二次創作小説(新・総合)

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【合作】逃走中~ザ・ラスト~【完結!】
日時: 2019/09/06 13:58
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

モンブラン博士の逃走中、最終作!
私、こなくんさん、ヘキサさん、ネクスタさん、名無しさんによる5人の合作となります!
これまでの逃走中で逃走成功した者や無念の涙を飲んだ者、そしてスター流のメンバーが大集合する最後の作品!
果たしてラストに逃走成功を果たすのは誰になるのでしょうか!


逃走者一覧

小泉花陽
矢澤にこ
南ことり
ねこ娘
グレイ
ジェネラルシャドウ
天ノ川きらら
火野レイ
相田マナ
黄金バット
木下秀吉
ミスタークエスチョン
小泉さん
ロディ
川村猫衛門
不動仁王
星野天使
美琴
カイザー=ブレッド

>>1

逃走者リスト
>>21>>22

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【参照2000突破!】 ( No.71 )
日時: 2019/09/05 14:20
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

ジャドウは目黒が消滅し、美琴とカイザーという2大巨頭と闘う状況になっても不敵な笑みを崩さなかった。

「ジャドウ、君の先ほどの動揺は嘘だったのか?」
「吾輩がお前達程度で動揺するとでも思ったのかね。だとしたら随分低く見られたものだ」

嘆息すると、コーナーポストの頂点に降り立ち、両者を見下ろす。

「美琴にカイザーよ。吾輩に歯向かうとどのような目に遭うのか、その体で覚えるが良い」

ひらりとリングに着地し、軽く会釈をすると、ゆっくりと2人の周りを歩き出す。
その足取りは散歩でもしているかのように遅く、攻撃を仕掛ける気配は感じられない。けれど2人は先制攻撃をすることができなかった。ジャドウは無防備に見えて全く隙を与えていないのだ。彼は歩きながら両者に語る。

「スター様は完璧なお方だ。この世の平和を心から願い、冷静沈着で厳格ながらも深い愛に溢れている。絶対的忠誠を誓うに相応しいお方だ。彼は遥か太古の昔から1人で悪と闘い続けていた。弟子達が成長を遂げるまではと……」
「それは私も分かっている。彼がずっと1人で闘い続け平和を保ち続けていた過去を私達は決して忘れてはいない。だからこそ、これ以上彼の力を借りる訳にはいかないと全力で期待に応えてきたつもりだ」
「カイザー、それに美琴よ。お前達は重大な勘違いをしている」
「勘違い……ですか?」
「左様。お前達はスター様の期待を応えすぎてしまった。彼の予想を遥かに超え、活躍し過ぎてしまった。それがスター様の心を悲しませることも知らずに」

若干の怒気を含んだ声で告げ、2人に急接近すると彼らの胸を左右の掌底で凹ませ吐血させる。強靭な彼らが血を吐くほど、ジャドウの一撃は強烈だった。

「スター様は近頃悩んでおられた。『世間ではカイザー君の名は聞くのに、どうして私の名前は呼ばれないのだろう』と。その言葉を聞いた時、吾輩は察した。
何万年も人類を救ってきた恩人の名を容易く忘れる人類の愚かさと怒り、そして偉大なる師匠の胸の内を気付くこともなく、活躍し続けているお前達に寂しさをスター様は感じているのだと。だからこそ行動を開始したのだ。恩知らずな弟子共と人類を残らず始末し、真にスター様を崇める世界を創り直す為に」
「そんな世界をスター様が望んでいるとは思えん!」

カイザーが否定するとジャドウは巨体の彼を軽々と持ち上げ、片膝を立てたシュミット式バックブリーカーで攻め立てる。

「グオッ」

短く苦痛の声を上げるカイザー。ジャドウは同僚の背骨を痛めつけながら言葉を続ける。

「スター様は優しい方だ。弟子達の気持ちを案じ、本心を隠されているだけに過ぎない。本当は自らを崇める人類達を見たいと思っている」
「それはあなたの思い込みです!」
「お前にだけは言われたくないな、美琴よ」

ジャドウは美琴の頭部をおがみ打ちで殴ってダウンさせると、彼女のロングヘアを掴んで立ち上がらせ、顔を近づける。

「スター様に気に入られ、禁断の白い超人キャンディーを授けられた未熟者の分際で、気安くスター様を語るな」

顔面を掴んで一気に力を入れると美琴の頬にジャドウの指が食い込み、地面に血が滴り落ちる。救出に入ろうとするカイザーの腹を蹴りでコーナーまで吹き飛ばし、ジャドウは尚もアイアンクローで美琴を締め上げる。

「吾輩はお前の全てを知っている。お前以上にな……お前がなぜ人と異なる力を有しているか、どうしてスター様が女子禁制だったスター流の掟を廃止してまで、お前を入門させたのか。白いキャンディーを授けた理由、お前の本当の名も含めて、吾輩は全てを知っている」
「!!」
「だが今となってはどうでも良い。お前とカイザーは今日限りでこの世から消え、スター流は再び吾輩とスター様だけという正しき構図に生まれ変わる!」

美琴を地面に叩きつけ、その顔を踏みつける。カイザーがダメージを負いつつ、辛うじて立ち上がった姿を一瞥し、ジャドウは薄く笑った。

「太陽の拳は体力・精神力共に消耗が激しい。その為、一度発動すれば、お前は抜け殻同然となる。最強奥義も全てを知り尽くしている吾輩には無力。哀れなものよう」
「ジャドウ、私はずっと前から疑問に思っていた。何故、君はこれほどまでにスター様に忠誠を誓う!?」
「フム。最もな疑問だ。貴様と出会ってから悠久の時が過ぎているが、忠誠の理由を語ったことはなかったな。よかろう、冥土の土産に教えてやる。吾輩がなぜ、スター様に忠誠を誓うようになったか。そして、ジャドウ=グレイという名の意味をな」

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【参照2000突破!】 ( No.72 )
日時: 2019/09/05 21:44
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

ジャドウは美琴の顔から足を離すと、全身に力を込め始める。
すると背中に右側には悪魔の蝙蝠の如き羽が、左側には白鳥のような天使の純白の翼が現れた。

「これが吾輩の真なる姿。天使と悪魔の間に生まれた子。それが吾輩だ。正義でもなければ悪でもない。どちらでもあり、どちらでもない。従って両方から忌み嫌われる存在なのだよ。吾輩は両親の顔も愛も知らずに育ち、気付いた時には裏の社会に身を置き、用心棒として知られるようになった。毎日が荒れ、光とは程遠い日々……そんな時だった、あのお方と出会ったのは」

ジャドウが酒場でいつものように酒を飲んでいると一人の紳士が声をかけてきた。

「君、私の弟子にならないかね?」

荒れ放題だったジャドウはその申し出を一蹴し、相手を叩き潰してやろうと襲い掛かった。けれど彼の攻撃は全て見切られ、返り討ちにされてしまう。
紳士は倒れている彼に軽く会釈をして言った。

「明日もここに来るよ。世界平和のためには君の力が必要だからね」
紳士は翌日も、その翌日も酒場に現れ、ジャドウと決闘した。けれど、ジャドウはどれほど武器を使おうが不意打ちをしようが、傷一つ付けられることはなく赤子のように捻ってしまう。己の強さに自信があった彼だったが、謎の男の桁違いの武に感服し、多少の心境の変化を覚えた。この男の傍にいて技術を奪えば、自分は更に高みを目指すことができる、と。
下心があっての入門だったが、彼は気になることが一つあった。
この男はどうして自分をここまで弟子にしたいのだろうか。
その旨を伝えると、紳士は答えた。

「私は地球に平和をもたらしたいと考えている。だが、正義一辺倒ではダメだ。
時には悪には悪で対抗しなければならない場合もある。私は君ほどの極悪人を見たことはない。君と私ならばきっとこの星を平和にできると確信している。
だからこそ君の力がどうしても必要なのだよ」

ジャドウにとって生まれて初めての経験だった。
自分の存在を肯定してくれる。
自分を頼りにしていると言ってくれた。
こんな荒れ放題で名も無く、地位もなく、どん底まで堕ち、心を許せる者などいなかった自分を必要としてくれている。
当時を回想し、ジャドウは僅かに声を震わせた。

「吾輩の孤独の中に、あの方は光をくれた! 吾輩に正道ではない邪道(ジャドウ)と正義と悪、どちらにも染まらぬという意味を込め、ジャドウ=グレイという名と、スター様の側近、地獄監獄の管理という大役を任せてくれた!
心の底から嬉しかった……生まれて初めて生きる喜びを見出した時、吾輩は思った。未来永劫、スター様に忠誠を誓おうと! 誰が裏切っても見捨てても、吾輩だけは常に傍にいて、彼を支え続けると。あの時の恩を返す為に」

ここでジャドウは言葉を止め、倒れている美琴を再び起こし、その腕に虚空から取り出した注射器で何らかの液体を注入した。

「どれほど悪名だろうが泥だろうが、吾輩は被る。スター様の偉大さを守る為なら何だってできる。門下生を始末することも、吾輩にしか成し遂げることのできぬ仕事―ッ!」

謎の液体を注入された美琴は虚ろな目になり、糸の切れた操り人形のようにパタリとその場に倒れ伏す。

「美琴よ。先ほどの注射は超人キャンディーの効力を一時的に消すことができる薬だ。つまりお前は無敵の反射をしようすることができない、単なるスター流の門弟に成り下がる!」

美琴を機関銃のような蹴りでリング下に落とすと、それを追っておいかけ、ヘッドロックを極め、そのまま鉄柱に彼女の頭部を激突させる。
技を解くと額から血が噴き出し、美琴は仰向けに倒れ、動かなくなってしまった。

「能力が使えぬお前など吾輩には遠く及ばない」

リングに戻ったジャドウはカイザーを冷たい瞳で見下ろし。

「カイザーよ。スター流において最強にして最高の実力を誇った男よ。
スター様の次期後継者とされながらも、お前を始末しなければならないことは流石に吾輩でも惜しいが、あの方の悲しみを慰める為の犠牲になってもらう。
吾輩の最強技でなっ」

ジャドウは後方に跳躍すると、コーナーポストの最上段のロープに足を乗せて仁王立ちになると、全身全霊の力で跳躍。

「食らうがいい、ジャドウ=グレイの最強技……スター流超奥義№4!
冥府ニードロップ!!」

倒れているカイザーに無数の亡霊が現れ、彼の身体を拘束。そこにジャドウの膝が迫ってきた。

「ケーッ!」


般若の如き瞳孔と笑みを浮かべ、奇声を発したジャドウ。
その右膝は完璧にカイザーの胸に直撃した。



ドクン




ドクン



ドクン


ドク……

直撃から4回目でカイザーの心音は完全に停止。

その瞬間、決着を告げるゴングが会場に木霊した。

ジャドウ=グレイ&目黒怨VSカイザー=ブレッド&美琴 勝者 ジャドウ=グレイ&目黒怨


目黒は倒した。だがそのあまりに大きな代償に会場は声も無い。
その光景にジャドウはほくそ笑み。


「これで優勝者は誰もいない。スター様の威光は保たれ、スター様が支配する絶対の世が到来する!」

手を高々と掲げ、己の勝利を世界に誇示するジャドウ。



「いえ……まだよ……」



リングの外から声がした。


「何?」


その声にジャドウは思わず振り向く。
見るとリングの下から一本の腕が伸び、ロープを掴んでいる。
白い長袖を着た女の腕だ。
その人物はゆっくりと身体を起こし、その全体像を露わにする。
赤いリボンで結ったお団子の髪型、切れ長の瞳に長い手足にモデル体型。
赤いワンピースに身を包んだその少女の姿に、ジャドウは瞳孔を見開く。
ジャドウだけではなく、会場全体が大きな動揺に包まれた。

「馬鹿な。どうして、貴様がここにいる!? 猫娘!!」
「アンタだけはこの私、ニャニャニャの猫娘がブッ倒す!」

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【参照2000突破!】 ( No.73 )
日時: 2019/09/06 13:55
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

「お前は目黒に魂にされていたはず。何故、肉体を取り戻した?」
「カイザーと美琴のおかげよ」

猫娘は倒れている2人に目を向け、復活した理由を語った。
魂を瓶に入れられていた猫娘だったが、目黒がカイザーに倒された際に瓶が目黒の懐から離れ、リング下へと落ちた。その際、彼女はカイザーの繰り出した太陽の拳により熱線を受けた。太陽の拳は悪人は滅するが善人は回復する効果を持つ。それにより、瓶の中で魂の妖力を高めることに成功したのだ。それに気づいた美琴がジャドウに発見されないように最後の力を振り絞って瓶の蓋を開けたことにより、彼女が完全復活したということである。

「成程。彼らは吾輩に勝てぬと判断して敗北した時の策を練っていたのか。だが、例えお前が復活したとて意味はない。何故なら、吾輩の手によりすぐさま元の魂へと戻るのだからな」
「やってみなければわからないわよ」
「力量差も見抜けぬとは素人にも程があろう」

猫娘の登場により、ジャドウは彼女を迎え撃たなくてはならない立場となった。
けれど先ほどの戦いで一切のダメージを負わなかった彼は万全の状態で闘いを挑むことができた。猫娘も同様で目黒戦での傷は太陽の拳により完全回復している。互角の条件で両者は闘うことができるのだ。共に異存はないということで、改めて真の最終決戦が行われることになった。

「あんたは私ね」
「お前と吾輩が似ているというのか?」
「嫌になるくらいね!」

鐘と同時に飛び出したのは猫娘だ。彼女は先ほどの試合を観、ジャドウの言葉を聴き、思った。この男、ジャドウ=グレイは心の底からスターを愛している。
だが、本人は頑なにそれを認めず忠誠心という形で己の心を偽っている。その姿は自分と重なるところがあった。大好きな鬼太郎に真っすぐ好意を向けられず、いつも冷たく接してしまう自身と。だが、一つだけ決定的に異なる点があった。
ジャドウは病んでいるのだ。強すぎる愛を制御できず、同僚を巻き込み、暴走している。一途過ぎる愛が狂気と化しているのだ。
決して満たされることのない想いへの絶望感が彼を狂気へ走らせた。
猫娘は考えた。
もしも鬼太郎が自分以外の異性を好きと言ったら?
どれほど想いを募らせても自分の方を向いてくれなかったら?
ずっと傍にいて誰よりも近い存在。けれど決してその手が届くことはない。
そうなったとしたら。
寂しいだろうか、悲しいだろうか。
それとも辛い現実に目を逸らして、狂気に身を任せる?
それだけは――嫌だ。
彼女は思っていた。
このジャドウ=グレイという男は失恋に終わった場合の自分のIFなのだろうと。強すぎる愛は時に暴走し、大勢の人を悲しませる。
彼は図らずもそれを猫娘に教えていたのだ。
だからこそ猫娘は彼を自分自身の手で止めたかった。
これ以上、誰かを犠牲にしない為にも。
そして自分が彼のようにならない為にも。
彼の愛を自覚させ、暴走を終わらせる為にも。

「ニャアアアアッ」

猫娘の鋭い爪による斬撃がジャドウに直撃。
ジャドウは斜めに切り裂かれ、純白の軍服が裂け筋肉質の体躯が現れる。
両の手を使用し、幾度も斬撃を見舞うがジャドウはそれを真っ向から受け切る。
猫娘の膝蹴りを顎に食らっても口が切れる程度で全く応えていない。
肘打ちも拳も全て受け切る。一切の避ける姿勢をジャドウは見せていない。
地面に倒され腕を極められてもジャドウは薄ら笑いを浮かべていた。
それどころか腕ひしぎ十字固めを極められた状態で上体を起こし、立ち上がってきた。

「メス猫の関節技など吾輩には何の損害も与えることはできぬ」

軽く振りほどき、獲物を見据える。仕掛ける気配はない。

「どうした。威勢は最初だけか?」
「まだまだッ」

ジャドウは背は高いが長身痩躯である為、筋肉隆々が多いスター流メンバーの中でも体重は軽い部類に入る。故に猫娘も彼を逆さにして持ち上げることができた。両足の太腿でジャドウの頭を挟み込み、ジャンピングパイルドライバー!
脚のバネに自信のある猫娘が繰り出したそれを受けても、ジャドウはゆっくりと立ち上がってくる。猫娘は滅多にやらぬ頭突きを繰り出し、ジャドウをロープ側に追いつめていく。血塗れのジャドウの顔面、猫娘の額も血が流れている。
普段は美脚を活かした洗練された動きが持ち味の猫娘だが、今回は違った。
なりふり構わず攻め立てていく。
手刀、延髄蹴り、頭突き、斬撃……五体を駆使し、徹底して頭のみを攻め立てる。
一点集中型のスタイルを彼女はとっていた。

「ハァハァハァ……」

集中攻撃をし過ぎた影響で次第に息が切れ、視界が霞む。
それを待っていたとばかりにジャドウの膝蹴りが一閃。
猫娘の体がくの字に曲がり、リング中央まで吹き飛ばされる。けれど、ヒールでブレーキをかけて踏ん張る。

「この闘い、負けられないのよ! みんなの為にも自分の為にも!」
「仲間の為に闘うなど愚かでしかない。何の為に意地を張るのか理解できぬ」
「じゃあ、体で教えてあげるよ!」

眼をギラッと輝かせ、鋭い牙の並んで口をクワッと開けた猫娘はジャドウの肩に噛みつく。渾身の力で噛みつき、肩の肉を食い千切らんとするが、ジャドウは顔色一つ変えず、拳を一発。

「グエッ」

頬を打たれ、その衝撃と激痛で肩から口を放してしまった。
再度噛みつかんと襲い掛かるが、今度はその口の中に鉄拳が放たれる。
たちまち美少女の口が朱に染まる。しかしそれでも闘争の瞳は揺るがない。
ますます熱く燃え滾り、ジャドウを見据える。
その様子にジャドウは歩を進め、彼女の目と鼻の先までくると口を開いた。

「ここからは技も何も無い。お前を徹底的に殴り潰し、勝利する」
「望むところよ!」
「どちらの心が勝っているか、これほど単純な比べ合いもなかろう」
「打ち負けた方が、この試合の敗者よ」
「無論だ。では、はじめるとしようか」
「はあああああッ」
「ぬぅぅん!」

ドゴォ!

両者の拳と拳がぶつかり合う。
無数の打撃が繰り出される。
男も女も妖怪もスター流もない。
互いの想いを全てをかけた殴り合い。

ズドドドドドドドドドッ


激しい殴り合う音だけが会場に木霊する。
衝撃波が発生し、コーナーポストや三本ロープを吹き飛ばしていく。
互いの拳が顔を穿つ。血が滴り落ちる中、拳を打つ手は止まらない。
究極の我慢比べの中、ジャドウの目に飛び込んできたのは。
猫娘の背後で彼女を支える、不動仁王、川村猫衛門、ロディ、カイザー、美琴、そして本大会に参加した全ての逃走者達の幻影だった。

「この……メス猫が。貴様さえ、貴様さえ参加しなければ吾輩の計画は……っ」

ジャドウの頭の中でこれまで行われてきた逃走中と戦闘中の光景が蘇る。
その多くで猫娘は参戦し逃走者の危機を救ってきた。
目黒を雇い彼女を排除させようとまでしたが、それも叶わなかった。

「いい!? 覚えておきなさい! あんたの行動はスターの事を何一つ考えない、一方的な思い込みと独善! 主人への想いを考えない時点で、アンタの忠誠心は崩れているってことを!」
「!!」

猫娘の最期のストレートパンチを受け、ジャドウの体が大きく傾く。
そして。


「スター様、申し訳ございませぬ……」

この言葉を最期にジャドウは海老反ったまま倒れ、動かなくなった。
その瞬間、猫娘は優勝が決定。
彼女は賞金を参加者全員で分け、犠牲になったスター流のメンバーは黄金バットの力によって蘇り、最後の逃走中は幕を閉じた。

おわり。

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【完結!】 ( No.74 )
日時: 2019/09/06 19:34
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

後日談。

世界旅行から帰宅したスターは、早速ジャドウを自室に呼び、話をした。

「ジャドウ君、今回の逃走中の件、全てリコちゃんから聞いたよ。私がいない間にリコちゃんを物置に閉じ込めて運営として悪行の限りを尽くし、スター流の門下生達を大勢犠牲にしたそうだね」
「その通りでございます」

ジャドウの返事にスターは嘆息し。

「君のやりそうなことだね。大方、私が美琴ちゃんを次期後継者として指名する提案を不満に思っていたからだろう?」

スターは以前から美琴を自分の後を継ぐ存在として育成する案をジャドウに告げていた。自分に何かもしもの事があれば、今後は彼女を教え導いてやってほしいと。けれどジャドウにとっての主はスターだけであり、それ以外の人物の下につくなど考えられないことだった。ジャドウは頷き、口を開く。

「納得できませぬ。幾ら美琴がスター流の守護神である闇野髑髏(やみのどくろ)様の娘だったとしても」
「君も知っての通り、闇野さんは私の先生であり、親友だ。私を上回る才能を持つ彼の娘で、超人的な遺伝子と優しさを引き継いでいるのだから問題はないと思うのだが……」
「奴は女です! このジャドウ=グレイ、女子の僕になる気はありませんぞ」
「強情だね、君も。彼女は闇野さんの娘であると同時に、嘗て私と共に彼の師事を仰いだ妹弟子、アップル=ガブリエルの転生した存在であることは説明しただろう。もちろん、美琴ちゃんはそのことを知らないけど。そう言えば、アップルと君は随分仲が悪かったね。いや、正確には君が彼女のことを嫌っていたのか」
「あの女はスター様が最初に惚れた女でした。なのに奴は偉大なるスター様の求愛を断り、あろうことか自ら命を絶った!!」
「……アレは辛かったなあ。本当に辛かった。でも果てしない時を経て、違う形ではあれど彼女と再会できた。これは喜ばしいことだと思う。あの時の詫びになるかはわからないけど、今度は彼女にスター流を任せてみたいんだ……」
「それだけは認めませんぞ」
「君は本当に頑固だ。まあ、美琴ちゃんの件は置いといて、だ。それだけじゃないんだろう? 今回の事件を起こした理由」

スターは相手の心の内を読むことができる。彼に嘘は通じない。ジャドウは認めるしかなかった。

「吾輩が我慢できなかったのは、スター様が人間にスター流究極奥義を伝授したことです」


一瞬の沈黙の後、スターは天を仰いで、高らかに笑った。

「イヤー、流石はジャドウ君だ!何もかもお見通しだったとはね!」
「他の者は気付かずとも吾輩の目は誤魔化されませんぞ。第1回戦闘中で見せた南ことりの動き、そして今回の矢澤にこ……彼女達の動きは紛れもなくスター流究極奥義【ダンス拳法】の動きでした」

ダンス拳法はスター流奥義の頂点に君臨する究極の技であり、音楽を流しながら相手に超高速で疾風怒濤の連続攻撃をかける技である。型は無く、流した曲によって自在に変化するため相手のどのような攻撃にも対応できる。
動きが超スピードであるが故に敵は見切ることはおろか姿を見ることさえできず、気が付いた時には敗北している。
時には敵の動きを操り自分の動きをトレースさせ、アレンジを加えることによって相手を圧倒することもあるという。
スターが発動したら最後、世界中の人間が彼が満足するまで踊らされる羽目になると言われている。習得が極めて難しく、スター流の門下生では誰もマスターしたものがいない伝説の技である。

「何故究極奥義をあっさりと伝授させたのです!?」
「いや。私は軽いヒントを出しただけだよ。ダンスの動きを戦闘に取り入れてみてはどうかとね。動きの組み合わせ自体は彼女達の発想だから、ダンス拳法とは似て非なる技と言えるだろうね。しかし、だからと言って君が目黒怨を地獄監獄から出して結託して多くの門下生を傷付けていい理由にはならないし、それを見逃したら私も責められるからね。罰はきっちりと受けてもらうよ」

スターの言葉にジャドウは冷たい汗を流すが、スターは腕組をして言葉を続ける。

「あのあと処理が大変だったんだよ。黄金バットの力で門下生は全員蘇ったけど、ミスタークエスチョンは寿命を迎えて難しかったから、私が天国まで行って彼の魂を受け取りにいって肉体を再生させてこの世に復活させたんだ。
彼の寿命も多少巻き戻したから、あと10年くらいは現世ライフを満喫できる。
それに君は皆に自分が逃走者を蘇らせたとか大嘘を突いていたみたいだけど、各々の時間に行ってこの世界に連れてきたのは私なのだよ。それを忘れては困る。まあ、ヒール達の蘇生は君の手柄だけど……
ともかく! 君には罰を与える!!」
「どのような罰でも甘んじて受けましょう」
「よく言った! それでは一週間の禁酒を命じる!」
「き……禁酒!?」

ジャドウは無類の大酒飲みであり酒がなければ生きていけない。
食べ物も摂らずひたすら酒だけを飲んでいきている男なのだ。
彼にとって酒はスターの次に大事なものである。

「おお、偉大なるスター様! それだけは、それだけは何卒お許しを!」
「それはできないね。牢獄の中で1週間頑張りたまえ。ハハハハハハハハ!」

高らかな笑いを残し、スターはその場から瞬間移動で残された。
その後ジャドウは嘗ては逃走者を収容していた決して壊れない牢獄に自分が入ることになり、地獄の一週間を味わう羽目になった。

後日談 おわり。

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【完結!】 ( No.75 )
日時: 2019/09/10 18:18
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

作者のみなさんのあと書きです!

konakun.さん
やーやーどうも、「逃走中~ザ・ラスト~」お楽しみ頂けたでしょーか? ワイはOPゲームから制限時間撤廃まで担当させて頂いたんすが、自作も掛け持ちしてた上にリアルの事情が重なったもんですから、まぁ酷い遅筆になっちゃったっすねぇw博士の産んだオリキャラとか版権キャラも含めて初めて書くキャラが多めっしたが、ワイの作風の味は充分に出せたかと← あとは自慢…って言っちゃあアレっすが、Twitterでのグループ結成とか他メンバーの勧誘とかやったのはワイなんすよねぇ。 とにかく初めてで埋め尽くされたワイ初の合作、いい経験になったと思うよ!ってことで主催の博士と他のメンバー3名、そして読者様一同にご感謝申し上げて〆としましょうかなっと。

ネクスタさん
どうも、ネクスタです! 今回、モンブランさんの合作に参加させていただいて、色んな発見がありました! 自分の知らないキャラだったり、スター流をはじめとするオリキャラの面々とかをどう表現するかとか、たくさん考えて書くことができました。 自分自身合作が初めてで不安もあったんですけど、参加してみたら新しい体験がいっぱいできて、とても楽しい時間になりました! 最後に!この合作に関われてよかったです!これからも、よろしくお願いします!

ヘキサさん
ヘキサです。 ほぼ最初から独特の世界観に圧倒されて見守り状態になってしまいましたが、 無事数人の作者の努力で完結させる事ができ一安心です。 リレー制の逃走中は僕も何度か色んな作者さんの作品に参加し執筆してきました。 リレー制が好きでない人もいると思いますが、 このリレー制のメリットは打ち切りを防ぐ面だと考えています。 逃走中やヘキサゴンなどまだリレー制で未完結の作品もありますので、 自分の作品の練習みたいな形で参加しても全然OKです! とにかく執筆に参加した作者さん方、本当にお疲れ様でした!

ANIKI@プロメア(名無しさん
皆様初めまして。元名無し改めANIKI@プロメア と言います。 まず最初に...合作完結おめでとうございます!参加者、読者の皆様本当に沢山の応援ありがとうございました!小説カキコで合作が完結した例は私が把握してる限り殆ど無く凄い事だと思います。 私は文章の冒頭部の作成やキャラデザしかやっていませんが、他の参加者の方々の創作パワーには凄い勢いを感じました。そして何よりも合作の主催者であるモンブラン博士さんのカリスマ性や創作熱意は小説作者の鏡だと思います! 今回は私も二次創作小説板の皆さんにパワーを頂きましたm(_ _)m今は自分は創作活動を休止していますが、機会があれば是非また皆さんで合作やりましょう!

モンブラン博士
おかげ様で無事に完結できました! 書き始めると当初の案からどんどん変わっていって今の形になった気がします。天ノ川きららは目黒と対峙し、カッコ良く闘って命を落とす予定でしたが、グレイの策に乗る形で確保されましたね。 きららは飄々としていて掴み所がないのが魅力的でどこかで活躍させたいなとは思っていましたが、見せ場は作れたかなと思っています。 小泉さんの戦闘シーンは当初からずっと書きたかったので念願かなって良かったです。にこが闘った沖縄の首里城はこの企画が始動する前の案の決戦場でその話では園田海未ちゃんがキン肉マンのボーン・コールドと大激突するお話でした。この話はボツになりましたが、首里城が出せただけでも良かったのです。 猫姉さんの初敗北が今回描かれましたが、全力でグロくしようと頑張りました。 最終決戦は当初はカイザーがジャドウと目黒を太陽の拳で一撃で消滅させてお終いにしようかと思っていましたが、楽に勝たせたのでは盛り上がりに欠けると考え、美琴とカイザーになりました。けれどオリキャラばかり目立つのでは折角のクロスオーバーの意味がないと考え、猫姉さんをラストにもってきました。 最後の最後まで美味しいところを持っていきましたが、私の逃走中を象徴するキャラでラストを飾ることができて幸せだったのです。みなさん、最後まで応援してくださりありがとうございました!


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