二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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生命と破壊の花【ポケモンXY】completion-完結-
日時: 2016/02/01 00:44
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 8R/poQo9)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=29995

 



 ──僕たちは生kill、この世界を──




 【前書き】

 クリックありがとうございます、本作品『生命と破壊の花』を筆記を務める元カルマのマルガリータです!
 この作品は、2013年10月13日に発売されたゲーム、ポケットモンスターシリーズ『ポケットモンスターXY』の小説です
 何故XYかというと……5月にポケモンセンターでポケモンXYグッズが販売されていたのを見て、懐かしい気分に入り、久し振りに向き合ってみようという気持ちになったからです

 ※注意※
・大まかなところは原作沿いですが、オリジナル要素が少々出てきます。なので、オリキャラも登場します
・シーズン2からカルムがギャルゲーの主人公。マルガリータ版ディック・グr( アイニス「おい、ポケモンバトルしろよ」
・バットマンネタ自重しろ、このにわか
・誹謗中傷、このスレに関係のない話や雑談、個人情報に関する話があった場合はスルーします。以前、とある方がそのコメントをしてきて非常に困りました
・グロ描写はないものの、死ネタあり。キャラ殺しはマルガリータ特権です
・バトルシーンは苦手なので、少々見苦しいと思います
・イメージCVはほぼ吹き替え声優をチョイス。有名声優チョイスしろ
・俺/私のカルムに何するものぞ、マルガリータァァァ!!(要するにカルムがだれおま)

 拙い文章ですが、よろしくお願いします!


9/23 こーすけさんとクロスオーバー作品を始めました→>>169
12/25 フラン・ブレイク・ガルシアさんとの合作始めました→>>251

8/11 タイトル変更しました。『生と死の狭間で』→『生命と破壊の花』

【新着情報】
1/30 終章 更新>>296
1/30 後書き >>298 new
このスレは02月01日を持ってロックさせて頂きます。続編は参照からお願いします

僕たちがこの美しい地方で見つけたものは──

登場人物
>>23

序章【カロス地方昔話】
>>01

シーズン1 始まりは唐突に……編

アサメタウン・メイスイタウン編【すべてはここから始まる】
>>02 >>03 >>04 >>07

ハクダンシティ編【バトル&ゲット】
>>08 >>09 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>21 >>22

ミアレシティ編【メガシンカ】
>>33 >>35 >>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>44 >>45 >>46

コボクタウン・パルファム宮殿編【その男、大富豪であり、プレイボーイ】
>>55 >>62 >>63 >>74 >>79 >>85 >>87

シーズン2 カルムのポケモン活躍編

コウジンタウン編【毬栗から棘鎧への進化】
>>95 >>96 >>97 >>99 >>105 >>109 >>110 >>111

ショウヨウシティ編【壁】
>>112 >>119 >>128 >>146 >>154 >>157 >>158 >>159

セキタイタウン編【カルムとピカチュウは仲良しでちゅう】
>>179 >>183 >>186 >>193 >>194 >>195 >>200

シーズン3 ディアンシー編

麗しき宝石のプリンセス
>>205 >>206 >>207 >>209 >>210

再会を目指して
>>215 >>220 >>230 >>284 >>285 >>286

希望
>>288 >>289 >>292 >>294 >>295

【終章】
>>296

【短編】

『ポケパルレ』ハリマロン、ピカチュウ、ゼニガメの場合
>>49 >>50

『I want to be……』ミアレシティ編終了後、ハリマロン視点
>>94

『南瓜は食べるものではなく、被るものなのです』ハロウィンss
>>214

『手のかかる隣人』カルム+セレナ。子供のようなカルムとオカンセレナ
>>216

『一番なのは君!』アニポケとちょいリンクしてます
>>231

『これからも、この先も』PUFFYの『これが私の生きる道』を聴いて思ったこと。ブログに飛びますのでご注意を
>>266

【番外編】

『ポケモン不思議のダンジョン カルムとハリマロンの冒険』ポケモン超不思議のダンジョン発売記念日
>>132 >>135 >>136 >>137 >>138 >>139 >>145

『a little SantaClaus』ユリーカとアイのクリスマス
>>239 >>240 >>242

『ぼくとおれ』原作カルム登場
>>253 >>263 >>264 >>265 >>271

【頂き物】
アーリアさんに、カルム&セレナvsしたっぱ兄弟のドット絵を描いてもらいました!
>>100

別サイトの絵師様からエカルラートを描いて貰いました
>>227

【イメージ主題歌】
『TEEN TITANS THEME(日本語版)』PUFFY

【小ネタや元ネタ一覧】
>>208

12/20 連載してから半年が経ちました
>>233

新年の御挨拶
>>279-280

後書き
>>298

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【メガシンカ】 ( No.37 )
日時: 2016/08/22 23:29
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
参照:

 カジュアルな服装の上に白衣を着た男性。彼が、彼こそがカロス地方のポケモン博士のプラターヌ博士なのだろう。
 カルムとアイニスは、ゆっくりと彼の元へと歩み寄る。

「遠路はるばるこんにちは!カルム、アイニス。ボクがプラターヌ!ポケモンとの旅は楽しいかい?色んなポケモンに出会った?」
「はい、とても楽しいです!それに僕、旅をしていなかったら……こいつとも会えなかったし」

 ゼニガメはカルムの腕から離れ、プラターヌの元へと駆け寄る。
 それを見ると、プラターヌはゼニガメの頭を撫でる。

「ゼニガメじゃないか!心配したんだぞー、幾ら知らない人だからって、泣き出して研究所から飛び出すんじゃないぞ」

 ゼニガメは笑って頷いた。
 どうやらゼニガメは人見知りらしく、見知らぬ人に遭遇し、その人に恐怖心を感じてしまい、研究所から抜け出して来たらしい。そして、いつの間にか迷子になってしまい、花畑で号泣していた……これで納得がいく。
 プラターヌの背後から、大きな蕾を背負った緑色のポケモンと、尻尾の先端に炎を灯した恐竜のようなポケモンが現れた。


 『No.80 フシギダネ 種ポケモン
生まれた時から、背中にある種を背負っている。太陽の光を浴びることで、背中の種が大きく育つ』

 『No.83 ヒトカゲ 蜥蜴ポケモン
尻尾の炎はヒトカゲの生命力とヒトカゲの気分を表している。 元気だと盛んに燃え盛り、炎が消えると、命は終わる』

 よく見ると、フシギダネとヒトカゲにも、ゼニガメの首輪に付けている石とよく似た輝きを持つ。
 フシギダネは青と桃色の石をヘアバンドのようにして装着しており、ヒトカゲは橙色の石を胸元に付けている。

「いやぁ、ありがとうね。カルム、アイニス、このゼニガメ人見知りでね、初対面の人に会うとすぐ泣き出しちゃうんだ」
「いえいえ、オイラたち、通りすがりの勇者なので」
「随分と面白いことを言うねーアイニス。ポケモンを託すメンバーを選ぶに当たって、一つの町から一人ずつ……そう考えていたんだよね」

 適当に選んだ訳ではなく、慎重に考えていたのはわかるが、何故自分を選んだのだろうか。

「カルム……。アサメタウンなら、知り合いのベテラントレーナーさんのお子さん。その時知ったサイホーンレーサー・サキさん親子の引っ越し……そう!君はカロス地方を知らない……。それがグッと来た。つまり、グッドポイントな訳!」
「それだけ……ですか!?」
「うん、それだけ」

 サイホーンレーサー・サキの血を引いているから、という訳でもなく、ただ単にカロス地方を知らないという理由で自分を採用したらしい。

「博士、オイラはー?」
「アイニス、君はゲーマーアニオタ。だけど、ポケモンについて何も知らない……そして、ユニークな発言をする君とポケモンを合わせれば、君の世界はもっと素敵になると思ってね、それが君を採用したグッドポイントだ!」
「成程、つまり自分は、一般人の村人Aだが、あることをキッカケに世界を救う勇者となる……そんな感じですな」

 アイニスは変わり者であり、変わった発言をする。それをアニメやゲームに例えて言うことも少なくはない。そんな彼とポケモンを合わせれば、彼の世界はアニメやゲームだけではなく、ポケモンも加わる、ということだ。
 ウィーン、とエレベーターの扉が開いた音がした。
 振り返ると、セレナ、サナ、ティエルノ、トロバがやって来た。

「よーし、みんなやって来たね。早速だけど、ボクについて来て!」

 ◆

 研究所の1階にあるもう1つのフロア。其処はポケモンを調べる為のモニターや、パソコンがある。
 そのフロアでプラターヌ博士の助手らしき男性たちがポケモンについて研究をしていたりする。
 そして、そのフロアを出た先には研究所のポケモンたちが遊べる場所があり、樹木、水辺、床は芝生となっている。ガラス越しからには、日が射している。
 カルムたちのポケモンはその部屋で遊んでおり、ゼニガメたちと仲良くしている。喧嘩はなさそうだが、カルムのピカチュウについては心配だ。
 ピカチュウは悪戯好きなので、ゼニガメをからかうこともあるだろう。それが原因でゼニガメがまた研究所から飛び出さなければ良いが。
 プラターヌは、研究室をカルムたちに案内させながら話す。

「君たちは、ポケモンに進化を越えた進化があるって聞いたら、信じるかい?」
「進化を越えた……進化……?」
「それって、ガブリアスはもう進化出来ないけれど、まだ進化が出来る……ということでしょうか?」
「流石だね、トロバ。そう、近頃、もう進化しないポケモンたちが、あることによって、特定な進化を起こすということが判明されたんだ。その名も『メガシンカ』」
「メガシンカ……?」
「『メガシンカ』は限られたポケモンがもう一段階進化することが出来る進化で、姿だけじゃなく、能力や特性が変化することもあるんだ。だけど、バトル終了後、メガシンカしたポケモンは通常の姿に戻る。そして、あるものがなければ進化出来ないんだ」
「あるもの……?」

 その時、カルムの脳内から、3階でフシギダネたちと戯れているゼニガメが再生された。ゼニガメたちが付けていた、不思議なシンボルが宿る綺麗な石……。
 それを思い出した瞬間、カルムは口を開いた。

「それって、ゼニガメたちが付けていた……あの石のことですか?」
「察しがいいねー。そう、メガシンカはあの石に関連していて、『メガストーン』って言うんだ。どうやらメガシンカ出来るポケモンにそのポケモンと合ったメメガストーンを付けると、そのポケモンをメガシンカさせることが出来る。そして、トレーナーにも、『キーストーン』って言う石を付けなければ、メガシンカは出来ないんだ」
「それだけでメガシンカが出来るの?」
「否、それだけじゃないんだ。トレーナーとポケモンの強く結ばれた固い……絆、それが共鳴しないと、例えキーストーンとメガストーンを持っていても、メガシンカは出来ない」
「メガシンカって……奥が深いんですねぇ」

 進化を越えた進化、メガシンカ……。それがあるとは思いもしなかった。
 そして、それが必要なキーストーンとメガストーン……。つまり、ゼニガメたちが付けている石はただのアクセサリーではなく、メガシンカさせる為に必要なメガストーンだということだ。つまり、ゼニガメたちはメガシンカが出来るポケモンなのだ。
 そして、もう一つ重要なのは、トレーナーとポケモンの絆。キーストーンとメガストーンを持っていても、信頼関係がなければ、メガシンカは不可能。
 自分がメガストーンとメガストーンを持った絆の強いポケモンとメガシンカ……なんて、それは儚い夢だ。
 カルムがそんな妄想をしていると、別のフロアから、ガッシャーン!!!と窓の割れる音が響いた。
 直後、ジーナとデクシオが扉を勢いよく開けて、こちらにやって来た。

「博士、大変です!ポケモンが……ゼニガメたちを拐いました!!」

【メガシンカ】 ( No.38 )
日時: 2016/08/22 23:33
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
参照:

 急いで、ポケモンたちのいる場所へ向かうと、ポケモンたちは顔を上げていたり、慌てていたりしている。
 顔を上げているポケモンたちに釣られるように上を向くと、天井にある窓ガラスが割れている。どうやら事件の発生地は此処から来ているようだ。
 プラターヌたちはポケモンを確認する。カルムのハリマロン、ピカチュウ、セレナのフォッコ、アイニスのケロマツ、サナのエネコ、ティエルノのヘイガニ、トロバのフラベベ……。カルムたち6人のポケモンは残っているが、プラターヌ博士のポケモンたちがいない。ということは──。

「まさか……!」
「はい、フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ──メガシンカの可能性のあるポケモンたちが、ポケモンによって、誘拐されました」
「どんなポケモンだった!?」
「確か……朱色の鳥ポケモン、ファイアローです」

『No.16 ファイアロー 烈火ポケモン
獲物を襲いかかる時には、時速500キロのスピードを出す。興奮すると羽毛の隙間から火の粉を噴き出す』

「ファイアローだって!?でも、ミアレにはファイアローを持つトレーナーもいないし、ファイアローがポケモンを誘拐するなんて、聞いていない──」
「博士、TVをご覧下さい!」

 助手がモニター画面を取り出し、ニュース番組に切り換える。
 映像は、ヘリに乗った女性とそのカメラマンが映る。

『今、ミアレシティでポケモンを誘拐する鳥ポケモン、ファイアローがプリズムタワーのてっぺんにいます!』

 場所はプリズムタワーへと変わり、屋上にはポケモンを拐った犯人ファイアローと、鷲掴みにされているフシギダネたちが映る。
 フシギダネとヒトカゲは抵抗しているが、彼等はまだ幼いポケモンなので、最終進化系であるファイアローにとっては、それは痛くも痒くもないのだろう。無力と言うのは、とても残酷だ。
 一方、嘴に挟まれているゼニガメは泣き出している。人見知りかつ臆病であるゼニガメの心は、恐怖心で支配されているのだろう。
 フシギダネたちを見て、カルムの瞳は1ミリも視線を外さなかった。
 そして、何かを決心したかのような表情をして、部屋を出ていく。

「ハリマロン、ピカチュウ、行くぞ!」

 ハリマロンは強く頷き、ピカチュウは仕方無いわね、と言わんばかりにカルムの後についていく。
 その行動に、プラターヌたちは驚愕した。

「ちょっ、お隣さん!?」
「カルボナーラ、何処行くんだー?」


 ◆

 外に出た時にはもう、渋滞の嵐だった。老若男女やそのポケモンたちがプリズムタワーに視線を送り、多くのトレーナーたちは携帯で撮ったり、大丈夫かしら……と心配を呟く人たちばかりだ。
 工事をしている作業員も、仕事をしている場合ではないことをわかっているのか、通せんぼをしている人はいない。
 その人並みをカルムたちは掻き分け、プリズムタワーが建設されてあるメディオプラザへと辿り着く。よくよく見ると、プリズムタワーの高さを改めて知る。だが、此処で立ち止まる訳にはいかない。しかし、マスコミや警察がプリズムタワー前を遮っている。

「何とかいけないかな……」

 それを聞いて隣にいる少年と幼女は声を上げた。

「ええっ、まさかおにいちゃん、あそこにいこうとしてるの!?」
「危ないですよ!?」

 金髪に眼鏡を掛けた、カルムよりも背の低い少年で、背中には重そうなリュックを背負っている。
 幼女も金髪であることから、二人は兄妹なのだろう。
 少年の言う通り、確かにプリズムタワーの屋上に上ることは危険だ。下手をすれば、自分を殺めることになる。
 だが、カルムの気持ちは変わらなかった。それに──

「一番危ないのは、フシギダネたちの方だよ。特に、あいつ──ゼニガメは、人見知りで臆病なんだ。だから今、あいつの心は怖い思いでいっぱいだと思う。だから、僕はあいつを安心させたい。助けたいんだ!!」

 カルムの瞳には、嘘偽りのない、強い意思が込められた黒をしている。そして、軽い気持ちではない、真剣な表情である。普段のカルムとは違う、姿勢だ。
 それを見て少年と幼女は目を見開く。そして、

「それなら、ぼくたちに任せて下さい!」

 ◆

 プリズムタワーの正面にファイアローたちが、周りの人たちの注目を浴びせている為、プリズムタワーの後ろには、誰一人もいない。その隙に、カルムたちは誰にも気付かれないように行き、非常階段の元へ行く。どうやらロックされてある。

「此処から、警察やマスコミに気付かれずに行けますよ」
「でも、ロックされてあるけど……」

 カルムがそう言うと、少年がふっふっふ、と不敵な笑みを浮かべると、眼鏡がキラリと光り、少年の顔立ちを隠す。

「サイエンスが未来を切り開く時!シトロニックギア、オン!」

 少年はリュックに付いてあるボタンを押す。すると、3本の指が入った腕が少年のリュックから現れ、ロックを解除させる。

「これで入りますよ!」
「よ、よくわからないけど、科学の力ってすごい!」
「あたしのおにいちゃんのはつめいなんだ!さ、おにいちゃん、はやくはやく!」
「サンキュー、二人とも!」

 兄妹に礼を述べ、カルムたちはプリズムタワーの中を駆け抜ける。
 その様子を、兄妹は心配そうな、信頼しているような複雑な顔で見送っていた。

【メガシンカ】 ( No.39 )
日時: 2016/08/22 23:38
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
参照:

 気が付けば空は茜色の夕焼けとなっていて、もうすぐ夜になる。
 カルムとカルムのポケモンたちの後を追い、メディオプラザに辿り着いたセレナたち。しかし、前は人混みばかりだ。
 何とか人混みを掻き分け、プリズムタワーの正面に着く。

「カルタロは何処なの?」
「まだ来ていないのでしょうか……」

 そんな話をする中、セレナが声を上げ、指を指す。

「見て!お隣さんよ!!」

 プリズムタワーを駆け抜けるカルム。そして、ハリマロンとピカチュウが、周りの視線を集中させる。
 そんなことを気に留めず、あるいは無我夢中なのか、カルムたちはプリズムタワーの屋上目掛けて走っている。

『ご覧下さい!子供とハリマロンたちが走っています!囚われたポケモンたちを助けようとしているのでしょうか!』

 叫ぶマスコミの声も気に留めず、屋上へ辿り着いた。
 茜色の夕焼けがカルムの背中を照らし、より勇まさしく感じさせる。
 それに気付いたファイアローはこちらを睨んでいるが、カルムはゆっくりと歩み寄る。

「なぁ、ファイアロー。ゼニガメたちを放してくれないかな?このままじゃゼニガメたちが危ないし、君だって本当はこんなことをしたくなかったんだろ?」

 いきなり刺激を与えたら、ゼニガメたちが怪我をしてしまうので、優しい口調で宥める。

「大丈夫、攻撃はしないから」

 何とか微笑みを保ったまま、カルムはファイアローとの距離を縮める。
 しかし、ファイアローは羽を羽ばかせ始め、フシギダネたちを地上に振り落とした。

「……!フシギダネ、ヒトカゲ!!」

 しかし、警察が繰り出した鳥ポケモンにより、フシギダネたちは落下せずに済んだ。
 今残っているのは、ゼニガメだけだ。
 ゼニガメはまだ泣き続けている。

「ゼニガメ、僕の声が聞こえるか?」

 ゼニガメを落ち着かせる為にカルムは呼び掛ける。
 カルムの少し高めの声を聞いて、ゼニガメは泣き止んだ。そして、こちらを見る。

「今行くから、待ってろよ」

 待ちわびていたかのように、溢れる歪んだ緋眼でゼニガメは強く頷いた。
 それを見てカルム、ハリマロンとピカチュウはファイアローに近付く。
 しかし、ファイアローは羽ばたき始め、翼でカルムたち目掛けて攻撃する。

「……!」

 ファイアローの攻撃を食らうカルムたち。しかし、ファイアローは休む間も与えず、カルムとハリマロンたちに攻撃を仕掛ける。

「……痛いッ……!」

 途絶え苦しむカルムたち。それでも尚立ち上がる。
 それをただただ眺めるゼニガメは思った。この人たちは自分を助けようと、体を張って戦っているんだ。本当は怖いのに。なのに、その想いを封印して自分を助けようとしているんだ。
 だったら──!
 決心するゼニガメ。
 ゼニガメはファイアローに挟まれた嘴に噛みついた。まだ鋭い歯ではなかったが、ファイアローにはとても効いたようで、ファイアローはゼニガメを放した。
 しかし、

「!ゼニガメ!!」

 そこは空中だった為、ゼニガメは落下した。何もない、空っぽな、高いタワーから。
 ゼニガメの流した涙が空中を舞う。
 それを見たカルムは何も考えずに、ゼニガメの後を追ってプリズムタワーから飛び降りた。
 飛び降りた。
 飛び降りた。
 飛び降りた。


「「「「「「お隣さん/カルタロ/カルヤン/カルPさん/カルシウム/カルム!!」」」」」」
「おにいちゃん!!」
「そんなッ……」
 
 セレナ、アイニス、サナ、ティエルノ、トロバ、プラターヌ、兄妹、マスコミ、そして、目撃者までもがそう驚愕せざるを得ない。
 それはそうだろう。高いタワーから自ら飛び降りるなんて出来る訳がない。自殺行為である。しかし、カルム──彼はそれが出来るのだ。ゼニガメを助ける為とはいえ、こんな行動が出来るとは大胆である。
 カルムはゼニガメを抱き抱える。

「ほーらもう大丈夫……って、えぇ!?」

 本人も気付いておらず、無我夢中だったらしい。
 それを見たハリマロンはつるのムチでカルムの足を掴む。危機一髪である。
 ピカチュウはハリマロンの背後に周り、ハリマロンが落ちないように掴む。
 しかし、ハリマロンはまだ小さく、カルムとゼニガメを助けるような力は備わっていない。
 ハリマロンとピカチュウも落下する。
 下を見ると、鼠色のアスファルト。落ちたら死亡確率は高い。命はないだろう。
 夕焼けは沈み、月明かりを翳す夜になる。
 誰もがもう駄目だ、と思った──

【メガシンカ】 ( No.40 )
日時: 2015/12/13 19:50
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
参照:

 ……。
 …………。
 ………………。
 堕ちた衝撃音がない……。
 もしかして僕、死んだのか?
 そりゃあそうだよな、だって、あんな高い塔から飛び降りたんだ。そう考えるのは同然だ。
 だけど、その時の僕はゼニガメを助けるのに必死だったから、つい思わず飛び降りちゃったからな……。
 そういえば、ゼニガメたちは大丈夫だったかな?生きているかな?僕がちゃんと抱き抱えたから、大丈夫だよな?
 当たりが真っ暗で何も見えない……。
 じゃあ、此処は天国──

「いいえ、貴方は生きておられます」

 そこでカルムの瞳孔は開いた。
 視界はミアレシティの夜を映す。まだ、空中にいる感覚はあるが、死んでいないようだ。
 胸元にいるゼニガメ、ハリマロン、ピカチュウは嬉しそうに声を上げた。
 
「ハリマロン、ピカチュウ、ゼニガメ……」

 顔を上げる。
 ポケモンと目が合った。
 夜なのでよく見えなかったが、月明かりがポケモンの姿を照らしているので、大体は見えた。
 緑色の頭部に、白い身体、大きな緋眼のポケモンだ。体型は人型に近く、カルムよりも背丈が高い。
 腕の肘は鋭い刃となっており、どんなものでも切れるだろう。
 ヒラリ、と靡く白いマントは、まるで純白の騎士ホワイトナイトだ。
 そのポケモンを見て漸く気付く。自分はこのポケモンに抱えられている。助けられているのだと。

 ポケモンは地上に着地して、カルムをゆっくりと降ろした。
 ハリマロン、ピカチュウも降りる。
 ゼニガメはカルムに抱えられたままで、ぐしゃりと顔を歪め、泣き出した。

「よーし、もう大丈夫だぞ」

 カルムがゼニガメをあやすと、セレナたちがやって来た。

「「「「「「お隣さん/カルタ/カルタロ/カルやん/カルPさん/カルム」」」」」」
「みんな……」
「カルタロ、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!ファイアローとは和解出来なかったけど、どうってこと──」

 カルムの言葉を遮り、セレナはカルムの肩を掴み、揺さぶる。

「本当に!?大丈夫なの!?」
「え?あ……大丈夫だよ」

 それを聞いたセレナは涙を流し、安堵したかのように呟く。

「心配したんだから……」
「それに、あのポケモンが助けてくれたから──」

 カルムはポケモンがいる方に振り返る。が、そこには誰もいない。無人だ。

「あれ?さっきのポケモンは……」
「とにかく、結果オーライだ!ゼニガメを助けてくれてありがとう!カルム、君はポケモンと軽症を負っているから、ボクの研究所に来てくれ。もう遅いから、君たちも研究所で泊まっていきなさい」
「「「「「「はい/ラジャー」」」」」」

 カルムたちは歩き出す。しかし、ハリマロンはポケモンがいた場所をずっと眺めている。
 それに気付いたカルムはハリマロンに声をかける。

「どうした?ハリマロン、行くぞー」

 カルムの声に反応し、ハリマロンは急いでカルムたちの後を追う。

 ◆

 プリズムタワーの事件は幕を閉じ、人混みやマスコミたちがいなくなっても尚、兄妹は残っていた。ずっとプリズムタワーの屋上を眺めたままだ。
 あの少年は……なんという大胆な行動力があるのだろう。ポケモンを助ける為とはいえ、まさか飛び降りるなんて思いもしなかった。その行動が先程まであったこととは思えない。
 幼女はキラキラと瞳を輝かせながら、兄に声をかける。

「ねぇねぇ、おにいちゃん!さっきのおにいちゃん、すごかったね!ポケモンをたすけるために、プリズムタワーからとびおりたんだよ!」
「うん……。ぼくには出来ないことだよ。あの人、勇気があるんだね」
「あーあ、アイおにいちゃんにもみせてあげたかったなー」
「仕方無いよ、アイだって暇じゃないんだ。それに、明日帰ってくるって言ってたから、明日そのことについて聞かせてあげれば良いじゃないか」

 幼女は兄の発明仲間である青年が大好きだった。皮肉屋で、少しぶっきらぼうで、人付き合いを好まない人物ではあるが、それでも軽くあしらうだけで、追い払ったりはしない。何より、時々彼が見せる不敵な笑みが幼女は大好きなのだ。

「うん、そうする!はやくあしたにならないかなー。ねープラスル!」

 赤色の兎のようなポケモンが幼女の肩に乗り、顔を合わせて笑う。
 彼がくれた、幼女の始めてのポケモンである。
 幼女とポケモンの笑顔に釣られて、兄も微笑んだ。

【メガシンカ】 ( No.41 )
日時: 2015/08/18 00:30
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: ai5/g0Y4)
参照:

 誰かが身体を揺さぶる。眩しい光が閉ざされている瞳孔の中でもよくわかる。
 それでもまだ、眠っていたくて、瞳を閉じる。
 しかし、揺さぶりは徐々に激しくなっていき、眠れなくなってしまう。
 まだ重い瞼をゆっくりと開けると、三匹のポケモンが顔を覗き込んでいるのがよくわかる。しかし、今はそれどころではなかった。
 カルムは毛布に顔を覆い、また一眠りしようとする。

「……あと、ちょっとだけ……」

 昨日はプリズムタワーで奮闘してきたので、大分疲れが溜まっている。ゼニガメたちを助ける為、高い塔を登ったこと、ファイアローを説得するのに必死だったこと、そして──ゼニガメを助ける為に自ら塔に飛び降りたこと。
 ファイアローによってカルムとハリマロンたちはダメージを受けたものの、運が良く軽症で済んだらしく、その後研究所にいる多分ね……否、タブンネによって治療をしてもらい、宿泊もさせてもらい、今に至る。
 主人が中々起きてくれないので、ハリマロンたちはぶーぶー叫び始める。

「もう少し……」

 それでもカルムはまだ起きてくれそうにない。
 苛立ちを覚えたピカチュウだが、何かが閃いたかのようにニヒヒ、と笑い、カルムが寝ているベッドの上に行く。
 寝息を立てているカルムを見てほくそ笑んで、


 ▼ピカチュウは でんきショック を繰り出した!▼


「あああ$§☆▽@£%★●↑▼★◎⊆¬∠∀∋∈¬⊃*仝‖〕!!??」


 ▼効果は 抜群だ! カルムは倒れた!▼


「わかった!わかったから、もうでんきショックはやめろ!!」

 ベッドから飛び上がり、あたふたと叫びだすカルム。
 ピカチュウはよろしい、と言わんばかりに頷いて、カルムのベッドから降りた。
 ヤヤコマのつつく攻撃よりもとても痛い。もう二度と、痛い目にポケモンの攻撃を食らって起床することはない……そう思っていたが、それは間違いだった。
 カルムはしぶしぶとパジャマを脱ぎ、青いジャージに着替え始める。
 その様子をゼニガメはくすくすと見ていた。

 ◆

 寝室を後にして、プラターヌのいる3階へ向かうカルム。帽子の上にはピカチュウ、左肩にはゼニガメが乗っている。ハリマロンはカルムの足元にいて、徒歩している。
 ゼニガメはプラターヌのポケモンなのだが、今朝から、カルムのいる寝室にいたり、カルムの肩に乗ろうとしたり、カルムにくっついている。こうして肩に乗っていると、まるで自分のポケモンのようだ。
 ゼニガメは人見知りですぐに人やポケモンと打ち解けることには困難らしいが、昨日出会ったばかりのカルムに懐いている。プリズムタワーで助けたことが、影響しているのだろうか。ともあれ、ゼニガメと仲良くなれて嬉しい。
 暫く廊下を歩いていると、プラターヌがやって来た。

「カルム、ちょうど良かった!話があるんだ」

 ◆

 エレベーターの扉が機械音混じりに開き、フロアに入る。プラターヌの部屋だ。
 よく見ると、フシギダネとヒトカゲがいない。

「フシギダネとヒトカゲなら、彼等に託したよ。フシギダネはセレナ、ヒトカゲはアイニスに」

 カルムの脳内を聞いていたかのように発言をするプラターヌに、思わず心臓が脈を打った。
 セレナとアイニス──カルムと同じく御三家ポケモンをもらった二人組は、カルムを差し置いてカントーの御三家をもらったらしい。
 彼等なら、フシギダネたちと楽しい旅、そして、いつかはメガシンカ出来るような深い絆を築いていくだろう。アイニスの方は心配だが。

「カルム。君は昨日、自らの危険を顧みず、ファイアローからフシギダネたちを助けてくれたね、ミアレを代表して言おう、本当にありがとう!」
「いやぁ、そんな……。その時はただ、無我夢中だったから……」

 照れくさそうに後頭部をかくカルム。実感はなかったものの、そう言われると何だかくすぐったい。

「そこで本題だ。カルム、このゼニガメと一緒に旅をする気はないかい?」

 ……え?
 カルムの思考は止まった。

「聞いている通り、このゼニガメは人見知りでちょっと臆病なところがあるんだ。だけど、君とゼニガメは昨日出会ったばかりだというのに、ゼニガメは君のことが大好きなんだ。恐らく、君がプリズムタワーで命を掛けて助けてくれたことが、彼の心を動かせ、ファイアローに立ち向かったんだ。君が此処を去れば、ゼニガメは悲しむだろう。無理にとは言わない。だけど……もし、その気があるなら、ゼニガメと旅をしてみないか?」

 カルムは左肩にいるゼニガメは見詰める。
 ゼニガメはきょとんと大きな赤眼を丸くし、首を傾げてこちらを視ている。それを視てカルムは可愛いと思ってしまった。
 始めて出会った時、泣き出しているゼニガメを何とかしてあげたいという気持ちが強かったので、捕まえようとは思っていなかった。それはプリズムタワーの時でも一緒だった。しかし、こうして一緒にいるうちに、旅を通してゼニガメともっと仲良くなりたいという感情が芽生えていた。メガシンカが出来るからという訳ではなく、真っ直ぐに、向き合いたいと思った。
 だから、カルムの応えは決まっている。
 カルムはゼニガメを抱き抱え、目と目を合わせるようにする。
 そして、恐る恐る口を開く。

「ゼニガメ……。僕と一緒に来るか?」

 ゼニゼェーニ!!
 迷い一つない、応えと笑顔。
 それを見たプラターヌはうんうん、と頷き、ゼニガメのモンスターボールを差し出した。

「これが、ゼニガメのモンスターボールだよ」
「……!ありがとうございます!」
「ゼニガメが首輪に付けている石──カメックスナイトも君に託そう。君なら、ゼニガメとマーベラスな絆が築けると信じてね。君とゼニガメ……一体どんな旅が出来るか、楽しみだ!」
「よろしくな、ゼニガメ!」

 ゼニゼニ!
 新たなパートナーは笑顔で応えた。


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