複雑・ファジー小説

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貴方と過ごした日々
日時: 2017/06/16 16:44
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。

主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
    
    立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
   
    望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳 

登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。

     木戸孝允 三十六歳。

明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。


    

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.7 )
日時: 2017/06/27 15:13
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

明治3年。
元旧幕府軍の高官の謹慎部屋。
いつものように仕事をしていた時のこと。
「そういえば君たちは結婚しないのか」
不意打ちのごとく紡がれる台詞にその室内はし−んとなる。
女たちは氷ついた。
楓は無言でい大久保を見ていたが紫衣は木戸を見た。
男たちはただ無言で手を動かしていく。
「いずれするつもりです」
とだけいうとまた筆を動かしていく。その言葉を聞いた女は青ざめていた。
『結婚する?誰と』
気が付いたら手が止まっていた。繕い物をしていた布から手が外れた。
「紫衣。手が止まっているよ」
書類から面を上げてぎょっとした。彼女の目は今にも涙がこぼれそうにうるんでいた。
「な、なんで泣いて」
絶望と言うものがあるというのならこんな顔をするのかと思わせる表情だった。
「木戸さんは何も言ってなかったのですか」
大鳥にも言われた。これには驚いたというように見てくる。
はたと人がいることに気が付いた。彼女は耐えきれずに走って行ってしまう。
「まっ・・・・」
手を伸ばしたが空を切った。
「いいのですか。負わなくて誤解をしているように思いますよ」
陽菜が木戸にやんわりと言った。木戸事態はしばらく固まっていたが我に返り慌てて追いかけていく。

意外と足の速い。誰にも邪魔されないよう個人部屋に閉じこもり彼女は泣いていた。
「しい」
名前を扉の前で呼ばれた。しかし体を丸めて膝を抱えていた。それは幼子のように見える。
もう一度名前を呼ばれた。
らちがあかない。この娘はこうやっていつも一人で泣いている。
ついに我慢の限界を迎えた。実力行使に出ることを決めた。ドアを蹴り破る。
余りの乱暴な仕草に驚きに固まった。土方のように見えた。幻であろう。
炎が見える。怒っている。これだけはわかる。
腕をつかみ引き上げて壁に押さえつけた。
どんと突き飛ばされた。
涙は頬を伝っていく。
「なんで泣いているんだ」
腹が立っているのか睨むように見てくる。
びくっと肩がすくむ。
「泣くな」
別に泣かせたいわけではないと努めて優しく声音を出すようにした。
これでは脅しているようだ。その間も涙は止まらない。
「なんで泣いているんだ」
もう一度問いかけた。
「だって私はいらないのかと思って。別の誰かとあなたは結婚するのなら私はどうしたらいいのです・・・・」
うっうと泣いていく。
「なんでそうなるんだ。俺は君以外いらない」
「ふえ」
間が抜けた声になる。
「それとも」
すうっと低くなる声に不穏な雰囲気を感じびくっとした。
「君は俺に愛想をつかして別の男を選ぶというつもりか」
そんなことは許さないと目が言っていた。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.8 )
日時: 2017/06/30 13:38
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

そんなつもりはないと慌てて首を振る。
「本当に?」
確認されたのでこくこくした。はたりと正気に返ると彼の顔がかなり近いことに気が付く。自然に顔が赤くなる。背けたら耳ががら空きになってしまう。
いきなりがぶっ。
「きゃっ」
悲鳴を上げて耳をおさえ非難の目を向けたのににこりと笑われた。
「意地悪」
うるうると涙をにじませた。
「君が無防備だからだ」
逆に非難された。
「?」
いまいちよくわからない。
ばっと体をはなされたと思ったら真剣な目をされた。
「あの?」
どうかしたのかと聞こうとしたらじっと目を見つめられた。
「結婚をしてくれ。きっと今以上に苦労をかけることになると思う。不安もあるだろう。でも私には君以外いない。君以上に大切に思える人はいない。だからこの手を取ってはくれないか」
すうっと手を差し出されて待っている。
何も考えられなかった。それほどに唐突な言葉だった。彼女は意味を理解できなかった。
「答えを聞かせてはくれないのか」
不安そうな顔になっていく木戸にはたと我に返った。
「わたしでいいのですか?」
かろうじてそれだけを言う。
「そうだ。君がいい」
はっきりと言われた。ふざけているわけでもからかっているわけでもない。そんな人ではない。
「よろしくお願いします」
かろうじてそれだけ言った。

こうして木戸と紫衣は結婚することを前提にとりあえず婚約をした。

その頃。謹慎部屋では大久保と楓は仕事をしていたが手を止めていた。
「結婚か考えていなかった」
「忘れていたんですか」
呆れた目をして大久保を見ていた。
「仕方ないだろう。やることが山のようにあるのだ」
ひらひらと書類の山を振っている。
「待っていろと言いませんでしたか」
「そうだったか」
なにやらだいぶ怪しい言い方に頭にきた。
「私がいけなかったんですね。はっきりと言わなかった」
ふっとやけのように笑った。目をすわらせる。
「私はあなたがいい。あなたは違うのですか?」
きりきりと吊り上げていくととどめに口を開く。
「けっ」
ばしんと容赦なく口を大きな手でふさがれた。目を白黒させている。
何をするんだと睨むと彼は憤怒の形相で見返された。
『こわっ。何て目で見てくるんですか』
「いいのか」
地を這うかのように低い声音だった。
その声と言い顔つきといい脅しているようにしか見えない。
「その言葉を聞けば後には引けなくなるぞ」
かっとうが見えた。
「甘く見ないでください。私を誰と思うのです。あなた一人くらい受け止めて見せますよ」
不敵に笑っていた。ふっと彼も笑う。
「そうか」
とだけ言い背筋を伸ばす。
「ならば結婚してくれ。私と」
「望むところです」
やはりこの2人普通ではなかった。

「我らの存在は無視ですか」
「仕事しろ」
うんざりとしながらでもどこか嬉しそうに榎本は言った。

陽菜はどこか寂しそうに楓たちを見ていた。今はまだ何も言えないのだ。でも土方の気持ちも同じだっただろう。

「陽菜。謹慎が終わったら俺と結婚してくれないか。土方歳三はあの日に死んだ。これからは相原誠として新しい道を見つけていこうと思っている。お前も一緒に探してくれないか。めおととして」
「結婚・・・」
声が出なかった。まさか土方がそんなことを考えていたなんて思わなかったから自然と涙がこぼれていく。
「いいのですか?私と一緒になってくれるのですか」
「お前意外いないだろ」
迷ううことなく彼の腕の中に飛び込んでいった。
「お前はすぐに泣くから。ほっておけねぇんだよ」
そういい涙を払ってくれた。

陽菜と土方も婚約を決める。正式の結婚は謹慎が終わってからとなる。

この時の彼女たちは先の未来に何が待っているなんて知るはずなかった。


Re: 貴方と過ごした日々 ( No.9 )
日時: 2017/07/02 18:01
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

「写真を撮りませんか?」
提案したのは誰だろう。とにかくそれがきっかけだったに違いない。
明治5年春桜の咲くこの季節。
「写真だって?なんのためにだ」
「謹慎あけての記念日にってことであまり深くは考えてません」
政府高官たちは渋い顔をした。
「記念か」
「いいんじゃないですかきっと写真は写さないつもりでしょうから」
楓が言ったらぎろりと睨まれる。「ひとごとだと思っているだろう」とすごまれた。
『こわっ。何て目をするんですか』
助けを求めて皆を見回したら速攻で視線を背けた。
『こっちを見るな』
「大久保さんや木戸さんはとってもらうつもりなかったのですか」
素朴な疑問を口にしたのは紫衣だった。
「私たちはつねに命を狙われているからね。あまり顔が知られてはかえって面倒になるんだ」
忘れていた。新政府としてはまだ不安な立ち位置だった。
「そんな顔しないでくれ。そう簡単には命を捨てるつもりはない」
木戸の言葉に意思が伝わってきた。そのまま紫衣の肩を抱き寄せていた。
「なら私たちだけ手元に残しておきます。絶対に世間には広めない」
楓が笑って大久保を見上げた。
「記念か。皆それぞれの道を進む。俺は楓さんの意見に賛成だ。その話に乗って見ようと思う」
榎本が言って大鳥も賛成だった。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.10 )
日時: 2017/07/05 15:10
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

写真を写すことに旧幕府の高官たちも賛成してしまいいよいよ断ることが出来なくなった。
「相原さんもどうですか」
「ことわる」
土方はそう言った。
「どうしてですか」
陽菜が理由を聞いたら実に単純明快な答えが返ってきた。
「俺が移ったらまずいだろうが」
そう、土方歳三は死亡扱いになっているのに写真に残ったらまずい。
幽霊であろう。明治時代七不思議にされてしまう。
そんなことだけは避けたい。それに陽菜たちも移るつもりはないので彼らの手伝いをしていた。
「君たちもどうだい」
「大鳥さん」
「それこそまずいです」
「別にかまわない。婚約を決めたのだろう」
榎本に言われて固まった。
何故それを知っているのですか?
彼らは生き生きとしていた。そのことを知っている人は落ち込んでいたがそれは別の話。
木戸と大久保と土方はやはり最後までごねていた。どうしても写真は嫌だといっている。
宥めたのは彼女たちだった。
なんんていうか。すごかった。不満しかないというばかりに技術師を睨みつけていた。
大久保な場合。
「まったく。大久保さん睨んだらいけません」
「うるさい。この顔は生まれつきだ」
「嘘をいわない」
仕方なさそうに椅子に腕を組み正面のみ見つめている大久保をなだめていた。例えるなら野生の獣なみに警戒心丸出しだった。
「お前はとらないのか」
「さすがにこの姿ではまずいのではありませんか」
動きやすいように着物の袖をたすきがけしていた。髪の毛も適当にしばっているだけだ。
「さあ。文句を言わずに」
顔をつかみぐいと前に向けた。肩眉をよせて面倒くさそうにした。
「私は子供か。そんなこといわれずともわかっている」
ようやく大久保を楓がときほぐして椅子に座らせた。
楓はさっさと逃げていく。
時間ばかり無駄に流れていく。少しも動いてはいけないこの無の時間帯が嫌でたまらなかった。
不機嫌オーラだだ漏れな男がそこにいた。

「あれはどうにかなりませんか。せっかくとるのですからもう少し・・・」
それを聞いた楓がため息をついていた。
技術師の人に懇願された。仕方なく楓も共にとることになった。
「着替えはこちらに用意してありますので」
見せられた着物に目をやり楓はあきらめて着替えにいった。
控えの間に一度入っていき用意されたものに手を伸ばした。素早く着替えると出ていった。
布の色は薄い朱で柄は花柄だった。牡丹の花だった。簪もつけてそこにいるのは大人の女だった。
「楓か?」
「そうですがなにか」
楓は嫌そうに顔をしかめている。こういう正装は好まない。
「いいや。さっさととるぞ」
一変して嬉し気になった。おかしな男だ。楓はそう思った。

Re: 貴方と過ごした日々 ( No.11 )
日時: 2017/07/11 14:23
名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)

陽菜の場合。
「相原君。もう少しにこやかにできないのかい」
見かねた大鳥が進言したが無理だと切り捨てられた。目の前に敵がいるのではないかという顔だった。鬼の副長がいた。
「相原さん。だめですよ。技術師さんに殺気を向けては」
「わかっている」
しかし土方は眼光を鋭くさせて固まる。凶悪な顔をしていた。
「どうしたらいいのでしょうか」
大鳥に相談したら君も共に撮影してはどうかと言われて慌てて断る。
「もうあきらめて撮影にはいります」
彼は強くなっていた。2人目になると支持を出してカメラを構えた。
結果としては想像通りになる。

「どうなった?」
楓に聞かれて陽菜は首を振る。楓はすぐに着替えていた。
「着物の替えがあるみたいだから一緒にとればいいんじゃない」
楓が提案したのは控室に着替えがあるというもの。
「楓ちゃんでも私は・・・」
「うん。言いたいことはわかる。でも困っているみたいだしね」
控室に陽菜を連れていき薄い紫と花柄は桜にした。
「お待たせしました。どうですか?相原さん」
にんと猫のように笑う楓の後ろに隠れている陽菜を見て固まる。
「・・・・」
「感想はないですか?」
はっとして「似合っている」とだけ言うと視線をそらした。
「な・ん・で。顔をそらすんですか」
怒ったよう楓が腰に手を当てる。
「悪い。そんなつもりはなかった。陽菜一緒にとってくねぇか」
すぐさま嬉しそうに花が咲く。
「はい」
別人かと言いたくなる土方がそこにいた。椅子に座らせ土方は陽菜のそばに立つ。


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