複雑・ファジー小説

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貴方と過ごした日々
日時: 2017/06/16 16:44
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。

主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
    
    立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
   
    望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳 

登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。

     木戸孝允 三十六歳。

明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。


    

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.27 )
日時: 2017/09/24 20:44
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

【大久保家】
新しい家に移って間もなくの事。祝言なんて上げているひまなんてないので楓は別にそれでよかった。形に何てこだわりはない。寝室は別にしてあるのが不満だった。そんなある日大久保が日付が変わる前に帰ってきた。玄関の扉を開けると楓が出迎える。
「おかえりなさい」
「ああ。いまかえった」
片手に酒を持っていた。いただきものですか?わずかに楓の顔がしかめられる。
「こんな時間に飲むつもりですか」
「これは私が飲むために買ってきたんじゃない」
スーツ姿のまま大久保は酒を持ったまますたすた奥に入っていく。
意味不明。楓はその後ろ姿を追いかけていく。彼はそのまま自室に入るとスーツから着物になる。
「酒を飲む用意をしてくれ」
「構いませんけど飲みすぎては駄目ですよ」
仕方なさそうに楓は言い一度部屋を出て酒を飲むための器を用意しにいった。
大久保の自室は洋室だった。テーブルの上に置かれた酒の瓶に楓はっ視線を向けた。
「来たか。そこに座れ」
着物姿でどこか偉そうに命じてきた。いぶかし気にしながらも示された席に着く。
「なんですか?」
綺麗なガラスの器にそっと酒を注いでいく。なみなみと注ごうとしたら止められた。今日はおかしなことばかりが起こる。
楓は着物の袖が邪魔にならないように片手は押さえながら酒を注いでいったのだが大久保に言われた。
「2このグラスにそのまま注いでくれ」
次にグラスに注いでことんと置いた。
「それでどうするのですか?」
「三々九度をかわさないか」
唐突に言われて目を点にさせる。
「・・・・」
「何かいうことはないのか」
いつの間にか眉間にしわが寄る。不機嫌なわけではない。もしかして照れているのかもしれない。
少し目元が赤くなっていた。
「婚約をしましたのでそれだけで十分と考えていました。正直。驚いています」
なにも考えずに嬉しそうに笑う。自然に口元を緩めていた。
居住まいを正すと真っすぐ目を見てこういった。
「喜んでお受けいたします」
彼のことをよくわかっていたので気持ちが嬉しいのだ。形だけでもそうしたいと思ってくれたのだろう。礼儀に乗って三々九度をかわしていった。
「よろしく頼む」
大久保も真剣な目をして頭を下げた。背筋をぴんと伸ばし綺麗な礼をした。
「これで私とお前は本当のめおとになった」
「はい」
怪しい笑みを浮かべてそう言う夫がそこにいた。
「え?」
「まず呼び方からだな。名前で呼んでみよ」
「名前ですか?」



Re: 貴方と過ごした日々 ( No.28 )
日時: 2017/09/25 22:34
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「そうだ。夫を上の名前で呼ぶ妻はおるまい?」
実にいい笑顔で言われた。うん?と首を傾げて。
「名前でですか?」
楓は引きつった顔をして大久保を見上げた。
「いいつか呼べるようにいたします。少しだけ時間をください。旦那様」
と言ったら「早く呼べるようになれよ。奥さん」と返された。やはりこの人には勝てないようだ。
撃沈していた。
「もう一つ。今日から寝室は同じにしてもらうからな。楓」
にこりと笑ってそう言われた。
「別に構いませんよ」
「意味を分かっていないな」
笑みを次にはなくなり憮然とした顔をした。
兎に角この日からめおととして暮らし始めることになった。
春が終わるころの話であった。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.29 )
日時: 2017/09/27 13:21
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

【相原家】
酒盃を交わして初めての酒に陽菜はほろ酔いになっていた。
「大丈夫か?」
奥座敷にて真剣な目をした土方がいた。そっと頬へと手を伸ばして撫でていく。
その手が気持ちよくて目を細めるとすり寄っていく。
「なぁ。陽菜。そのまま話を聞いてくれ」
もっと近くに話をするために陽菜を膝の上に乗せた。
「きゃ」
小さな悲鳴をあげる。
「土方さん」
何をするのかと非難したら目を細めてじっと見下ろしてきた。
どうしたのかしら。土方さん。
不思議そうに土方を見つめた。いつの間にか酔いは醒めていた。
「今ここにいるのは亡霊みてぇなもんだ。なら残った命くらい惚れた女のためだけに使ったってかまわねぇだろう」
「土方さんは後悔しているのですか。今こうして生きていることに」
横抱きにされた陽菜はそっと手を伸ばして頬を撫でていく。
違うと首を振られた。
「そうじゃねぇよ。お前みたいな上等な女を自分のものにしちまっていいのかと正直悩んだ。こんなにも血にまみれた手でお前を抱いてもいいのかってな」
「そんな・・・」
言葉を失ったようだ。
「そんなこと言わないでください。私は貴方の生き方をそんなふうに考えたことなんて一度もありません。この手だって私は好きです」
そう言い陽菜は土方の手を両手で包み込む。
「最期まで武士になろうとして命を落とす覚悟で戦いをした自分たちをあなたはバカだというだけどあなたのそんなところが好きな私が他に誰を選べというのですか」
と答えた。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.30 )
日時: 2017/09/27 20:01
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

土方の手を陽菜は両手で包み込みそのまま右に頬に押しつけてそう伝える。
「愛した女と2人で暮らす分不相応なほど幸せな毎日をもらっている。・・・・・ありがとう。陽菜」
その言葉を聞きつつと涙をこぼしていった。
「よかった。幸せだと思ってくれて。私ばかりが幸せを感じていたのだと思っていたから」
「そんなわけねぇだろう」
甘く優しく耳元に土方の声が注ぎ込まれた。「泣くなよ」と指で頬をなぞらえて恥ずかしくなり頬を染めていった。
「どうした?」
意地悪く聞かれた。絶対にわざとですよね。土方さん。
「それと名前をを呼べと言っただろう」
きっと睨みつけられた。
「ううー」
唸ってしまい下を向いて額を土方の肩にのせた。
「仕方ねぇな。慣れていってくれ。せめて2人でいる時ぐらいお前に名前で呼ばれたいんだよ」
そこには寂しさが含まれていた。そうか。もうこの人を名前で呼ぶ人はいない。せめて私くらいは呼んであげたい。
「練習いたしますから時間を下さい。誠さん」
ゆっくりと面を上げて陽菜が言った。
「わかったよ。仕方ねぇから待っていてやるよ陽菜」
土方はくしゃりと頭を撫でていった。
2人は見つめ合うとそっと口付けをかわす。優しい沈黙を重ねていった。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.31 )
日時: 2017/09/27 20:41
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

【木戸家】
始めての酒に紫衣は酔ってしまっていた。真っ赤な顔をしていた。
「大丈夫かい?」
優しく声をかけられる。こくりと頷く。
「なんだかふわふわいたします」
へにゃりと笑い横にいる木戸に寄りかかる。
「それは酔っているんだよ」
眉根をよせ手の甲で頬をなでる。
「すみません」
じっと見下ろして紫衣の様子を探る。
失敗したか。それほど度数も強くないものを選び買ってきたのだがこのくらいで寄ってしまうなら酒は飲ませられないなと内心反省をする。
片腕で妻となった娘を支えて残りを飲んでしまう。
「きどさん?」
どこか眠たそうにゆったりとした声で話しかけられる。
「眠いかい?」
それならばと既に布団の用意をされているそこに横にさせようとした。
「まってください。私はまだ話がしたいです」
目をこすりながらも何かを言おうとした。
「わかった。とりあえず布団に入りなさい。話なら聞くから」
「あの・・・ここにいて下さいね」
「どういう意味だ?」
「一緒にここで寝てください」
「・・・・。酔っているね。君。言っていることわかっていないだろう」
「違います。確かに酔っていますがそれだけではなくてきどさんと一緒にいたい」
切なる願いにことわることができない。ここで手を出すわけにいかない。全てを台無しにしまいかねない。天井を仰ぎ見る。
「水を持ってくる」
これで少しは酔いを醒ましてほしい切なる願いをこめた木戸だった。
「飲んでゆっくり」
「いただきます」
水を飲んでいった。お盆にグラスを乗せた。片付けは明日でもいいだろう。
「で?話って何」
「はなしっ。そうでした。木戸さん。私ね。えっと・・・」
「落ち着いて」
背中を撫でられていく。手を伸ばしいつになく大胆に首にからませ目を閉じると唇を重ねる。すぐに離れたが・・・・・。沈黙が痛い。
「・・・・・」
「えっと」
「まだ酔っていたのか?」
あれ?もしかして怒らせてしまった?
額に青筋が浮かんでいた。


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