まる。
「言っておくが時が止まっている訳ではない。私は今、1秒の間にかなりの高速で移動していると言う事になる。例を出すなら1秒間に1万秒分の行動を起こせると言う事だ。これが自分のみ時を速める事が出来る能力の真髄。
細かな設定も可能で、地球の一日を私の能力ならば私の時のみ1年と言う時間を体感出来る。実際私もこの能力を使って毎日そう言う事をしている」
下槌は笑う。
「これが仏に与えられた能力である」
下槌は祈る。
「私はこの能力で悟る事を決めた。刹那を永遠と感じる能力があれば私も仏になれる。普通の人間と私の感じる時の流れは全く違う世界にあり、考える時間も違うからだ。
この能力で私は仏に選ばれた同士を探す事にする。そう、5年前の動画の彼を探しに」
彼とは花園の事だった。ちなみに下槌が能力に目覚めて十日(十年)しか経っていない。時の流れのずれにより彼自身は実年齢より老けて見える。実際能力により老けているが。
「私はこの能力を持って幸せだよ。最高の気分だ」
秒針の隙間の世界を下槌は歩く。周りから見れば瞬間移動。
そして下槌が来た場所は全く別の県の刑務所。
「ちなみにこの能力でふしだらな事はしない。私は悟っているからな。あるのはこの世界に対する天誅だ。仏の意思を私が受け取って実行する」
下槌は仏教の経典を読む。キリスト教で言う聖書。
「私は高速で移動し、時を止めると同様の能力を持つ。そして……」
下槌は呟く。
「そして世界は仏の思い通りになる。誰も時の流れには逆らえない」
下槌は懐中時計を見ながら能力を発動する。
「自分のみ、時の流れを普通にさせる。そう、自分のみだ。速める訳でも無い。止める訳でも無い。あくまでも、自分だけだ。自分だけしか能力の効果は得られないからな。自分だけ時の鳥かごの中に入れる事が出来る。
他の者は刹那と永遠の恐ろしさに苦しむだろう。失った時は戻せない。私は再生と早送りしか出来ないからな」
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.5 )
- 日時: 2016/11/03 15:57
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
下槌は刑務所にいた。刑務所は寺等の結びつきも強く更生の為に住職が来る場合もある。その為下槌の存在はさほど気にはならなかった。
「花園と言う男に会いに来たのだが。彼から更生の意思を記した手紙を頂いてね」
「花園……囚人番号8番ですね。では部屋の用意をしてきます」
下槌は仏像が置いてある部屋に連れられる。
「……仏に埃が付いている。無礼な」
すると、花園がやってくる。
「8番、くれぐれも余計な言動をしない様に」
「はい」
看守は花園を部屋の中に入れる。花園は5年間刑務所に入っている。12歳だった少年も17歳の青年になっていた。
「お前は花園……いや8番か」
「はい、私は8番です」
姿は少年時代の青春は無く、坊主で目の中までどんよりとした雰囲気を出していた。花園は手を上げる。
「発言を許可します」
「はい。看守に私が手紙を出したと嘘をつくまで何か用件でも有るのですか?」
「勿論だ。君の超能力についてだ」
「……」
「五年前に君が金属を操り空間を創り出していた動画を見て此処に来た」
「それはCGと言うモノだと思います。私は鎖で愛すべき隣人に暴行を加え、自らの母とその友人を鎖で首を絞めて天に召されてしまいました。私は……」
「私も超能力者なんだよ。君と同じ仏によって選ばれた人間だ」
「……私はそう言うインチキな人間を何度も見ましたよ?
凡人が背伸びしても天才には届かないと言う事を理解させてやろう」
花園は鎖で繋がれた手錠を操り外す。さらに花園の口の中からチェーンが出てくる。出て来た鎖は宙に浮く。
「刑務所は最高の場所です。何故なら余るほどの鎖があるからです。私を縛る鎖が私の僕となる鎖にさせる事が出来るんです」
花園の能力は成長をしていた。鎖を自分から離しても超能力の維持が可能になった。鎖はセンサーの様に壁中に鎖を張り巡らせる。さらに鎖は触手の様に動き下槌の身体を絞める。
「二度と俺に近づかないで下さいね。凡人。後はこの事は誰にも言わないで下さい。反省の色が無くなりますから」
下槌は鎖に触れる。
「本物と出会ったのは初めてだな。仏はこの男と出会わせたのは運命か……」
「運命って貴方から寄ったのでは?」
下槌は叫ぶ。
「貴方の時間をこれから変えてあげよう。ロングタイムワールド」
下槌は高速で動きチェーンを外す。
「……」
「私の能力は自分のみ時の流れを変えられる能力だ。同じ選ばれた者同士今の世を変えていきましょう」
花園は腕の袖から大量のチェーンを下槌に向かって勢い良く出す。
「み、認めない……ぼ、僕以外に超能力者がいるなんて認めないぞ!」
下槌は高速に動きチェーンを花園の首に絞める。
「騒ぐな、看守に気付かれる」
「……」
「殴りたいなら、ちゃんとその環境を作ってやろう。仏の情けに感謝しろよ」
「僕だけが特別だと思ったのに……」
「特別だと思う理由は何だ?」
「……」
「特別な能力を手に入れたのならばそれを仏の為、世の為に使うのがあるべき姿なのだ」
「お前の敵は誰だ?」
「他の教徒と犯罪者だよ」
「……」
「大丈夫だ、お前は免罪だ。そうだろ?お前はあの動画をCGと言った。全て嘘なんだろ?」
花園はいつのまにか、檻の中にいた。周りには大量の死体が落ちていた。
「……これって」
檻の外には瞑想をしていた血まみれの下槌の姿があった。
「世界は私の思い通り。全ては仏様の言う通り。仏の思想は私の思想と同じ」
「や、止めてくれ!僕は……僕は……」
「冤罪なんだろ?お前は冤罪だ。これまでも、これからも」
「……ああ、僕は冤罪だ。だから此処から出して!」
いつのまにか、花園は鎖で首を吊っていた。
「うぐっ!?」
「無の中で消え失せ、仏の慈悲を待て」
「たすけ……たすけって」
「お前には社会の構図を教えてやろう。犯罪者が」
花園は鎖を操り、解こうとするが解けない。
「私の能力は応用すれば自分のみを時の流れを正常にする事が出来る。
仏を信じない者には永遠と刹那は苦痛であろう」
下槌は刑務所の外へ行き能力を解く。花園は死にはしなかったが泡を吹いて倒れる。
その後、刑務所内の囚人がほぼ殺され看守は監禁されていたと言う事件で日本中を震え上がらせる。犯人は花園。唯一、囚人の中で生きていた為。
下槌は頭を悩める。
「煩悩だらけの世界。全て浄化せねば仏に授かったこの能力が無駄になる。早く、同種を見つけねば」
第四話 ロングタイムワールド 精神と時の世界(部屋) 完
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.6 )
- 日時: 2016/11/05 14:09
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第五話 サンドフォルム(一握りの砂)
一人の女性はアメリカにいた。
「時代は砂の様に形がありません。常に時代の風に動かされ、砂はそれに応じ動き出す。その砂はとてもとても重たくて一握りでさえ掴む事は出来ません」
女性はアメリカ人。名前はエイミー。年齢は24歳。現在はファッションモデルとして活動している。
「ファッションモデルはとにかく時代を不規則な砂を読み取り、その砂を纏い人々の先をいかなければなりません。とても重い砂ですけど私は面白いです」
エイミーは後輩のモデルに向かう。
「貴方、まだそんな服を着てるの?時代をどんどんどんどん行かないと駄目でしょ。時代は砂。私達が砂を造るのよ」
「はい」
エイミーはその場を去る。
「私は流行りに乗る前に流行りそうな事を予測しています」
エイミーの家には様々な物で溢れていた。
「私は事前に様々な物を買い、それをブログにアップ。飲料、美容器具、流行りそうなゲーム、他の国の文化(日本だと忍者とか)をひたすら上げる。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。どれか、流行れば先取りした事になる。そして私は一躍、有名人!」
しかし周りの反応は。
「エイミーさんってあれですよね。何か売れたい感ありまくりですよね」
「それに上から何か砂だの時代だの騒いでるけど、マジうぜぇ。馬鹿なんじゃねーの。あのババア」
エイミーが予測しているブームは砂時計。
「この砂時計が可愛いって絶対流行る!私は時代を先取りするのよ。絶対に!」
すると、エイミーの服が突如砂になりながら家の中に落ちる。
「え?え?」
下着も砂になり、全裸になる。エイミーは状況を飲みこめない。
「な、何で?服が……え?」
エイミーは寒くなり自分の腕を組む。すると、自分の両腕が砂になって落ちる。
「……うああああああああああ!!!!どうなってるの!?」
エイミーの能力は触れた者を全て砂と言う物質に変える事。エイミーの無くなった腕からは血が吹き出る。身体を砂に出来ても、操る事は出来ない。都合が良いように身体の構成は適応される訳じゃない。失った腕は取り戻せない。砂になって落ちただけ。
「うぐっ……」
砂に変えられるからって砂で武器が創れる訳じゃない。砂で何かが斬れる訳じゃない。軽い砂で時代を語れる訳がない。身体を砂にしたって肉に戻れる訳じゃない。重力で砂が落ちただけ。
エイミーは全裸で血を吹きだし慌てる。
全裸で馬鹿みたいに狂ってる。誰かの目からはそう感じる。砂を握っても、ただ重力で落ちるだけ。
血液はエイミーの身体に浴びて、エイミーの身体が砂に変わり果てようとする。
世間は何かと偶像化が流行りのようだ。エイミーは砂になり砂の像へ変わる。少し風が吹けば消えてしまいそうな偶像。
世間は何かと崇めるのが流行りの様だ。ただ誰かの目からすれば砂の像なんかどうでも良くてエイミーと言う人が今まで生きていた事、それにどれだけ意味があるのか。
砂は崩れ落ちる。砂は窓の風に吹かれて外に出る。砂には魂と言う不確かなモノが宿っておりましてエイミーは一粒、一粒に意思を持って風に吹かれて行く。
全裸で馬鹿みたいに狂ってる貴方は少なくとも何か求め伝えたかった。貴方は自己満足で動いているけどそれで人の心が動く。誰かの目は貴方の様になりたいと狂う事を考えている。
後輩はエイミーの墓の前で祈る。
「貴方の服はださいですが、やっぱり素敵です」
エイミーの墓は砂になる。
第五話 サンドフィルム (一握りの砂) 完
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.7 )
- 日時: 2016/11/07 20:28
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
第六話 リミッターオーバー(光速越え)
下槌は古い神社の賽銭の上で祈る。
「一年は私の中では365年。時が過ぎれば過ぎる程、私は仏に近づく」
下槌の姿はまるで仏の様だった。365年も経てば時の流れに慣れ、身体は進化し、人間の寿命を越えてしまう。思考回路は停止し、生きる為に全てを捨て、悟る。
「私は犯罪者と他の考えを持つ愚かな者に天誅を下す。だがまず私がこの世界の全てを知らなければならない。これまでの事を。これからの事を。そうでなくては、仏を名乗る資格も無ければ仏に仕える資格も無い。
そして同じ考えを持っているにもかかわらず、仏になる事すらしない同業者にも天誅を」
下槌の考えは過剰になる。
一方花園がいた刑務所は囚人が全員死んだが、3年も経てば元に戻る。新たな囚人達が罪と向き合う。その刑務所では看守達が話し合っていた。
「花園は極刑だろうな……」
「あー、眠い、眠い」
「馬鹿見たいな顔すんなよ、気持ち悪いな」
看守の一人が立ち上がる。
「六車。俺の名前は六車だ。俺は29歳。性格は悪くも無く良くも無く普通と言える。あえて言うなら自己愛が強い所。つまり、ナルシストだ。ただ話しかけてくる女子に好意を持たれていると勘違いするタイプって言えば分かるだろう。そう、自分は特別だ。とか。自分は神様に愛されている。とか。ぶっちゃけ、思春期はかなりイカれていた。勿論、心の中での話だから、友人とか恋人とかはいたけど。
とはいえ、俺は職場、学校の中での役職はいじられキャラ。つまりイケメン達の様な勝ち組に犬の様に諂い笑われてきたキャラだ。ああ、イジメられている訳じゃない。……多分。
そ、別に良い事がある訳でも無ければ悪い事も起こらない。まさに、何も無い素晴らしい一日をこれでもかと過ごしてきた。過去に戻りたい想い出も無いし、未来に行きたい程現在に飽きてはいない。超能力なんて考えた事も無いし、別に興味も無い。子供の頃に空を飛べたら良いなって考えるくらいだね」
六車は本当に普通の日々を暮らしていた。それに彼は満足もしていた。そして、六車は看守の仕事を一休みしていた時に超能力は初めて発動された。
「あー……微糖だな、コーヒーは。健康的だし。どうせ、ブラック以外はどれも甘いんだから」
六車は缶コーヒーをゴミ箱に投げる。すると、缶コーヒーは驚くべき速さでゴミ箱に入る。
「……おうぇあ!?ビックリした……え?」
六車は缶コーヒーをゴミ箱から取り出し、またゴミ箱に投げる。すると、同じ様に缶はゴミ箱に入る。
「俺の能力は、動いている物体、生命体を自分の意思でスピードをコントロール出来る事。んー……言ってて自分でも分からない」
正式には動いている物質に対して、念じればスピードを速める事が出来る能力。物質は目に見えていれば速める事が出来る。
六車は野球場でボールを見る。
「だから俺が念じれば……」
ピッチャーが投げたボールはカーブでもフォークでもスライダーでもスローボールでも高速に移動する。
「球速200km!?」
「バッターも少し一振りさせれば」
バッターが振ろうとしたバットは高速で動き始める。しかしバッターの腕が変な方向に曲がる。
「ぐあああああああああ!!」
「動く物体を高速にした結果の被害は知りません。ちなみに高速に出来る範囲は人間、から人間の部位まで可能」
六車は高速移動する。
「も、もちろん、自分もこんな感じで移動出来る。だけど……足痛い……。心臓バクバク」
さらに高速移動する為には、右足、左足、右腕、左腕等の部位をいちいち念じないといけない為面倒。
六車はネズミを持つ。
「俺はネズミの鼓動を速める事も出来る。つまり、身体の中に流れる血液の流れを速める事も出来る。速めすぎると血管が破裂して……」
ネズミは血しぶきをあげる。
「これ人間も楽に殺せる訳だ」
時の秒針が早くなる。六車が乗る車もエンジンを出していないのに動く。車のタイヤは火花を放つ。
「『高速で移動させる』と言う能力でエンジンじゃないのに動力無しで動かせることも出来る。移動させるって言う能力があるからね。言葉遊びかよ。ただ、この世界には摩擦と言うのがある」
六車はボーリング場で玉を持つ。
「高速にし過ぎると」
転がった玉は火花を上げて進むが玉は焦げた匂いとピンと共に暗い地下へ突っ込む。
「この能力は解除しない限り、いつまでも進み続ける。慣性の法則だね。進もうとする力が働く訳。摩擦で止まれば良いんだけどね」
- Re: 日常における超能力の影響(不定期更新) ( No.8 )
- 日時: 2016/11/08 14:35
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
六車は大量の鉄球を高層ビルの屋上に持ち込む。
六車は鉄球をビルから高速で落とし始める。鉄球の落下速度も六車が目で目視出来れば速める事も可能。よって大量の鉄球が音速レベルでビルの屋上から降って来る。
六車はさらに拳銃と剣を持つ。
「当然、リロード、弾の速度も速める事も可能。さらに……」
六車の周りには大量の警官が現れる。
「貴様何をしている!」
「この剣を高速に動かす事で銃弾を弾くと言う事も可能」
六車は銃弾を剣で弾く。
「単純に、大量の鉄球を俺の目の前で動いていれば高速に移動させる事も可能」
鉄球は地面を高速移動する。警官の足は貫かれ移動を止めない。しかし六車の所には鉄球が来ない。
「小さい物体なら設定する事も可能。自分には当たらない様に動くとか。摩擦の影響を受けないとか」
六車は時計台の傍へ行く。
「そして光速を越えればなんとタイムマシンが出来るかも知れない。人類がタイムマシンを造れる可能性が出てくるなんて……」
ただし、光速を越えると言う考え方では過去へ行くと言うのは実質不可能。過去を見ると言うのは可能かもしれませんが。
「うむ、正直資料を読んでも訳が分からないね。まあ、簡単に言うと大前提として過去に人を送り込むのは、光速を越えるって考え方じゃ無理って訳だね。まず、光速でさえ人間耐えられないと思うけどね。Gとか何かで。
で、今回の実験は未来の情報を過去の世界で伝えるって言う実験になりますな。ローレンツ変換や双子のパラドックスを踏まえて話しますね」
六車は時計台の前で二台の宇宙船を用意する。
「実験の検証には宇宙船が二台必要になるらしい。……あー……止めよう。何か面倒。一般人の範囲では此処まで。物理学者がこの能力手に入れればね。もっと楽しいんだろうけどね」
実際、光速を越えれば未来の情報を過去の世界に伝える事は可能です。しかしそれがタイムマシンと呼ぶにはまだまだらしいです。ただあくまでも一説ですので鵜呑みしないように。まあ、しないでしょうけど。
六車は自動販売機の前に立つ。
「そんな実験を一般人がわざわざやる訳が無い。人生はもっと楽しい事に費やすべきだね。うむ」
六車は高速で缶コーヒーをゴミ箱に捨てる。
その後、彼は高速でジャグリングをするビックリ人間として有名となる。
その様子を、空木がテレビで見ていた。
「超能力者じゃないのに私より凄いですね。感服しますよ」
第六話 リミッターオーバー(光速越え) 完