二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- LOVELESS×××【VanaN'Ice中編集】
- 日時: 2013/03/25 11:42
- 名前: 月森和葉 (ID: BsB4CdF8)
はじめまして、またはこんにちは。
月森和葉です。
VOCALOID、特にSCLproject(natsuP) feat.VanaN'Iceの中編集です。
LAST COLOR SCLproject(natsuP) feat.VanaN'Ice収録曲です。
※注意です。
・VOCALOID小説のくせに初音ミクが出てきません。
・結構シリアスです。
・落ちの後味悪すぎ。
・メインキャラクターが全員男という男の花園(薔薇小説ではありません。念為)。
目次
13943号室 Track 07
本編>>1-35
CAST・歌詞>>36
番外編>>37-39
バナナイス対談 >>40
眼 Track 01
本編>>41-58
扉絵>>40
CAST・歌詞>>59
LOVELESS××× Track 02
本編>>61-
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- Re: 【VOCALOID】眼【VanaN'Ice中編集】 ( No.54 )
- 日時: 2013/01/06 15:35
- 名前: 月森和葉 (ID: PdhEocoh)
「長! 『Me』達が脱獄しました!」
「捜査網展開! 防衛班、至急捜査にまわれ!」
議会の頭脳室では、あちこちから警報が鳴り響いて、止まる様子もない。
「鎮まれェい!!」
首長の一喝で、途端に辺りが静かになる。
「貴様ら、一体何をしていた! 貴様らには脳も眼も無いのか!? 防衛長、隊を率いて捜査に出ろ!」
返事は帰ってこない。ただ警報の赤いランプだけが哀しく回っている。
「どうした! さっさと行かんか!!」
「は、はっ!」
慌てて一人の男性が走り出ていく。
「職員は皆、『Me』の確保に急げ! あまり時間はない。何としてでも監獄にぶち込むのだ!」
全員の返事が返ってきたところで、首長は苦い溜め息を吐いた。
「何としてでも、連れ戻すのだ。彼らを外に出してはいけない……」
「さ、じゃあ行くか」
少年が大きく伸びをすると言った。
「あ、でも……」
「宛はあるんですか?」
女性達が心配そうに問うた。
「だーいじょうぶ。俺達が前に見つけた小屋があるんだ。まずはそこに行こう」
三人がほぼ同士に少女達を抱えると、また走り出した。
風が頬を切ってゆく。
この朝日が沈んでしまうのが、とても悲しくて、心をきつく締め付けた。
彼女が抱きついた青年の首に、痛々しい傷跡がいくつも覗いていた。
- Re: 【VOCALOID】眼【VanaN'Ice中編集】 ( No.55 )
- 日時: 2013/01/06 19:29
- 名前: 月森和葉 (ID: PdhEocoh)
「……どうだ?」
少女達を庇いつつ、古びた倉庫を覗き込んだ。
「大丈夫のようです。政府の気配はありません」
「奥も大丈夫だ。寝台があったよ」
倉庫の暗闇から短髪の青年が戻ってきて言った。
「さ、早く入って。俺達はともかく、君らはちゃんと休んだ方が良い」
「あ、はい……!」
中は薄暗く、埃臭かった。
外は昼間の明るい太陽が照らしているというのに、此の場所だけが太陽の恵みから取り残されたように暗い。
「……なに、ここ……」
「気持ち悪い……」
そう呟く。
と、その時だった。
気持ち悪い、と言っていただけなのに、最年少の少女がその場に倒れ込んだ。
「……!?」
「どうした!?」
「わ、わかりません……! 急に倒れて……!」
途端に二人も倒れ込む。
「お、おい! どうした!?」
少年が三人に駆け寄る。
「おい! 返事をしろ! おい!」
長髪の青年が四人を庇うようにして、腕を伸ばした。
「どうやらもう追いつかれてしまったようだね。私達も鈍ったかな?」
「どうだかね?」
いきなり吹き抜けになった倉庫の二階部分から声が降ってきた。
「君達が鈍ったのではなく、私達が腕を上げてしまったのかもしれないじゃないか」
三人が、睨み付けるように声の主を見上げた。
「……君だったのかい」
「通りで、ね……」
青年二人は苦い溜め息を吐いた。
少年は一人何が何だか分からない。
少女達を抱え、奥の寝台まで運び、慎重に鍵を掛けた。
- Re: 【VOCALOID】眼【VanaN'Ice中編集】 ( No.56 )
- 日時: 2013/01/07 19:05
- 名前: 月森和葉 (ID: PdhEocoh)
「君達の目的はなんだい?」
上を見上げつつ、口元に笑みさえ浮かべて言った。
「おや、分からないのかい? 僕の目的は昔から変わってなどいないさ。分かるだろう? 君達がここに来ることは見当がついていた。だから僕が来たんだよ」
眼鏡を掛けた顔を歪に歪めて笑ったようだった。
「君らは——いや、君達と言った方が良いかな。前は二人だったが、今は三人だからな。前にもまして、色々なことが出来るね? 今度は何をしようか?」
その時、少年が戻ってきた。
そして、その言葉を聞いてしまった。
「何が良いかな? 三人も被験体がいるのだから、なんでもできそうだ」
「被験体、だと?」
少年がゆらりと影から姿を現した。
「ようやく分かった。なんであいつらが全身傷だらけなのか。お前がその実験とやらに使っていたからか」
青年らは苦笑した。
彼らが場所を共にしたのは一晩ほどしかなく、しかも薄暗い暗闇の中に居たのに、そこまで見ていたとは。
男は、なんの澱みもなく返した。
「そうだよ。実は、君達は今回の作戦で初めて会ったんじゃないんだ。十四年前、君が製造された年に一度会っているんだよ」
『Me』は、七年に一度製造が許されている。
が、しかし、『Me』の危険性について危ぶまれたため、彼らを最後とする『Me』は製造されていないというのが表向きだ。
「実際はそうじゃないだろう? 俺達も知らない地下牢の奥深くに七歳の『Me』が居るはずだ」
眼鏡の男は、なんの悪びれる様子もなく、淡々と喋る。
「そうなんだよ。そして今年もまた製造許可が降りた。するとね、分かるかい? 君達はもう用済みなんだよ。だからね、僕が実験と称して極楽浄土へ送ってやるのさ。ま、君達の罪は重いから、浄土へは多分行けないだろうけどね」
青年はふと横を見て、自分の肌が恐怖に粟立つのを感じていた。
後ろを振り返り、短髪の青年に言う。
「……君は彼女たちについてやってくれ。流石に、これを私だけで防げる気はしないのでね」
頷くと、小走りに倉庫の奥に消えた。
「さあて、大変だよ。怖いのなら早く逃げた方が良いな」
上を見上げ、男に言う。
「何がだい? 何も怖くなど無いさ」
「それは、どうかな——?」
- Re: 【VOCALOID】眼【VanaN'Ice中編集】 ( No.57 )
- 日時: 2013/01/10 19:52
- 名前: 月森和葉 (ID: PdhEocoh)
「それは、どうかな——?」
途端、青年が後ろに勢い良く飛び退いた。
その場にいると危険だと、前もって知っていたのだ。
何が起きたのかと少年を見ると、まさに彼が危険物質だったのだ。
肌が裂け、下から人間のものではない皮膚が盛り上がってくる。
黄色い髪は逆立ち、耳は先が尖ってゆく。
丸い水色の瞳は爛々と輝き、獲物を狙っている。
これはまるで——。
「獣人化……?」
男の、部下の一人が呟いた。
まさに獣人だ。
しかし、『Me』に獣人化能力は備わっていないはずだ。
「馬鹿な! 何故『BELL』でないものが獣人化を起こしているのだ!」
後ろに静かに立っていた青年が、少し面白そうに言った。
「知らなかったのですか? 『BELL』の獣人化現象はもともと『Me』の能力なのですよ。そして、この翼も——」
バサリと音がして、青年の背中に黒い翼が現れる。
「それは……『Line』の……」
「そう。飛翔法。『BELL』も『Line』も、所詮『Me』から産まれたものに過ぎないのですよ。貴方はそれを知らなかったのですか?」
軽く地面を蹴り、宙に浮き上がる。
「で、では、もう一人はどうなるのだ!? 『Me』はもうひとり居ただろう!?」
青年は軽く嘆息した。
これは研究熱心なのかただの好奇心なのか。
「さてね。彼が変化したところは私も見たことがない。ただ、私が知っているのは、彼が『geek』であること。それだけだ」
そう言うと滑るように獣人化した少年に近寄り、耳元で何かを囁いた。
驚いたことに少年は気絶するように膝を折った。
気がつけば姿ももとに戻っている。
そのまま少年を抱き込み、奥へと一直線に飛んでいった。
追ってきた男たちは呆然とそれを見ていたが、我に返って後を追った。
しかし、その時にはもう遅かった。
奥の窓から青年が五人を抱えて飛んで行くところだった。
『Me』は一見ひ弱そうに見えるが、実は怪力な上にとてつもなく精神力が強いのだった。
- Re: 【VOCALOID】眼【VanaN'Ice中編集】 ( No.58 )
- 日時: 2013/01/14 10:50
- 名前: 月森和葉 (ID: PdhEocoh)
「……連中が彼女らを眠らせてくれたのは有り難かったな」
「そうだな。この能力はとても誉められたものじゃないから」
「実際のところ、君は何に変身するんだい? 君は本当に『geek』なのかい?」
青年は笑っただけで答えなかった。
少年と少女達が起き出したのだ。
「ここは……?」
道がいくつにも分かれ、それ以外の場所は全て緑の野原である。
彼らは今そこに居た。
「大丈夫です。ここには私達の敵はいません」
やがて全員が目を覚ますと、長髪の青年は言った。
「ここが他国への分岐点です。この道をずっと辿っていけば、貴方達は自分の国へ帰れるでしょう」
「あ、でも……」
そうなのだ。
彼女らは奴隷貿易で売られてきた。
自国に戻っても帰る場所などない。
「じゃあさ、帰るところを作れば良いんだ」
「え?」
「俺達には帰る所なんかないだろ? だから、君達が俺達の帰る場所を作ってよ」
他の五人は呆気にとられた顔をしたが、直ぐに破顔した。
「それは、大層素敵な考えですね」
あはは、と声を立てて笑った。
では、と言うように、長髪の青年が言う。
「——で、私達はどうしますか?」
「そうだな……。僕たちは無用の長物らしいからね。戻れば殺されてしまうだろうし……」
すると、少年が立ち上がって言った。
「じゃあさ、どっか別の国を見に行こうぜ。前もそう言ってたし、する事ないし」
青年二人は顔を見合わせたが、やがて笑った。
「そうですね」
「政府がこちらに接触してきたら、逆に政府を叩き潰してやりましょうか」
少年は満面に笑みを浮かべると、両腕を突き上げて叫んだ。
「よっしゃ! 決まりー!!」
全員が笑顔を浮かべた。
「では、ここでお別れです」
「ええ、有り難うございました。私達も、もう二度とこんな事が起きないよう尽力します」
青年は嬉しそうに笑うと、期待しています、と言った。
「じゃーなー!!」
「さようならー!」
『Me』達の姿が見えなくなると、彼女たちもそれぞれに別れを告げ、各々の国へと歩いていった。
〈〈 終 〉〉
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