複雑・ファジー小説
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- 貴方と過ごした日々
- 日時: 2017/06/16 16:44
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
はじめまして小鈴です。ここからまた続きを書いていこうと思います。
『私は貴方たちを忘れない』の続きです。明治時代編の始まりです。
ここよりほとんどが作り話をさせていただきます。
陽菜と楓と紫衣の夫婦話になります。
主人公 楠 楓【くすのき かえで】十九歳
立川 紫衣【たちかわ しい】十九歳
望月 陽菜【もちずき ひな】十八歳
登場人物 土方歳三 三十五歳。大久保利通 三十九歳。
木戸孝允 三十六歳。
明治二年の話で夫婦になるまでの話となってから手記を書くまでの話を書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.12 )
- 日時: 2017/07/12 14:37
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
紫衣の場合。
「もしかして緊張しています?」
木戸は氷のようにかちんこちんになっていた。
「そうみえるか」
はた目には機嫌が悪いようにしか見えない。前だけを見据えて耳にささやかれた。
「みえますね」
「昔から緊張をするとどうしても顔の筋肉が固まりうまく笑えなかった」
しかし彼は口元だけは薄っすらと笑っている。
「君今失礼なこと考えていないか」
横目でじろりと見られた。
「そ、そんなことは。ですがあなたが笑うと高杉さんたちは異様に恐れていましたね」
遠い記憶をたどりながらもそう言うとぞくっとした。
「それはこんな顔だったかな」
真っ黒い笑みを浮かべた木戸孝允がいた。
こわいです。木戸さん。背後に般若が見えました。
「ど、どうでしょう」
慌てて言い繕い視線をそらした。
「そんな顔しないで私がいじめているみたいじゃないか」
優しく頬を撫でられてぽっと朱に染まっていく。
「おい、そこの2人いちゃつくならよそでやれ。後がつかえているんだぞ」
見かねた南方が木戸の頭をぺしりと叩く。
ぎっと睨みつけてきたがそれを無視して紫衣を連れていく。
当然不機嫌なまま撮影が行われた。
「君はもう少し表情を変えられないのか」
文句を言われた「うるさい。南方」2人は火花を散らした。
仕方がないので彼女も着替えてから共に撮影をすることになる。
別人なのかと言いたくなるほど優しい顔になった木戸がそこにいた。
この時撮影などしたことを後になって後悔する。
出来上がったものを目にした彼らはぎょっとした。
「捨てろ。今すぐに」
「いやですよ。1枚目しかないのですよ.一生の宝です」
「ふざけるな。後世の笑いものになるつもりはない」
楓と大久保はそれを奪い合う。
「私もこれはちょっと耐えられない」
こんな緩んだ顔なんて見たくなかった。
「とてもすてきだと思います」
にこやかに紫衣は笑っていた。
「陽菜頼むから捨てさせてくれ」
「いやです。私は気にいっているんですから」
ふんわりとそれを手に嬉し気にしていた。
こんな自分なんて認めたくなかったに違いない。
後世にまで残すほど大切に保管されているなど知る由もなかった。それを生まれ変わった自分自身がまたみることになるなど想像していない。
写真を見た大鳥や南方などはまさに腹を抱えて笑い転げていた。
あははは。声を上げて痙攣まで起こしかかていた。
ぷっと吹き出したと思うと笑いまくる。
「大鳥君。笑いすぎではないかね」
榎本が一応は止めた。
土方たちの顔が憤怒の形相をしていたからだ。
「南方笑いすぎだ」
今にもつかみかかりそうな木戸がそこにいた。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.13 )
- 日時: 2017/07/18 22:20
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【東京】
明治5年。謹慎がようやくあけて土方と陽菜は新しい時代の一歩を踏み出す。
「ここから近くで住む場所をさがすか」
「はい」
2人は仲良く手をつないで歩いていく。
めおと約束をしていたが祝言をあげることはできない。それでもいいと陽菜は言う。
「春ですね」
「そうだな。あったかいよな」
土方はいいながら空を見上げた。どこかしこに桜がちらほら見える。陽菜が足を止めたがポンと肩を叩かれる。東京の町は初めて見るものばかりで随分とさまがわりしていた。何もかもが新しくなる。零からの再出発だった。その日に暮らすための空き家がすぐにみつかり必要なものを買い何とか落ち着く。
「土方さん」
陽菜はしばらく庭を見つめていたら隣に土方がやってきた。
「まて。今。おもてでその名前をつかうんじゃねぇ」
すいっと片手を伸ばして唇に触れる。
「はい。相原さん」
「俺たちはめおとだろう。名前で呼べ」
「え?」
陽菜は夫と呼ぶべき人にいきなり言われて戸惑いを表す。
「俺は相原誠だろう。おまえは妻の相原陽菜だ。夫を苗字で呼ぶ奴はいねぇだろ」
優しい目でそうさとされる。
「つま?」
ひっくり返りそうなほど陽菜は身をのけぞらせた。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.14 )
- 日時: 2017/07/20 11:54
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
「陽菜少しづつなれていってくれ怪しまれちまうだろう」
耳元にそっとささやかれた。人の目がある。男と女が共に暮らしていてめおとでないとすれば・・・・。怪しい関係と思われかねない。
「世間では妾っていうものもあるからな。陽菜が奇異や好奇の目にさらしたくねぇんだよ」
妾ですか。まさかそんなふうに見られかねないと思わなかった。
「お前が好きだ」
「私も好きです」
隠すことなく告げられた言葉に土方は笑う。
「なんで笑うんですか」
頬を膨らませた陽菜は軽く睨む。
土方は膨らんだ頬を指でつんつんした。
「何をするんですか」
怒っているのに彼は笑うばかりだった。
2人で過ごすうちに彼はよく笑うようになった。
ふいに庭を見つめて寂し気に言う。
「なにもありませんね」
「そうだな」
陽菜は思いつき土方に言った。
「ま、誠さん。桜を落ち着いたら見に行きませんか」
「桜をか?そういえばこの近くに立派な木があったな。よし。落ち着いたら2人で行こうな」
「はい」
お互いに優しい顔をして見つめ合う。
そっと辺りを見回してつま先たちをし耳元にささやく。
「桜は歳さんに似ていますもの。だから好きです」
土方は不意打ちをつかれてしばし無言となりどや顔している陽菜を見つめた。指で額をはじく。ぺしと。
働き口を探さねぇとなと空を見上げて目を細めていた。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.15 )
- 日時: 2017/07/23 21:16
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
【大久保家】
明治初期。大久保家は西洋と和が一緒になったつくりになっていた。2階は西洋風に1階は和室になっていた。夫婦の寝室は2階。仕事部屋もそこにある。廊下には西洋のものが並んでいた。
「おい。勝手に触って壊すなよ。高価なものばかりなんだからな」
「知っています」
くいと眉を寄せた楓が答える。楓はドレスをかっこよく着こなしブーツを履いていた。楓流にアレンジまでしているのはさすがと言える。
「どうせお前は文句ばかり口にするからな」
と和室も用意してくれた大久保の優しさであろう。
家の中の説明を聞いた楓は素朴な疑問を口にした。
「今日はゆっくりされているのですね」
「今日は休みだ」
「なんでそれ先に言わない」
仕事をほおり出して立ち上がる楓は夫を責めた。
「おい、夫に対する態度がそれか」
「そんなことよりも」
「そんなこと・・・。」いいですか。外にいきましょう」
夫の言葉をぶったぎり着物を着ている夫の腕をつかみ外に出ようとして足を止める。
「少しお待ちを」
「なんだ。突然」
突然すぎる妻の行動についていけないでいる夫。
まさに問答無用というように楓は素早く着物に着替えて戻ってきた。
「でかけましょう」
「うむ」
妻は夫の腕をつかむとぐいぐいと背中をおしていく。世間体すら気にしない楓だった。その姿を見ても新政府高官とはわからるまい。
「おい、そんなにおすな」
文句を言いながらも利通はそれ以上は何も言わない。
東京の街に出た2人は仲良く歩き始める。
右見ても左を見てもまだ西洋になじんではいない。
「まだ洋装に身をつつんでいる人は少ないですね」
太陽が出ている空を仰ぎ見て楓はそう言う。
- Re: 貴方と過ごした日々 ( No.16 )
- 日時: 2017/07/26 21:17
- 名前: 小鈴 (ID: C1fQ.kq4)
東京の街の中を歩きながら話をしている。
「そうだな。まだ西洋にはなれていないのだろう。その上民には値の張るものばかり」
「ええ。それに人それぞれに見合ったものでなくては異国の方に西洋のものまね。さるまねなんて馬鹿にされかね・・・・」
「誰がさるまねだ・・・・」
いきなり壁に押し付けられた。恐ろしすぎます。壁に背中を押し付けながらそう思った。
「わ、私が言ったんじゃない・・・・・」
慌てて口にした。はたから見たらカツアゲされているように見えるに違いない。
「ならばそれを口にした愚か者を連れてこい」
えっと。どこのヤクザですか。ガン飛ばしながら言わないでほしい。
「えっと誰だったかな」
目をそらした。それ妻に向ける顔ではないですよ。口にはせずに心で思う。その男見つけ出し血祭りにあげかねない。
『国際問題になります。それは言わない方がよさそうですね』
相手が異国の人であろうと今の夫ならば地の果てまで追いかけていきかねない。そんな想像までできぞっとした。
「警察の方ですか。そこでカツアゲされているご婦人が・・・・」
「「はい?」」
2人は同時にそちらを見た。
立ち直りの早い大久保は鬼の形相をした。
「誰がカツアゲだ。これは夫婦の問題だ。他人は口をはさまんでもらおう」
言いきってしまう。