複雑・ファジー小説

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もちもちつよつよ旅日記
日時: 2024/04/10 16:15
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13631

夏に銅賞、冬に銀賞頂きました!
投票ありがとうございます!!

*誤字、脱字など読みづらい箇所多々あります、許してください。
*ダークな内容混じっているのでご注意ください。

***
もっちもちなスライムと低身長のつよつよ少女。
未熟な一人と一匹の、世界でひとつの旅日記。

出会いと別れの物語。
<<登場人物>>         
*少女
年齢不明だが、背がちいさい。自分の本名、親、故郷を全く知らない。
それらを知ることが、旅の目的である。

*スライム
弾力のあるすらいむ。もちもちした触感。
***
[旅日記 目次]
episode 1 >>1
episode 2 >>2
episode 3 >>3
episode 4 >>4
episode 5 >>5
episode 6 >>6
episode 7 >>7
episode 8 >>8
episode 9 >>9
episode10 >>10
episode11 >>11
episode12 >>12
episode13 >>13
episode14 >>14
episode15 >>15
episode16 >>16
episode17 >>17
episode18 >>18
episode19 >>19
episode20 >>20
episode21 >>21
episode22 >>22
episode23 >>23
episode24 >>24
episode25 >>25
episode26 >>26
episode27 >>27
episode28 >>28
episode29 >>29  
episode30 >>30
episode31 >>31
episode32 >>32
episode33 >>33
episode34 >>34
episode35 >>35
episode36 >>36 
episode37 >>37
episode38 >>38
episode39 >>39
episode40 >>40
episode41 >>41..NEW

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.36 )
日時: 2024/01/04 21:34
名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)

episode36

「...ちゃん..いちゃん。..にいちゃん、おにいちゃんってば!」

目を覚ますと、そこには小さな女の子の顔があった。

「おにいちゃん寝ないでよ!お母さん帰ってきちゃうよぉ」
眉を上げて女の子は頬を膨らませる。

辺りを見渡すと暖炉や椅子、テーブルがあって、
床には、折り紙や色紙、紙くずが落ちていた。


「ほら、はやくはやく!何で寝ちゃうのかなぁ」
女の子はぶつぶついいながら折り紙で輪っかをつくっている。
その横顔は...なんだか見覚えがある気がする。
「さぷらぃずするっていったの、おにいちゃんじゃんか~」
誰かのパーティーでも開くのだろうか。

「ほら!立って!ケーキ作ってよ!早くしないと間に合わないよー」
無理矢理押し出されてキッチンの方へ向かう。
「お兄ちゃんはケーキ担当だったでしょ!」

この子は、僕の..妹?
うーん。
なんだか面影は誰かに似てる気がする。
君は誰?と聞きたくて口を開こうにも、体が思いどうりに動かない。

すると、女の子は何かに気がついたようで、声を漏らした。
「あっ!ろうそく!ろうそく買ってない!どうしようっ」

女の子はケーキに飾るろうそくが無いことに慌てている様だ。
「おかあさんにふぅってしてもらわないと...わたし今から買ってくる!」

小さなお財布を手に、廊下をパタパタ走って、女の子は扉を開けた。
声をかける隙もなく、手元を見ると...


(あれ、)


手だ。


僕は、人間になっていた。
自分の手を見ると、人間と同じ、五本指があって、ちゃんと2本足で立っていた。

(人の体だっ)
驚いて声をあげる間もなく光がさしこんで、眩しくて、目が開けられない。


「おにいちゃんはケーキ作っててーー」
外から聞こえた女の子の声と共に、僕の意識は途切れた。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.37 )
日時: 2024/01/20 10:40
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

いつまで寝ていたのだろう。

ふいに鼻がツン、として僕は目を覚ました。
どうやら、僕は一晩ここで寝過ごしたらしい。
もう朝になっている。
そしてこの鼻が曲がりそうなほどの異臭は、この部屋から漂ってきているようだ。
マキコさんの首に絡まった赤黒い紐は、
少しボロボロになってきているのが見えた。

どうしてマキコさんが動かないのか。
その理由わけを僕は何も知らない。

はずなのに。
体が、頭が、心臓が、知っている気がした。


どくん、どくん。
心臓の音はまだ高鳴ったままで、体が熱い。
少し開いていた窓から風が入ってきて、部屋のカーテンが揺れた。
マキコさんも少しだけ、揺れる。

赤黒い紐、微かに揺れる人影...。
この光景を、僕は見たことがある気がする。
(僕は、これからどうしたらいいんだろう。)

それにしても、さっき見た夢はなんだったのだろうか...。
僕の体が人間に...?そんなことあるわけがないのに。
そんなことを考えて、ただその場に座り込んでいた。


すると、パン屋の入り口から、叫び声とドアの叩く音が聞こえた。

「おい!開けろ!誰もいないのかッッ!まきこ!まきこはいるかぁ!」
「まきこちゃ~ん?居るなら開けて頂戴っ」

複数人の怒鳴り声、叫び声が聞こえてきて、
パン屋の回りはすっかり賑やかになってしまった。

開けてくれ、と扉を叩く人が居るので、ドアが壊れてしまいそうだ。
仕方なく扉を開けに行くことにした。
皆、マキコさんのことが心配で来てしまったのだろうか。

(だったら僕が状況を説明しないと。)

パン屋の入り口の方へ向かうと、透明なガラスの扉から、
たくさんの人が居るのが見えた。

おじさんが鍵がしまったままの入り口の自動ドアをバンバン叩く音が鳴り響いて、
僕は扉が壊れないか不安で慌てた。

「今開けますっ」
(自動ドアは下に鍵がついているので、小さい僕でも簡単に鍵を回せるのが素晴らしい。)
僕は急いで鍵を回した。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.38 )
日時: 2024/05/20 21:41
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode38

カチャ。
鍵が空いた瞬間、自動ドアが空くのを待たずに、
おじさんが無理矢理こじ開けて入ってきた。

そして僕を睨んでいった。
真紀子まきこはどこにいる。」

低い声で、ぼそりと言った。
鋭い視線から逃げるように、僕は居場所を教えた。

「えっと、そこの部屋にいます。」
それを聞くと、おじさんはずかずかと奥へ入っていった。
それと、心配そうにするおばあさんと、八百屋のおばさんが、
店の前で何か話していた。
「はぁ、あの子、部屋に籠りっきりなんだわ。」
「だからあんな"変なの"もわき出てきちゃったのかしらね」
「たった一人の家族を失ったんだから...落ち込むのも当たり前よ」


数分後。
おじさんの叫び声が奥の部屋から聞こえた。
回りはガヤガヤしてすぐに店の中は人でいっぱいになってしまった。

「どうした!」
「なんだってぇ?」
「騎士団に通報しなくちゃ!」
マキコさんがぶら下がっている部屋の中を覗いた人々は、一斉にあわてふためいた。


「おい、お前。」
さっきの怖いおじさんが一段と低い声で僕を見下ろす。
人間はたまに、鋭い視線で僕を刺すように見るのだ。
僕は、怖くて一歩も動けないし、一言も喋れない。

おじさんがゆっくり口を開くと、周りが静まりかえったように、
僕にはおじさんの言葉しか聞こえなかった。

「真紀子を、」
"マキコヲコロシタノハオマエカ?"
人々の視線が刺のように突き刺さって、
おじさんが放った言葉が、お腹の底で響いた。

パン屋にいる全員が今、僕を、見ている。
「あの子まだ若いのに..」
「パン屋潰れたのかしら?」
「騎士団の子でしょ?」
「あの変なのに取りつかれたのか,」


(死..。殺す?って、何..?死ぬって、どういうこと...?)



黒い渦の中に巻き込まれてしまいそうな中、僕は感じた。
(逃げなきゃ。)

ぶら下がったマキコさんを置いて、
僕は人々の足の隙間をするすると抜けて外へ出た。

「おい、待て!」
「あいつが殺したのか?」
「殺人犯!」
「化け物だ!!」
パン屋から口々に聞こえる、僕の悪口。


もう、逃げるしかない。
これが正解で、僕が正しいことをしているのかはわからない。

けど。
きっとマキコさんはもう喋ってくれない。
前みたいに笑ってくれない。

もう、たぶん会えない。
それは僕の頭の中が分かっているはずなのだ。

自分を守るために、逃げるしか方法はない。

だから、さよなら、マキコさん。

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.39 )
日時: 2024/08/02 19:09
名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)

episode39

大都市アルストロメリアも、今思えば対して大きくもなかった。
始めに訪れたときは、煌びやかだった町並みも、楽しそうだったお店も、
今では全然そんな風には見えない。

町の人の笑顔も、それはきっと本物じゃなくて、楽しそうな会話も、
耳をすませばお金の話とか、誰かの悪口だ。
そんなネガティブな気持ちに占領されて、僕は走る気力すら無くし、やがて歩くのもやめた。

もう、どうでもいいや。

細い路地に入って、建物の影に座った。

僕は何がしたいんだろう。
何をしにここへ来たんだっけ..?



まあいいや....。
もうこのままずっと、座っていよう。
もうなーんにもしたくないし、考えたくないや...。

ぼーっとしていると、何だか眠くなってきちゃった...。



「見つけたぞ!殺人犯」
目を開けると、いきなりパシュンと音がして、頭に激痛が走った。
「ぃた______」







それからどれくらい経ったのだろう。
目を覚ますと僕は、薄暗い場所で床に横たわっていた。

「ここどこだろう。。」

目の前には鉄の柵がある。

ひょっとして僕、捕まっちゃったのかな。

僕を銃で撃った人はあまり覚えてないけど、マキコさんと同じ服を着てたから
もしかすると騎士団の人かもしれない。

じゃあ僕は、逮捕されちゃったってこと?

ていうかここ、暗くて寒くてちょっと臭い...。


(誰かここからだしてよぉ。)
「あー」
試しに声を発してみると、どこまでも暗い部屋に僕の声が遠くまで響く。


「おい」
目の前に怖そうな男の人が居る。


騎士団...?の人ではなさそう。
黒と白のシマシマの服を着ている。


「ひ...な、なんですか..」

「お前、何で地下牢ここに来たんだ?」
その男の人はニヤニヤしながらこちらを見てくる。

だいぶ若い人のように見える。お肌がピチピチだもの。
この人も悪い人なのかなぁ。
「なにもしてません」

「あ?」
男の人が声を荒げたので驚いた。

「はぐらかすなよ、ここまできて無罪を主張すんのかよ、」
今度は眉毛をハの字にしている。
この男の人、怖いけど表情豊かだ。

「じゃ、じゃあ、おにーさんは、何をしてつかまったの?」

「俺?大したことじゃないぞ」

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.40 )
日時: 2024/02/05 21:56
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 40

「俺はなー爆発させたんだ!家を」
おにいさんは目を輝かせて言った。

「ばくはっ!?」
いきなり物騒なことを言い出すので驚いてしまった。
「そうだ。楽しそうだろ?」
僕の驚いた声を聞くと、おにいさんの顔はますます明るくなった。

「いや...危ないよぉ」
楽しそうとは思えないなぁ。

「人生危険なことも必要だぜ!何事も挑戦が大事だっ」
おにいさんは手でグッドマークを作る。(あたまがおかしいひとなのかも、)

話によると、おにいさんは科学者(?)で、
実験をしたときに、自宅ごと爆破してしまったらしい。
死者は出なかったが、とっても大きく爆発したため、
怪我人が出たり、近くの家が燃えたり...町中が大混乱になってしまい、
おにいさんはそのまま逮捕されたそうだ。

「あとはなー溶ける服とか着て町中を歩いたり~超でかいカエルのおもちゃを野放しにしたり~色々やったなぁ」
おにいさんは楽しそうに今まで犯してきた罪を話してくれた。

おにいさんは様々な実験をしていく度に逮捕され、要注意人物として取り押さえられ、
最終的に町中を燃やしたので死刑囚になったようだ。


「そしてよー俺はな、秘密だけど脱獄計画を練ってるんだー」

「だつごく、?」

「おぅ、この牢屋から抜け出すってことだ。」

「え!」
僕が驚いて声をあげると、おにいさんは(僕たち以外誰も居ないのに)辺りを見回して、
人差し指を唇に当て、しーっと言った。

「これは秘密だかんな、ばらしたらお前も爆破させてやる」
くくく、と笑って、おにいさんは近くの冷たい壁に触れた。

よく見ると、壁には細かい亀裂が入っていて、そこを爪で引っ張ると、コンクリートが外れて、
ぽっこり穴が空いていた。

そこには、なんだかよくわからないボタンやらスイッチやら、
触れてはいけなさそうな機械が詰め込まれていた。おにいさんはここに色んなものを隠しているらしい。
「見ろ、これが俺の作った爆破装置だ。」
自慢げに見せてくれたが、僕はなんだか怖くてあんまり覗かなかった。
「まだちょっと不具合があってさー今改良中なんだけど。」
喋りながらお兄さんは穴の中に手を伸ばして、機械をいじり始めた。

「そ、そうなんだ..」
今装置が爆発したらどうしよう。
僕は一歩、二歩..後ずさった。

「なんだぁ?びびってんの?これが完成したらお前もおまけで外に出れるんだから喜べよ」

「え!?外に出れるのっ」
僕はつい大声を出して跳び跳ねた。
僕だってこんな暗いところにひとりぼっちは嫌だし、しょけい、っていうのは
多分怖いことなんだろうから、外に出たい。

「こら、静かにしろ。見つかったら台無しだぞぉ」
お兄さんはどこからか工具を手にして先端を僕の方に向けて脅した。
ま、こんな汚くて暗い所には処刑の時が来るまで誰も入ってこないけどな、と付け足したけれど。


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