二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。
- 日時: 2015/07/05 22:52
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
※リヴァイ×ペトラが嫌いな人は読まないことをお勧めします※
※腐ではないです。※
進撃の巨人の非公式小説です。
アニメ見て…大好きなペトラさんが…(/_;)それを見つめる兵長が…(/_;)もう辛くて辛くて。
『二人には幸せになって欲しかった。なら、私が二人を幸せにする!!』
と言う事で、兵長に密かに思いを寄せるペトラ視点で書いていきます。
必ず幸せにするから!!
§登場人物§
ペトラ・ラル…調査兵団所属。特別作戦(リヴァイ)班の紅一点。謙虚で仲間思い。オルオとは幼馴染だがあまり良く思っていない。リヴァイに密かに恋心を抱いている。
オルオ・ボザド…調査兵団所属。ペトラと同じく特別作戦班にスカウトされる。この班に入ってから口調がリヴァイっぽい。ペトラ曰く「似てない」。だが、実力は確かだ。
エルド・ジン…調査兵団所属。ペトラたちの先輩に当たるが、同期で主席。リヴァイ班のリーダー的存在。
グンタ・シュルツ…調査兵団所属。寡黙で真面目な兵士。リヴァイ班の仲裁役。
リヴァイ…調査兵団所属。小柄だが、「人類最強の戦士」と呼ばれ、1人で一個旅団相当の戦力があるとも噂されているほどの戦闘力がある。無愛想だが仲間思いで部下からの信頼も厚い。
ハンジ・ゾエ…調査兵団所属。戦闘力も高いが、巨人を別の方面から研究している。少々マッドサイエンティスト気味。
クララ・ベラルダ…調査兵団所属。ペトラと同室の同期。クセっ毛の金髪・碧眼の美女だが、口が悪くサバサバしている。
カウツ…ペトラの班長。普段は眠そうな顔をしているが、立体機動の扱いに長けた20代後半の男性。茶色の髪を短く切り揃え、今にも寝てしまいそうなベージュの瞳をしている。
とりあえずこんな感じで進めていきます。宜しくお願いします。
序章 >>01
第1章 兵士とは >>02-11
第2章 生き残った者の責務 >>13-15,>>18-21,>>24-30
第3章 このままであれば >>31-33,>>36-43
第4章 仇討ち >>44-46,>>49
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.6 )
- 日時: 2014/08/30 21:11
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: JnkKI7QF)
【試験二日目 兵站行進・馬術】
荒い息づかいが響く小さな森の中。重い荷物を背負って約10㎞の道のりを走る。兵站行進は、10㎞を50分切る速さ。つまり1㎞5分で走れて合格となる。1㎞5分はどれくらいかというと、200mを1分…
と、面倒臭いことを考えながら走っているペトラ。しかし、これはペトラ——いや、女子訓練兵にとって重要な事だった。
体力面で劣る女子などは兵站行進は苦手である。しかも、兵站行進が終わって休憩1時間で馬術の試験に移るのだ。なので、なるべく体力を使わないようにギリギリの速さで走ることにしたのだ。
「おい!ペトラ・ラル!遅いぞ!」
「はいっ…!すみませんっ…!」
などと言いながらも、このペースを落とす気はサラサラ無かった。
無事に時間ギリギリでゴールしたペトラ。既に一時間後の馬術に備えて30分寝ることにした。ちゃんとオルオに起こしてもらうようにお願いして。
——あぁ…もっと体力付けなきゃダメかなぁ…
そう思いながら眠りについた。
見覚えがある光景が目の前に広がる。
——ん…?此処は…家?
どうやら自分は寝ていたらしい。毛布にくるまっていた。見覚えのある背中。
——母…さん?
「ペトラ」
振り返って優しい声で呼びかける。
「貴女を待ってたのよ」
——どういうこと?
「あの時置いて行ったこと…後悔してるんでしょ?」
徐々にペトラに歩み寄る。いつもと変わらないやさしい表情だったが、何か違和感を覚えた。
「一生後悔すればいい」
——何を言って…
「私が楽にしてあげる。さぁ、こっちにおいで」
腕を掴んで自分の下へ引っ張ろうとする。
——ちょっと、待っ…
「さぁ…早く…」
思い切り手を引かれた。
——待っ…
「コロシテアゲル」
「ペトラ!!!」
大きな声で目が覚めた。夢だったようだ。
「どうしたんだよ…やけに魘されてたぞ。」
額や背中に汗をかいていた。兵站行進の汗ではなく、じとっとした、気持ちの悪い汗だった。
「…大丈夫、有難うオルオ」
馬術の試験が始まった。足場の悪い道を手綱を上手く捌き、ゴールへと行く。そして、途中で一旦馬を離れ、立体機動に移る。その時に馬が近くにいたり、遠くへ行っても呼び戻せたら合格だ。要するに、己の技術と馬との連携が取れなければいけないのだ。
ペトラは乗り慣れた愛馬に跨り、手綱を捌いていく。関門も無事に突破し、見事合格した。試験二日目も無事に終わった。
先程の夢が気がかりになってしまい、晩の食事があまり喉を通らなかったペトラ。明日は最も過酷な立体機動と格闘術の試験と分かっていながらも、体が食べることを受け付けなかった。同室の同期には先に部屋に戻ると伝えて、食堂を後にした。
昨日と同じ、兵舎の外の階段に出る。
「母さん、憎んでるのかな」
夜風に亜麻色の長い髪が靡く。
「そういえば、母さんもよく梳いてくれたっけ」
——髪は女の子の命なんだから、大切にしなさいよ。
「…なんで今になって母さんが出てくるのかな…何かの暗示かな」
「あれぇ?また此処に居たんだぁ!」
聞き覚えのある声がした。振り返ると、そこにはやはりハンジの姿があった。
「ペトラ、だったよね」
無言で頷くと、昨日と同じようにハンジはペトラの横に腰掛ける。
「ご飯食べた?」
この時間に外にいることに違和感を覚えたらしい。なんだか虚を突かれたような気がした。
「え…いや、なんか、あまり食欲がなくて」
「大丈夫ー?ちゃんと食べなきゃだめだよー?」
「すみません…」
「あ、そうそう!」
ハンジは指を一つ鳴らし、思い出したように話を変えた。
「リヴァイがさ、君の事結構評価してたよ!」
「え…?リヴァイ兵士長が?」
「うんうん!『体力はまぁまぁだが、馬術は良い。兵站行進の速さは恐らく馬術を見計らってのことだろうがな』ってさ!」
リヴァイの真似をして言っているのであろう。あまり似てはいないが、なんとなく雰囲気は伝わった。だが、やはり兵站行進のことは見抜かれていた。流石は人類最強である。嬉しいと同時に、見抜かれた恥ずかしさがあった。
「…光栄です」
「あと、オルオって子も良いって言ってたなぁ」
「オルオも?」
ハンジはうんうん、と頷いた。話によると、兵站行進の速さは勿論、馬から立体機動への移りがとても良かったという。
「そうですか…伝えておきます」
「…何かあったの?」
ペトラは少し驚いた。昨日といい今日といい、どうしてこうも自分の気持ちが読み取れるのか、と。
「いや、あの…兵站行進の後、少し仮眠をとったんですが…夢に、母が出てきまして。それでその…あの、『殺してあげる』って言われて」
ハンジは真剣な眼差しで、黙ったままペトラの話を聞いていた。
「それが引っ掛かってしまって…ご飯食べれなくて…情けない」
「いいや、良いんだよ」
ハンジが微笑む。終始ニコニコしていたが、この時の表情は娘を心配する母親のようだった。
「忘れないであげな」
「…はい」
「お互い、悩み事が多くて大変だねー。私も研究が行き詰っててさー…」
などと、すこし与太話をした。巨人の生態を科学という方面から探っているらしい。そして、巨人との比較をするために、人間観察をよくするとのこと。だから自分の感情が分かるのかなと思った。
「んじゃ、明日も頑張ってねー!」
「有難う御座います!」
ペトラはハンジと話して元気が出たのか、急にお腹が空いて来た。だが食堂が開いている筈もなく。半泣きだったペトラに、同室の同期のがペトラが残していたパンを持ってきてくれた。こんなこともあろうかと。ペトラはがっつくように食べたのであった。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.7 )
- 日時: 2014/08/30 21:44
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: JnkKI7QF)
【試験最終日 立体機動・格闘術】
これが一番重視されると言っても過言ではない試験最終日。
立体機動を使って、巨人に見立てた標的を削いでいく。ペトラは着実に成績を残していた。標的をいち早く見つけ、深い斬撃を放つ。
——よし…良い感じ
今回は班の中で5〜6人で分かれ、一早く標的を見つけ、うなじをそぎ落とせるかというものだった。ペトラはこの中で一番の成績を残していた。
「あと…どれくらいかな…」
その時、ペトラの後ろをアンカーが突っ切った。ポニーテールに突き刺さる。
「痛っ!!」
同じ班のあまり立体機動を得意としない男子が操作を誤ったのだ。
「うわぁあああああ!」
避けきれず、ペトラに激突した。二人のワイヤーが絡み、身動きが取れなくなって、そのまま落下した。
「ご、ごめん!ペトラ…僕が…操作ミスした所為で」
ペトラは絡まったワイヤーを丁寧にほどく。その間も同じ班のメンバーは立体機動で飛んでいく。
「大丈夫…次は気を付けてね…」
激突の衝撃の所為か、なんとなく頭がボンヤリとしていた。一刻も早く戻りたいところだが、自分の髪に絡まったワイヤーがなかなか取れずにいた。
「取れないなっ…」
イライラした。落ち着かせるために上をみると、上官が見ているのが視界に入った。二人いるのは分かったが、頭がボンヤリしている所為か、視界もぼやけていて、どこの兵団の人かは分からなかった。
——こりゃあもう、だめだな…折角上位十名になったのに…やり直しかな、訓練兵。
ぶつかってきた同期も必死に直している。なんとかペトラのは元に戻ったが、最後のペトラの髪に絡まったワイヤーだけがずっと取れずにいた。
「ごめん…本当にごめん…僕の所為で」
「いいって」
——とは言ったものの、どうしよう。此処でモタモタしているだけ時間の無駄だな…
その時、母親の声が蘇った。
——『髪は女の子の命なんだから、大切にしなさいよ。』
ペトラは手櫛で髪を梳いてみた。この前綺麗にしてもらった筈の髪は、もうボサボサだった。指に髪が引っ掛かる。
「ペ、ペトラ?」
「…さい」
同期がきょとんとしていると、ペトラは大声を上げた。
「…リヴァイ兵士長、母さん…ごめんなさい!!」
ペトラはスナップブレードで自分のポニーテールをバッサリと切り落とした。
「なっ…」
地面にペトラの髪がボトリと落ち、伸びたままのワイヤーも落ちた。
「もう、同じ過ちはしないでね」
そう言い残し、足早に去って行った。
飛ばしたペトラだったが、予想以上に時間がかかっていたらしく、もう標的は残っていなかった。集合地点に帰ってきたペトラを見て、皆が驚愕した。
「ペ…ペトラ…その髪」
「あぁ、アンカーが絡まっちゃって。なかなか取れないから切った」
もう少し丁寧に切ればよかったかなーといいながら毛先を摘む。
「切ったって…大事にしてたじゃない、髪…」
「いいの。もともと戦闘に邪魔だと思ってたし…それより、討伐数が稼げなかったのがなぁ…くそぉ」
独り言のように呟きながら、その場を後にした。同じ班のメンバーは呆気にとられて、暫くその場を動けなかったらしい。
「なかなか度胸あるじゃん、あの子」
木の上でハンジが呟いた。手元の資料に自分の評価をつける。
「まぁ、もーすこし早く対応出来てたら良かったかな」
「何故、俺の名を呼んだんだ」
リヴァイもハンジと同じところから見ていたのだ。ペトラの声は彼らがいる木の上まで聞こえてきた。
「だってーリヴァイがあの子に櫛を貸したからでしょ?髪梳いてあげたんでしょー?」
「貸したんじゃない、その場に忘れてきただけだ」
「大切に持ってたみたいだよー?」
リヴァイはハンジを睨みつけ、舌打ちを一つする。彼も、自分の資料にペトラの評価をつけ始める。
『困難な状況でも慌てずに冷静な判断ができている』
ハンジがリヴァイの評価を覗き、またニヤニヤし始めた。それに気付いたのか、リヴァイは評価を書き終えると、バインダーを持ったままハンジの頭を叩いた。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.8 )
- 日時: 2014/08/30 22:11
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: JnkKI7QF)
ハンジが移動しながらリヴァイに問うた。
「あの子に色気づいちゃったから、梳いてあげたのー?」
「心配しなくても、お前みたいに何日も洗っていないベトベトで脂ギッシュな髪を括っただけのような髪は触らん」
ハンジは研究に没頭するあまり、風呂に入らないことが多い。潔癖症であるリヴァイにとって耐え難いことであった。
「仕方ないでしょー?研究が忙しんだから。風呂入ってる時間があったら研究したいよ、私は」
「…汚ェ」
「でもあの子はやってあげたんでしょ?やっぱり色気づいてるとしか…」
言葉を途中で遮るように言う。
「馬鹿言え。汚いのは見ていて気分が悪い。だから直した。それだけだ。大体、お前は感覚が可笑しいんだ、ハンジ。さっさと風呂に入れ。何日入っていないんだ」
「ん〜…一週間くらい、かな」
リヴァイは立体機動でハンジから遠ざかった。
「何、その顔」
ペトラはオルオを凝視する。オルオもペトラを凝視した。
「お前…その髪…どうした…まさか、失恋でもしたのか?」
「は?馬鹿じゃないの?恋愛なんかしてる暇ないし。オルオもそのボリューミーな髪切ったら?スッキリするよ」
この時のオルオは所謂アフロみたいな髪だった。癖っ毛の髪で量が多い為、もうアフロにしか見えない。
「…時間があったらな。お前みたいにはならないようにするよ」
「うっさいなぁ!あとで切り揃えるわっ!!」
最終項目、格闘術。要するに対人格闘だ。班員で二人一組ないし三人一組となり格闘するのだ。特にこれと言うべきやり方はない。敵に見立てた相手からナイフを奪えたら勝ち。
ペトラは人数の都合上、三人一組だった。そして何故かこう言われた。
「ペトラは成績上位者だから、二人で掛かっていってもいいよね!」
訳がわからない理屈を付けられたが、先程の立体機動でしくじってしまったので、これで挽回できると思えば、と仕方なく承諾した。
「いくよ…ペトラ」
返事の代わりに軽く構える。
「はぁあああああ!!!」
一斉にかかってきた。ペトラは、右方向から来た相手の攻撃を避け、身をかがめたと同時に、左方向から来た相手の足を払う。そして、相手がこけたところで手首を捻ってナイフを奪う。だが、すかさず頭上からナイフを刺すようにかかってくる。それを転がりながら避け、起き上がって体勢を立て直す。二人は一旦間合いを取った。
——確か、この子は対人格闘得意だったけ…
考えていたのは一瞬だった。だが、その間に今度は腹部を狙ってきた。それを右手で払い、空いている左手で相手の肩を突く。体勢を崩したところをペトラは一気に攻める。ナイフを持っている右手を掴み、合気道の術を使い、背中方向へと捻る。そして軽々とナイフを奪った。
「か…完敗だよ、ペトラ…」
「流石に二人は辛かったって」
「何言ってんの!あっさり勝っちゃったじゃない!」
対人格闘をする訓練兵を、各兵団の幹部たちは回りながら見る。リヴァイやハンジも同じだった。だが、二人は遠巻きに見ているだけだった。
「ねぇねぇ…ペトラが」
「あ?」
「二人に襲われてるけど…確か、一対一でやる決まりじゃなかったっけ」
リヴァイもハンジと同じ方向を見る。視線の先には二人の相手をするペトラがいた。
一連のやりとりを見た二人は、思わず感嘆の声を上げる。
「…ほぅ」
「わぁああ!なかなかやるねぇ!あの子」
ハンジは小さく拍手をする。
「恐らく、立体機動のミスを挽回しようと思ったんだろうな」
「あぁ言う子がウチに来てほしいんだけどなぁ…」
「…悪くない」
二人はペトラの評価を上げた。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.9 )
- 日時: 2014/08/30 22:32
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: JnkKI7QF)
3日間に及ぶ試験が終わった。こんなことをやるのは、私たちが初めてだという。そんな軟弱な精神では巨人に食われてしまうと言われた。それ程、皆慎重なのか、優柔不断なのだろう。後者の方が多いだろうが。
一年前のウォール・マリア崩壊を見て兵士になった者も少なくない筈。その時活躍した調査兵団になりたい。でも死ぬのは嫌だから駐屯兵団か憲兵団に行きたい。でも憲兵団は簡単にはなれない。となると駐屯兵団だが、壁に巨人が接近してきたら戦わざるを得ない。そんな堂々巡りが延々と続くのだ。無理もない。だが、これは私たちが決めることではなく、兵団が決めること。今回の訓練兵に上位者もそれ以外も関係ない。まぁ、一応は上位者10名にはどこに行きたいかは聞きに来たが、それでもちゃんと答えたものは少なかった。ペトラもその一人だった。
調査兵団にいきたいと思っていた。だが、いざとなったら怖くなってしまったのだ。
「じゃあお前は何処でもいいのだな、ペトラ・ラル」
「はい。構いません。仰せの通りに致します」
敬礼をしたまま答える。
「うむ。では先方にはそう伝えておこう」
「宜しくお願い致します」
——巨人に食われちゃうな、私。
【結果発表】
試験終了後から5日後。訓練兵一人一人に一枚の紙が届いた。ペトラが貰った紙にはこう書いてあった。
『訓練兵 ペトラ・ラル
貴殿を本日付で下記の兵団に所属とする』
真ん中に少し大きめの文字で
『調査兵団』
と書いてあった。
「…調査、兵団…」
『この紙を貰ったら直ちに兵団本部へ行くこと』
ペトラは急いで荷物をまとめ始めた。
地図に書かれた場所へ向かうペトラ。だが、地図を見なくとも、訓練兵がそこら中にいる訳で。
「この人たちに付いて行けば…問題ないけどね」
「ペトラ」
後ろから声を掛けられた。
「…オルオ」
「お前も…調査兵団だったのか」
黙って頷く。
「そうか」
二人は並んで歩き始めた。
「親父さんには…伝えるのか」
「当然。まぁ…凄く怒られると思うけど」
「俺もだ…お袋がなんて言うか。親父が止めてくれるのを祈るしかねぇな」
そんなことを言いながら調査兵団本部へ向かった。
調査兵団に選ばれた訓練兵たちは、集会場へ集められた。暫くすると、壇上にエルヴィンが姿を見せた。
「私は調査兵団団長、エルヴィン・スミスだ」
この前まで副団長だったエルヴィン。前の団長——それが今の訓練兵団の鬼教官であるキース・シャーディスなのだ——が先の壁外調査で大損害を出し、自ら身を引いた為、自動的に団長になったとか。まだ団長になって日も浅い筈なのだが、既に風格があった。
「今回は君たちの意思と関係なくこの調査兵団になった。だからこそ知っていてほしい。我々調査兵団の実態を」
「実態…?」
エルヴィンは一息ついたあと、ゆっくりと喋り始めた。
「知っている通り、調査兵団は壁外へ赴き、巨人と戦う。そして、最も死者が出る」
覚悟はしていたが、改めて言われると冷や汗が流れる。これまで何人もの死者を出している調査兵団。そのお陰で、上層部からの信頼はほぼ無いに等しい。支持母体でなんとかやっていけている状態なのだ。
「だが、我々は諦めない。巨人の生態を調べ、巨人を倒す。いつか、人類が安心して暮らせる日を目指して」
そして、一際大きな声で言う。
「君たちは、死ねと言ったら、死ねるのか!兵士として、巨人と戦う覚悟はあるのか…?人類に心臓を捧げられるか!!」
その場にいた全員が心臓を捧げた。無論、ペトラとオルオもだ。
「「「はっ!!!」」」
エルヴィンは微笑みながら言う。
「君たちを、誇りに思う。そして今一度、兵士とは何かを考えてほしい」
そう言って、エルヴィンは壇上を去った。集会場は、エルヴィンが去った後も、暫くの間沈黙が続いた。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.10 )
- 日時: 2014/09/02 19:21
- 名前: 諸星 銀佳 (ID: JnkKI7QF)
ペトラは自室に案内された。部屋は同期のクララ・ベラルダとの共用だった。
クララもペトラと同じく上位10名に入った成績優秀者である。彼女は頭は冴えないが、格闘術だけで言えばペトラと互角かそれ以上かもしれない。くせっ毛の金髪を二つに束ねている。
「ねぇねぇペトラ…アンタの髪、ひっどいね」
大きな碧眼がペトラを見つめる。名前や容姿とは裏腹に、クララの性格はとても男勝りだった。ペトラ以上の。
「仕方ないじゃない。絡まったんだもん。取れなかったから仕方なく切っただけだよ」
「そうじゃなくてさ、切り揃えたりしないの?」
「そんな時間ないし、何より私じゃできないよ。後ろとか切れない」
諦めるしかないかー。とぼやいていたら、意外な答えが返ってきた。
「じゃあ、あたしが切ってあげるよ。ほら、はさみ貸しな」
言われるがままペトラはタオルを首に巻き、椅子に腰かけ大人しく髪を切り揃えて貰った。
「ねぇクララ。さっきのエルヴィン団長の…兵士とは何か、って解った?」
「ん〜…私馬鹿だからさ、難しいことはよく分からないんだけども…」
自分の中でまとめるようにして、彼女は続けた。
「調査兵団に入ったからには、憲兵団や駐屯兵団の連中とは違っていつも死と隣り合わせなわけじゃん?だから、いつでも死を覚悟しなきゃいけない訳で…まぁ、訓練兵になった時点で、心臓を人類に捧げた訳だけども」
「要するに、何が言いたいの?」
話がまとまっていなくて、ペトラはよく分からなかった。
「要するに…兵士とは、人類に心臓を捧げた身、死をいつでも覚悟しておけってことかな…小難しいことは置いといて。はい、出来たよ」
クララは鏡をペトラに渡す。鏡を覗き込むと、肩のあたりで綺麗に紙が切り揃えられたペトラの姿が映った。
「ありがとね」
「どーいたしましてっ!」
クララはめいっぱいの笑顔をくれた。
その晩。ペトラはクララが寝静まった後、机のライトを灯し、父への手紙を書いていた。
『お父さんへ
長かった訓練兵を無事に終えることが出来ました。上位十名で卒業試験に合格で来て、本当に良かったです。所属兵科は』
そこでペンが止まった。
『兵士になるだって?何を馬鹿な事を言ってるんだ!ペトラ!!』
父親の声が蘇る。
『もうこれ以上…父さんから家族を奪わないでくれ、ペトラ…』
『大丈夫よ!私は死んだりしない!それに…もうあんな思いしたくない。情報伝達が遅かった…人為的な問題かもしれないけど。体力も欲しい。でも…全ての元凶は巨人だから。私は巨人がいない世界を…取り戻したい』
その言葉を聞いた父は、顔が一気に青ざめる。
『ちょ、調査兵団に入るつもりなのか!?調査兵団だけは、やめ…』
そこで地面に崩れてしまった。
『父さん?』
『ペトラ、お前が頑固者だってことは、俺が一番よく分かってる。だから、説得しても無駄だってことも分かってる。だから、約束してくれ』
俯きながら言っていた。だが、顔を上げ懇願するように続ける。
『どうか…死なないでくれよ。生きて…また家に帰ってこい』
出る前に父と約束した。『死なない』と。調査兵団に入った今、それはほぼ不可能に近くなったような気がした。死なない努力は勿論する。だが、実際に巨人と戦った訳でないので、『絶対に死なない』とは言い切れなくなった。
「ごめんね、父さん…でも、私は…」
『所属兵科は調査兵団です。父さんには申し訳ないと思っています。でも、後悔はしていません。人類反撃の糧になりたいと思います。自分の力を、少しでも役に立てたいです。そしていつか、あのリヴァイ兵士長の下で戦いたいです。』
そう書いた後、封筒に入れた。
「…リヴァイ兵士長の下で、か」
少なくともペトラは、あれ以来リヴァイを見ていなかった。
胸の中になんだかもやもやしたものがあるような気がして、何とも言い表せない気持ちになった。
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