二次創作小説(新・総合)
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- ごちうさ モンブラン風味 作者募集!
- 日時: 2020/10/28 12:08
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ご注文はうさぎですか?の二次創作を執筆したいと思います!ごちうさのキャラを描くのは初めてですが、読者を心がぴょんぴょんするんじゃあああ状態にさせられるよう、頑張ります!
お話の募集用紙>>44
- Re: ごちうさ モンブラン風味 ( No.23 )
- 日時: 2020/09/24 15:01
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「不味い。お代わりを早くいれなさい」
「お待たせ致しました。お客様、お代わりをどうぞ」
シャロさんは我慢の限界が近づいていました。
ティーポットを持つ手がプルプルと震え、怒りでこめかみの血管が浮かびあがっています。普段はお嬢様然とした態度を崩さない彼女がここまで表面に怒りをあらわにするのはただごとではありません。それというのも、全てはこの日のお客様の態度に原因がありました。青緑色のツインテールに黒のゴスロリといかにもフルール・ド・ラパンを意識したような恰好で来店した少女の名前はビブリーさん。彼女は椅子に腰かけるなりハーブティを注文し、瞬く間に飲み終わるとすぐにお代わりを頼みました。一度だけならいいのですが何度も頼み、しかも飲み終わるたびに「不味い」を連呼するものですから、たまったものではありません。ジト目で態度の悪い彼女にシャロさんは怒りで腹の底から煮えくり返りそうでした。
「早く淹れなさい! 客を待たせるなんて、ここの店員は何をやっているのよ!」
「すみません・・・・・・」
「大体、そのウサ耳、ダッサ。そんなものしてるから客が入んないんじゃないの?」
「お客様、これ以上の侮辱は――」
「あら、あたしは客よ。アンタ達の欠点を指摘してあげているのに、反抗する気? 大体、心と体を癒しますって文句を謳っておきながら私は癒せてないじゃない」
同じくらいの少女にここまで言われて黙っていられるはずがありませんでした。
こうなったらハーブ専門店の意地とプライドにかけて、この不機嫌な客を何としても癒して見せると心に誓いました。
「お客様、こちらのお茶をどうぞ」
「何よ」
ブツブツと文句を言うビブリーのティーカップに新しいティーを注ぎます。
薄茶色の液体から漂う青りんごを彷彿とさせる爽やかな香りが、少女の鼻をくすぐります。
「今までのとは違うみたいね」
「カモミールティーです。ノンカフェインですから、ご安心ください」
先ほどと同様に一気飲みしたビブリーは口元を緩ませ、何とも言えない幸せそうな顔になりました。カモミールにはリラックス効果があるのです。
ぽわぽわとした気持ちでビブリーはお店を出ていきました。
仏頂面を幸福顔にできたという達成感で深いため息を吐きだしたシャロさんでしたが、ここにきて重大なことに気が付きました。
「さっきの子、お金払ってない! あんなに飲んだのに~!!」
- Re: ごちうさ モンブラン風味 ( No.24 )
- 日時: 2020/09/24 20:23
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「牛丼、牛丼~♪」
土曜日のことです。この日の昼間、シャロさんは珍しくスキップをして歩いていました。コーヒーを飲んだわけではないのです。実は今日は月1回の贅沢の日。
バイトを頑張っている自分へのご褒美として、倹約に倹約を重ねてお金を貯め、無事に今月も今日という日を迎えることができたのですから、喜びたくなるのは当然でした。向かった先は有名な牛丼屋さんです。オシャレな格好でお店に入ったシャロさんは、店員さんに迷うことなく告げました。
「チーズ牛丼をください!」
お金を払い、券を受け取って暫く待っていますと、番号が呼ばれ取りに行きます。
トレイに載せられた大盛りの牛丼は湯気と牛肉、チーズの良い香りが漂い、食欲を刺激します。テーブルに運び、箸を取って「いただきます」を言って、最初の一口を食べます。ふんわりと柔らかな白ごはんには牛にかけられているタレがしっかりと染み込み、甘辛い味がします。上に乗っているチーズを挟みますと、伸びること伸びること。伸びこそがチーズの醍醐味です。口に含みますと、チーズの塩味が舌に伝わり、牛肉と絡められたところを食べると塩辛さ、甘味、牛肉の歯ごたえなどが織りなす美味しさのハーモニーに包まれていきます。
「んんん~♪」
頬を抑え、喜びを噛みしめるシャロさん。
この日、この瞬間を迎える為に一か月間、フルール・ド・ラパンで働いてきた甲斐がありました。辛いことも苦しいことも、全てこの一杯の丼が忘れさせてくれます。上品さを失うことなく、けれど欲望には素直に箸を進めていますと、お店に新たなお客さんが入ってきました。2m以上の巨漢で筋骨隆々としており、シャツの上からでもはちきれんばかりの筋肉が主張してきます。けれど、その筋肉以上に存在感を放つのは男性の顔でした。彼は顔全体を白銀色のマスクで覆っていたのです。異様な風体の男に箸を思わず箸を止め、男の行動を観察するシャロさん。彼はよく響く低音で告げました。
「牛丼の特盛を頼む。卵とみそ汁もつけてな」
男は立って料理が出来上がるのを待っていました。
そして牛丼とみそ汁、卵のセットを受け取るとカウンター席、それもよりによってシャロさんの隣にやってきました。
「隣が空いているのなら、座っても構わないかね」
「どうぞ」
「ありがとう」
視線を逸らすことなく告げたシャロさんでしたが、男が気になっていました。
昼間から仮面をつけているなど普通ではありません。それに、この恰好でどうやって牛丼を食べるというのでしょう。食べるときはさすがに外すでしょうから、その時に男の顔を拝見できるかもしれません。男が箸を割りました。
そしてマスクに手を――かけるようなことはなく、そのままご飯を口へかきこみ始めたではありませんか。
ちょっと、嘘でしょ!?
冷静沈着なシャロさんもこの光景には呆気に取られてしまいました。
マスクに卵を投入したご飯や肉が触れた瞬間、消えていくのです。
みそ汁も音をたてることなく吸い込まれていきます。
この男にとって仮面はどうやら肉体の一部なのかもしれません。
「ご馳走様」
男はそれだけ告げて、トレイを片付けると店を出ていってしまいました。
いつもとはちょっと違う出会いに圧倒されながらも、偶然がもたらした出会いと考え、彼女は再び牛丼に向き合います。完食するのはまだまだ先です。
この至福の時間を手短に終わらせては人生を損しているようなものですから。
- Re: ごちうさ モンブラン風味 ( No.25 )
- 日時: 2020/09/25 08:07
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「チノちゃん可愛い~。ふわふわ~」
「やめてください」
コーヒーを飲んで酔ったシャロさんは、お決まりのようにチノさんに抱き着きます。シャロさんによるとチノさんはふわふわで抱き心地がとても良く、中々離れようとはしません。ですが、これでは接客ができませんから、チノさんは困っていました。
「シャロ、早く離れるのじゃ」
「嫌~、チノちゃんと一緒がいいのよ~!」
駄々っ子のようにぴったりとくっついて離れないシャロさん。
テッピーが説得をしようとしても効果がありません。
「どうしようか、リゼちゃん」
「チノ、シャロの酔いが冷めるまで我慢してくれ」
「薄情なことを言わないでください」
「お姉ちゃんとしてここは私が頑張るよ!」
腕まくりをして引き離そうとするココアさんですが、シャロさんはビクとも動きません。結局、いたずらにココアさんが疲弊するだけで終わりました。
「くー・・・・・・くー・・・・・・」
やがて、気持ちよくなったシャロさんはすやすやと寝息を立てて眠ってしまいました。これを好機と捉えたリゼさんは一計を案じました。
「みんな、今のうちに動くぞ!」
何時間が立って、シャロさんは目を開けました。
ふわふわモフモフのはずのチノさんがカチカチになっていたからです。
その違和感に今度はしっかりと目を見開いてみますと、何とシャロさんはコアラのようにサンドバックにしがみついていたではありませんか。
寝ている隙にボクシングジムに移動させられていたのです。
「何よコレ!? どこよここー!?」
- Re: ごちうさ モンブラン風味 ( No.26 )
- 日時: 2020/09/25 10:32
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
日曜日のことです。
少しでもお客さんを獲得しようと、シャロさんはフルール・ド・ラパンのチラシを街行く人に配っていました。
けれど、中々客足は増えません。
「今日は調子が出ないわね」
見切りをつけて店に戻ろうとした時です。上空から高い声が響きました。
「そこ、どきなさーい!」
「え?」
何事かと上を見上げますと、なんと箒に乗ったロングヘアの少女がシャロさん目掛けて真っ逆さまに墜落してくるではありませんか。回避しようと思ったシャロさんでしたが、初動が遅かったこともあり、謎の少女と額と額を鉢合わせし、尻餅をついてしまいました。
「痛っ~」
おでこをさすって起き上がりますと、少女は顔から地面に落ちていました。
「あなた、大丈夫?」
「大丈夫だし。落ちてないから。着地失敗しただけだし~?」
「誤魔化してるわね・・・・・・」
「そうじゃないわよ。ところで、あなた」
少女はシャロさんに近づくとぐいと赤ちゃんを押し付け。
「少しの間、この子をお願いできるかしら!?」
「あなたの子供なら自分で育てるのが筋というものよ」
「私の子じゃないわよ! ある人に頼まれたんだけど、急用ができて、少しの間でいいから!」
「あなた、名前は?」
「リコよ。十六夜リコ」
十六夜リコと名乗る少女が手を合わせて真剣に頼むので、シャロさんは唸りました。そもそも赤ちゃんの面倒など見たことがないですし、自信もありません。
ですがふと、ひとつの考えが浮かびました。
「1時間だけなら引き受けてもいいわよ。その代わり、私のお店のお客になってくれたらの話だけど」
「ちゃっかりしているわね・・・・・・わかったわ」
「ありがと♪」
リコさんは赤ん坊を渡すと箒に乗って再び去っていきました。
「ばぶ」
「よちよち、いい子でちゅね」
赤ちゃん言葉を言いながら抱っこして、お店の中に入ります。
お客が来る様子もないですし、1時間なら問題ないだろうとシャロさんは高を括っていました。ですが、この赤ちゃん、普通とは違っていました。
「ごはん~」
「バブちゃんお腹が空いているのね。って赤ちゃんってこんなに喋れたかしら?」
「びえええええええ!」
「ああ、泣かないで。いい子だから! 今すぐ何か食べさせてあげるわね」
ハーブティーを哺乳瓶にでも入れようかと思った刹那、バブちゃんが口を大きく開けました。そして。
「ガブッ!」
容赦なく兎耳に噛みついてきたではありませんか。
「これは食べ物じゃないわよ!」
「うさぎおいしー!」
「童謡!? でも意味は違うわ!?」
1時間後。用事を済ませて戻ってきたリコさんがフルール・ド・ラパンの扉をくぐると、ボロボロになってぐったりしたシャロさんがいました。
「約束通り来たわよ。世話をしてくれてありがとう」
「当店ご自慢のハーブティで心も体も癒してあげるわよ。
でもその前に5分だけ休ませていただけないかしら?」
- Re: ごちうさ モンブラン風味 ( No.27 )
- 日時: 2020/09/25 15:10
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: daUscfqD)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
シャロさんにはひとつ大きな悩みがありました。
今日もその悩みと向き合うべく、全身鏡の前に立ちます。
じっと見つめ、それから盛大に嘆息しました。
「どうして私の胸は大きくならないのかしら」
そうなのです。シャロさんは幼馴染(もとい腐れ縁)の千夜さんと自分の胸を比較して、劣等感に陥っていました。
千夜さんと比較すると、とても控えめなシャロさんの胸。
それが彼女にとっては大きな悩みになっていました。
「私と千夜は腰回りのサイズは同じ。なのに胸にこれほどの格差が生じるなんて、神はなんて不平等なのかしら」
フルール・ド・ラパンの制服は胸を強調するものですから、どうしても大きさがはっきりとわかってしまうのです。
けれど服の構造上、文句を言っても仕方がないのです。
せめて、せめてもう少し大きくなれたら。
そのような思いを込めてティーポットを洗っていますと、注ぎ口の方から白い煙がもくもくと噴き出し、店全体を覆っていきます。そして煙が晴れた時には、一人の男性が立っていました。猛禽類のように鋭い目、長く茶色の髪に上半身の筋肉を剥き出しにして、迷彩色のズボンを履いて仁王立ちしています。
「あなたは誰で、どこから入ってきたのかしら」
「俺はハーブティの魔人だ。ガキ、お前の願いをひとつ叶えてやる」
「冗談はほどほどにしてくれないかしら」
「俺を呼びだしておいて願いが無いというのか。ならば、お前の身体を絞ってお茶にしてやるとするか」
「それだけはやめて! 言うわよ、願い! 胸を大きくして!」
「何だ。そんな些細なことでいいのか」
「私にとっては大問題なのよ」
「わかった。願いを叶えてやろう」
ハーブティーの魔人は指を鳴らして、ふたつのダンベルを虚空から生み出しました。
「これを使って身体を鍛えろ。そうすれば自然と胸は大きくなる」
それだけ言い残し魔人は煙と共に消えてしまいました。
残されたダンベルを見つめ、シャロさんは叫びます。
「鍛えたら大きくなるのは胸筋でバストじゃないわよー!」