複雑・ファジー小説
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- AnotherBarcode アナザーバーコード
- 日時: 2020/12/07 18:30
- 名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12746
生きていれば。生きてさえいれば、いつか幸せになれると思っていた。
私だって、生きてても良いんだって。誰かと一緒に笑う事も出来るんだって。
そんな夢を、見ていた。
それが幻想だとわかっていても。私達は望まずにはいられなかった。
普通に朝を迎えて、普通に誰かと過ごして、そして普通に1日を終えて、普通の明日を待つ。そんな幻想に酷く焦がれたところで、永久に叶うことはないのに。
………………………………
これは、継ぎ接ぎバーコードとは別の、もう1つの話。
こんにちは、ヨモツカミです。以前からオリキャラ募集して、話だけ練ってたのですが、ようやくスレ立てすることができました。
本編では明かさなかった事とかオリキャラ募集で投稿頂いたキャラなどが主に活躍します。つぎば本編も読んでいるともっと楽しめるんじゃないでしょうか。本編読んでなくてもなんとなくわかるような説明も入れるつもりですが。
【目次】>>15
よくわかんない投稿の仕方してるので、1レス目から見るとかじゃなくて、目次見たほうがわかりやすいと思います。
【キャラクター関連】
登場人物詳細その1>>16
桜色の髪の少女>>1 ロスト>>21
ロティス>>2 レイシャ>>24
アイリス&シオン>>6
【軽い説明】
群青バーコード
青色の、通常のバーコード。モノによっては人の役に立つかもと考えられている。バーコード駆除の為の兵“カイヤナイト”は群青バーコードで構成されている。
翡翠バーコード
緑色の、失敗作を意味するバーコード。暴走しやすかったり、力が使えなかったり、ヒトとして機能しなかったりする。大体はすぐに処分される。
紅蓮バーコード
血のような赤色の、殺人衝動をもつ、特に危険なバーコード。うまく使えば兵器として使えるため、重宝されたりもしたが、基本的に危険視されており積極的に駆除される。
漆黒バーコード
全てを吸い込む様な黒色。殆ど謎に包まれている。本当のバケモノだと恐れられている。
ハイアリンク
バーコード駆除専門の軍隊。基本的に人間で構成されているが、その中にバーコードで構成された特殊部隊“カイヤナイト”がある。
【お客様】
メデューサさん
2018年2月6日スレ立て
- Re: AnotherBarcode -アナザーバーコード- ( No.15 )
- 日時: 2021/08/15 19:28
- 名前: ヨモツカミ (ID: oKgfAMd9)
- 参照: https://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=thread&id=2185&page=1#id2185
目次
(URLは挿絵のツリーを載せてます)
【本編】
もう1人の漆黒バーコード、桜色の髪の少女の見た世界の話が中心となります。
ジンがクラウスやトゥールと過ごしていた間、彼女は何をしていたのか。それがあざばの本編です。
No.00 空虚と黒の目的 >>1
■アナザーバーコードの大筋の話、桜色の少女が見てきた世界の序章的な話。ジンとは違う、名前すら持たない彼女の生きた世界は、どんな色をしているのだろう。
No.01 宵闇に咲くは花篝 >>21
■15年前。ロストという漆黒の瞳を持つ少女と桜色の少女の出会いの話。
【番外編】
本編登場人物や募集したオリキャラさんの過去や本編で語られることのなかった裏の話。本編のネタバレも多いので、本編読後にお読み頂くといいかな。
No.01 雨 >>2
■殺したくない誰かと、生きたかった誰かの話。時系列的にはつぎばNo.01の少し前のお話なので、つぎばNo.01読後に読むのがおすすめ。
No.02 シオンの花束 >>3 >>4 >>5 >>6(>>3-6)
■共に生きようとした2人の少女の話。つぎばの約2年前。残酷描写注意&長いし暗いです。
No.03 願わくば相対 >>9
■七夕ネタ。ジンに出会う5年前のトゥールとクラウスの話。つぎばNo.03読後に読むのがおすすめ。
No.04 べにいろバーコード>>10
■つぎばの約1年前、タンザナイトの日常の1コマ。つぎばNo.03読後に読むのがおすすめ。
No.05 誓イハ焼ケ爛レ(前編)>>12 >>13
■ハイアリンクの人間達の話。時系列は想像におまかせします。つぎばNo.05読前に読むのがおすすめ。後編はまたいつか。
No.06 さよなら幸福、またいつか >>14
■6年以上前、クラウスがバーコードになる前の話。流血描写注意。つぎばNo.02読後に読むのがおすすめ。
No.07 かさなるべにいろ >>19
■つぎばより1年程前のタンザナイトのお話。「シオンの花束」読後に読むのをおすすめします。
No.08 小鳥は鳥籠を壊して、 >>20
■つぎばより4年ほど前。ニックとアケの出会いとタンザナイトの話。
No.09 優しい弱さ >>24 >>25 >>26
■つぎばより3年ほど前。トゥールとクラウスの過去の話。
No.10 誓イハ焼ケ爛レ(後編) >>28
■ハイアリンクたちのお話後編。載せるのが遅くなってしまいました。
No.11 死にゆく者達へ >>29
■ルートとオーテップの話。つぎばより5年ほど前の話。つぎばNo.05後に読むのがおすすめ。
No.12 それは虚しい前夜 >>30
■ニックとロストとオーテップ。タンザナイト結成秘話みたいな話、つぎば8-2読前に是非読んでほしい。つぎばの二年前の話。
No.13 きっと哀してオートマタ >>43>>44
■メルフラルの過去のお話。
【コラボ】
小説カキコにいらっしゃる作者さんにご協力いただいて、コラボ企画。基本手にメタ発言の多いぐだぐだ空間での会話となります。
No.01次元 最強次元師バーコード!!>>11
■瑚雲さんの最強次元師!! とのコラボ企画。クラウスとロクちゃんのトークショーみたいな。
No.02 〜継ぎ接ぎの系譜〜>>23
■銀竹さんの闇の系譜〜サーフェリア編〜とのコラボ企画です。マリアナとアレクシアさんの青系美人トークショー的な。
No.03 枯れたつぎばはそれからだ>>31
■ヨモツカミ別作品である『まあ座れ話はそれからだ』『枯れたカフカを見ろ』とのコラボ企画です。それぞれの作品の主人公たちが本音をぶちまけ合う!?
No.04 宵と継ぎ接ぎ>>34
■ライターさんの宵と白黒とのコラボ企画! ジン&トトとトワイさん&リュゼちゃんでまったりお喋り!
No.05 ~完結記念の系譜~>>41
■闇の系譜サーフェリア編完結を祝して、ルーフェンさんをお呼びしてみたよ
【舞台裏】
シリアスなつぎばやあざばのことなんて忘れて楽しい雰囲気を楽しんてください。メタ発言、台本書き、作者による暴走が苦手な人は注意。
No.01 必殺技考えてみようのコーナー>>17
■タイトルそのまま。ジン、クラウス、トゥールによる謎の会議です。いつもとは違うつぎばトリオをお楽しみください。(イラスト有り)
【二次創作】
本来存在しない話です。頂いた二次創作もヨモツカミ本人による二次創作もこちらに。
No.01 見ようとしないから、>>18
■愛のないメルクラ、という、友達の誕生日にリクエストを受けて書いた作品でした。ハッピーバースデー!
クラウスとメルフラルの本編じゃありえない日常の話。
No.02 喰らう醜>>22
■狒牙さんに頂いたクラウスの二次創作です。1人で生きてきたクラウスの、生きたいと殺したくないに苛まれたSS。
No.03 ナイフ>>32
■トーシさんに頂いたトゥールとクラウスの話。これと繋がる形で>>2を書きましたので、セットで読んでみてほしいです。
No.04 鱗>>33
■トーシちゃんに頂いた二次創作のアンサーストーリー。
No.05 堂々たる殺意より>>35
■学パロつぎば、ニック&ジン編。前世がバーコードつきばの世界だったけど、転生したら学生になってた件って感じの内容で、前世の記憶があるヒトと無いヒトがいるという拗れた世界での話です。
No.06 刃>>36>>37>>38>>39>>40
■狒牙さんに頂いたジンの二次創作です。
トゥールとクラウスとの関係性と、かっこよく戦うジンを見たい人にオススメ。
- Re: AnotherBarcode -アナザーバーコード- ( No.16 )
- 日時: 2020/03/05 19:21
- 名前: ヨモツカミ (ID: CstsioPs)
登場人物バーコード1
とりあえず主要キャラクターたちのみ。頑張って余計な情報も沢山書いたので、よかったらどうぞ。
余計じゃない情報のみのやつも本編である継ぎ接ぎバーコードに掲載しているので(雑なキャラ絵もあるよ)よかったらそっちも見てくださいね。
※ここでのNo.いくつは本編継ぎ接ぎバーコードのNo.を指してます。No.って出てきたら、
No.01 曇天下のバケモノへ
No.02 朱に交じる亡霊は
No.03 哀を求めて蚊帳の外
No.04 白昼夢は泡沫の如し
のことを言ってんだろなーと思って下さい! 紛らわしくて申し訳ないです
【ジン】
黒髪で、目付きの悪い10歳前後の少年。痩せ型。その瞳はエメラルドグリーン。
(一般的なエメラルドグリーンが青緑っぽい色の事を呼ぶので、そっちを想像する人も多いかもしれないが、私はエメラルドのような緑、つまりただの緑のつもりでいた。超ミス。どうしよっか)
額の左側から鼻筋を通って右頬にまで続く大きな縫合痕があり、これは首、左の二の腕、右肩、肋骨の上、腹回り、右腿、両手首、両足首にも同じ様な痕がある。
初対面では子供らしくない話し方をすると思われがちだが、打ち解けてくると少年らしさが出てくる。やや毒舌。バーコード以外、人間や動物には基本的に優しく接する。
能力は〈シュナイダー〉という、黒いナイフを操る能力。ナイフの素材は不明だが、発動するときは黒い粒子のようなものが集まってくるので、私の中ではカビ胞子ではないかと考えている。
ナイフは数の制限無く出せるため、その気になれば相手をハリネズミにするくらいのナイフを扱えるが、集中力が持たなかったり、精神的疲れが出るのであまりやらない。長時間のパソコン作業をしたときくらい疲れる。オロナミンCを飲めばごっきげんになれるかもしれないが、つぎばの世界にそんなものは無い。
【余計な情報】
誕生日は9月13日で、誕生花は彼岸花。実は甘い物好き。
イメージフラワーはリンドウ。花言葉は「悲しんでいるあなたに寄り添う」
名前の由来は漢字変換で「刃」。ミジンコは関係ない。
モンハンの迅竜ナルガクルガがジンに似てる気がしたけど、全く関係ない。
ジンのナイフがカビなら、カビキラーを吹き掛ければ勝てるか? →勝てません。カビキラーは長時間つけ置きしないと効果が無いため、カビキラーをかけられてもジンはあなたを殺すことができます。
ジンの顔にかければ勝てる? →児童虐待で訴えられて負けます。
(以外No.3読後の方以外は閲覧注意)
漆黒バーコードにより不老不死となり、見た目は13歳くらいで止まっているため身長は149cm、体重38kg、実際の年齢は100を超えている。つまり合法……いや、脱法ショタ!
そう、主人公の正体はただのジジイということになる。そのくせ口調は子供らしさを残しているのは、見た目と共に心の成長も止まってる説と、見た目に合わせて少年のふりをしている説がある。個人的に後者は嫌なので前者説を推します。
漆黒バーコードの性能によるものなのか、他のバーコードに比べても治癒力が高い。
【ジンについて】
ジンは明かされていることがかなり少ないけど、「継ぎ接ぎの体」「バーコードを殺すという目的」(No.01)「不老不死の体」(No.02)などの情報だけでも抱えているものの重さがわかると思います。
何故体中に縫合痕があるのかについてはまだわかりませんが、No.04で、「父親に貰った」ということを仄めかします。No.03では桜色の髪の少女と、母親「ドロシー」に関しても触れます。家族揃って何かを抱えていた、という話も少しだけします。
つぎばは、少しずつ明らかになるジンや桜色の少女の過去と、今を生きるバーコード達の物語です。(今考えたフレーズ)
両親の話になると、100年近く生きるジンの、かなり昔の過去の話になりますが、やや最近の過去の話“タンザナイト”との関係もまだ本編で書けてません。これから書きますが、No.02でマリアナとニックが「ジンがアイリスとローザを殺し、」という会話をしています。No.04冒頭のタンザナイト達との過去の回想ではアイリスとも仲良さげにしていましたけど。
アイリスに関してはあざばで書いた「シオンの花束」でジンとの出会いの話を書いてます。ずっと前から書きたかったところだけど5000文字くらいでいけるかなーと思ったら20000文字行ってビビりました。本編No.01は19000文字くらいなのに。
【ジンの生まれ】
ジンは、元々オズの魔法使いとか童話を題材にした別の小説を書いていたときの主人公でした。(その頃の名前はドロシー)
ちなみにその話にもクラウス、トゥール、桜色ガール、トト、ニック、マリアナ、ユミト(本編未登場)、ローザ……主要キャラほとんど出てました。
オズの魔法使いでは、エメラルドシティという、オズの国があって、ジンの瞳のエメラルドグリーンは、それが由来です。
【クラウス】
肩に付かないくらいの長さの曇り空の様な灰色のふわふわした髪に、垂れ目で隈の目立つ金色の瞳の青年。色白で痩せ気味なので、不健康そうに見える。
(目の色を“金色”としているが、次に紹介するトゥールの瞳は琥珀色をしており、ぶっちゃけ色の違い無いじゃんということに気が付いて、黄色にしとけばよかったかもとよく思う。超ミス。どうしよう)
年齢は18歳だが、精神年齢はジンよりも遥かに幼い。猫を見つけたら追いかけるし、自己中心的で我がまま。人を罵倒するときの語彙は「バカ」くらいしかない。
能力〈チェシャー〉は、自分の姿透明化させることのできる能力。クラウスの触れている物も透明化できる。その能力を戦闘に活かすような技術は無く、基本的な戦法は逃亡。
(余計な情報)
誕生日は2月22日。誕生花は赤いフリージア。身長172センチ。
好きな虫はカブトムシ。カタツムリも大好きだが、カタツムリは虫ではなく妖精だと思いこんでいるため、好きな虫ではない。
クラウスの絵だけ知っていた方に「女性だと思ってた」と言われたり、ふざけて桜色ガール、アケ、マリアナ、クラウスでヒロインは誰だ投票した際、見事ヒロインの座を獲得したり、なんかもう、ヒロインです。
(以外No.3読後の方以外は閲覧注意)
12歳の頃に母親を紅蓮バーコードに殺害されて、自分はバーコードに研究施設に連れてかれて、翡翠バーコードにされてしまった。〈能力〉を上手くコントロールできなくて、勝手に透明になる。幽霊のようだと言われてきた。
そのうえ、クリムゾンと呼ばれる、紅蓮バーコードのように殺人衝動に苛まれるとななんとかで、本編ではジンを殺害し、メルフラルも殺害しかけた。過去にも数人殺してしまったことがあり、そうとう気に病んている。
母親との思い出を忘れたくなくて、母の教えを全て信じこんでいる。ヒトは死んだら星になる、カタツムリは妖精である、シュトラール祭の願い事は本当に叶う等。
て、設定ですが、私のいつ書いたか分からぬメモにはこんなことも書いてありました。
「思い出でしかない存在になったお母さんを生かすには、オレが信じるしかない。本当は雲が水蒸気の塊なことも、死んでも星になれないことも、カタツムリは誰も幸せにしないことも、わかっていた。信じるのは縋りついていたいから。色褪せないように。風化しないように」
名前の由来は曇るという単語、クラウドから。能力はチェシャ猫から。クラウスはそもそも「鏡の国の君を捜して」という別創作を書こうとしてたときのチェシャ猫のことでした。
【トゥール】
鋭い爪を携えた大きな蜥蜴の腕と足、割と器用な尻尾を持った翡翠バーコードの男。24歳。瞳は琥珀色で、爬虫類の様に瞳孔の形が変わって気持ち悪い。見える所では、頬や項、手足が深緑の鱗に覆われている。その姿を見られないよう、フード付きのローブを被っている。性格は大人しいが(というか根暗)、戦闘狂。
能力名は〈サウルス〉と言い、蜥蜴のような姿になり、爬虫類にできることは大体できる。
(余計な情報)
誕生日は6月23日。誕生花はミヤコワスレ。花言葉は「また逢う日まで」
〈能力〉により少し身長をかさ増しして189センチあるが、実際は182くらい。能力が解ける日は来ないのでこれ程無駄な設定もないと思う。
トカゲだが蝿は食べません。脱皮もしないんじゃないかな。
(以外No.3読後の方以外は閲覧注意)
No.01でやたら出番が多かったせいで主人公だと思われがちだが、そんなことない。
過去に桜色の少女との面識があり、彼女と出会う前はとある研究施設の清掃員……マジで廊下とかトイレの掃除をしていた訳ではなく、必要の無くなった実験体を処理、つまり殺す役割を担っていた。そのため、殺すことが自分の生存に繋がるという思考を持ってしまい、現在でも割と他人を殺すことに躊躇が無い。
少女との出会いで思考が代わり、その後に出会ったクラウスのことは結局殺さなかった。
兄の名前はルーカス。彼は現在、ハイアリンクとして活動しているが……
名前の由来は不思議の国のアリスに出るトカゲのビル。ビルは高い建物→塔→どっかの国の言葉で塔という意味の言葉→トゥールとなった。背が高い(Tall)とかは無関係。
- Re: AnotherBarcode -アナザーバーコード- ( No.17 )
- 日時: 2020/12/07 15:53
- 名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=article&id=6214&page=1
【舞台裏】No.01 必殺技考えてみようのコーナー
ジン「はい。楽屋裏へようこそ。今回は本編とは関係ないし、台本書きで会話が進んでいくから苦手なヒトはごめんね。さて、今回はクラウスとトゥール、そして僕という通称“つぎばトリオ”に集まってもらったわけだけど……」
クラウス「そうだよ、正月早々お前の顔なんか見たくねーんだけど? あ、あけおめ、トゥール! あけおめ、読者!」
トゥール「ああ、あけましておめでとう」
ジン「なんで僕にだけ挨拶してくれないのか気になったけど、あけましておめでとうね! さて、本日集まって貰ったのはズバリ、この議題のためだよ!」
クラウスを軽く睨みつけた後、ホワイトボードに油性ペンで“戦闘中に技名叫びながら戦うのってカッコよくない?”と書き込んでいくジン。
ジン「はい! 君たち、本編で戦いながら何度か思ったと思うけど、僕らには〈シュナイダー〉とか〈チェシャー〉って能力名はあるけど、技名は無い! そして、そのたびに思うでしょ!『あ、ここんとこ描写し辛いなー』て!」
トゥール「最後のは作者の声だろう……描写し辛いのは作者の力量の問題だから、俺達には関係ないが。だが、確かに技名が無いのは地味かもしれないな」
クラウス「あー、技名がねえのはダサいよなあ」
ジン「そうでしょ? というわけで、今回はそれぞれ技名を考えてきて貰おうという企画だよ。……そしてこちらが実際に考えてきてもらった技名になるわけだね」
クラウス「ヤラセ企画だから、事前にこういう会議やるよって知らされてて、全員技名考えて来てたんだよな〜」
トゥール「ヤラセとかそういうこメタいことを言うな」
>>>ヤラセです<<<
ジン「まあ、みんなちゃんと考えてきたよね?」
ジンの声にふたりがコクコクと頷く。
ジン「じゃあ……期待値の低い順から発表しようか? はい、トゥールから」
トゥール「おい、なぜ俺の期待値が低めなんだ? 別に構わないが」
クラウス「だってトゥール陰キャだから、こういうの適当にやって、さっさと帰ろうとするタイプっぽいじゃん?」
トゥール「正直クソ面倒とは思ったが、今回だけはちゃんと考えてきたぞ、10分かけて。しかも2つもな」
クラウス「短え」
そう言ってトゥールはホワイトボードに油性ペンで書き込んでいく。ちなみにトゥールは『爬虫類の腕なので、細かい作業は苦手(ペンを上手く握ることができない)』とか言う裏設定があるが、割と普通に書きます。
“鉤爪殴打”と、“横薙尻尾”……。
トゥール「俺の〈サウルス〉は所謂獣化の能力で、けものフレンズが流行った時期には、楽屋の廊下ですれ違うたびに『君は爬虫類のフレンズなんだね! すごーい!』と話しかけられる嫌がらせを受けたこともあった」
クラウス「あんときはごめん(笑)」
トゥール「そんな〈サウルス〉だが、戦い方はこの鋭利な爪で殴るか、尻尾で薙ぎ払うかなどの、肉弾戦になる。というわけで技名は“鉤爪殴打”(クローパンチ)と“横薙尻尾(サイドテール)”だ」
楽屋内にしん、と静寂と微妙な空気が流れた。
クラウス「……うーん、予想通りダサくて安心したんだけど」
ジン「サイドテールに至ってはただの髪型だもんね」
トゥール「なんだと。シンプルイズベストを狙った名前なのだが」
ジン「漢字表記の時点で『あ、察し』て感じだったのが、読み方ついた途端、『( ^ω^;)おっ』て感じで、うわーって思ったよ」
トゥール「そんなに駄目か?」
クラウス「だってトゥールさあ、“鉤爪殴打”(クローパンチ)とか!“横薙尻尾(サイドテール)”! て叫びながら戦いたい?」
トゥール「戦いたいわけ無いだろ、そんなダサい技」
クラウス「自分で言うんかーい」
トゥール「そもそも、そんなに喋りながら戦ったら舌を噛むぞ」
ジン「そういうこと言わないの! 二次元世界の戦闘描写において、僕らがあまりにも無言だったら、見てる側もつまんないでしょ!」
トゥール「お前、メタ発言多いな……」
クラウス「まっ、トゥールのネーミングセンスはクソダサってことだな! このオレが各の違いを見してやる必要がありそーだ!」
そう言ってクラウスは油性ペンでトゥールの書き込みの下にミミズが這ったような文字を書き込んでいく。(クラウスは文字が書けない・読めないという設定があるが、ここでは割と普通に書きます)
クラウス「透明化して絶対に戦線から離脱する技“ファントムエスケープ”と透明化した状態でナイフアタックする“スニークキル”!」
割と普通な技名に、いまいち反応に困るトゥールとジン。
トゥール「まあ、お前は逃げるのが一番得意だしな」
ジン「スニキルは普通にある言葉だからアウトでしょ」
クラウス「なんだよ! 俺が20秒で考えた技名にケチつけんのかよ!」
ジン「トゥールより短くてビックリだよ」
クラウス「実はつぎば連載当初から技名ってモノに憧れてたから、多少ビジョンがしっかりしてたんだ。カッコよくね? “スニークキル”! つって見えないところから攻撃してくんの!」
トゥール「声で位置がバレて回避されるだけだぞ」
クラウス「そこは空気を読んで分かんないふりして貰うから」
ジン「戦闘は遊びじゃないんだよ? 小説でもそこんとこハッキリ描写して、ガッツリ探知してもらうから」
クラウス「ケチ」
ジン「ケチも何もないでしょ」
ジンはため息を付きながら、ホワイトボードの前に立つ。
ジン「しょうがないね。僕が格の差を見せてあげるよ」
そう言ってジンは油性ペンで四字熟語をサラサラと書いていく。
ジン「“†黒迅無葬†”-コクジンムソウ-」
トゥール「うわ……。その†は……なんだ」
クラウス「†とか付けんなよ! カッコイイじゃねーかよ!」
トゥール(え……)
ジン「ふふん! そうでしょ? さらにもう一つ、今考えたよ」
クラウス「おっ!」
ジン「死に惑え……†黒迅舞踏†-狂イ裂キ-」
クラウス「かっ……カッケェ!」
ジン「そうでしょー!」
きゃっきゃと楽しそうに言い合う2人と、それを少し距離を取って眺めるトゥール。
トゥール(は? こくじんぶとう、くるいざき?? 恥ずかしくて死にたくならないのか? 俺は死にたいぞ。こんなキメ顔で言うようなことじゃないぞ? わかっているのか、この100歳……キモ。聞いてるこっちが死に惑いそうなんだが?? ヤバ)
確かにジンは14歳くらいで体の成長が止まっているのだから、そう考えたら年相応なネーミングセンスなのかもしれない。だが、実年齢は約100歳。おじいちゃんが考えたら技だとすると、なんて言うか、やばい。
ジン「だからこう……バッとナイフを沢山出すじゃん? それをいい感じに回転させるでしょ? そしてそこで言うんだよ、死に惑え……†黒迅舞踏†-狂イ裂キ-」
トゥール「キモ」
ジン「あ?」
トゥール「おっと、口が滑ってしまった。すまない」
ジンは無言でトゥールを睨みつけるが、トゥールは目を合わせようとしない。
ジン「まあいいや。折角技を考えたはいいけど、試す相手がいないとつまんないよね。と、いうわけで、手合わせするための相手をお呼びしたよ。本編No.01〜02にて登場し、僕を瀕死に追いやり、トゥールとの激しい戦闘の末、頭部を粉砕され、命乞いも虚しく絶命した紅蓮バーコードのベラでーす! お入り下さい」
そう言われて室内に入ってきたのは、濃い紫色の髪を頭の左側で結った女性。名前あったのかよ、嫌な紹介の仕方するな、などとざわつかれる中、彼女は部屋を見回す。
ベラ「正月からなに馬鹿なことやってんのよ」
ジン「うるさいな、君に本編での出番があまりにも少なかったから、こうして呼んであげたんじゃないか!」
言いながらジンはカンペをめくり、更に彼女の説明を続ける。
ジン「ちなみにベラは、戦闘中にトゥールに肩をかじるなどの猥褻行為を受けた被害者でもあり、」
トゥール「いや待て、あれは台本通りにやったことなんだから俺は悪くないぞ。しかも、相手から襲ってきたんだから正当防衛じゃないか」
ジン「出た出た。セクハラを肯定する男、いるよねぇ。そんな露出の多い服を着るのが悪いだの、夜道を歩くのが悪いだの言って、被害者が悪いみたいな言い方する奴。最ッ低だよね」
クラウス「トゥールサイテー」
トゥール「……」
ベラ「てか、来てやったけど、これギャラ発生すんの?」
ジン「何言ってんの。本編じゃないんだからするわけないでしょ?」
ベラ「はあー? じゃ、ワタシ帰るわよ。おせち食べながら録画したガキ使見たり、格付け見たり、下らないバラエティ番組見てダラダラ過ごすって決めてんのよ此方は。アンタらみたいに暇じゃないんだから」
ジン「えっ……!? 今の話聞く感じ超絶暇そうだったよね!?」
クラウス「チョマテヨ!! マジで帰んのかよ! ……ってもう帰ってるし!」
ジン「ちょっ……本当に帰ったよあのヒト! 嘘じゃん、どうせ暇なくせに、もー! ……仕方ない。今回は解散だね」
トゥール「解散か。お疲れ様」
クラウス「マジか、あっさり解散するじゃん……。オレも帰って初詣とかしにいこ。トゥール一緒に行く?」
トゥール「いや、寒いから外出はしたくない」
ジン「なにふたりだけで楽しそうな話ししてるのさ! ……てゆーか、ホワイトボードの文字消えないんだけど? え、もしかしてコレ……」
ようやく自分たちが油性ペンでホワイトボードに技名を書き込んでいたことに気付くジン。
まあいいか、と恥ずかしい技名まみれのホワイトボードを置いて、3人はそれぞれ帰宅し、思い思いの正月を過ごすのであった。
fin
***
なんとかく思いついたので書いてみたとてもくだらない話です。
- Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.18 )
- 日時: 2020/12/07 15:54
- 名前: ヨモツカミ (ID: 6fVwNjiI)
【二次創作】 No.01 見ようとしないから、
「クラウスくん、今日ちょっと付き合ってよ」
「はあ?」
白衣姿でもなければ、いつものハーフアップでもない。私服と後頭部で団子になった髪型のメルフラルがニコニコしながら立っていた。
「何、そのかっこ」
「あらあ、女の子の変化に気付けるなんてクラウスくん、バーコードじゃなかったら結構モテてたでしょうね」
「女の子って年じゃねえだろクソババ。なんでいつもと違うかっこしてんだよって聞いてんだよ」
「そんなの、お出かけするからに決まってるでしょう。ほらクラウスくん、付き合って」
そう言ってクラウスの腕を軽く掴んでくる。咄嗟にそれを振り払って、クラウスのはメルフラルの顔をキッと睨み付けた。
「なんでオレなんだよ、ジン連れてけばいいじゃんか」
「いいじゃない。今日はクラウスくんがいいの」
トゥールに助けを求めるように視線をやったが、クラウスと視線が合うと、彼は黙って頷くだけだった。
「……や、どういう意味の頷きだよ!?」
「俺達は居候させて貰ってる身だ。家主の頼みは聞くべきじゃないか? 行ってこい、という意味だ」
「チクショウ! トゥールのバカ! 爬虫類!」
「頑張れよ」
「バーカバーカバカー!」
「早く支度してね、クラウスくん♡」
そんなこんなで、拒否権もないまま、クラウスはメルフラルと共に外出することになった。
***
「んで、何処行くってんだよ」
「ふふ、気になるー? でもどうせ、地名を聞いてもわからないでしょう?」
直ぐ様言い返そうとしたが、確かにその通りだった。文字も地図も読めないため、地名なんか当然知らないし、ジンに連れてこられたアモルエという街と、最初にいた街がどれほど離れているのか、というか最初にいた街は何という場所だったのか、クラウスは何一つ知らないのだ。
黙り込んでいるクラウスの横顔を見て笑いながらも、メルフラルはソレイユという地名を口にしたが、やはりまったくピンとこなかった。
「観光地としては有名なところ。街の少し外れに行くと、凄く綺麗な花園があってね、丘の上から見下ろすと、絶景なの」
花なんて、当然興味はない。あんなもん、ちょっとカラフルな色のついた草じゃねえか。そう口にしそうになったが、メルフラルのことだ。また乙女心がどうとか、モテるとかモテないとか訳のわからないディスり方をされるのが予想できて、クラウスは言葉を飲み込む。代わりに、鬱陶しい絡みに繋がらなそうなことを吐き捨てる。
「花なんか見に行くのにオレを誘ったのかよ」
「そっちはついで。アモルエとは違ってかなり栄えてる街だから、買い物するならソレイユの方がいいのよねえ」
ふうん。クラウスは興味なさげに返事をして、そっぽを向いてしまう。
「ちなみに今日はちゃんとお金払って電車乗るからね」
メルフラルにそう言われて、数日前、クラウスの〈チェシャー〉を利用して透明人間となった3人で無賃乗車したことを思い出す。あれはあれでスリルがあってよかったのだが。
「……てか、何。オレらが電車タダ乗りしたこと知ってんの?」
クラウスが聞くと、メルフラルは呆れたように息を吐いた。
「ジンに聞いたのよ。〈能力〉の無駄遣いして……と思ったけど、透明人間なんて、そういう使い方以外で活用するタイミングないものね」
「なんだよ、透明化馬鹿にすんなよ。他にも奇襲とか逃げんのとかめっちゃ役にたつからな。……欲しい力では、無かったけど」
ムッとして取り敢えず反論して見せたものの、クラウスの声は尻すぼみに消えていった。それまで前方しか見ていなかったメルフラルは、ようやくクラウスの顔を覗き混んだ。俯かされて前髪に隠れた表情は伺えない。さして興味も無かったから、メルフラルの視線は再び前方に戻される。
「あら、他に欲しい〈能力〉でもあったの? 透明化も十分便利だと思うけどねえ。まー、やっぱり手に入れるなら便利な〈能力〉がいいわよねえ。アタシは人間だけど、バーコードとは最も近いところにいる人間だから、たまにバーコードの身体能力とか、特異なチカラが羨ましくなることもあるわ」
クラウスは俯いたまま思い切り眉間にシワを寄せた。欲しい〈能力〉なんか存在しない。〈チェシャー〉だって、欲しくなんてなかった。比較的便利なチカラなのかもしれないが、クラウスは〈チェシャー〉が嫌いで堪らなかった。望んでバーコードに──バケモノになったわけじゃ、無いのだから。
〈能力〉を使うたびに、自分が人間でないことを自覚させられる。それが怖かったし、翡翠バーコード特有の欠陥で、自分の意思に関係なく透明人間になってしまうときがあり、これがクラウスが最も〈チェシャー〉を嫌う理由だった。勝手に消えるなんて、生きているのに、そこにいるのにいないものとして扱われるなんて、死んでるのと変わらない。そんなの、この世に未練を残したまま、成仏しきれない亡霊みたいじゃないか。
「クラウスくんの欲しい〈能力〉ってなあに?」
世間話をするくらいのノリでメルフラルは訊ねる。クラウスは拳を握りしめ、メルフラルの横顔を鋭く睨み付けて、低い声で吐く。
「うるせぇな、んなもんねぇよ」
突然怒りをあらわにしたクラウスの様子にメルフラルはキョトンとする。ヒトの嫌がることをするのが趣味なメルフラルは、頻繁にヒトの神経を逆撫でする発言をするが、今回はそのつもりはなかった。クラウスはメルフラルと視線が合いそうになると、再び視線を落とした。
「……お前なんかには、わかんないよ。亡霊になってみなきゃ、わかんねえよ」
「…………」
クラウスが苦しそうに言うから、思った以上に自分が彼を傷付けたのだろうか、とメルフラルは思う。それから少し、クラウスの言葉の意味を考えてみて、直ぐに酷く興味のないことだと思い直し、思考をやめた。ジンのことだってまだわからないことが多いのだ。出会って間もないバーコードの事など、もっと理解できないはずだ。
それに、他人を知ろうとすることは間違っている。自分は他人に理解されないし、自分も他人を理解しない。誰も、理解してくれない。ならば、深く干渉し合うことは徒労なのだ。分かり合えない。きっと、そういうものだから。
そう。そうよね。言い聞かせたら、どうしてか今までなんとも思わなかった外気が不意に冷たく感じた。
再びメルフラルはクラウスの横顔を見る。目が合わないように顔を背けている彼に、なんか今日寒いわね、とは言えなかった。
***
駅に付き、メルフラルが購入した切符を、クラウスに差し出しても、彼はそれを受け取ろうとはしなかった。口をへの字に曲げたまま、メルフラルと頑なに目を合わせない。
呆れたように肩をすくめつつ、メルフラルは切符の角をクラウスの頬に突き刺した。瞬間、クラウスは飛び上がる。
「いっってぇ! 何すんだよババア!」
頬を擦りながら怒鳴りながらも、やっと目があったのでメルフラルは微笑む。
「これが無いと電車乗れないから、無くさないようにしてね」
「なんだよこれ、紙?」
「無くしたら電車から降りられなくなって、電車の子になっちゃうのよ」
自分で言いながらも、メルフラルは苦笑する。こんなこと、18歳の青年に言うようなことではない。し、自分にもそういうことを言い聞かせるような子供がいてもおかしくないような年齢で──
「…………」
それ以上考えるのは……気持ち悪い。メルフラルは足早に電車の方へ向かう。その背後をクラウスが慌てて追いかけてくる足音を聞きながら、さっさと乗り込み、メルフラルは車内を見回す。二人がけの座席がいくつかあって、その殆どが空席になっている。それでもちらほらの乗客の姿はみられる。寂れた街とはいえ、休日の昼頃は出かけるメルフラルのように、遠くへ出かけるヒトもいるのだろう。
背後から乗り込んできたクラウスが、硬い表情で車内を恐る恐る確認している。
「そこの席にしましょ。窓際がいい?」
メルフラルが指差した方を見て、クラウスは仏頂面で首を横に振った。
「なんかあったとき、お前が通路の方にいたら逃げらんないじゃん」
「……そんなことを考慮して座席選ぶヒト、初めて会った」
クラウスなりにちゃんと考えているつもりなのだろうが、万が一何かあったとして走行中の車内の何処に逃げ場があるというのか。それに関してはメルフラルも突っ込まないでおいた。
電車の走行中、クラウスは外の景色が気になるようで、ずっとメルフラルの奥にある窓の外を眺めていたが、メルフラルが席を代わろうか? と提案しても首を横に振るだけ。一度自分で決めたことを変えたくなかったのかもしれない。
しばらく乗車して、目的地であるソレイユの街に辿り着いた。
メルフラルが席を立つと、クラウスも立ち上がり、自分の手の中に切符があることをしっかりと確認して、下車する。乗り込むときよりも利用客の量も多くて、人混みに呑まれそうになりながらも、クラウスはメルフラルとはぐれぬように必死で客を掻き分けて付いてきていた。
こんな人混みは初めてなようで、クラウスが少し疲れた顔をしているのに気付きはしたが、メルフラルはそれを面白そうに横目で見るだけだった。
「ソレイユの街並みも人が多いから、迷子にならないように手を繋いできましょうか?」
「誰がお前なんかと」
メルフラルが差し出してきた手を払い除けて、クラウスはメルフラルと少しばかりの距離を置いて歩こうとする。だが、彼女はその距離を埋めて、クラウスの腕に自分の腕を絡めた。
困惑して、少し嫌そうに睨むクラウスに、メルフラルは柔らかく微笑みかけた。
「こうでもしてないと、あなた透明になって勝手に消えちゃうかもしれないでしょう?」
「消えねえって。ちゃんとオレがお前を見失わないようにするから、こんなことしなくていいよ」
「ほら、面倒くさいこと言ってないで、早く行くわよ」
クラウスの不満を押切って、メルフラルは無理矢理にクラウスの腕を引いて歩く。確かにそのお陰でクラウスが迷子になる心配は無かったし、メルフラルは自分のペースで歩けたたため、すぐに目的地である店にたどり着くことができた。
クラウスが店内にまで入ることは拒んだため、店の外で彼を解放し、メルフラルは1人で買い物をすることとなった。
今までは独り暮らしだったが、今は居候が3人もいる。毎日作る食事の量が増えて、買い出しをしなければならない量も増えた。メルフラルにとってはそれは迷惑なことではなく、少し新鮮なことで、むしろ日常のささやかな楽しさとして受け入れていた。
時折ジンがメルフラル宅にやってきて泊めることもあって、ジンの好みなんかは把握していたが、クラウスとトゥールのことはよく知らない。と言っても2人は警戒しつつも何を出しても普通に食べてくれるので、何を買っていったって構わないだろう。そう考えて、メルフラルは適当に安売りしていた野菜や肉を手にとって買い物を進めていった。
店で買ったものを持参した鞄に詰めて、店内を出る。店の入り口をぼんやりと眺めて突っ立っているクラウスとメルフラルの視線が交差した。
「はい、お待たせ」
メルフラルは両手に持っていた鞄をクラウスに差し出して言う。急に渡されたので、咄嗟に受け取ってしまったクラウスは鞄の重さに狼狽えながらも、なんだよこれ、と軽く反駁する。
「何って、荷物。あなたを連れてきたのは荷物持ちのためだからねぇ。しっかり役だって貰うわよ」
「はー? そんなの聞いてねぇぞ!」
「ええ、言ってないもの。卵入ってるから、落としたりぶつけたりしたら割れるわよ。気をつけてね」
クラウスは文句があるのか、数回口を開閉させたが、考えるのも面倒になってしまったらしく、大人しく肩から鞄を下げてメルフラルの後に続いた。
その後も数件店を回って、メルフラルの買い物に付き合わされたクラウスは、日が傾く頃には少しクタクタになってしまっていた。
買い物と、ただ目についた気になった店内を覗いてプラプラするだけのメルフラルに付き合って、もう二度とコイツなんかに同行しないとクラウスが心に誓った辺りで、彼女は突然思い出したように手を叩いた。
「折角ソレイユに来たんだから、行かなくちゃならないところがあったわね」
「まだどっか行くのかよ。荷物重いし、帰りてぇ」
「ふふっ。あと少しだけだから、もう少し頑張って。さあ、行くわよ」
楽しげな彼女に連れて行かれた先は、街を少し外れたところにある丘の上。傾いた陽で黄昏色に彩られた広い花園だった。
少し風が吹けば、咲き誇る花々の甘い香りが薄っすらと届く。赤、ピンク、紫、オレンジ、黄色、何色もの花が並ぶ、鮮やかな景色と、夕陽で黄金に輝く雲の切れ間。それは、つい溜息を吐いてしまいそうなほどの、絶景だった。
「わあ……」
クラウスは肩にかけた荷物の重さなど忘れて、その光景を口を半開きにしたまま呆然と眺めていた。花なんて全然興味ないのに、それでも黄昏の花園はクラウスの心を奪った。生まれて初めて目にする見事な景色を、クラウスは見つめ続けた。メルフラルも、同じように。彼の傍らで黙って彼と花園に視線を落としていた。日が完全に沈み、黄昏が失われるその瞬間まで。
「……昔、聞いたことがあるんだ」
薄暮の蒼が空を薄く染め始める頃、クラウスはぽつりと口を開いた。メルフラルに話すため、というよりはもっと、誰でもない何かに伝えるような、つぶやきにも似た口調で。きっと、普通の心境だったなら、メルフラルには話さないような内容だった。
「おかーさんの生まれた街の側には、広い花畑があったんだって。それが、ここのことなのか、もっと違うどっかなんかは知らねえけど、綺麗だから、いつかオレのこと連れてってくれるって言ってた。故郷の景色を見せたいんだって」
白藍色の空の下から見る花園もまた、先ほどとは違った美しさがあった。静かなる青が照らす花びらは、穏やかな美を確かに持っている。クラウスはその姿を見て、少しだけ感傷に浸りながら、
「もう無理だけどさ」
小さく掠れた声で呟いた。
二度と会えはしないヒトとの、果たされなかった約束は、永久に果たされぬまま。忘れてしまえればいいものを、忘れたくないからいつまでも記憶に残り続ける。母との想い出に縋り付くクラウスが、離したくないと喚くから。それが余計クラウスの心に深いヒビを残しているのだとしても。
メルフラルはそれを聞いても何も言わなかった。ただ、薄暗い光の中の花々に視線を落としたまま。クラウスの方には、見向きもせず。
空には星が瞬き始めていた。
死んだら、ヒトは星になる。クラウスがいつの日か口にしていた言葉だ。クラウスは空を見ていた。彼の母親もまた、空の光の一つになってしまったのだろう。手を伸ばしても、届きはしない、途方もなく遠い光に。
メルフラルも、なんとなく空を見上げた。
「綺麗な星空だわ」
クラウスと同じことを考えていたから、星を見ていたのかもしれない。でも、メルフラルはクラウスの話したことについては触れようとしなかった。
「……そろそろ、帰りましょう」
「うん」
クラウスは肩にかけていた荷物を背負い直して、小さく相槌を打つ。そうして、二人は駅に向かって歩いていった。なんとなく開いた距離間は、最初と変わらず。少し離れ気味に歩む。
歩幅も、視線の方向も、一切合うことはない。それは互いが互いを見ようともしないから。
見向きもし合わない。お互いに、相手のことに興味がないから。そういう二人の距離感は、遠く、絶対に埋まることのない隙間が空き続けていて。
見ようともしないから、何も見えないまま。
***
愛のないメルクラ、という、友達の誕生日にリクエストを受けて書いた作品でした。ハッピーバースデー!
クラウスはメルフラルのこと嫌いだし、メルフラルはクラウスのこと興味ないし、相性最悪だけど、そのなんとも言えない距離感がいいなと思う。
あと、実はメルフラルのほうが数センチ背が高いのがいいなと思う。ところでこのスレも1周年です。
- Re: AnotherBarcode アナザーバーコード ( No.19 )
- 日時: 2019/03/08 21:14
- 名前: ヨモツカミ (ID: w9Ti0hrm)
【Short】No.06 かさねるべにいろ
アイリスがタンザナイトに入ってきてから、どれくらい経っただろう。肩の上で切り揃えられた薄水色のシルエットを横目に、わたしはなんとなく考えた。ジンくんもアイリスも、随分打ち解けてきたと思う。でもやっぱり、わたしたちの間には、埋まらない溝があるみたい。そう感じてならないのだ。
ある日のお昼下がり。アイリスはわたしを見ているのに、その瞳にわたしの姿は写っていない。そんなふうに見えた。
ぼんやりと、遠くを──それこそ、わたしたちが簡単に行けないくらい遠くを眺めるみたいに、彼女はわたしの髪を見ていた。炎のような紅の長髪。なんとなく、アイリスがわたしを通して別の誰かを見ているのだと、わたしは気づいていた。わたしをちゃんと見てくれないのは寂しい気もしたけれど、でも、アイリスにあんなに優しそうな顔をさせた知らない誰かのことを思うと、わたしも少しだけ胸が痛かった。
少し前。一度だけ、アイリスの二の腕に巻かれた紫色のリボンについて聞いたことがあった。
アイリス。わたしが名前を呼んでも、一瞬反応が遅れるように見えて。アイリスは少し、リボンの話をされて動揺したのだと思う。二の腕に優しく触れながら、寂しそうな目をした彼女を見て、聞いてはならなかったか、とわたしは少し後悔した。
「ああ、貰ったんだよ。大事なヒトにな……」
わたしにだってわかる。アイリスとその“大事な人”は、もう二度と会えないのだろう、ということ。そんな誰かと、アイリスはわたしを重ねている。面影をなぞって、少しでも似たところを見つめる度に胸を痛めるのだ。わたしには、想像もつかないような痛みを、独りで抱えているのだろう。
儚く笑んだアイリスが、二の腕からリボンを外しながら、わたしに手招きをする。
「なあ、アケ。ちょっと髪に付けてみないか? お前なら絶対に似合うと思うんだよ」
「……うん」
不器用なアイリスのことだからクシャクシャになっちゃうだろうと思っていたのに、不自然なほど慣れた手つきでリボンは私の髪に結われた。
「おっ、やっぱ似合うじゃん!」
そう笑って、いろんな角度からわたしを見る。似合うのだろうか。じゃあなんで、そんな泣きそうな顔をするの。それは流石に聞けなかった。
代わりにわたしはアイリスを抱き締めた。
「お? どうしたどうした」
「きゅうに、こうしたくなったの」
「はは、なにそれ。まったく、アケは甘えんぼなんだから」
笑うアイリスの声に湿気が交じる。気づかないふりをして、わたしはさらに強く彼女を抱き締めた。温かい。細く頼りない彼女の腕が震えていた。
「しばらくこうしてていい?」
「……うん」
アイリスが泣き止むまでは、わたしがこうしてるから。どうか、もう悲しまないでほしい。
いつか、わたしたちと過ごすことでアイリスの傷が癒えるといいな。
時間はかかるかもしれないけれど、わたしはやっぱり、誰かが悲しそうにしていると悲しいし、誰かが苦しそうにしていると苦しい。だから一緒に笑っていたい。
わたしの願いはいつか、届くだろうか。
***
アケ視点のアイリスとのちょっとしたお話。アイリスのかつて大切に思っていた彼女もまた、紅色の綺麗な髪をしていたから、きっとアケを見る度に辛さが募っていくんじゃないかなと思って書きました。