複雑・ファジー小説
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- 貴方と過ごした日々
- 日時: 2017/06/16 16:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。
主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳
登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。
木戸孝允 三十六歳。
明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.2 )
- 日時: 2017/06/18 20:59
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「幸太郎はああ、言っていたが俺は本気だぜ」
井戸を背中にして男から逃げようとした。
それが気に食わなかったのかむっとした。熱さえこもった眼つきに陽菜は自然に恐くなる。心の中で助けを求めていた。
「おい、そこでなにしてんだ」
伊之助はその声にばっと逃げていった。
陽菜は途端に力が抜けてへたり込んでしまう。
「陽菜」
そこには土方が立っていた。謹慎中と言えとも身動きはできる。常に監視の目は光っていたがそれでも自由は許されていた。
「大丈夫か」
「はい」
力が入らずに陽菜はしばらく座り込んでいた。
「ほら」
手を差し出されて待っていてくれている。
手を重ねたらひょっいと引き立たせられた。
「どうしたんだ」
「たいしたことありません」
「嘘をつくな」
「本当にたいしたことはないのです。ただ・・・」
「好きだとでもいわれたか。それかつきあってくれとでも」
「そんなはっきりとは言われませんでした。ただどうして独身のままなのかと聞かれました」
見る見るうちに鬼のそれに変わっていく土方を見た。
ひっとと怯える。
「ひってお前失礼だな」
その後ぶつぶつ言って吐き捨てた。
「どうしてくれよう・・・・」
恐ろしい言葉を聞き陽菜はかつての鬼副長を思い出してぶるりと震えた。
「お、おちついてください。相原さん」
両手をふりふりさせて土方を抑えようとしたらぎろりと睨まれる。
「何かされてからじゃおせぇだろうが」
大きい声では言わないがすごんできた。
私のせいですか?
あまりの怖さにすみませんといったらため息をつかれた。
「たくっ。わかってねぇな」
言われたらいきなりぐいっと顔を近づけてきた。
近い。綺麗な顔が目の前にあり慌てる。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.3 )
- 日時: 2017/06/19 18:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
いきなり唇をふさがれた。
「ふえ?」
「なんだよ」
ぶぜんと返され陽菜はおずおずと顔を上げた。
今何がおきたのだろうか。
今度はゆっくりと唇が触れた。
それだけで真っ赤に染まっていく陽菜に土方は呆れた目をしていた。
『可愛いんだがこれだけで真っ赤になるのかよ』
実際あきれてはいなかっただが心配にはなる。
「さっきの男もこうゆうことしようとしてたんだぞ」
ええーと驚きの声を上げたらため息をつかれた。
「相原さんになら私。何をされても」
ばしと口を片手でふさがれた。
「バカ。それ以上言うな」
ふいっとそれされてしまう。
『もしかして私嫌われてしまったの?』
なんだか悲しくなってきて瞳がうるみはじめた。
大きい目から涙がこぼれはじめたのをみて土方は仰天した。
「泣くなって俺は・・・お前に泣かれると困るんだよ」
手を伸ばすと乱暴に涙を払ってやった。
その顔は赤くなっていた。
「どうするかな」
独り言を言い始めている。土方を見ても不思議そうにしていた。
その頃には涙は止まっていた。
土方は近くに座り込むと陽菜を抱き寄せた。腕をつかまれたので体のバランスがくずれて倒れ込みそうになる。彼はなんてことはなく受け止めると膝の上ににせられてしまう。
「相原さん。人が・・・」
「大丈夫だろ。これくらい」
ていって聞いてはくれない。
しばらく2人はこうやってなんてことはない話を続けていた。
彼女はそれだけでもよかったのだ。
そばにいられるそれがどんな奇跡のことだったか。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.4 )
- 日時: 2017/06/23 12:12
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
紫衣の場合。
「お前は結婚しないのか?」
いきなりそんなことを言われて目を丸くさせる。彼女は布団を干そうとしていた。
「大輔さん。私は・・その・・」
「なんだよ。できないわけでもあるのかよ」
おまけに年まで聞かれた。頬を片手にそえてぼそりと言う。
「えっと今年で十九歳です」
「なら俺が立候補してやろうか」
小さな声だったので聞こえなかった。
「ごめんなさい。よく聞こえなかった。なんですか」
聞き返したらふいとそらされてしまう。しばらくまっても何も言われないので気のせいと思い外に出ていく。
大輔は空いている時間は本を読んでいた。
「今日は天気がいいのです。洗濯もしましょう。洗い物を出しておいてください」
「本気で言ったんだぞ」
「なにがでしょうか」
「・・・・」
間が空いた。少しずれている紫衣だった。
大輔はやけになり本をその場に置いて立ち上がる。
「大輔。なにやってんだよ」
同じ部屋の人が戻ってきた。
「な、なにもしてねぇ」
「嘘つけお前。俺たちがいないと思って狙ってたんだろう」
2人は大輔をからかってくる。
どうしたらいいのかためらっていたら青年が声をかけてくれた。
「ここはいいからいってくれ」
「はい。飯塚さん。洗濯しますのでまとめておいてくださいね」
優しく言い彼女は去っていく。
本当に困っていた。こういう話があちこちでされるようになっていた。
外に出て空を見上げた。そして目を細める。
「本当に困ったわ」
「何が困ったんだ」
ふいに声をかけられて振り返る。想像した通りの人がそこにいた。
「木戸さん」
「でもどうしてここに?」
こてんと首を傾げた。
スーツに包まれた男が立っていた。何が困ったんだと問いかけられた。
「実は最近。結婚してないのはどうしてだと聞かれることが多くて」
「君はどうしてだと思う?」
優しく聞かれた。
「わかりません」
小さくなり彼の様子をうかがったらため息をつかれた。
迷惑をかけているのだろうか.気苦労が絶えない人だ。
「君はもう大人の女性になっているからだよ」
それだけを言われて目を丸くさせる。
「えっと」
戸惑い聞き返している。
いきなり距離を詰められた。気が付くと唇が重なっていた。それはすぐに離れていった。
「すきがあればこういうことされる」
だから気をつけろと言われた。
「こんなこと。あなたしかしない・・・ごめんなさい」
無言で睨んできた。あわてて謝った。
「さてどうしたものか」
1人で彼は思案している。困った女だと言われ苦笑される。
なんか理不尽だ。そう思ったが何も言えなかった。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.5 )
- 日時: 2017/06/25 18:42
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
楓の場合。
天気がいいので空を見上げて目を細めると頬を叩いて気合を入れた。大量の洗濯物を籠の中にいれていく。その中でも変わった奴がいた。
楓が背後の気配をたどる。さっとよけた。見事にべしゃりと地面に激突していた。
「何をしているのですか三木さん」
「なんでよけるんだよ」
「当たり前です。何がしたいのですか」
ひどくそっけなく扱っているというのにへこたれない。繕い物は別にしておく。
「いい加減に俺のものになれよ」
「いやです。私は忙しいんですからかまわないでください」
外にて洗濯をしていく。その姿をじっと見てくる三木。
「なぁ。何が不満なんだ。歳だって近いだろ」
「全てにおいて不満です」
「・・・」
はっきりと引導を渡す。仕事を再開していく。ごしごしと手でこすりつけ苛立ちがつのっていく。ぱしゃりと水が跳ねる。
「あーもうー。苛立つ」
ふんといい桶に洗濯物を叩きつけた。
「ふうー」
ぜぇはぁと洗濯物に八つ当たりをしていた。水しぶきがあがる。
「どうしてくれよ」
ぶつぶつ言っていた。楓はとあることを考え付く。すさみきっていた。
屋さぐれた目をして空を睨んでいる。
「どうした。そんなに苛立って」
振り返るとそこに大久保がいた。
「大久保さん」
とたんに嫌な顔をした。
「おい、失礼な奴だな」
眉間にしわをよせる。あれはくせになっているなと考えていた。
「いいえ。ただ一匹うっとおしい奴がいまして。どうしてやろうかと思っていたところです」
楓にかかればうっおしいに変わる。かわいそうな男だった。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.6 )
- 日時: 2017/06/26 23:14
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「三木と言う男の事です」
やや目を大きくさせた大久保。
「お前のいくつか上の男だったか。確か一兵士だったか」
といいふむと納得している。
「お前どう思った?」
「正直うっとおしい男です。それだけですが何か」
「ふっ。お前にかかればそれで終わりになるのか。哀れだな三木も」
何やら楽し気にしている。
「本気で言っていたらどうするのだ」
「あんな男はおことわりです。第一私は結婚など望んではいません」
突拍子もないことを言われた大久保は目をむく。
「お前。本気か」
誰もいないことを確認してから楓は手を伸ばして首に縋り付く。やはりここが一番安心できる。目を閉じてできついていた。
しばらくは動かなかったが片手が腰に回った。
「私は貴方の足を引っ張る存在になりたくありません。だからいいのですよ」
風が吹いていく。楓は切なく笑う。
そう言わせたのは大久保だった。
「バカ者。愚かだ。私もお前も」
「はい。お互い様ですね」
そう言ってお互いに笑った。仕方がない。それでもはなれられないのだから。
「すまない。私にはこれ以上のことはできない」
「大丈夫ですよ。そばに置いてくださればそれだけでじゅうぶんです」
そう楓も大久保も今はそんな余裕がなかったのだ。結婚をしてしまうのは簡単だが彼のそばはまだ危険な状態だった。一年はまたないといけない。その間にできること全てをしていくつもりだった。まして土方はいまは謹慎している身の上だ。そううまくはいかない。