複雑・ファジー小説

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AnotherBarcode アナザーバーコード
日時: 2020/12/07 18:30
名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12746

 生きていれば。生きてさえいれば、いつか幸せになれると思っていた。
 私だって、生きてても良いんだって。誰かと一緒に笑う事も出来るんだって。
 そんな夢を、見ていた。
 それが幻想だとわかっていても。私達は望まずにはいられなかった。
 普通に朝を迎えて、普通に誰かと過ごして、そして普通に1日を終えて、普通の明日を待つ。そんな幻想に酷く焦がれたところで、永久に叶うことはないのに。


………………………………


これは、継ぎ接ぎバーコードとは別の、もう1つの話。

こんにちは、ヨモツカミです。以前からオリキャラ募集して、話だけ練ってたのですが、ようやくスレ立てすることができました。
本編では明かさなかった事とかオリキャラ募集で投稿頂いたキャラなどが主に活躍します。つぎば本編も読んでいるともっと楽しめるんじゃないでしょうか。本編読んでなくてもなんとなくわかるような説明も入れるつもりですが。


【目次】>>15
よくわかんない投稿の仕方してるので、1レス目から見るとかじゃなくて、目次見たほうがわかりやすいと思います。

【キャラクター関連】
登場人物詳細その1>>16
桜色の髪の少女>>1 ロスト>>21
ロティス>>2 レイシャ>>24
アイリス&シオン>>6


【軽い説明】
群青バーコード
青色の、通常のバーコード。モノによっては人の役に立つかもと考えられている。バーコード駆除の為の兵“カイヤナイト”は群青バーコードで構成されている。
翡翠バーコード
緑色の、失敗作を意味するバーコード。暴走しやすかったり、力が使えなかったり、ヒトとして機能しなかったりする。大体はすぐに処分される。
紅蓮バーコード
血のような赤色の、殺人衝動をもつ、特に危険なバーコード。うまく使えば兵器として使えるため、重宝されたりもしたが、基本的に危険視されており積極的に駆除される。
漆黒バーコード
全てを吸い込む様な黒色。殆ど謎に包まれている。本当のバケモノだと恐れられている。
ハイアリンク
バーコード駆除専門の軍隊。基本的に人間で構成されているが、その中にバーコードで構成された特殊部隊“カイヤナイト”がある。

【お客様】
メデューサさん


2018年2月6日スレ立て

Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.30 )
日時: 2020/12/07 17:04
名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)

【番外編】No.12 それは虚しい前夜

 その漆黒は、彼らの希望の闇と言えた。
 黒々していて、どこまでも深い暗色の双眸。その中で揺れる輝きが、“タンザナイト”を導く。きっと彼らは自由を手に入れるのだと。

 太陽の色の髪を2つに結び、その特徴的な黒の瞳を持った翡翠バーコードの女、ロスト。本来群青バーコードしか所属できないバーコードで構成されたバーコード殲滅部隊、カイヤナイト。彼女はその強力な〈能力〉を買われて、特別にカイヤナイトに所属していた。そしてそのカイヤナイト内で、とある計画を勧めていた。
 カイヤナイト達はその首に青い首輪の装着を義務付けられている。そこには小型の爆弾が内蔵されていて、ハイアリンクの行動に違反した場合は容赦なく起爆ボタンを押されて首が飛ぶ。そのため、カイヤナイトのバーコード達が人間に逆らうことはまずなかった。ロストも例外なく、その首輪を付けていたため、人間には従順に従うしかない。……はずだったのだが。
 ロストは“とある少女”の協力により、“偶々”その首輪を無力化する方法を見つけた。だから、数人の同士を募ってカイヤナイトから脱走する計画を練っていたのだ。

 それが“タンザナイト”。カイヤナイトを脱走するバーコード達で構成された組織を、作ろうとしていたのだ。名前の由来は、とある青い石。誇り高きヒト、という石言葉が、人間の支配から逃れようとする彼らの意思にぴったりだと思って名付けたのだ。
 それからもう1つ。空想、という石言葉もまた、彼らにお似合いじゃないか、と。ロストは皮肉を込めた笑みでそう考える。

 ロストは信頼を置ける数人のカイヤナイトにだけ、この話を持ちかけた。そのうちの1人が、金髪に碧眼の男、ニックだった。大人しく人間に従っているふりをしながら、その腹の中は真っ黒で。彼は常に人間に対して敵対心を持っていた。──だから、彼なら適任だとロストは思ったのだ。
 話を持ちかけたとき、彼はその青い瞳をくるくると丸くして、じっとこちらの瞳を覗き込んでいた。この世には黒の瞳を持つ人間などいない。ロストのこの黒い眼こそが、翡翠バーコードたる所以であり、誰もがこの目を不気味だと、気持ちが悪いと避けていたのに。ニックはいつも、真っ直ぐにこの目を覗いてくる。

「ロストさんの目、凪いだ夜の海みたいに静かで……綺麗だ」

 いつか、そう言いながらロストの目を見て笑っていたニックを思い出す。おかしな子だな、と思う。この不気味な虹彩を綺麗だなんて、かなりおかしな感性を持っている。
 でも、初めてだったのだ。この瞳を認めてくれる誰かに出会うなどと、思わなかったから。
 ──ああ、ひとりだけ、他にもいたっけ。
 桜色の髪を靡かせて口角を緩めてみせた彼女。彼女もまた、漆黒に呪われた存在だったからか。この瞳を愛おしそうに覗いてきたのだっけ。


***


 ロストは自分が信頼を置いているカイヤナイトしかタンザナイトに勧誘しなかったが、1人だけ例外があった。それはニックを指導した優秀なバーコードの女だと言う。彼女のことを、どうしてもタンザナイトに加入させたいと、ニックが言い出したのだ。
 ロストは頷くべきか迷った。自分が信頼していない存在にまでタンザナイトの計画を知られるのは得策ではない。上に報告されれば、ロスト達は脱走を企てた罪人として一瞬で首を飛ばされるだろう。それだけ危険な綱渡りだったのだ。

「これがどういうことか、わかっているのかニック」

 ロストが警戒しながら訊ねると、ニックはやはりロストの眼を真っ直ぐに射抜いて、絶対に大丈夫だ、と発言する。
 ロストは、目を見て会話をされることが苦手だった。というか、ニックの視線が苦手だった。こんなに真っ直ぐに信頼しきった瞳を向けられては、困ってしまう。誰もがロストの漆黒の双眸を恐れるのに。ニックは逆なのだ。どうして彼にはそれができるのか。ロストにはわからない。ニックがロストに対して抱く感情が、何一つ理解できなかった。それ故、不気味だと思うのだ。でも、だからこそ信頼している。彼ならタンザナイトで活躍してくれるだろうと。
 そんな彼が必要とする人物。ニックの戦闘の指導をした、カイヤナイトとしての在り方を伝授した頼れる先輩というのが、灰色がかった金色の短髪の女、オーテップだった。彼女の右足は、歪な鉄でできている。義足だ。足を失ってなお、その優秀さを買われて処分を免れた。確かに戦闘力に関しては何1つ問題ない。是非タンザナイトにいて欲しい人材だ。
 だが、タンザナイトを束ねるロスト自身があまりオーテップのことを知らない。だから簡単にニックの提案に頷くことができなかったのだ。
 なのに、最終的に話だけでも持ちかけることを許したのは。ロストは、ニックに対して甘いのかもしれない。

「おや、ニックにロストさん。2人揃って私に何か用かな」

 気さくに話しかけてくるオーテップに、ニックは重々しく口を開いた。タンザナイトという組織の存在。脱走して、自由を手に入れるのだと。もうバーコード殲滅部隊で死線に立つ必要は無くなるのだと。
 ニックの話を聞いた彼女は、困ったように肩を竦めて微笑む。

「今の話、私が上の者に報告したら、あんたらは終わりなんじゃないの」
「オーテップさんはこんなことしないッスよ」

 何故か自信満々にそう言い切るから、ロストとオーテップは顔を見合わせた。

「おいおい、断言するなんて。私はこう見えて気分屋だからわからないよ?」
「アンタは、同胞の命を何よりも大切にしてる。ボクのことも、大切に思ってる。だから、しない」

 そうだ。オーテップは誰よりもバーコード達の命を大事にしている。そのくせ、人間には犬のように忠純だ。生きることに何よりも執着しているようでもあり、奔放でもある。そんな彼女だからこそ、ニックは声を掛けたのだろう。
 でもオーテップはタンザナイトに着いてこようとはしなかった。

「大事だから。だから、そんな馬鹿なことはやめろって言いたいけど。ああでもその目、迷いなんかないんだね」

 オーテップは一応、タンザナイトとして脱走を企てているのも止めようとは考えたらしい。でもニックの覚悟もロストの思惑も、何1つ自分が入り込める隙はないと判断したようだ。そうだ、今更誰かの言葉で揺らぐような計画ではない。
 自由を夢見るその瞳は、ある意味盲目だ。それ以外は何も見えないのだから。狭まった視野では他のものが見えてない。だから危険なのだ。
 ロストにはそれもわかっていた。タンザナイトは、破滅への一歩でしかない。知っていて、この計画を進めていたのだ。
 それが、桜色の少女との計画だったから。
 賢いオーテップは、否、人間に忠誠を誓った彼女だからなのか、兎に角この女はタンザナイトについてきはしない。だからといって人間に密告する気もないらしい。

「じゃあせめて、簡単に死ぬんじゃないよ」

 このときの選択を、オーテップは後悔する。止めなかったこと。あれは正しかったのか。でも、今こうして彼らと敵対すること、それが一番望ましくなかった。
 後悔したとしても、自分ではどうしようもなかったと知っている。夢に取り憑かれたヒトの眼は、どこまでも純粋に濁っているから。

「私は、お上さんの命令に従うだけだからなあ」

 タンザナイトを討伐しろと命令された夜。オーテップは諦めたように肩を竦めて笑うだけだった。
 オーテップ先輩、と懐いてきていたニックを殺す。あまり考えたくない未来だったが、避けられない運命だと言うことも、なんとなくわかっていて。
 それでも、対峙する青い瞳の男を眺めては、やっぱり遣る瀬無い気持ちになるのだった。

***
タンザナイトの前隊長、ロストと隊長ニック、それから彼に関わりのあるオーテップの話。何気に大事な話なので、本編の例の場面の前に読んでほしい。

Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.31 )
日時: 2020/12/07 17:05
名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)

【コラボ】 No.03 枯れたつぎばはそれからだ


ジン「はい、本編が殺伐としててしんどいってことで、If時空の空気感で和んでほしいってことで。今回は作者であるヨモツカミの別作品の宣伝も兼ねて、主人公ズコラボ企画をやることにしたよ。つぎばの代表はもちろん、主人公たる僕。作品としても一番長いし、金賞2回取ってる作品の主人公ってことで、まあ? 他の作品の主人公よりも年季が違うってことだよね。
……あ、今回、ツッコミ入れてくれるヒトもいないんだよね……。もうさっさとゲスト呼んじゃおうか。
『まあ座れ話はそれからだ』より、主人公の唐洲世津那からすせつなさんと、『枯れたカフカを見ろ』より、ロベリアを呼んでいるよ。じゃ、ゲストの2人、部屋に入ってきて」

 こんにちは、と軽く会釈をしながら入ってくるのは、黒く艷やかなロングヘアをふわりと揺らす、やたらと顔の整った女の子。まあ座れは埼玉県にある川越市の高校が舞台の作品なので、ワイシャツと赤いネクタイ、黒のカーディガンに赤チェックのスカート、と、よくある制服姿だ。
 それからもう1人、硬い表情をして入ってきたのは、赤い髪と紫の大きな瞳の……少女だろうか。真っ赤なセーラーワンピ、とか呼ばれる服をまとってるから女の子なのだと思ったが、何故か断言できない、気がする。枯れカフの舞台はややファンタジーな寄宿学校的な施設、ということなので、一応あれも制服姿なのだろうけど、黒髪の彼女のものと比べると可愛らしすぎるような。
 何よりもジンが気になることとしては、2人して非常に顔立ちが整っていることだ。あれ、僕だけ目つきが悪いクソガキ、みたいな容姿設定してて、顔立ちは平凡かそれ以下だし、イラスト描くときは目つき悪すぎて可愛くないからアイプチして目元盛ってから描かれてるし。

 そう、気づいてしまった。ジンは他作品主人公に、顔で負けているのだと。

 どうぞ座って下さい、と自然に2人に声をかけたが、内心苛立ちと嫌悪感しかない。
 なんで僕だけ平凡顔なんだ? 黒髪の女の方は薄く微笑んで座っているだけなのに絵になる。すごく可愛い高校生って感じだ。
 赤毛の方は少し緊張しているのか表情は硬いし……よく見たら目元に隈があって、顔色悪いのに美人だってわかる顔をしている。何こいつら? まつ毛僕の3倍くらい長くない? 肌も白いし、美白じゃん。
 そうだ。二人とも制服姿、ということは、僕のように毎日誰かを殺さなきゃとか、殺される心配とか、そういうものと無縁の生活をしてきたに違いない。
 多分、こいつら僕ほど苦労してない。だから肌もツヤツヤ、髪もツヤツヤ、まつげバサバサ、服もオシャレ、キャラデザも顔も良い。ふざけんなし。僕の初登場時なんて、血塗れだぞ。このやろう。

ジン「……ようこそ」
世津那「はじめまして。今回は楽しそうな企画に呼んで下さってありがとうございます。私はまあ座れ話はそれからだ、長いのでまあ座れって呼んでますけど。その作品の主人公をさせてもらってる唐洲世津那です」

 完璧な笑顔で微笑む世津那。この容姿の良さで、礼儀までバッチリだ。完璧美少女かよ、このやろう。

ロベリア「えと、私は枯れたカフカを見ろ、これも長いから枯れカフと呼ぶけれど。本当に最近連載し始めたばかりで、レス数も少ないから、私がここにいていいのか心配なんだが……枯れカフの主人公、ロベリア……です。よろしく」

 キャリアの差で引け目を感じているから控えめな態度を取っているのだろう。ロベリア、こいつもまず座っている姿勢がめっちゃきれいだし、顔がいいから何をしても許される感じだ。このやろう……。

世津那「ジンくん、でしたよね。なんだかさっきからイライラしているように見えますけど、私何か失礼なことしちゃいましたか?」
ジン「あー。したかしてないかで言えばしてないし、作者の責任だから、君は悪くないよ。ほら、早く作品の紹介でもすれば?」
ロベリア「いや、司会進行役がその態度なのはどうなんだ……? 何に苛立ってるのか知らないけど、そんなふうに接されると、私達も少しやり辛いんだが」
ジン「はぁ? 新参者が調子乗らないでくれる?」
世津那「ジンくん。新参とか、キャラデザの気合の入り方の違いとか、作者からの扱いとか、そういうの気にするのはやめましょう? 私はジンくんやロベリアちゃんと楽しくお喋りがしたいです」
ジン「なっ……」

 確かに僕の態度は最悪かもしれない。でも、どうしてもこの扱いの差には、作者の悪意すら感じる。それが悔しくて苛立っていたのだが、世津那にはそれをサラリと言い当てられた。
 この女、顔と性格がいい上に、察しがいいのか。まじで何なの。なんかもっとムカついてきた。

ジン「僕だって最初は普通にお話する気だったさ。でも、2人とも制服なんて着ちゃって、髪も肌もツヤツヤで、僕みたいに命を狙われるとか、狙うとか……そういうのとは無縁なんだろなって思うと、なんか……。どうせ君たちはヒトを殺したことすらない平和で安全な環境でのうのうと暮らしてるんでしょう? いいね、そういうの。僕も憧れるよ。川越とか江戸の町並みが残ってる風情のある観光名所なんだってね。そこ行ってみたいし、僕もカッコイイオシャレ制服とか、着てみたかった……。友達とお昼ご飯食べたり、授業中にうたた寝して先生に怒られたり。……してみたかった」
ロベリア「ジン……」

 なんだか、段々つぎばの世界観で主人公やってる自分が惨めに思えてきてしまった。どうして僕ばかり、そんな苦労をしなければならないのか。今だって本編で身近な知り合いが命を落としたばかりだし。2人に打ち明ける気はないけれど、僕だけ100年も生きているし。もうおじいちゃんだし。老人に主人公やらせるとか、作者正気か? 僕だって、ヒト殺してばっかいないで、学生になりたい。
 しょぼくれる僕を見て、ロベリアがそっと手を伸ばしてくる。顔を上げると、柔らかい手が僕の頭を撫でていた。

ロベリア「作品の世界観の違いとかは仕方ないだろう? 私はジンが普段どんな環境にいるかは知らないから、寄り添ってあげるとか、同情とか上手くできないけど……そうだな、制服なら貸してあげられ、」
ジン「いや、君の借りてもただの女装ショタが完成するだけだから!」
世津那「似合うと思うますよ。なんなら私の制服も貸します」
ジン「どう足掻いても女装ショタだ! ……でも、なんか、その、泣き言言ってごめん。連載開始から4年も経ってるのに、今更何喚いてんだって感じだよね」
ロベリア「急に嫌になることもあるんじゃないか? 辛いことがあったら、私はいつでも相談に乗るから」
ジン「ロベリア……(泣)」
世津那「ロベリアちゃんは優しすぎるんじゃないですかね。まるで自分だけ苦労してる、みたいな言い方して、私達の作品のことよく知りもしないで勝手なことを言ってきたジンくんのことについて、怒ってもいい立場ですよ?」

 そう言った世津那の目は酷く冷ややかで、陶器の人形に嵌め込まれた硝子玉のように無機質だった。

ロベリア「え? いや……実際、私も主人公だから大変な思いは多少しているけど、かと言って生死に関わるような問題ではないから……」
世津那「生きるとか死ぬとか。殺すとか殺されるとか。当然そういう状況に身を置き続けるジンくんは大変でしょうけど、ロベリアちゃんだって、“カフカさん”のことや性別、家庭内環境で辛い思いをしているじゃないですか。無性別なのに、女として生きることを強いられてきて、そのあとご両親とは、」
ロベリア「待って……なんでそんなに知ってるんだ? 私はまだ自分の作品の紹介してないのに。ああ、もしかして、読者??」
世津那「そんなわけないじゃないですか。あなたがたの目に映るとおりの私は“ワタシ”ですよ。何の変哲もない、見た目がいいだけの高校生の女の子です」

 世津那は口元を歪ませる。それすらもとても美しい整った笑顔に見える。のに、何かがおかしい。一瞬、世津那の瞳が赤く煌めいたように見えたが、キャラデザと作中の描写は別物。まあ座れの世界観は現代日本なので、そんなカラフルな目の登場人物なんて、いないはずなのに。

ジン「世津那──君は……いったい?」
世津那「ふふ。じゃあ少しだけまあ座れの作品紹介をさせて頂きましょうか。
ここに来たのですから、主人公は勿論私です。でも、私の視点でストーリーが語られることは一切ありません。私以外の四人が、私を語ってくれるんです。あるときは女の子が好きな女の子に興味を持たれてしまう、学年の誰もが憧れる、“完璧な女子高生”。あるときはちょっとヤンデレ気味な幼馴染に執着されてしまう、優しい女の子“せっちゃん”。またあるときは引きこもりニート男に命を狙われる──“化物”」

 化物、と聞いて少しだけピンとくる。唐洲世津那。この女は、ただの普通の女子高生ではない。

世津那「これ以上言わなくても、ジンくんならなんとなく私とワタシの境遇を理解してくれたんじゃないですか? これで理解できないなら、あなたの百年とその命はファッションなのかなあ、って思っちゃいます」
ロベリア「? ひゃくねん?」
ジン「…………」

 僕はまだ、自分の年齢を明かしていないのに。最初から全て知っていたのか。彼女の薄い笑顔の下に潜む、何かの片鱗が。見えるようで、見えない。
 その薄気味悪さ。ずっと彼女を見ているうちに、大きな違和感を抱く。気持ちが悪いのに、惹き付けられるような、どうしてか目が離せなくなる。

ジン「君のことが、もっとよくわからなくなったよ」
世津那「ふふ。それでいいですよ。あなたは私のこと、ただの恋愛小説か何かの主人公だとでも思っているみたいでしたので。……ただの恋愛小説なら、良かったんですけどね」
ロベリア「世津那さんは恋でもしたいの?」
世津那「そうですね。普通の女の子みたいに、普通に誰かを好きになって、普通に振られたり、普通に悲しんだり、それを普通に慰めてくれる友達がいたり。そういうのなら、よかったなあ」

 ほんの一瞬。不気味でもなんでもない、年頃の危うくて脆い、そんな16歳の少女が見えたような気がした。でもそれは目の錯覚レベルのもので、彼女はまた、完璧な薄い笑顔に覆い隠されてしまう。

世津那「そもそもですよ、私達の作者には人が死なないお話を書くことはできないんですよ。ほら、私の世界では私は命を狙われていますし、ロベリアちゃんの世界はこれから明かされていくことが多いですけど、作者の傾向からして誰か死ぬような気がします。ジンくんの世界は言わずもがな、殺し、殺されの世界ですからね。私達はあの作者のもとに生まれた時点で、常に命の危険に晒され続けるんですよ」
ジン「作者クソでは?」
世津那「あと、ジンくんは私達が学生だから命を狙うとか狙われるとかと無縁の世界で生きて、楽しくのうのうと日々を消化していると思っているみたいでしたね? 確かに私達は謎フラペチーノ啜ったり、変なテーマパークでねずみ耳のカチューシャつけて、絶叫マシン乗り回してますよ。でも、それが本当に楽しいことかと言われたら、そんなこともないんです」
ロベリア「ああ、なんとなくわかるよ。楽しいことをしているはずなのに、何故か楽しくない感じ」

 友達と遊園地に行くとか、カロリーが高いだけの甘ったるい変なドリンクを飲むこと。それをSNSに載せたり、友達と共有したり。僕からしたら、それはとても幸せなことのように感じるのだが、世津那もロベリアも、苦笑いしている。

ロベリア「何をするかじゃないんだ。誰と一緒にいるか。それが何よりも大切なことなんだ。一緒にいたい心地よい友達と過ごせる時間なら、どんなことをするのだって幸せに感じるんだよ」
世津那「逆に、別に一緒にいたって楽しくない方とテーマパーク行ったって、心から楽しめませんよねえ」
ジン「……そういうものなの?」

 大切なヒトと過ごす時間なら、どんなことも幸せに感じる。そう言われて頭に浮かぶ何人かのバーコードのことを考えて、すぐに苦しくなる。幸せだった。楽しかった。でも、それは長くは続かない。この手で、殺すしかなかった。それはきっと、これからも。

世津那「ジンくんの世界は広すぎて、私達には理解しきれません。私やロベリアちゃんは井の中の蛙なんです。でも、蛙にとっては井の中が世界ですから。世界を守るためなら、何でもしちゃうんですよ。法律だの、世間体だの、そんなものも気にしていられないほど、追い込まれてしまうんですよ。世界を守るため、刃物を手にすることさえ迷わないんです。迷えないんです。生きるために、守るために」

 僕は目を剥くばかりだ。ただの学生だと思っていた彼女もロベリアも、強い光の灯った目をしている。
 僕だけじゃなく、2人も確かに主人公なのだ。世界観がどう、なんて言って舐めていたかもしれない。見た目がどうとか扱いがどうとか、関係ない。同じ主人公として生まれたなら、苦しいことも幸せなこともやらなければならないことも、等しく重たい使命だ。

ジン「世津那、ロベリア。ごめん。僕は、SFダークファンタジーの長編作品主人公だからって調子に乗っていたかもしれない……」
世津那「そのようでしたけど。わかってくださったなら何よりですよ」
ロベリア「ジンに悪気があったわけじゃないのは私達もわかってるから、そんなに気にするなよ」

 顔も性格もいいなんて、本当に最高の主人公達だ。なのに僕は、自分ばかり辛いと思いこんで、最低なやつだ。本当に。

世津那「ああでも、私やロベリアちゃんはジンくんの境遇に比べたらやっぱりマシです。ジンくんの世界はかなり厳しいものでしょうね。だから、ジンくんが私達学生にヤキモチを焼くのも当然のことだと言えるでしょう。きれいな服がきられて、おいしいごはんが食べられて、友達と授業を受けて、将来に夢も希望もあるんですから。ジンくんは辛い中でよく頑張ってますよ」

ジン「世津那もロベリアも、僕のことはもういいから。作者は主人公なんて作品を読者にわかりやすく伝えるための案内人みたいなもの、って考え方で、主人公より他の登場人物ばかり魅力的に書いてしまうヒトだから、辛い役目を渡されつつも作中一愛される存在にはなれないっていう、ひたすらにしんどいものなんだよね……うちの一番人気は多分クラウスかトゥールだし。最近マリアナとかメルフラルって意見も聞くけど、僕の名前は上がらないからね」
世津那「確かに、一番作中で頑張ってるのは主人公なのに、一番人気とは行きませんよねえ。うちもちるちゃん……木村散帝亜きむらちるてぃあがダントツで人気です。ツインテールの女はモテるんですかね……」
ロベリア「こっちはまだ始まったばかりだしキャラデザくらいしか見るものないけど、カフカはかなり人気だな。やっぱり私のカフカは見た目も麗しいから」

 自分の事のように喜ぶロベリア。今こいつ、私のカフカという言い方をした。まだ謎の多い作品だが、タイトルにも組み込まれているカフカという存在とロベリア。何か一言では語れない関係が結ばれているのかもしれない。

ジン「……さて。文字数も結構ちょうどいいし、ここで一旦休憩を挟んで、別のお話をしようか」
世津那「いいですね。休憩後の話題ですが、作中の裏話なんてどうですか?」
ロベリア「あまり作品の話をしたらネタバレになるしな。特に関係のない部分についてダラダラ語っていくのもありだと思う」
ジン「おっけい。じゃあ、次回の『枯れたつぎばはそれからだ』は、各作品の裏話コーナーということで。次もよろしくお願いします!」


***
というわけで複雑ファジーで連載中の別作品の宣伝を兼ねたコラボ企画でした。興味があったら是非読んでください。完成度の度合いではつぎば<まあ座れ<枯れカフ、といった感じなので、つぎば以外の2つのほうが自信作です。

Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.32 )
日時: 2020/12/07 18:40
名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)
参照: https://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19612

【二次創作】 No.03 ナイフ

 彼を包み込むのは、灯りのない部屋だった。
 外にあるものは全て豪雨に打たれ、時折、稲妻の光が窓から差し込む。 充満する雨水の匂いに、まるで、ここが深い海底であると錯覚してしまいそうだ。
 トゥールは、ラグマットの上に横たわっていた。呼吸によって身体が僅かに上下する以外に、彼は動かない。床に投げ出された尻尾は、無惨なほどに傷だらけだった。暗色の鱗の隙間に血色が滲み、床にも血の跡を付けている。四肢と胴体のほとんども切り傷や刺し傷ばかりで、青紫に変色している箇所さえあった。特に脾腹の血痕は、未だにその面積を拡げていた。
 紅蓮バーコードの襲撃に遭った。ここ最近は雨続きで気温も低かったし、昼間でも薄暗い。寒さや暗さを苦手とするトゥールは、外出は控えるべきだと自覚していた。だのに、珍しく雨が止んだ間に出掛けてしまった。そしてこのザマだ。
 相手が一人なら、これほど深手は負わなかったかもしれない。一人目を始末した瞬間、その片割れ――だと思われる――が、トゥールの脾腹を背後から抉ったのだ。それでも飽き足らず、殺人衝動に蝕まれた紅蓮バーコードは、トゥール目掛けて自らの影を伸ばした。影は質量を持ち、槍のように鋭くなった切先でトゥールに襲いかかる。紅蓮バーコードの、大きく開いた瞳孔は影よりも黒々として、空色の虹彩はグロテスクに煌めいていた。
 どうやって此処まで帰ってきたのか、正直、よく覚えていない。気が付いたら、息も絶え絶えで此処にいたのだ。自分は、あの紅蓮バーコードをどうしたのだろうか。尖った指先から血の匂いが微かにするから、殺したのかもしれない。いや、寸での所で殺れていない可能性もある。もし奴がまだ生きていたら、復讐しに来るのだろうか。片割れの十字架を背負って。
 模索したところで雨音の中に答えはなく、自嘲的に笑う体力さえない。頭は重いが、睡魔に身を任せることも出来ない。時々床や壁が稲妻で白くなるのを、茫洋と見つめるのみだった。
 ふと、何処かで物音がした。トゥールは身体を強ばらせるが、それがクラウスの部屋の方からしたものだと分かると、ふっと、少し力を抜く。物音というのは、クラウスのブーツの靴底が床を叩く音で、彼はトゥールの部屋の方に歩いてきているようだった。規則的で無機質な音は、やはり、足の方にある扉の前で止まった。
 ガチャリ。突如として生まれた隙間から、外気が流れ込んでくる。扉が歪な音を立てながら開いていく。カツ、カツと、停止していた足音が再び鳴り始めた。
 そこで、トゥールは疑問を抱いた。クラウスが、自分に何の言葉も掛けず部屋に入ってくるだろうか、と。礼儀だとかの範疇ではなく、自分の存在を繋ぎとめるみたいによく喋る彼に、無言は似つかわしいのだ。だから、自分に何かしら声を掛ける筈なのに――嫌な予感に、心臓が早鐘を打つ。
 もしかしたら、自分が眠っていると思って、クラウスなりに気を遣っているのかもしれない。そう考え直し、暗闇の中で彼のシルエットを視認した。
 だが、クラウスの姿が突然消えた。ワンルームの空間に、唐突に静寂が生まれる。トゥールはサーモグラフィーでクラウスの所在を認識した。彼はこちらに近付いてきている。その足取りは不自然なほどに迷いがない。
 逃げなければ。
 考え付いたのではない。本能がそう叫んだ。トゥールは痛む身体を動かそうとした。しかし、それはかなわない。クラウスがトゥールの上に馬乗りになったからだ。
 ――刹那、迸る『殺意』が牙を剥く。
 クラウスは、雷光にナイフを閃かせ、それを振り下ろした。
 トゥールは左手で彼の手を掴む。刃先は喉笛の上で止まった。それでも尚、ナイフを握る男は力を緩めない。刃は徐々にトゥールの喉に迫る。ナイフと皮膚が零距離になった瞬間、彼は右手でクラウスの襟を掴むと、乱暴に彼を引き剥がした。 
 クラウスはナイフを持ったまま床の上を転がる。だが直ぐに起き上がり、上体を起こしかけていたトゥールに再び覆い被さった。鱗を纏った右手首を踏み付けて床に固定し、空の手で、獲物の頭部を押さえ付ける。そうすれば、皮と肉だけの首が剥き出しになった。ナイフを振り上げる。トゥールは左手で鉄の刃を鷲掴む。そして無理矢理奪い取った。
 コイツの首を掻き切ってやる。
 衝動だった。赤黒い感情が、トゥールの身体を支配する。彼の手がクラウスの首を捕える。しかしクラウスの皮膚に触れた瞬間、いつもの、切なげな笑顔が脳裏をよぎった。するともう駄目だった。男の皮膚は冷たかったが、確かに脈打っている。血が流れている。その事実が胸を締め付けた。
 クラウスは首にかかる手を振り払う。その所作は忌々しげだった。そして何処からともなく、もう一本のナイフを取り出すと、また振り下ろす。今度は間に合わず、トゥールは鱗で鎧装した腕で、何とかそれを受け止めた。
 硬い鱗だ。どんなに押さえ込まれても、ナイフは腕を貫かない。クラウスは刃先を少し動かし、鱗と鱗の隙間にそれを捻じ込んだ。冷たい汗が噴き出す。彼は刀身を斜めにすると、肉と鱗の間に更に捻じ込む。それから、刃を垂直に起こし始めた。
 
「う゛、あ゛……ッ」

 全身が粟立つ。体温が急降下する。それでいてナイフが突き刺さった部分だけが、溶解した鉄を注がれたように熱く、激痛で痺れる。みちみちと音を立てながら、鱗が剥がれていく。
 息ができない。酸素を取り込もうと口を開くが、荒い息が吐き出されるばかりで吸うことができない。その間にも、痛みは酷くなっていく。気が狂いそうだ。眼前のソイツが、クラウスであると自覚すればするほど、何かが瓦解の音と共に崩れていく。クラウスの表情は陰になって見えない。
 雷鳴。建物を震わせるそれは、怪物の咆哮のようだ。光が闇を裂き、二体のバーコードを照らし出す。雷光を浴し、クラウスの顔がやっと明らかになる。一瞬だけ見て取れたそれは、一瞬にして目に焼き付いた。異様なものだった。
 クラウスは笑っていた。哀愁も人間らしさもかなぐり捨てた、純粋な恍惚ばかりがそこにはあった。口は三日月形に歪められ、琥珀な眼は満月のように見開かれ。喜悦に吊り上がった頬は紅潮していた。乱れた息は湿っている。彼の眼は、はたしてトゥールを見ていたのだろうか。トゥールの姿形を捉えていても、恐らくトゥールだとは認識していない。トゥールは――クラウスの数少ない共有者は、彼の下で、殺害対象の一つに成り下がっていた。
 仕方ないことだ。クラウスに巣食う、紅蓮バーコードのシステムが、彼ではない彼を作り上げているのだから。それでも、自分に刃を向けるソイツは、クラウスと同じ顔をしていて。
 一層、刃が突き刺さる。身体に、だけではなかった。
 血が溢れる。赤い雨がトゥールの面に降り注ぐ。トゥールは、自分のものとは思えないような声を上げて、左腕を振った。ナイフが肉を抉る。苛烈な痛みが走る。
 刃物を奪い取られ、クラウスは怯んだ。もう何も持っていないらしい。そのまま首を締めようとする彼の頭を捕え、片脚で腹を蹴り上げた。力が緩んだところで、細い身体の下からすり抜ける。
 腕からナイフを抜けば、大量の血が流れ落ち、指先までも濡らした。鉄の匂いが鼻腔にこびり付く。強い匂いに、毒々しい真っ赤なそれに、眩暈がした。
 クラウスは武器を持っていなかった。丸腰の彼にトゥールは殺せない。放っておけば、またいつもの、陽気を取り繕った彼に戻る。だがトゥールは、ナイフを投げ捨て、至近距離で相対していたクラウスの腕を引いた。骨の固さが直に伝わってくるような、貧弱なクラウスの腕。それを折った。
 酷い悲鳴を聞いて、全身の鳥肌が立った。何故だかそれは、耳に心地良かった。
 トゥールは、クラウスの頭を床に押さえつけた。端の吊り上がった口から、ちろりと、二股の舌が覘く。血のように赤い。どうした、まだ三本残っているぞ。あらぬ方向に曲がった腕を潰さんと強く握り締めて、トゥールは低い声で囁いた。
 クラウスは床に額を擦りつけて呻く。やがて、その声が嗚咽らしきものに変わったかと思うと、彼はやっと言葉を発した。
 やめて。お願いだから、もうこんなことしないから。やめてくれ。痛いんだ。ねえ、トゥール――。
 まるで子どものようだった。トゥールは、はっとして彼を押さえつけるのをやめた。上から見下ろす背中は、心なしか小さく見える。自分は今、何をしようとしていたのか。いや、何をしたのか。意味もなくクラウスの腕を折った。傷付けたのだ。
 自分の中に、クラウスのモノと変わりない『殺意』が芽生えていた。やっと自覚した。
 共有者に殺意は抱かない。大切にしているなら、それを壊すなんてしない。それが普通だ。結局、自分はバーコードなのだ。どんなに足掻いたところで、それを思い知って終わる。失敗作はこんなにも容易く他を害す。
 だから消えてしまいたい。
 クラウスは起き上がらない。うつ伏せのまま息をしている。やっと呼吸が整ってきたところだった。トゥールは彼の隣に頽れた。絶えず流れ続ける雨音が、ノイズのように聞こえる。もう何も、考えたくなかった。
 二人分の呼吸が床を這っていた。やがて、クラウスが掠れた声で言った。

「トゥール……生きてる……?」
 
 トゥールは返事をしなかった。瞼をゆっくりと開くだけだった。目線の先に、クラウスの顔がある。隈の目立つ、幼さを残した顔。見たことのない表情をしている。トゥールは、それを形容できる言葉を知らない。トゥールが生きているのが分かると、クラウスの目から雫が一滴零れ落ちた。赤色ではない。清く、透明な雫だった。
 よかった。クラウスは声もなく、そう言った。トゥールがそこで息をしているだけで、クラウスはきっと、生きていられる。彼等の延命装置は、壊れかけのまま作動を続ける。全く、邪悪な呪いだ。
 トゥールは目を瞑った。この傷も、明日の朝にはまるで何も無かったかのように、殆ど治っているだろう。
 雨が降る。雨足は依然強く、止む気配を見せない。そう言えば、今日殺した一人目のバーコードは、雨雲みたいな暗い灰色の目をしていた。だからどう、と言うことは無いのだが。その色は、いつまでも自分の中に残りそうな気がした。
 もう、全て流れてしまえばいい。呪いも、灰色も、自分の存在すらも。
 口にすることはできず、外の世界の音を聞き続けた。

***
複雑ファジーで連載している『アスカレッド』の作者、トーシさんによる二次創作です。トーシさんは比喩表現とか描写が大変好みな作品を書きますし、特にアスカレの色彩の描写の美しさがめっちゃエモなのでURL載せましたので、興味があればどうぞ。イラスト掲示板にちょいちょい載せてらっしゃるイラストもめっちゃ上手い人です。

多分2016年頃(つぎばのNo.02が公開された頃)に書いていただいたので、解釈とかその頃のものになってる感じですね。
ちなみにこの二次創作が嬉しすぎて私が書いたものが>>2のSSになります。
また、トーシさんの二次創作作品、クラウス視点のアンサーストーリーを次回載せるのでお楽しみに。

Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.33 )
日時: 2020/12/12 20:43
名前: ヨモツカミ (ID: xJyEGrK2)

【二次創作】 No.04 鱗
 
 雨が降っている。それも豪雨だ。道の上に落ちた雨水が排水溝で氾濫している。飲み込まれない水はそこに残り続けて、もう何処にも行けないようだ。
 まるで――まるで? まるで何の様だと云うのか。一瞬思い浮かんだものはすぐに消えた。きっと、その程度のものだったんだ。
 クラウスは窓を閉めようと首を引っ込めた。前髪が雨に濡れて少し重たい。額から瞼へ、鼻筋へ、頬へ、顔の形を覚えるように、水滴が滑り落ちていく。水の匂いがこんなにも強い。深海にいるみたいだ。クラウスは息を吐きながら、何となくそう思った。
 長い袖で顔を拭って、窓を閉める。そういえば、どうして外なんて見ていたんだろう、しかも窓を開けてまで。薄闇の中で雨雲が蠢いているばかりで、面白味のあるものは何も無いのに。
 ふと、もう一度外に視線を向けると、道路を歩く人影が見えた。否、人影というには歪だ。足と手は常人よりも大きく、路上に尾を引き摺りながら歩くそれを、『彼』を見て、クラウスは全てに合点がいった。
 ああそうか、自分は待っていたのだ。
 トゥールの帰りを。


 コンクリートの階段を駆け足で降りる。そして、二階の踊り場でトゥールと出会った。トゥールは、水以外の匂いを身体に纏わせていた。血だ。錆びた鉄のような、血の匂いがする。眩暈がしそうな程強烈なその匂いに、クラウスは一瞬、息を止めた。
 どうしたの、何があったの。訊いたところで答えてくれるか分からない、答えられたところでどうにもできない、けれど訊かずにはいられない。だのに、喉元を掻き切られたみたいに、音が出なかった。
 トゥールの眼は――正直なところ、自分を見ているようだった。紅蓮に支配された時と同じくらいの殺気を、琥珀色に滲ませていた。
 暫くの間、二つの琥珀色が対峙していた。その間にあるのは雨音だけだった。クラウスの琥珀色は動揺で波打っていた。
 やがて、トゥールがクラウスの横をすり抜けていった。一足遅く出した手は宙を握る。トゥールは振り向きすらしなかった。クラウスはそれを見ていた。
 はあ、と息を吐く。湿った空気に、渇いた吐息が混ざる。胸が締めつけられているようなこの感覚は、きっと水中に溺れている時と同じだ。足掻いて、何も掴めないのも同じ。

 クラウスは踵を返し、重い足どりで自分の部屋へ向かった。血液の匂いに当てられたのだろうか、心臓がうるさく拍動している。心臓音が外に漏れないように、クラウスは自分の左胸に触れた。ぎゅ、と服を掴んで、覚醒しないように祈った。
 ソファに倒れ込み、冷たい革に顔を押し付ける。身体全体が脈打っている。どく、どく、という音。体内を血が流れる音。体温が上昇する。そんな自分に対して心が冷えていった。乖離していく。心を残したまま、もう一人の自分が自分を蝕んでいく。クラウスはそれを外から見ているしかない。
 レザーに爪を立てる。背を丸める。衝動を体内に収めるように、身を小さくする。血の匂いがする。神経を貫く鉄の匂い。瞼の裏に赤色が見える。匂いはどんどん強くなる。喉奥が熱くなる。左胸から毒が回っていく。トゥールは近くの部屋にいる。きっと苦しんでいる、だからその苦しみから解放してあげなければ。止めを刺して。自分が、あの鱗を突き破り、ナイフを突き立てて。いやダメだ。殺したくない。匂いがする、鉄の匂い。痺れる。息は荒く、熱く。

 ――以前、トゥールの血を浴びたことがある。今のように彼が弱っている時に襲ったのだ。鱗の隙間に刺したナイフが、皮膚をぷつんと破って筋肉を裂いた。意外と深くまで突き刺さるんだ、と思ったのを覚えている。刃と身の間に血が滲む。その赤色は暗色の鱗によく映えた。刃を抜くと、傷口から血が溢れだした。飛んだ血が、クラウスの顔にかかった。温かい血だった。血は内部から溢れ出し止まることを知らない。
 生きていると、実感した。

 クラウスは、自分の口角が上がっているのに気がついた。
 何かが鼓膜の奥で破裂した。クラウスはソファから下りて立ち上がる。そして廊下へ繋がる扉を見た。酷く、冷静だった。
 思考など無かった。雨がコンクリートを叩く音、雷が唸る音。それが頭蓋骨を震わせる。空気は湿っていた。レッグホルダーからサバイバルナイフを取り出す。柄の形を手に覚えさせるみたいに強く握った。皮膚の感覚にそれは溶け込んで、最早凶器を手放すことはできない。
 暗い空間を進む。『生物』の輪郭が見える。馬乗りになって、ナイフを振り翳す。雷光で『生物』の姿が顕になる。鱗を纏った異形。その鋭い歯も、長い爪も、逞しい尻尾も全てが何かを傷つける。いつかこれに殺されるかもしれない。実際初めて出会ったとき、クラウスは殺されかけたのだ。死にたくない。だから殺すしかない、殺される前に。
 それは最初はクラウスを傷つけまいとしていたが、やがて手荒くクラウスの身体を投げた。それの心が見えない。鱗で覆われた心が見えない。 結局は自分だって生きたいくせに、いつも死を望んでいるようで。鱗で、 弱いところも人間らしいところも全部隠してしまっている。クラウスはナイフを刺してそれをこじ開けようとする。無理やり刃を抉りこませて、奥にあるものを見ようとして。その鱗を全て剥いだとき、それは人間になれるだろうか。
 弱いところを誰かに許容してもらって、寂しさを分かちあって心を慰められる人間に、なれるだろうか。
 
 一瞬、視界が白んだ。稲妻が光ったのかと思ったが、床に頭を打ち付けた衝撃によるものらしかった。トゥールが自分を組み伏せている。その大きな手で頭部を鷲掴んで、折れていない方の腕をきつく握り締めて。どうした、まだ三本残っているぞ。トゥールが低く囁く。その声はどこか楽しそうで、クラウスの肌は粟立った。
 自分を殺そうとしているのだろう。あんなに苦しそうに、殺すまいとしていた自分を、こんなにも容易く殺そうとしているのだろう。
 当然の報い、自業自得。そう言われてしまえば反駁できない。それでも殺されたくない。もう滅茶苦茶だ。
 殺されたくない。せめてトゥールには、殺されたくない。トゥールにまで、生を見放されたくない。
 
 やめて。お願いだから、もうこんなことしないから。やめてくれ。痛いんだ――。

 知らず知らずのうちに漏れていた呻き声は、いつの間にか嗚咽に変わっていた。クラウスの言葉を聞いて、トゥールはやっと手を離した。そうして、トゥールはクラウスの隣で倒れた。
 窓の外で、雨足は依然として弱まる気配を見せない。雨の音が聞こえる。そして、二人分の呼吸音も聞こえる。

「トゥール……生きてる……?」

 クラウスは目を開けて、トゥールを見た。トゥールは瞼をゆっくりと上げてクラウスを見つめ返した。灰がかった視界の中で、揃いの琥珀色は弱い光で煌めいていた。
 よかった。そう零すと、自分の心までどんどん零れ落ちて行きそうになった。でもトゥールはそれを受け容れられずに、ただ顔を歪めるだけだった。彼の表情を形容する言葉を、クラウスはまだ知らない。
 地面を雨水が流れていく、そんな音が聞こえる。
 ああ、これだ、と思った。
 ああ、これが飲み込まれない思いなんだ。
 排水口で溢れかえる雨水みたいに、「生きてほしい」なんてのはトゥールの中に入っていかないで、どうしようもなく溢れ出していく。何処にも行けないで、ずっとそこにある雨水と同じで、ただ静かに、天に還るのを待っている。そうやって無かった事になる。
 でも自分は、トゥールに生きて欲しいと思っている。自分も生きて、トゥールも生きる。目先の幸福かもしれない。自分たちは生きていてはいけないかもしれない。沢山の物を傷つけるし、不幸にする。だとしても――生きることを望まれた、その事実は消えてほしくない。
 生きていい、と言われたなら、生きていける気がするから。
 これは邪悪な呪いだろうか。それともいつ壊れるかわからない延命装置だろうか。もう、何でもいい。
 灰色だとしても、流されずに残ればいい。自分たち二人が、ずっと存在し続ければいい。

***
トーシさんに頂いた二次創作は以上となります。私めっちゃトーシちゃんの表現の仕方好きだからこの二次創作ホント好きなのよね、最高ですよ。
二人の関係性も愛おしいし、トーシちゃんはトゥール推しなんですけど、やっぱりトゥールがかっこよくてクラウスが可愛い……流石はヒロイン投票一位の男です。

Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.34 )
日時: 2020/12/20 14:58
名前: ヨモツカミ (ID: QHUQtp81)

【コラボ】 No.04 宵と継ぎ接ぎ

(ダーク・ファンタジーより、ライターさん署、『宵と白黒』とのコラボ企画です)

クラウス「久々のコラボ企画でテンション上げ上げウェーイって感じ! 台本書きとかこのノリが苦手なやつは必殺〈ブラウザバック〉をするんだぞ!」
ジン「テンション高、うざ、うるさ……しかも今回、君の出番ないから帰ってくんない?」
クラウス「…………えっ?」

トゥール「お前は以前のコラボ企画、それから闇の系譜出張座談会でも活躍したから、これ以上お前に給料出すのが惜しいとかで、今回お前がどんなに喋ってもギャラは発生しないらしい」
クラウス「ちょっ、なんでだよ! オレ絶対作中1の人気者なのに? オレがいなかったらつぎばは金賞とか管理人賞取れてねーからな!?」

ジン「調子乗らないでくれる? 賞頂いたのは君の活躍関係ないから。読んでくださってる読者の皆さんのお陰と、僕という主人公の頑張りのお陰だよ。あとは作者がありもしない画力と慣れないアプリでイラストを描いてみたら結構登場人物の顔が良かったとか、そういう点じゃない? なんにせよ、見てくださってる方のお陰であって君の活躍じゃないね」

クラウス「ん? んー、でも顔の良さで作品が評価されたなら、ほぼオレのお陰じゃん! オレ作中の公式イケメンなんだぜ? ジンはイラスト化されるとき、目付き悪いのをアイプチでどうにかしてるだけのくせに、お前こそ調子乗ってんじゃねーし!」

ジン「僕は可愛い担当だからショタコン共に媚を売るためにはアイプチするしかなかったんだよ! そもそも、イラストの顔の良さの話なら君よりトゥールのほうが人気だからね? 公式イケメンでも無いのにイラストでは美化されまくって、ホントクソみたいなトカゲだよ、主人公の僕を差し置いて『トゥールさんカッコイイ~』とかちやほやされてさ、調子乗らないでほしいよ、鱗の色塗りいつも失敗されてるし、本編での出番がないまま1年以上経過してたくせに、インナーのデザイン決まってないからいつもローブ羽織って誤魔化してるくせに……」

トゥール「もうその話は終わりでいいか? クラウスはとにかく出番がないから帰ってくれ。楽屋においてあるお菓子は全部持ち帰って構わないから」
ジン「何勝手なこと言ってんの!? 楽屋のお菓子、埼玉の川越名物『芋恋』だよ⁉ 僕食べるの楽しみにしてるんだから」
トゥール「すきあらば川越語りするのもやめろ……そうやって『まあ座れ話はそれからだ』の舞台が川越であることをアピールしたり、作品の紹介をしようとするな……と、作品名を出しとけと、台本に書いてあるから言っただけだからな、俺は」

ジン「あ、コラ、予め台本が用意してあることは内緒って約束だったでしょ、全く! 作者があわよくば作品の宣伝しようと小癪なこと考えてるのがバレちゃうじゃないか」
クラウス「ヨモツカミ、汚いやつだな」
ジン「全くだよ。……とにかく、クラウスはそろそろ本当に邪魔だから帰ってね。芋恋は食べていいから」

 クラウスはまだギャーギャーと文句を言っていたが、ここまでのグダグダで既に1000文字超えてるの流石に心ちゃんに申し訳ないので、ご退場頂きました。

ジン「はい、この流れで、まさかあのコミュ障のトゥールがコラボ企画に参加!? なんて騙されたヒトが多いかもしれないけれど、勿論トゥールは参加しないよ。騙されたヒトも多いんじゃないかなっていうか、途中までトゥールに行かせようとしてたせいで書き直すのが面倒だからなんやかんやっていうのがあって、」
トゥール「……そのへんは黙っておこうな」
ジン「ライターさんの希望もあって、とあるヒトを呼んでいるよ。はい、トト。もう部屋入ってきていいよ」

 ここでクラウスと入れ替わりで入ってきたのは、紺色の癖毛気味のツインテールに、長い前髪で目元を隠した若い女。バーコード殲滅なんとかかんとか隊(私も正式名称忘れました)のハイアリンクである、トトだ。
 一応本編ではトゥールとトトは面識がないし、そもそもバーコードとハイアリンクである時点で敵同士なので、こんなふうに顔を合わせたら普通、殺し合いが始まってしまうのだが、この時空ではそんなことは起こらないのだ。
 トトの登場により、自然にフェイドアウトしていくトゥール。

トト「はいっ、こんにちはー。番外編時空、初めてだから変な感じねえ。それに、まさかわたしが呼ばれるとは思ってなかったからビックリしてるんだけど。まあ、ジンと一緒なら変に緊張せずにやっていけそうかな」
ジン「久しぶりだね、トト。君も緊張とかするんだね?」
トト「そりゃあね? でもヒトと話すの好きだから楽しみ! さて、どんなヒトがくるのかなー」
ジン「じゃあ、ゲストお呼びしまーす。『宵と白黒』より、トワイとリュゼさん、部屋入ってきていいよー」

 夕焼け色の目を瞬かせて、やや遠慮がちに紺髪の青年が入室してくる。
 落ち着いた雰囲気を纏った少女が、空色の瞳で部屋を見回しながら後に続いた。白いメッシュの入った黒髪が揺れる。

トワイ「えーと……あー、主人公? のトワイ、です」
リュゼ「ご紹介に預かりました、リュゼ・キュラスです。よろしくお願いしますね……あ、リュゼでいいですよ!」
ジン「うん、はじめまして。じゃあ、遠慮なくリュゼと呼ばせてもらうとして、僕はトワイと同じく、主人公のジンだよ、よろしくね」
トト「特にヒロインでも何でもないトトでーす! よろしく!」

 と言って笑顔でトワイとリュゼの手を掴み、握手するトト。

リュゼ「トトさん……良い名前だと思います」

 トトを見て微笑んで、ジンに顔を向けるリュゼ。

リュゼ「ジンくん? さんの方が良いでしょうか……」

トト「そう? 1回犬に付ける名前みたいだって馬鹿にされたことあるから、なんかそう言ってもらえると嬉しいねー、ありがと」
ジン「みんな僕のことは呼び捨てかジンくんって呼んでくるね。まあ、余程酷いあだ名つけてこない限り不快になることなんてないから、好きなふうに呼びなね」
リュゼ「ええと……では、ジンくん、でよろしくお願いします」
トワイ「ああ、よろしく頼む」

 少しトトの手を握り直して、トワイは首を傾げる。

トワイ「……ジンって今いくつなんだ? 違ったら申し訳ないんだが……ジンと同い年っぽい殺し屋より、もっと年上の雰囲気してるなと思って」

 ジンはちょっと驚いた顔をしつつ、ニヤリと怪しく微笑んだ。

ジン「ふふ、トワイは鋭いんだね? みんな僕のこと、ただの子供だって馬鹿にするからね……ていうか、殺し屋? 君こそ、なんの仕事してるのさ」
トワイ「一応殺し屋やってるよ。っても、別に殺しばっかじゃないけどさ。ジンは? 学生じゃないよな、どう見たって」
ジン「わ。殺し屋ってそんな公言できる職業じゃない気がするけど、まあいいや。僕はそうだね、学生でもただの子供でもない。トワイが感じ取ったもので大体合ってるよ」
トワイ「ただの子供でもない、ってとこが気になるけどな……その顔の縫い跡とかさ」
 
 ジンを見て首を傾げ、さらにちらりとトトに目を向けるトワイ。その横から、リュゼが口を挟む。

リュゼ「トトさんも……戦ってる、って雰囲気です。なにかお二人も力──異能力、とかを持ってるのですか?」
トト「あ、わかる? リュッちゃんもヒトを見る目あるねえ。わたしは戦闘訓練を受けたことはあるけど、ふつーの人間だから、ちょっとナイフの扱いが得意なだけかな。ジンは人間じゃなくって、バーコードっていう……まあ、さっきトワくんが気にしてたこの縫合痕とか見てわかる通り、とにかく人間じゃない種族でね、〈シュナイダー〉っていう、ナイフを大量に召喚する〈能力〉を持ってるんだよ」
ジン「ちょっとトト、めっちゃ僕の個人情報勝手に喋ったね!? まあ、別にいいけど」

トワイ「と、トワくん……リュッちゃん……」
リュゼ「いいじゃないですか、可愛くて。私は好きですよ」
トワイ「や、別にオレもちょっと驚いただけだよ。……バーコード、ね。こっちの世界における『真名』みたいなもんかな」

 首を傾げるトワイとリュゼ。

トワイ「あーでも、それを持ってるヒトが、人間じゃない種族? だったら違うか。持ってるヤツの方が特別、ってことだろ? 真名は、誰にでも平等にあるものだからな」
ジン「へえ、なんだか面白いね。誰もが平等に何かしら生まれつき異能力的なものを持っている。ってことかい?」
トト「むしろ持ってないことが不自然、みたいなことになるの?」
リュゼ「そうですね。魂に刻まれた真名と、自分を守るための異能力、って感じです。例えば、私なら『時間を戻す』とか」
トワイ「異能力を持ってないやつ、ってのはあんまり見たことないな。というか、持っていないやつはいないんじゃないかと思う……あ、第三者によって奪われてる場合を除いて、だけど」

ジン「時間操作なんて、可愛い顔して強そうだね……で、奪う? 魂に刻まれているものなのに、奪われしまう場合があるの? それ、奪われたら大変なことになるんじゃないの」
リュゼ「わ……ありがとうございます」

 驚いて、少し笑うリュゼ。

リュゼ「そういう特別な力を持った人がいるんです。『真名奪い』って呼んだりとか……真名が奪われたら、異能力も使えなくなって、記憶喪失になっちゃうんです。私の親戚のひとが、今そうなってしまっていて」
トワイ「だから真名を取り戻しにいこう、ってのがオレたちの目標なんだ」
トト「うっわー、記憶なくなっちゃうのは寂しいね。私そういう世界の生まれじゃなくてよかった! 奪われる記憶も能力もないもん」
ジン「トトは記憶失ったら寂しいって思うんだね。僕は消したい記憶のほうが多いくらいだけど……」

 少しだけ悲しげに微笑みながら横目でトトを見てから、ジンはトワイに向き直る。

ジン「でも魂に刻まれた、なんて抽象的なもの、どうやって取り戻すの? 魂も異能力も形のあるものじゃないから、奪う、取り返すって言うのも少し想像しづらいけど」

リュゼ「ジンくん……」

 少し悲しそうなジンを励ますような声で、リュゼは続ける。

リュゼ「さっき私が言った『真名奪い』、あの異能を持っているひとは、チカラを発動したときに魂をられるらしいんです。それを使って真名を奪って、なんらかのモノ……例えば指輪とか、ネックレスとかに封じるんです」
トワイ「それが今回の場合だと懐中時計だな。それを取り返しに行く」
リュゼ「伝承とかでしか、詳細が伝わってないことでもあるんですよね……実際に起こることなんですけど、あまりにも実例が少ないというか」
トト「ひえー。リュっちゃんとか、まだ子供なのに、そんなのに立ち向かおうなんて、勇気あるね。てゆーかめっちゃお話変わるんだけどさ、2人ってどんな関係なの? トワくん殺し屋なんでしょ? リュっちゃんみたいなただの可愛い女の子が殺し屋と知り合うって、異常じゃない?」

トワイ「関係……? 関係……」
リュゼ「ありがとうございます」

 楽しそうに笑うリュゼの横で、首を捻るトワイ。

リュゼ「関係ですか……? 私は双子なんですけど、私の姉がトワイさんに依頼をしたんですよ。そうやって知り合いました」
トワイ「そう……そうだな。その後色々あってこうなった感じだ。詳しくは本編を読んでくれと作者が言ってる」
ジン「あ、説明ぼかした」
トト「ライちゃんもそういうことするんだね(笑)
それにしても、双子のお姉ちゃんいるのいいなあ! どんな子なの? リュっちゃんに似て美人さんなんだろうねえ」
リュゼ「かっこいいひとです! 私とは違って活発で、思い立ったらすぐ行動って感じの。私はロングだけど、姉さん……シュゼはショートボブなんです」
トワイ「ライちゃん……もしかしてトワイライトが由来だって分かったのか?」

(作者の乱入:えっ、気付かなかったけど、トワイさんとライターちゃんでトワイライトなのね!? めっちゃえもいやん)

トト「わたしは気付いてました~。黄昏時と白と黒。トワくんとリュっちゃんに、あとお姉さんのシュちゃん、作者のライちゃんも合わせて『宵と白黒』なんだね。そういうのってすごく素敵!」
ジン「リュゼ、お姉さんの話するときすごい楽しそうじゃないか。それだけ仲良しなんだね。姉妹っていうのも悪くなさそうだね」

(作者の声:バレたか(?) だから私はwriterじゃなくてlighterの方なのです(つまり火を着けるヤツ)。長くなりそうなので、それだけ)

トワイ「オレの師匠が付けてくれた名前なんだ。色んな意味を込められるから、名前って大切だよな」
リュゼ「双子だと顔が似ているから、私たちの場合は髪を染めたりすれば入れ替わるイタズラとかできるので楽しいですよ!」

ジン「名前ね。僕の名前の由来は“刃”って文字から来てるってお母さんが言ってたような。あ、そうだ。入れ替わりで思い出したけど、僕の知り合いの研究員のメルフラルってやつが、双子の弟がいるって言ってたよ。子供の頃は入れ替わるイタズラをしたって話してた。双子あるあるなのかもね」
リュゼ「ジンくんはナイフを呼び出す能力を使える、ってさっき言ってましたし、ピッタリですね! メルフラルさん……どんな方なのか会ってみたい気もします。双子なの一緒ですし、あるあるとか話せたら楽しいだろうなあ」

 にこりと笑って言うリュゼ。

ジン「あ、メルと会話するのはやめたほうがいいよ」
トト「うん、メルさんとお話するのはやめたほうがいいよマジ」
ジン「たとえ次回もこうやってコラボする機会があったとしてもメルとだけは話さないほうがいいから、本当に」
リュゼ「……? メルフラルさんはそんなに危ない方、なんですか?」
トワイ「ジンだけじゃなくて、トトさんまでそう言うんだったらそういうことなんだろうな……」

トト「危ないなんてもんじゃないよ、あのショタコン、ジンにガチ恋してるから、わたしのことひがんで嫌がらせしてくるんだよ! 本当に性格悪い!」
ジン「そう! あのショタコン、僕が可愛い生意気な少年だからってベタベタしてきて猫なで声で名前呼んできて……あと性格悪い!」

リュゼ「ショタコン……それはなんか、こう……」
トワイ「そういうヤツはどこの世界行ってもいるんだよな……頑張れジン、オレは応援してるぞ」
ジン「うう……帰ったらまたベタベタされるんだろな……でも頑張るよ。──さて、話の流れ的にも文字数的にも丁度いいから、そろそろ締めとするかな。最後にリュゼとトワイ、何か言い残したこととかあるかい?」

トワイ「えーと、とりあえず今日はありがとう。ジンたちと話せて楽しかったよ。……いや、もっと主人公風なこと言えればいいんだけどさ、オレはそういうの苦手だから月並みで悪い」
リュゼ「私からも、ありがとうございました! ───最後なんですけど、作者がカメラ持ってきたので写真撮りませんか?」

ジン「カメラって……あの、撮られると魂を抜かれるって言うやつかい?」
トト「ジン、それ老人の考えた都市伝説だから。いいよ! わたしは思い出に残るもの好き! ジンなんて放っといて3人で撮ろうよ!」
トワイ「それはオレも聞いたことがあるな……いや、都市伝説だとは思うんだけど」
リュゼ「モノとして残るのっていいですよね……では撮りますよ、ジンくんも!」
ジン「都市伝説……いや、別に本気で信じてるわけじゃないよ、いいよ、撮ろうじゃないか」

 思い思いのポーズを決めて、カメラに向き合う。この場合撮影者って誰なんだろう、作者なのか、三脚立ててタイマーなのか。まあそのへんはどっちでもいいだろう。
 はい、チーズ。パシャ!

***
撮った写真は後日送られましたとさ……
END
***
心ちゃんと呼ぶべきか、ライターさんと呼ぶべきか。とりあえずコラボしてくれてありがとう!
宵はくの外伝が複雑ファジーにあるんですけど、(宵と白黒 外伝 とかで調べれば出るも思う)私は実はその話がめっちゃ好きなので、それを読みつつ本編を読むとより楽しいと思うので外伝おすすめです。先に外伝読んでから本編読んだら面白いのかも。
今回、みんな楽しそうにしてたし、私がコラボ慣れしてきたのもあってなんか楽しかったな。いや、毎回コラボは楽しいんですけど。


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