複雑・ファジー小説
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- 貴方と過ごした日々
- 日時: 2017/06/16 16:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。
主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳
登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。
木戸孝允 三十六歳。
明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.17 )
- 日時: 2017/07/26 21:53
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「おい」と肩をがしとつかまれた。何故か2人がかりで押さえつけられている夫を見て妻はあっけにとられる。目を丸くした。
「歳が離れすぎているだろう。バカも休み休み言え」
ぴきっときれた音がした。年齢についてだけは言われたくなかった夫がついに切れる。
「バカだとっ」
小さく言いふっと笑う。妻はやばいと思った。
「あ、あ、あの」
慌てて楓は大久保の袖を引く。
「ああ?」
ひっと本気で楓は怯える。
『人を殺しそうな顔をしていますよ』
政府の人なのに何て凶悪な顔をしているのか。邪悪すぎる。
「落ち着いてください」
「黙れ」
私のせいではないでしょう。周りの人はすでにやばい雰囲気に引いている。
「皆さん一応言っておきます。この人夫なんですよ」
といったのに信じてくれない。うっそうだ。その男かばわなくていいんだよ。と同情と哀れみの目をされた。
「帰りましょうね。これ以上迷惑かけられません」
かなり物騒なことを言っている。
「覚えておくぞ。奴らめ絶対に許さん。この私をそこらにいる暴漢のたぐいと一緒にしたこと・・・・」
「落ち着いてください。利通さん」
腕をつかむとすたすた自宅に帰るためにかけだしていく。間違っていたのかな。外に気晴らしに出かけたつもりだったのに。
「私利私欲にはしらないで」
機嫌を必死にとっていた。自宅の玄関にはいったとたんまたしても壁に突き飛ばされた。
「さて」ひくーい声だった。ぶるりと震える。
「悪役みたいです」
「そう思うなら私の機嫌を直してみせよ」
にこりとした。かなり機嫌の悪いことが分かる。
あきらめましたよ。旦那様。
「とりあえず寝室にいきませんか」
手を頬にすべらせた。その後仲良く寝室に入っていく。
おまけ・・・・。
「どうしてくれる?」
それは何をしてくれるという意味だった。いっそのことなかったことにしてください。そんな嬉しそうな顔で言わないで。
ベッドに腰かけて待っている夫に腕をからめて口付ける。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.18 )
- 日時: 2017/07/27 21:54
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【木戸家】
働きすぎだと言われて木戸孝允はようやく何か月ぶりかの休みをとる。
紫衣は一人で夫のために朝の準備にとりかかっていた。和食が多い中西洋のものも挑戦していた。
『あの人の休みなんて久しぶりで何をしてあげたらいいの』
ふーんと妻は悩んでいた。ふっと笑う声がした。ばっと振り返る。
「孝允さん」
嬉しそうに笑みが広がった。
「どうしたんだ。一人で百面相をして」
優しい顔をして和服を着たまま階段を降りてきた。
「ひゃ、ひゃくめんそうですか」
目をまんまるにさせて問い返す。
「何か困ったことでもあるのか」
慌てて居住まいを正した。
「いいえ。何もありません。そうでした。朝食の用意ができました」
とたんに顔が曇り眉を寄せた。
「いつも悪いと思っている。本当なら私も手伝おうと思っていたんだよ」
不満そうに言われてしまう。
「私余計なことをしてしまいましたか」
不安になり夫にすがりつく。
「まったくそうではないよ」
別な心配をしていたらしい。手を伸ばして彼は頭を撫でてくれた。
私はまだ不安だった。友人たちみたいにうまく妻になれていない。胸を張れることがないから。わずかなことでも落ち込む。
「紫衣。不満なんてないよ。君は気を使いすぎだ。夫である私に少しは甘えてくれていいんだよ」
珍しくも彼が饒舌に語った。
『私を心配してくれている』
片付けは一緒にした。
「ところで行きたいところはないの?」
今は2人で仲良くお茶を飲んでいるところだった。「いきたいところ?」小声で問いかける。
「欲しいものとか。必要なものとかないのかと思ってね」
ゆるりと湯呑に口をつけながらそう言われた。
「私のことなら気にしなくていいんだよ。なにしろ気晴らしに休みを取れといわれたからね」
妻はこてんと可愛らしく首を捻る。
意味がよく分からない。
「室内にこもりすぎて頭が固いと言われてしまった。昨日は大久保さんも休んですっきりしたらしい。実にいい顔をしていた」
少しだけ頬を緩ませ彼がそう言う。
新しいお茶をそそいで気になることを聞く。
「あの人たちはどうして共にいるのでしょうか」
くいと肩眉が上がる。
「どういうことかな」
「なんで言い争いをしているのにめおとになったのかと」
ふっと笑う声がしてそっちを見たら簡単に説明をした。
「似たもの同士だからだよ」
で?と視線を感じて「なんです」首を捻るとため息をつかれた。
「続きだよ。行きたいところはないの」
少しばかり苛立ちが感じた声になる。
「すみません。事務的なことでもいいですか」
東京の街を見て見たいと言ったらにこりと了承を得た。
リストは紙と筆をかいたいと言う。街に出ると西洋の服を着ている人はいなく着物姿が目立つ。2人は仲良く歩く。紫衣は夫の後ろにつき背中を見守る。
「気分転換になっていますか?」
「十分になっているよ」
少し何か言いたそうにしていた。
「どうかなさいましたか」
「やはりこの常識を変えなくてはならないか」
小さすぎてよく聞こえなかった。
「ためしてみよう」
「はい」なにをですか言う前に腕をつかまれて木戸は紫衣の横に立ち歩き始めた。
その瞬間ざわめいた。空気すらバッサリと切り捨てた彼は気にしない。
「ようは練習だよ。私たちが見本とならねばいつまでもこの古き時代を変えられない」
要するに西洋にもう少し近づけということらしい。
「反感買いませんか」
「反感が怖くて政府の仕事などやれないよ」
木戸はメモを取り始めてしまう。
その後は自宅に帰り和室で妻が夫に膝をかして昼寝を楽しんでいた。
妻は優しく髪を撫で続けていたそんなある日の出来事。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.19 )
- 日時: 2017/07/29 18:28
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【相原家】
とある夏の日の思い出。屯所にいた頃を思い出していた。
土方はこの夏の暑さにやられていた。へばりそうだった。障子を開け放ち風を通していのだが無風であった。
「あっちい」
うちわでひたすらあおぐが暑い。汗が出てくる。
「陽菜は暑くねぇのかよ」
ぐったりしながら控えている陽菜に問う。
「暑いですよ」
見ると首元には汗をかいていた。いくら暑くても女の陽菜は襟元をくつろげない。ふいに思いつき体を起こして日陰を探し始める。
「陽菜ちょっとこっちにこい」
手招きした。
いきなり声をかけられて陽菜は慌ててそばによっていく。庭先に水の入ったおけが用意されていた。
「あの?」
「つまりだなこれなら足だけでも冷やせるんじゃねえかと思ってな」
早口にまくしたてられたので目を一度ぱちくりさせる。
「よろしいのですか?」
「そのために用意したんだ。使え」
短く命じられたので小さく笑う。
「ありがとうございます」
といい袴の裾を持ち上げて足をつけて見た。
「ひんやりしていて気持ちがいいです」
嬉し気に土方に告げた。パシャリと水を跳ねさせる。
大きめな石に腰かけて足を動かしていた。
少し離れたところに土方は見張りのため立っている。
「土方さん暑くないですか」
「ああ。俺のことはいい」
すいとまた視線を外される。不思議そうにしていた。
さっきまで暑そうにしていたのに。きっと外のほうがさらに暑い。
そっと両手で陽菜は水をすくうと土方に向けて投げてみた。
やってしまった。後悔した。
頭から水をかけられた土方はしばらく無言でいた。
水の雫を頭からこぼしていった。ぽたぽたと。
ふっと土方が笑った。その時陽菜は沖田の黒い笑顔を見た。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.20 )
- 日時: 2017/08/03 21:54
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
土方のこんな邪悪な顔は初めて見た。
「俺にけんかをふっかけるとはいい度胸じゃねえか。俺はなぁ。やられたらやりかえす主義だ」
とたんに彼は大きな手の平にすくわれた水は陽菜の頭の上に落としていった。ばしゃーと音がした。あっけにとられてしばらく固まっていた。
子供のように次にお互いに水をかけあうようになった。
「何をするんですか。私はそんなにかけていないです」
怒りながら水を土方にかけまくる。
遠慮もなく土方もかけていく。次第におかしくなって笑い合っていた。
〜回想終了〜
「ふふ」
「何笑ってやがる」
「いいえ。昔を思い出しました」
「ああ?」
こてんといぶかし気にして陽菜を見下ろしてきた。
「だって。今日みたいに暑い日でした」
「あんときかぁ。・・・・そのあと大変だったんだぞ。総司たちがきて」
「でも歳さん。楽しそうでしたよ」
2人で仲良く水に足をひたして夏の暑さをしのいでいた。土方は陽菜を膝の上にのせていた。
「なつかしいよな。けどよ。こういうのも悪くねえだろう」
にやりと笑う夫に嫌な予感がした。逃げようとしたが彼が逃がすわけがない。がしりと抱えられて首の後ろに唇をよせてきた。びくっとした。
「やめてください。誠さん。誰かきたらどうするのですか」
「誰も来ねぇよ」
のんびり言う夫はかわしてしまう。
「それに私汗をかいていますし」
「なら風呂にはいろう」
「何を言っているんですか。まだこんなに明るいのに」
そんな抗議すら耳に入っていないふりをして土方は立ち上がろうとしている。陽菜は息をすう。
「誠さん。いい加減になさいませ。わたくし本気で怒りますわよ」
真っ黒い笑みを浮かべた陽菜がそこにいた。
「ま、まて」
土方は謝り冗談だといった。
『この顔は知っている。まじで切れた総司の姉じゃねぇか』
土方は陽菜を怒らせてはいけないと察した。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.21 )
- 日時: 2017/08/05 12:50
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【木戸家】
これはとある日の出来事。夏の暑さが和らいだころ。
身に覚えのない手紙が届いた。
〈いとしい人へと〉
つづられていた。不思議に思い中を開けて見て見た。
紫衣はひっと鳥肌が立った。
なにこれー。
一日のことが事細かに書かれていた。
「どうした。紫衣」
したくをととのえた夫が上から降りてきた。
妻は冷たい床にへたりこんで震えていた。
無言で手紙を差し出されて「いいの」と確認して中にざっと目を通す。とたんに彼は無になった。
「なんだ。これは」
声は凍えるほど低いものになった。
怖いです。その顔。
政府高官の顔なんてしていない。
怒りを身の内にたたえたまま問い詰めてきた。
木戸は立ったままで紫衣はへたりこんだままでいた。
「説明をして」
その時には手紙は彼の手の中でぐしゃぐしゃになっていた。
「わかりません」
ついに泣き出してしまう。両手で顔をおおい下を向く。
我を失い怒りをたたえる彼ほど恐ろしいものはいない。
「な、なんで泣いているんだ」
とたんに焦り始める。人一倍人見知りで怖がりな彼女は男の知合いなどいない。
「落ち着いて。ほら立って」
片手を伸ばし引いて立たせてくれる。そして膝の上に乗せられた。そのまま背中をなでられた。
「泣かないでくれ」
彼の優しい言葉にゆっくりと面を上げた。
「嫌いにならないで」
「ならないよ。その必要もない」
はっきり断言した。
「腹が立つのはあれだ」
恨み言を呟いていく。