複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

もちもちつよつよ旅日記
日時: 2023/08/06 21:44
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13631

はじめまして!作者のsumoです。

誤字など色々おかしな点はございますが、どうぞ暖かい目で見てってください!
空き時間でゆっくり、ちびちびと書いていくので、更新は気長にお待ちください。
長編になる予定ですが、飽き性なので最後まで続くかは未定ですw
感想スレいつでもお待ちしています^^

***
もっちもちなスライム(?)と低身長のつよつよ少女。

自分のことを知りたい一人と一匹は、本日も何処かへ出掛け、誰かと出会う。
広大な世界で、小さなコンビは、テクテク歩いて今日を生きる。

出会い、成長。
そして_別れの物語。
***
"主な登場人物"           

<少女>
年齢不明だが、背がちいさい。
自分の本名、親、故郷を全く知らない。それらのことを知ることも、旅の目的のひとつである。
スライムのことを「親友」と呼ぶ。

<スライム> 
普通のスライムの一回りくらい体が大きい。"もちもち度200%"!!
***
[旅日記 目次]...初見の方、できれば最初から見て頂きたいです。
episode 1 >>1
episode 2 >>2
episode 3 >>3
episode 4 >>4
episode 5 >>5
episode 6 >>6
episode 7 >>7
episode 8 >>8
episode 9 >>9
episode10 >>10
episode11 >>11
episode12 >>12
episode13 >>13
episode14 >>14
episode15 >>15
episode16 >>16
episode17 >>17
episode18 >>18
episode19 >>19
episode20 >>20
episode21 >>21
episode22 >>22
episode23 >>23
episode24 >>24
episode25 >>25
episode26 >>26
episode27 >>27
episode28 >>28
episode29 >>29  NEW...やっと更新しました!!
episode30 >>30

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.26 )
日時: 2023/07/07 22:52
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 26

ようやく朝日が顔を出し始めた頃、少女とスライムは町外れのバス停に着いた。

そこは大都市とは思えないくらい殺風景で、人が住む町からはかなり離れていた。
バス停の周りには、少女とスライム以外、誰も居なかった。

「ねえ。」
少女がスライムに話しかけた。
さっきまでの苛立った様子はどこかへ去って、細い声がすぅっとボクまで届いた。

「わたしたち、これからどうなるんだと思う」

後ろ姿を見せて、振り返らずにぽつりと呟いた。
そよ風にすっかり伸びきった髪がなびき、さらさらと揺れた。

ボクはいきなり聞かれて、何も言えなかった。
ボクらのこれから。
今まで考えたこともなかった。


だからその問いにスライムは、すぐに答えられなかった。

「今までさ、私たち旅してきたけど。本当に答えなんか見つかるのかな?」

「それは、きっと..だいじょうぶ..」
スライムが小さな声で、それでも少女に届くように、精一杯励まそうとしたが、少女は食い気味で次の言葉を放った。
「それって、」

「それってさ、ほんとに思ってる?結構長い間探してるのに、私の親も、名前だって分からないままなのに、」
少女はやはり背中を向けたまま、朝焼けを見ながらスライムに言う。

「で、でも」

「でも、何?」

「で、でも..」
少女の今までにないくらいの鋭い言葉に、スライムはひるんでしまい、口をつぐんだ。
もぞもぞしている間に、少女が嘆いた。
「ほんとにあるのかな。」

「は」

「私の名前。付けてもらえてないんじゃないかな。普通さ、子供が行方不明になったら。居なくなったら、みんな、一生懸命さがすよね。こんな大都市に来ても、張り紙ひとつないんだよ。だったらさ。こう思うしかないじゃん。」
「...私の、お母さんとお父さん、居ないんじゃないかなって。」

「じゃあ、わたしはなんなんだろうね」少女は鼻声で言った。
悔しそうに。苦しそうに。うつむいた。

「....。」
スライムはただ地面を見つめて黙っているしかできなかった。

少女の様子が最近おかしかったのは、自分の親が見つからないことが苦しいから?
親に愛情を注いでもらうことができないこの日々が、寂しいから?
自分の名前すらも分からないことに絶望を感じたから?

だからって、少女に親が居ないなんて、名前がないなんて、

「そんなわけ、な..」

ない、よと言い切る前に少女は振り返った。
このとき、ボクは初めて少女の表情を知った。
顔は涙でぐしゃぐしゃで、必死に堪えている顔だった。


「ない、って、言える?」少女はボクの目をじっと見て、
そして目線を合わせるようにしゃがみこんでいった。

「そ、れは」ボクは慌てた。
少女の推測が、100パーセントありえないなんて、そんなことは、言えないかも..しれない..。

「最近いっつもそうだよ。根拠もなく励ますのやめて。もう嫌だ。本当はなんとも思ってないんでしょう?ねぇ。」

「で、でも..」
こ、怖いけど。何か言わなくちゃ。

「でも、何なの?」
少女ははぁ、とため息をつきながらボクに聞いた。

「でも、根拠がないとしてもボクは信じる!君の名前も、おとうさんもおかあさんも、ボクがきっと、見つけるから!」
ボクは精一杯叫ぶようにして、気持ちを伝えた。
「...。」
少女は目を見開いた。頬は涙で濡れ、朝日の光が反射して煌めいている。
少女は口を開いた。

「は?」
それが、少女の口から出た言葉だった。

「だから、それ、やめろって言ってるんじゃん。信じるから何?きっと見つけるって、ふざけてんの?」
ボクを見下すようにして言った少女の目は、とても、冷たかった。
「ぇ..ぇ..」

"私さぁ、正しいこといってるんだから、おどおどしないでくれる。自分が言ったことに責任持ってよ。"
"それにさ、今まで見つかんなかったんだよ?でも、でもって。結局何が言いたいの?"
"てかさっきから、お前の言う言葉、ぜんっぜんフォローになってないよ?"

ずらずらと少女は吐き出していく。
お前、なんて。
言われたことなかったのに。

ボクはぽろぽろと涙が溢れた。

バスがやっと来た。
バス停の真横で、プシュー、と煙を出して止まった。



少女はついに立ち上がって
「じゃ、ばいばい。さよなら。いままでありがとね」
バスに飛び乗った。


「ま、まって!」
ボクを、置いていかないで。

ボクはバスの段差さえも越えられない。
だから。一人で、バスには、乗れない。
いつも少女の肩に乗って、乗車していた。

ボクの小さな体でどんなにぴょこぴょこ跳ねても、届かない。
(こ、このままじゃ...)

そして、バスの扉は、ゆっくりと、閉まった。

「まって、」
バスが走り出した。どんどんバスの姿は遠ざかり、見えなくなってしまった。
ボクは精一杯跳ねて追いかけた。今までにないくらいの長距離を走った。


でも、全く 
届かなかった。

「そんな..」
バスは、遠いどこかへ走り去ってしまった。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.27 )
日時: 2023/08/06 20:45
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 27

チュン、チュン....鳥の鳴き声が聞こえる。

あれ、ボクは..。どうなったんだっけ。
ああ、何も見えない。
真っ白の世界。

ボクはそこで、昔の夢を見た。
それは、少女と出会った、あの日の夢だった。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.28 )
日時: 2023/07/04 21:27
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 28

僕はむかしっから、弱虫だった。
"にんげん"という種族が支配する"ちきゅう"という世界で、気づけば僕は、生きていた。

"ちきゅう"は自然豊かで、空気も美味しくて、悪くない生活だった。
が、"にんげん"は僕を嫌った。

僕は"まもの"で、人間を襲う種族らしい。
だから"にんげん"は怖がって僕をやっつけようと、僕を追いかけ回したり、殴ってきたりした。
実際に、僕は弱いし、人を襲ったりなんかできっこなかったんだけど。

体が小さいので、背の高い大人には踏み潰されるし、
堂々と町中を歩けば、すれちがう人達は皆、まるで化け物を見るような、おぞましい目で僕を見た。

でも、僕のとなりにはずっと、あの、優しい少女が居た。
少女は僕を、拒まなかった。

出会ったのは、4年くらい前のこと。
草原で泣いていると、誰かに聞かれた。
「何で泣いてるの」
「..ひとりぼっちで、かなしいの。」
「へぇ、私と同じだね。運命かなぁ」そう言って、少女は、くすりと笑った。

それからボクは、少女と共に日々を過ごした。
「わたし、ずっとひとりだったけど、あなたが居れば二人になるから、寂しくないね」
そう言って微笑む少女は、花のように可愛らしかった。

"まもの"を連れて歩く少女は周りの"にんげん"から変な目で見られるときもあったが、
「 ともだちだよっ」
よく少女は僕に言ってくれた。

"ともだち"とは悲しいときも、嬉しいときも、一緒に居て、楽しいもの、といつか少女は教えてくれた。
僕は、僕を必要としてくれてる、認めてくれてる、と心から跳ね上がった。


なのに、そんな大切な、世界で、宇宙で一人の"ともだち"を僕は、失ってしまった。

僕が無力で無知なせいで、少女を痛めつけてしまった。

「ごめんなさい...」
僕のせいなんだ。

見放されるのは当然なんだ。

今まで1ミリも分かってなかった。
君のその深い愛想笑いの意味も、ずっと君が思い悩んでいたことも。

今までずっと、苦しい思いをさせてた。


僕なんか居ない方が楽になるのかもしれない。



でも。


それでも、


僕は君に会いたい。



だからもう一度だけ、チャンスをください。


絶対強くなって見せるから。


今度こそ君が、

君が、愛想笑いなんかしなくていいように、我慢しないで泣いて、笑えるように。
幸せを、掴めるように。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.29 )
日時: 2023/08/06 21:14
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

「終点~ミサキの丘」
バスがゆっくりと停車して、ドアがガコンと横に開いた。
バスの中には運転手と私だけ。

最初は数名ほど乗っていたが、乗客は皆、すぐ降りていったので、終点まで残ったのは私だけだった。
しんとして、薄暗い照明のついたバスの中で、
運転手は私が降りるのをじっと、待っているようだった。

ここでじっと座っていたらもちろん邪魔なので、ゆっくり席を立って、下車した。
バスはすぐにドアを閉めて走りだし、颯爽と姿を消した。

目の前には小さな丘があり、緑の草が生い茂っていた。
運転手すらもいない、ひとりぼっちの状況で、一気に安心感が消えた。

ふいに寂しさが私を襲った。

腹が立った拍子でそのままバスに飛び乗ったものの、特に行き先は決めていなかったから、ここがどこなのかも、よく分かっていなかったから、余計に不安になった。
(昔は、一人なんて何てことなかったし、それが当たり前だったはずなのにな、)

ここで、どうしよう。
何をすればいいんだっけ。
ぽつんと丘に残された私は帰る家もなければ、戻る場所もない。

ただただ、道を、進むだけ。
そうやって生きてきたことが無駄だったような気がして、むしゃくしゃした。

私がこうやって生きている間にも、平和に暮らしている子供は、親からたくさんの愛情
を注がれて、幸せそうに過ごしているのだろう。
私も帰る家があって、その家で自分を待っていてくれる家族がいたなら、
こんな気持ちにはならなかったのだろうか。
「私は、どうすれば」

しゃがみこんだ私の頭上から、誰かの顔が覗いた。

「よう」

それは、あのときの、少年だった。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.30 )
日時: 2023/08/07 15:34
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

「よ、久しぶり。..えーと俺のこと覚えてる?」
顔をあげると、少年は、緊張ぎみに笑顔を見せた。

「..もしかして、ユージ?」

「正解。」
ユージは笑った。
「髪型とか、なんか変わったね」
戸惑いつつも会話をしようと、話しかけた。
「髪切った、さっぱりしただろ?てか、そっちこそ、雰囲気変わったな」

「..そう、かなぁ」
わざと、曖昧な答え方をした。

「前はもっと明るかったと思うんだけど、…なんかあった?」
図星だ。
何もなかったとは言えない状況である。
「えっと...」

「そういや、一緒に居た友達はどうしたんだよ、」
ユージは爽やかになった髪の毛をなびかせながら私に近づいた。
昔はもう少し暗かった気もするのだが。

「おいてきた」

「え、何処に?」

「バス停で、おいてきたの」

「え、なんで」

「...」

「…いまどこにいるんだよ、大丈夫なの?」

「しらない」
突然問い詰められ、罪悪感が覆い被さってきて、そっけなく返事をしてしまった。

が、ユージは気分を悪くした様子はなく、私を立ち上がらせて言った。
「…友達んとこ、戻ろ。バス停で待っててくれてるよ、」

「...。でも、私酷いこと言ったし、友達じゃなくなったよ、だから...もう..」
「大丈夫だって、」

「あれから何ひとつ進歩してないの!帰る場所もない!戻ってもきっと誰も待ってないよ..。」

ユージは私が泣き止むのを待ってから、ゆっくり諭すように言った。
「じゃあ、不安が晴れるまで、一緒に居るから」

「..!!」
「でも、友達の所には戻らなくちゃ駄目だ。今日はもう暗いし、バスも走ってないから明日行こう。」
ひとりぼっちじゃないから安心しろよな、と私の頭をぽんぽんと撫でた。


「...わかった」
こくりと頷くと、ユージはよし、と言って、手招きした。
「俺さ、あれから色々あって、今一人暮らしなんだ。けっこう快適だぞ?」


Page:1 2 3 4 5 6



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。