複雑・ファジー小説
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- 貴方と過ごした日々
- 日時: 2017/06/16 16:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。
主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳
登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。
木戸孝允 三十六歳。
明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.22 )
- 日時: 2017/08/07 14:35
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
木戸がいない間に虫が付いた。排除するべき算段を頭の中でしていく。妻には知られたくないことを夫は計画を立てる。もし知られれば嫌われるのは木戸の方だ。汚いことだ。それでも守りたいものはたった一人だけ。シイだけが守れたらそれでいい。もう一つの彼の冷たい一面だった。
「何も心配しなくていいから」
今日はこれから仕事にいくことになっていた。いけば夜遅くになるまで帰れない。
「今日は楓のところにいっているといい」
優しく髪の毛を撫でられた。
「わかりました。孝允さんは無理をしないでくださいね」
妻らしく夫を見送っていた。
大久保家にこの日はいくことになった。
大久保家の自宅のベルを鳴らしたら楓が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。紫衣」
「お邪魔します」
楓に挨拶して中に入っていく。
「何があったの」
察しの言い楓が気が付かないわけない。
客室にいき紅茶を口にしてから切り出してきた。
簡単に説明をしたら「そう」といいなにやら考え込んでしまう。
「楓ちゃん?」
自宅にて仕事をしていたが楓はそれをほおり出した。
「ごめんね。忙しいのに」
なんだか情けなくなってしまう。どんどん先に行く友人がすごいと感心していた。
「急ぎじゃないからいいよ」
楓の仕事は装飾品を考えていたところだった。
「紫衣の仕事は?」
「翻訳の仕事」
また紅茶を飲んでテーブルに戻す。
「そいつ。どこで知ったのかな。外には木戸さんとしかいかないよね」
「うん。そうだよ。私は一人だと迷子になるから・・・」
「方向おんち。か。人のこと言えないけどね」
楓がわざと明るくちゃかしてくれる。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.23 )
- 日時: 2017/08/10 22:03
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
会えて楓がそう言い気分を変えてくれる。
「手紙何てもらった。初めて」
楓は難しい顔になりすうっと左の目を閉じて顎に指をかけた。
「怒っているよね。絶対」
何のことかと紫衣に顔を向けた。どうやら夫が苛立ちを感じていると余計なことを考えているようだ。
「あの人は別のこと考えているんじゃないかな」
「別のこと?」
意味が分からないと首を捻る。
その頃木戸はあり得ないほど怒り狂っていた。出勤してきた彼を目にした部下は慌ててはじによけていった。
「ひい」
「どうしたんだ。あの人」
「何があったんだろう」
ひそひそと声が聞こえていたが木戸にはどうでもよかった。
「どうしてくれよう。この始末」
恨みがましい声を聞いて部下たちは泣きそうになる。自分たちは何をしてしまったのかと。
しかし木戸はそんなことにすら気が付かない。己の考えに没頭していた。この日の木戸の機嫌は最高潮に悪かった。
そののち彼は朝日奈を呼んで秘密裏に犯人を見つけ出し脅しをかけた。そんなに日常であった。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.24 )
- 日時: 2017/08/15 16:55
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【相原家】
まだ東京に引っ越しをして間がない時のこと。土方と陽菜は口約束はした。祝言はあげていない。だからせめて酒を買ってきた。ここから新しく生き直すために。
「どうかなさいましたか。土方さん」
陽菜が帰って来てからずっと押し黙っているので不思議そうに尋ねた。
「うん。陽菜そこに座れ」
奥座敷にあがり土方は上座に陽菜は正面に座った。
どんと酒の瓶が置かれる。
「お酒ですか?」
「ああ」
「ですが私は飲めませんよ」
指摘したら彼は苦笑いして知っているといった。
「だが飲んでくれねぇと困る」
ますます困惑してしまう。
「どういう意味ですか」
土方の正面にいて陽菜が首を傾げている。
「つまり」
やや赤くなりながら言った。顔をそらした。
「酒だけでも酌み交わさねぇか」
「えっと」
まだわかっていないらしい。
「だから三々九度をかわさねぇか。こんなんで悪いが」
そらしていた目を戻し陽菜を真っすぐにとらえた。
「三々九度・・・・!!」
驚きすぎだ。
「落ち着けよ」
肩をつかまれる。意志の強い眼だった。この目は知っている。志をもったそんな顔をしていた。
「よろしくお願いします」
姿勢を正した陽菜は頭を下げてきた。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.25 )
- 日時: 2017/08/16 22:00
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
陽菜はそういい頭を下げた。
「ああ。こちらこそ頼む」
照れているのだろう。顔を背けていた。滅多に見れない土方の緩んだ表情だった。
こちらまで恥ずかしくなってしまう。
「ちょっと待っていろ」
奥に行き荷物を漁り始めていた。
「それは・・・・」
声を失う陽菜。土方が手にしていたのは着物だった。
「どうしたのですか」
「いつか渡そうと思っていたんだが機会がなかった」
桜の柄の入った着物だった。
「大久保さんにさきこされちまったが・・・」
悔しそうにいい笑う。
「あれはカウントされるのですか?」
「かうんと?」
「えーとつまり数に入りますか」
彼にわかりやすいように言い直した。
「入るんだよ」
むすくれた顔をしていった。拗ねてしまったようだ。
「そうですか」
「そうなんだよ。いいから着替えてきてくれ」
くすくす笑い陽菜は受け取った。気持ちが全然違うというのに。
土方にあたらしき着物を渡す。
「考えていることは同じですのね」
そういい笑った。
「違いねぇ」
土方も笑う。
そんな日々の中2人は晴れてめおとになった。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.26 )
- 日時: 2017/09/22 16:39
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【木戸家】
祝言をあげることはしないと2人は決めていた。そんなある日。木戸は酒を持って自宅に帰ってきた。
「それは?」
不思議そうに紫衣が木戸が手にしている酒に視線を流しこてんとした。
「ああ・・・これは・・・」
どこか言いずらそうに顔をそらしている。
「お酒飲まれるのですか?でしたらつまみも用意します」
「いいや。これは。その必要ない」
「どうしてですか?」
言いずらそうにしながら簡単に説明をする。
「つまり私も飲むのですか」
「そうだ」
「でも飲めませんよ」
困ったように紫衣は言った。少しも理解できなかった。
「・・・・」
「無言で睨まないでください」
わかるほうが無理がある。理解力はあるが察し能力はなかった。
「つまりお酒を飲まないといけなのですか?」
「そういうことだよ。簡単に言えば三々九度をかわさないか」
「三々九度・・・・!!」
ひっくり返りそうないきおいだった。
「すぐに用意をしてきます」
「紫衣。落ち着いて。いいかい?私は着替えてくるからその間に準備をしてきてくれ」
木戸が真剣な目で彼女を見つめてくる。
「はい」
嬉しそうにいい部屋に戻っていくと着物姿で自室にて酒の用意と酌み交わすために器を用意をして畳の上に置いた。袖で口元を隠してつややかに笑う。しばらくすると木戸が入ってきた。静かに襖を横に引いて開ける。
すいっと。
「おかえりなさいませ」
「ああ。ただいま」
挨拶さえ忘れていた。2人はおかしそうに笑い合う。すたすた畳をすべるように移動をして上座についた。紫衣は正面に席に着く。
「横に来てくれ。これから君は私の妻になるんだからね」
「妻になって本当にいいのですか?」
確認をしてくるので「くどい」と今度は睨まれた。
「ごめんなさい」
「謝らないで。君以外誰と契りを結べと?」
ん?と今度は甘く微笑み頬を撫でられた。
「あなたがいいです。私も」
やっとほっとしたように笑った。
そんな日々を過ごしていた。