複雑・ファジー小説
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- 貴方と過ごした日々
- 日時: 2017/06/16 16:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。
主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳
登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。
木戸孝允 三十六歳。
明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.32 )
- 日時: 2017/09/29 09:49
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
あれ?どうして怒っているの。
どうやらまだ酔いがさめていなかったようだ。
でもこのくらいいつもしている。くらいにしか思っていない。
「いい度胸だね」
低くその声を聞いたとたんどさっと後ろの布団に転がされた。
いきなり布団の上に転がさて目を見張る。
上に覆いかぶさってきてそのまま唇を重ねてくる。深く熱く。
「まっ。まって」
慌てて声を上げたが舌を絡められていった。
目を閉じてその激しさに真っ赤になっていた。
「仕切り直しをするつもりだったのに全てを台無しにしてくれたね」
にこーりと笑った。
ひっと。条件反射で逃げようとした。
がしりと腰をつかまれるとびくっとした。
それを見て一瞬傷ついた顔をした。
「あ」
罪悪感がうまれる。
すぐに体を起こす。
はぁとため息をつきいつもの男に戻る。冷静に感情を置いてきた作り物めいた顔に。
「ちがっ。違います。あなたを拒みたいわけじゃない」
手を伸ばしたらぱしっと振り払われた。
「すまない。今は触れないでくれ。これでも必死に耐えているんだ」
「あ」
そんなことを言われて嬉しくもあり切なくもなる。「ごめんなさい」声に出さずに謝った。
「この気持ちは簡単なものでも単純なものでもないんだよ」
「あなたはいつも余裕で大人だと思っていた」
「そんなわけないだろう」
布団の上で上半身を起こしている紫衣の頭を撫でつける。
「明日は覚悟しておくことだ」
乱れた髪を撫でて整えている。
「もう少しだけ時間を下さい。あなたを拒みたいわけわけでも傷つけたいわけでもないですから」
「別に傷ついているわけじゃない」
ふいと視線をそらされてしまう。すねてしまったのかもしれない。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.33 )
- 日時: 2017/09/29 22:26
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
布団の中に無言で木戸は潜りこんでいった。そのまま目を閉じるとすぐさま寝息がきこ始めた。
シーンとなる室内に取り残されて上から綺麗な横顔を覗き込む。起きている時はかなり強烈な印象をあたえる木戸であったが目を閉じてしまうとどこか穏やかで見とれてしまう。
「ねぇ。私が怖がっていると気が付いてあなたは止めて下さった。わかっているます。何を望んでいるのかでもどうかもう少しだけ時間をください。あなたは優しすぎる」
そっと頬を撫でて横の髪をどかした。人に触れられるのを嫌がる。
起きる気配はないのを確認して小さく言った。
「おやすみなさい」
木戸の隣に横になると目を閉じる。
木戸は目を開けると紫衣を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。
「明日を楽しみにしている」
とだけいい目を閉じる。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.34 )
- 日時: 2017/10/01 17:22
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【大久保家】
楓は初めての酒を飲んで酔ってしまっていた。眉を大久保はよせてじっと見つめてきた。
「酔っていないか?」
「たぶん?」
といっている。だいぶ怪しい言い方をしている。
楓はにこにこしてご機嫌なようだ。
「もう寝ろ。まだ私は仕事が残っている」
大久保は楓を部屋から追い出そうとしたが楓は椅子から立ち上がると首を傾げる。
「ここで寝ていいのでしょう」
「ああ」
と答えたので寝室に向かい歩き始めた。その足をふいに止めて背中に声をかけた。
「明日は・・・いいえ。明日も遅いのでしょう?」
大久保は仕事部屋に向かいながら質問に答える。
「そうだな。話し合いが終わらないだろう。先に寝ていろ」
と言われてうーんと悩み楓は不敵に笑う。
「いいえ。待っていますよ。旦那様」
まだ少し酔っているようだ。
「名前を呼べと言っただろう」
「はい。利通さん」
「で?どういう意味だ?」
「わかりませんか?」
意味深に問いかける。
「・・・」
「・・・」
お互いに無言で見つめ合う。
女の方から口にできないことだ。
「いいのか」男は察して聞いた。いつになく真剣な目で楓を見つめていた。
「世間では初夜ですよね」
確認を取るのはそれでいいのかと言う意味だった。お互いに遠慮をしていた。欲や情のようなものではなくただ知ろうとしていたのだ。政治的な関係も含まれているからだ。
「本当にそれでいいのだな」
「おかしなことをいいますね。ここまできて怖気づきましたか?」
「なにっ?」
僅かに語尾が上がる。あ。やばい。と本能で告げる。
婚約をして求婚をしていくとこまでいっている。
「ふっ。いったな。後悔するなよ」
「はい。望むところです」
不敵にお互いに笑い合っていた。
「終りそうになければ手伝いますよ」
「いらん」
くすくす笑っている。
こうして明日の約束をした。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.35 )
- 日時: 2017/10/03 22:57
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【相原家】
酒盃を交わした翌朝の事。初めて同じ布団に寝て目を覚ました。人の肌に驚き目を見張る。
そうかと思いだしてドキドキする胸を押さえつける。陽菜は着替えるためにそのまま出ていった。
寝たふりをしていた土方は目を開ける。
「寝られなかった」
大きく伸び—をして着替えるために布団を出てたたんでおいた。天気がよければ布団も干すことにもなるだろう。
「土方さん。起きていますか」
「ああ」
襖の陰で声をかけられてすいっと開けた。折り目正しく廊下に膝をついていた。
「おはよう」
「おはようございます」
ゆるりと歩き出すといつものように後ろをついてくる。
「朝餉が整っています」
「いつもありがとうな」
「いいえ」
こうしていつもの朝がやってくる。掃除をして洗濯をしていた。土方が手伝おうと庭先に降りてきた。
「手伝おうか」
「いいえ。誠さんにそんなことさせられません」
「陽菜。めおととはそういうもんだと思うんだが」
つねに土方は陽菜のそばにいたがった。それを嬉しそうに受け入れていたのは陽菜だ。
「それに早く終われば別のこともできるだろ」
「もうすぐ夏になるのですね」
「そうだな。夏用の着物も用意しとかねぇとな」
まぶしそうに空を眺めていたらふいにそう言われた。
「そうでした。かんじんなことを忘れていました。反物を買いに行きませんか」
「ああ。どうしたんだ。いきなり」
「夏用の着物を買いに行きませんか」
「午後はそうするか」
「はい」
この日の予定がこうして決まる。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.36 )
- 日時: 2017/10/05 09:23
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
買い物を済ませて夕餉をすませ風呂の用意をしに席を立つ。土方はお膳を下げて片付けを始める。
「誠さん。お風呂の用意がととのいました。後は私がします」
「わかった」
土方は濡れた手を自分の着物で拭おうとしたので手拭を陽菜が渡す。
「誠さん。手拭をお使いください」
「ああ」
呆れた目を向けられたので慌てて手拭でふき陽菜に渡す。土方は自室に戻り必要なものを持ち風呂に向かう。廊下を進んでいく。
この時土方はこれからのことを真剣に考えていた。
陽菜は後片付けを済ませて奥座敷に向かう。襖を開けて2人分の布団を用意して布団の間についたてをたてていた。
奥座敷の襖を開けた。
寝間着に着替えた夫がそこに立っていた。
すうっと目を細めた。
「陽菜。ついたては片付けろ。んで・・・・。布団は一つだ」
立て続けにつげられて目を白黒させていた。視線は土方を行ったり来たりさせていた。
「とりあえず風呂に言って来い。話はそれからだ」
ふっと笑い土方は中にと足を踏み込んでいく。
「はい。ではいってきます」
手拭と着替えをもって部屋を後にした。
『それにしても京にどうしたのかな。土方さん』
うーんと考えて天井を眺めていた。
この時陽菜は何もわかっていなかった。土方が何を考えているのか。
私はそばにいられるだけで幸せです。
そう心で呟きふるふる頭を振る。熱くなった頬をぺちぺちちと叩いてて廊下を進む。
しばらくして奥座敷にて戻ると布団は一つになっていた。思わずぱたんと閉める。
「おい、なに閉めてんだよ」
「すみません。つい」
慌てて開けた。
「とにかく中に入れ。そこだと冷えるだろう」
「はい」
ゆるりと閉めて中に入っていった。
明りを灯して土方は書物を読んでいた。その本を閉じてくるとこちらに体の向きを反転させゆっくりと立ち上がって布団の上に移動して胡坐をかいた。
「こい」と片手を差し出していた。誘われるように陽菜はゆっくりと土方の元に歩いていく。
「土方さん」
小さな声で土方を呼んだら鋭く訂正された。