二次創作小説(新・総合)
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- ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き
- 日時: 2023/03/04 20:10
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: o/NF97CU)
ご注意
◯死ネタが含まれます。
◯グロ注意
◯これは二次創作です。本家とは一切関係ございません。
◯ポケバは、アニメ方式で表現させて頂きます。
◯誤字脱字、私の語彙力不足での分からない所は、紙ほかの裏の陰謀についてでも、ここのスレでも大丈夫です。
《閑話》
【2022年夏】カキコ小説大会 二次小説(映像・紙ほか合同) 金賞
【2022年冬】カキコ小説大会 二次小説(映像・紙ほか合同) 銀賞
読んでくださってる方々、心の底から本当にありがとうございます!!!(´;ω;`)
──
プロローグ
ここは地球。
この星に住む、不思議な不思議な生き物。
──ポケットモンスター 縮めてポケモン
彼らは 空に 海に 大地に…さまざまなところに分布している。
この物語は… この世界の… この星の"裏"で生き残る少年の物語である…
──覚悟はできてるんだよね?──
【記憶】
イチ─仕事場─ >>1-11
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ニ─恋バナ─ >>12-13
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
サン─双子─ >>14-24
───────────────
ヨン─リゼ─ >>25-30
───────────────
ゴ─3柱─ >>33-44
───────────────
束の間の刻 >>45
───────────────
ロクーチャーフル・ジーニアの英雄譚ー
>>48-58
────────────────
ナナー嵐の前の静けさー
>>61-65
────────────────
ハチークズレハジメルー
>>66-
────────────────
番外編 腐れ縁のユウとレイ、リウとフジ
>>63
────────────────
・・・
『オリキャラ、お客様リスト』
暁の冬さんーリゼ >>20
女剣士さん
――――――――――――――――――
- Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.9 )
- 日時: 2021/03/08 20:46
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: O/vit.nk)
『ジリリリリリリリリ!』
大きな金属音がドームに鳴り響く。
全身に生ぬるいものがはいまって気持ち悪く、立っているだけで精一杯だ。
「終わったな。お疲れ様。」
レイがふぅっと息を吐く。汗1つもない彼。
「は、はい…」
レイは微笑むと僕らが来た道帰る。僕もあわててその後についていく。
出口には様々な人でごった返しているが、今日僕と一緒にロッカーに閉じ込められてた人は見かけない。
すると、誰かにぶつかってしまう。
「いたっ!あ、スミマセン」
僕はその人に謝ろうとするが、その瞬間背筋が氷る。僕の数倍背が高く体格が良い男がいた。
「あぁ?」
「ひっ!」
僕はその男から威嚇を受ける。もう体が動かなくなった。
「ちょっと、俺の連れに変なことしないでくれる?」
レイがそんなことを言う。こんな体格の良い男になに言ってるんだろうか…。
しかし、その男は体に電気を流されたかのように震え、走って逃げてしまった。
凄い。あんな男を蹴散らしてしまうなんて。
「シュウ。気をつけてね。」
僕は素直に頷く。レイはどうやらかなり恐れられているようだ。
もう20時で廊下は薄暗く、ゴーストポケモンが出そうな雰囲気だ。そういえば、この後は何をするのだろうか。それよりも、ここは何故ポケモンを殺すのだろうか。そして、レイは何者なのだろうか。
仕事が終わり緊張がほぐれると一気に頭の中に疑問が押し寄せる。さすがに一気に聴くことは出来ないため、一つだけ聞いた。
「レイ、次は何をするの?」
「飯だよ。」
ここは飯付きの仕事場の用だ。あんな重労働の後、すぐご飯が食べられるのはありがたい。しかし、ポケモンのグロい様子をみたあとでは余り食欲はわかない。
僕達は大きな部屋 ─食堂に着く。そこでは様々な人、ポケモンが殴り合いをしており、阿鼻叫喚という言葉が本当に似合う場所であった。
「なに…ここ」
あまりの恐怖に僕はメリープを抱く。メリープもその光景をみて、固まっている。
「貴重な食料だからね、奪い合いをしてるんだよ。」
レイが涼しい顔をして言っている。レイの様子からみて日常茶飯事なのだろうか…。それにしても酷い。あそこの隅っこの方なんか今にも殺されそうな少年とコロモリが居る。
「た、助けないの?レイ」
僕はレイに問いかけるがレイは表情を変えずにただただ微笑んでいる。
「うん。ここは弱肉強食だしね。」
こんな無慈悲な微笑みは見たことがない。僕は仕事の時ぐらいにゾッとした。
僕らは台に置かれていた食べ物が乗っているトレーを持ち、空いている席に座る。
相変わらず周りは騒がしく、とても食べる気には慣れない。しかし、昼あんな動き回ったため、さすがに食べないわけにもいかない。僕は腹をくくった。
「いただきます。」
「なにそれ?」
レイが、きょとんとしている。まさかとは思うが、いただきますについて言ったのだろうか。
「えっと、この材料の命に感謝をして食べる礼儀、挨拶みたいなものかな…?」
「ふぅん。」
レイは素っ気なく返事をする。興味が無かったのかと思いきや、レイも僕の真似をして「いただきます」と言う。僕は少しくすぐったくなる。それより、ご飯を食べなければ。
トレーには、パン、緑色のスープ、何かの焼いた肉の塊と、オレンの実がある。
どれもとても美味しそうとは言えない雰囲気を出している。
試しにパンをかじってみる。
「うぐぅっ」
固い。固すぎて変な声を出してしまった。僕は自慢の歯で一生懸命噛む。なにも味はしなく、固い空気を食べている用だ。
そうだ。スープでパンをふやかそう。そう思って、僕は固いパンと一緒にスープを口に…しようとした。
スープは青臭い匂いがしてとても口に出来ない。良く見ると、スープの中には謎のキノコや草が入っている。食べれるのだろうかと疑問に思ったがレイが微笑んだままスープをグビグビ飲んでいるため大丈夫…なのだろう。
またまた腹をくくってスープを口にする。その瞬間。ダストダスのような、生ゴミの塊のような、なんともいえない臭さが口の中を襲う。それは鼻、喉と広がってほしくない所に広がっていく。僕は吐かないようにと無理やりパンと一緒に飲み込む。しかし、まだ口に臭さは残っているため、オレンの実を速球に口にする。オレンの実も美味しいとは言えない生臭さと、微妙に柔らかく、腐る寸前であることが分かった。しかし、スープや固いパンよりは数千倍マシなため、問題なく食べた。
最後は肉の塊だ。今までの経験からすればこれもろくでもないであろう。そして仕事のせいでとても食べる気にはなれない。でも、貴重な食べ物だ。食べるしかない。匂いはオレンの実と似たような生臭さがある。僕はしぶしぶ肉を口にいれる。それはとても固く、味は無。そのため洗濯機のような生臭さが僕を襲う。スープよりはマシだがとても食べられる物ではない。泣きながら僕は肉を喉に送り込む。
レイを見れば微笑んだままそれらを食べている。すごいな、と思いつつ、僕は今までの疑問をぶつけてみることにした。
「レイ。少し聞いても良い?」
「なんだい?」
レイは口をもぐもぐさせている。
「ここはどこなの?この施設はなんなの?表ってなに?奴隷市場ってなんなの?なんでポケモンを殺すの?君は何者?」
最初からずっと気になってたことだけを話すが、自分が思ってたよりも混乱していたようで、余計なことまで口にする。
「そういえばシュウは何も知らなかったんだっけ。良いよ。最初から教えてあげる。」
レイはそんな質問責めにも慌てることなく微笑みを崩さずに答えてくれた。
- Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.10 )
- 日時: 2021/03/30 11:55
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: De6Mh.A2)
「まずは"表"と"裏"について説明しようか。」
レイはそういうと澄ました顔で生臭いスープをゴクゴクと飲む。
表、裏。なんの表と裏だろうか。
「"表"それは多分。シュウが住んでいた世界の粉とを指すね。表のことについてはシュウの方が詳しいだろうね。」
「どういうこと?」
「それは俺達の世界、裏についてから話すよ。"裏"っていうのはそのまんま。シュウの世界の裏側。表と対をなす世界だ。具体的に、表では禁止されていることが大量に起きている。例えば"奴隷市場"」
「さっき言ってた奴だね。」
「あぁ。奴隷市場というのはそのまんま。奴隷を育てて、色々な所に売る所だ。育てる他に、"表"から人を拐うこともある。」
「それって…僕のこと?」
「あぁ。シュウみたいに親を殺されて子供だけ連れてこられる場合もあるね。」
レイは平気で恐ろしいことを言う。まるで、それが常識であるかのように。
「え、えっと。ど、奴隷に需要はあるの?」
何を言ってるのだろうかと自分でも思う。しかし、恐ろしすぎて下らない質問しか思い浮かばない。
膝の上のメリープを撫でる。しかしメリープの静電気が感じない。
「ん?んー。まあまあ需要はあると思うよ?ここみたいな重労働のために大量な奴隷がいるからね。」
「そ、そっか…」
「他にもポケモンの売買とか、違法なポケモンの薬の売買とかだね。要するに"表"と真反対の世界と思ってくれれば良い。」
ここは僕が思った以上に恐ろしい所だったようだ。犯罪で溢れかえる世界なんてフィクションでしか聞いたことがない。それに、一つの質問でこんな情報量だと追い付かない。
「あと、"何故ポケモンを殺すのか" "ここは何処か、この施設はなにか" "俺は何者なのか"だっけ。」
「う、うん。」
「じゃあこの施設はなにか、何処なのかについて答えようか。この施設は君も知っている通りここはポケモンを殺す仕事をする所だよ。仕事って言っても給料もなにもでないけどね。」
「それって…まるで…」
"奴隷のようだ"
「奴隷だね。そうだよ俺達は奴隷だ。ここの大抵の人達は産まれた時から相棒ポケモンとこの仕事に放り込まれて死ぬまで働かされる。人数が不足すると奴隷市場から大量の人達が送られる。」
そんな酷く悲しい話があるのだろうか。いやここは僕の世界の常識は通じないと考えた方が良いのだろう。
「産まれた時からここに居るから、俺達は表のことはもちろん。裏の世界のことも話でしか聞いたことがないし、ここが何処の地方で何処にあるのかも分からない。」
なるほど。
ならレイの行動にも合点がいくかもしれない。不味い食事を文句一つ言わずにもぐもぐと食べることも、ポケモンを殺すという恐ろしいことも表情筋一ミリも動かさずに成し遂げることも、この"裏"の世界の残酷な惨状に対して何かを思っている様子をないことも。
全て彼にとっては『当たり前』なんだろう。
「だから、何故ポケモンを殺すのかも分からないね。というか、今初めて考えたね。何でだろう。」
レイは微笑みを崩さずにうーんと唸るフリをする。
「じゃあ最後に…君は何者なの?」
僕にとってはこれが一番の疑問だ。
何故見ず知らずの僕を助けてこのようなことを教えてくれるのだろうか。この施設の僕たちと同じ"奴隷"の人達は何故レイを恐れるのか。それを知るためにはまず、彼が何者なのかを知らなければならない。
「俺?俺は"レイ"またの名を"ゼロ"。産まれも育ちもこの施設。3柱の一人のピラミッド候補の結構凄い人だよ。」
レイは微笑みながら頬杖をつく。
さっきの話で出たこともあるが、僕が分からない言葉も出てきた。
「3柱…?ピラミッド…?それって何?」
「え?」
レイが心底驚いた顔をチラ見させる。が、すぐに微笑む。
「3柱。それはこの施設で高い実績を残してる人のことを指すんだ。高い実績を残している人は時期によって違うから数字はその都度違うかな。5柱とか10柱とか。誰もいなかったら0柱になるね。ここの施設の総人口は万を越えるから柱に選ばれるのは凄いことなんだよ。」
それならここの人達がレイを恐れるの理由が分かる。そんな力のある人達の怒りを買って何をさせるか分からない。しかし、そんな成績のある人が何故僕を助けたりするのだろうか。謎を説くための質問が余計深めてしまった。
「ピラミッドって言うのはね。うーん…お手軽派遣組織って所かな?」
こんな重い話の最中に"お手軽派遣組織"というギャップに驚いてしまう。
「お、お手軽派遣組織?」
「うーん…本当はそんなにお手軽では無いんだけどねお金もかなりかかるし。でも、お金を払えば書類とか契約とか難しいこと無しで協力してくれるからお手軽と言えるかもね。」
「ってことは、ピラミッドは何でも屋なの?」
「そうだね。大きなことから小さなことまで金さえあれば何でも引き受ける。それが例え世界を滅ぼすことになっても。」
何でも屋…。表の、僕が住んでた世界にもありそうだな。レイはそれの候補ってことなんだろう。でも、それなら3柱の一人の方が凄そうだな。
「そこって凄い所なの?」
「んー。歴史は余り深くはいらしいけどね。十数年前一人がやり始めたのがきっかけでどんどん大きくなって今のようになったらしいね。凄いか凄くないかって言われると…」
「おい、お前ら。何してる。」
レイの話の途中で誰かが割り込んでくる。
僕らの数倍高い身長。高校生かな?紺色のパーカーを来ていて、銀髪の短髪に吸い込まれそうな深い紫紺の瞳。目は鋭く、決してまわりに甘えさせないような雰囲気を放っている。
「お、リーダー。グットタイミング。」
レイはその男をリーダーと呼ぶ。それは本当の名前では無いようだ。
「もう食事時間過ぎてるだろ。早く部屋に戻れ。」
「まぁまぁ、リーダー。そんな怒りなさんなって。シワが増えるよ?オッサン」
レイは微笑みを絶えさずにからかう。しかし、そこには微かに冷笑が含まれている。
「い・い・か・ら・早・く・も・ど・れ」
さっきの威圧感が数倍にも増してくる。しかし、レイにそれは効いていない。
「はいはい。戻りますよー。ククク。」
ついにレイは声に出して笑うようになった。
「お前は新入りか。」
レイに向けていた鋭い目が僕に向けられる。さすがに声などはでなく、頷くことしかできなかった。
「俺はここのリーダー。お前達を統一する役割がある。俺の命令に背くならこちらも実力行使に移るからな。」
怖い。それしか頭の中に浮かばない。
「はいはい。ほら、シュウ。行くぞ。」
シュウが僕の腕を引っ張って食堂をでる。
「い、今の人は?」
「あー今の?ここの老けたリーダーだよ。」
「高校生っぽかったけど?」
「まあまあ。あの人に逆らうとろくなことにないから気を付けてね。」
「それだけ凄い人なの?」
「ああ。ここのリーダーであり。"ピラミッドの一人だからね"」
ピラミッドの…一人?
- Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.11 )
- 日時: 2021/05/04 15:01
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: LU1dyaTr)
『XX00年 ◯月 ◯日
ゼロとクロが施設から脱走。
仕事員の烈度がガタ落ちした。
ゼロが脱走したことにより施設の資金もガタ落ち。すぐに代わりを見つけなくてはならない。 仕事員の代わりにポケモンにすること試みる。』
ペラッ
『XX07年 ◯月 ◯日
新入りが驚異的なスピードで成長。
ゼロが帰ってきた。すぐに収入源にした。』
ペラッ
『XX11年 ◯月 ◯日
三柱と三名が脱走未遂。
最終関門までたどり着いた アーボ、ドク、フジを確保。
スイ、ダミは最終関門を固める薬物と一緒に自殺。
その後
レイも自害した。』
─────パタン…
「下らない。」
少年は、そう言いポリゴンを撫でた。
終
- Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.12 )
- 日時: 2021/05/22 03:39
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: nWfEVdwx)
ニ ─恋ばな─
「ガギャアッ!」
リザードンの足掻き声がそこらじゅうに広がる。
気づくと、いつの間にかガラスのドームが一面星がちりばめられたような景色になっている。そんな中僕とレイはポケモンを殺して行ってる。
最初はわけも分からず逃げるだけだったけど、ここにきて段々と分かるようになってきた。
─「殺らなければ殺られる」と。
だからと言ってポケモンを無差別に殺すのはあまりやりたくないためレイにつきまとっている。
「ふぅ。そろそろ終わりだね。大丈夫かい?シュウ」
全身返り血だらけになっているレイが僕に訪ねる。僕は肯定の意味としてうなずく。
この少年はレイ。何故か僕を守ってくれてる人だ。赤いターバンに白髪、整ったフェイスラインに高い鼻。きっと僕達の世界では美少年と歌われるほどの容姿の持ち主をしている。しかし、彼の正体はこの施設で高い実績を残している三人の内の一人であり、ピラミッドという何でも屋さんの候補だ。僕自身その凄さにはピンと来てないけど、周りの反応からして凄いんだと思う。
そんなレイが何故僕を助けてくれてるのかが分からないし、とても怪しいけれど、レイと一緒にいなければ僕は野垂れ死んでしまうため仕方なくレイにつきまとっている。
『ジリリリリリリリリ!』
機会音のアラームがガラスのドーム全体に響き渡る。仕事終了の合図だ。仕事が終わるとご飯が出されるが、ほぼ不味い。
僕は残りたいような、残りたくないような複雑な気持ちで仕事場を後にした。
これが、僕の新しい日常となった。
──────────────────
「ねぇ、レイ。」
今は仕事後の食堂でのご飯の時間。僕は生ぬるく、苦いシチューを口にしながらレイにこえをかける。
ご飯の時間は栄養補給だけでなく、レイからの情報収集もできる時間になっている。しかし、僕の疑問はここ数日で出し尽くしてしまった。例えば、「他の人達はどこからきたの?」とか「レイの親は?」とか。でもレイは決まって「分からない」と言うのだ。
どうにかこの施設に関して、レイに関しての質問が欲しい。
「今日はどんな質問なのかな?」
レイは口の量端を上げてニヤリ不気味にと笑う。レイはこの時間に僕がレイに情報収集をしているのがバレているようだった。かといって何かをしてくるわけでもなさそうだ。
それよりも…楽しんでる。
そんなレイに底無しの恐怖を感じつつ、何故か安心感も覚える。
それよりもレイへの質問を考えなくてはならない。
この施設の情報も知りたい所だが、多分僕が知りたい情報はレイは持っていないだろう。なら、レイの情報をできる限り絞りたい。なんの質問をしようか…
ふと思い付いた。この質問が何を意味しているか分からない。分からないが何故かこの質問が良い。レイのことを知れる質問だとかすかだが確信があった。
ただこの話題を出すのにはすこしためらい、恥じらいがある。しかし、僕はそれを口にだした。
「レイは好きな人がいる…?」
僕はなんてことを言ってるんだ!
口にだしてからようやく恥ずかしい話題だと気づく。
レイもキョトンとして僕のことを見ている。
「あああぁぁぁーーー!!
無し無し!やっぱり今の無しで!」
僕は下を向き、手で顔を隠す。
やっぱり凄く恥ずかしい!それに、こんな場所でこんな話をするだなんて場違いすぎる。
「ふふっ。あはっははははははは!」
レイが不意に笑いだす。
レイは3柱のためなのかレイが大笑いをした瞬間周りの人々がレイに視線を向ける。隣で静かに栄養補給していたゲッコウガが驚き慌ててレイをなだめる。レイはゲッコウガの肩を数回叩くと泥水なようなお茶(?)をのんで一息つく。
「そんな質問ができるほど、心に余裕は出てきたのかな?」
レイがいつもの微笑みで頬杖をついてこちらを楽しそうに見つめる。
確かに、この質問が思い浮かんだことは僕の心に余裕が出てきた証拠なのだろう。
しかし、こんな環境に慣れたくない気持ちと、ほっとした気持ちが混ざりあって複雑だ。
レイは僕の表情からその心情を読み取ったのか目を細める。
レイはいつも微笑みを崩さないから、目を細めたり口端を少し上げたりするのは新鮮だ。
「そうか…好きな人…か。シュウはどうなの?」
食いついた。僕は初めての手応えに嬉しさを覚えた。しかし質問返しされて戸惑う自分もいる。
僕が好きな人…好きな人…
「僕は…昔。本当に昔、生まれた間近。双子の妹がいたんだ。もっちもちの肌でキラキラの黒髪で僕に似たハンサムさも相まって本当に可愛くて好きだったな…」
「かなり熱く語るじゃないか?俺はシュウの好きな人を聞きたいな。」
レイはニヤニヤしながら僕に言う。恋愛話に関してはこんな良く食いつくものなのか。良いことが分かった。
もっと聞きたい。そういわれて僕は少し思考回路を回す。
「本当にかすかしか覚えてないけど、妹はアグレッシブな子で良く、僕と兄を振り回してたんだ。僕と同じイーブイを連れてそこらじゅう走り回って四六時中笑ってた。本当に太陽みたいな子だった…」
どんどん暗くなっていく僕の顔色をみてレイが口を開ける。
「さっきから過去形だけどなにがあったんだい?」
レイが微笑みを崩さずに僕に聞いてくる。いつもは不気味と思うだけだが、このとき限りは悪意をおぼえてしまう。
「死んだよ。
母さんも父さんも兄さんも、僕が世界一大好きだった妹も。」
レイがずっと微笑んでいる。別に情なんて求めてはいないけれど、逆にそんな無反応なのは悲しい。
「なにがあったんだい?」
「急に。襲われたんだ。沢山の人に。沢山の人が家に来て、家を燃やして行った。母さんは目の前で燃やされたよ。兄さんはその人達に連れていかれた。父さんは母さんが燃えた後に返ってきて、母さんが燃えたことを聞いた瞬間、母さんの元へ行って燃えた。妹を背負って逃げていたら家を襲った人達のポケモンに刺されたよ。妹が。妹が最後に僕を川へ突き飛ばして、気づいたら町に居て、次の母さんに拾ってもらったんだ。」
思い出したくないことがぺらぺらと口から流れていく。話したいことでも無いのに、レイの前だと何故か本音が土石流のように流れ出てくる。
「本当に。別れは唐突だよね。」
レイの微笑みが一瞬氷ったように見えたが、気のせいのように感じる。その言葉には凄い重みがあって、僕との人生の経験の差を感じられる。
「僕は言ったよ。レイはどうなの?」
僕はふて腐れたようにレイに話題を投げ飛ばす。
レイは肩を竦める。
「俺の好きな人は家族でいいの?家族とか居ないんだけど?」
「じゃあ初恋の人は?」
僕は反射的に答えた。何故か僕はどうしてもレイに恥ずかしい話をさせたいと思っている。
レイは少し眉をピクッとさせる。
「そんなに俺の初恋の人が聞きたいんだ?」
レイがニマニマしながら僕の方をみる。別にそんなんじゃない。と言いたいところだが、レイの初恋の人も気になる。かなり気になる。僕は意外と恋愛話には興味があるようだ。
「気になる。」
僕はレイの濁った瞳に向かって声をだした。レイはわずかに目を細めるとシチューを一気飲みする。
「7年前。俺はその人に出会ったよ。
ここに奴隷市場から連れてこられたばかりでね、命からがら初日の仕事は逃げたんだけど食事の時間にね身ぐるみ剥がされそうになったんだよ。そこを彼女は救ってくれた。」
レイは僕の後ろの“どこか”遠くをみつめるような目で言う。その瞳はいつも以上に濁っている。
ここに来たばかりに会ったということはレイの初恋の人はまだこの施設にいるといいことなのだろうか。
「僕よりは年下でね、多分3歳ぐらいの子だったよ。イーブイを連れて僕を襲っていた男たちを蹴散らしていった。
当時僕は本当にその子のことが怖くてさ怯えていたんだ。だけどそんな僕におもむろに抱きついてさ。『よかった』って。凄く情の籠った言葉で言うんだ。こんな悲惨な仕事を丸1日過ごしてこんな声をかけられたなら誰でも恋に落ちるのには十分すぎる出来事だと思う。」
レイが発する一言一言に重みと思いが切り刻まれており僕の心にも染み込んでいく。本当にその人のことが好きだったんだ。そう分かる。
「その人はどんな人だったの?」
僕はレイにされた質問をそのままにして返してやった。レイは待ってましたと言わんばかりに口を開く。
「バカ。とにかくバカだった。あり得ないほどのお人好しで常に笑顔を絶やさない。そして何よりも強い。皆、その子の絶えない笑顔だけが原動力だったんだ。その子が来ている露骨にサイズが大きいマウンテンパーカー、細い横髪にどこまでも透き通った黒い瞳。大丈夫といってるような眼差し。俺は全てが好きだ。」
レイが僕の目をじーっとみてくる。
どんどんレイの言葉には情熱が思っていき、最後の方ではもう聞くのすら恥ずかしくなるような内容だった。そしていつも微笑みを崩さないクールボーイなレイらしくない発言もあり、新鮮味も感じた。
それほどまでにその子が好きなのなら何故今レイはその子に会いにいかないのだろう。
今…その子は…僕は聞くのをやめた。
「その子は死んだよ。」
やっぱり。
僕はその言葉が最初に浮かんだ。そんな情熱を注いでる人が死んでいる。でも、僕はなんの言及もできないのだ。
「でも絶対あいつは死んでいないんだ。」
レイが力強く口を開く。僕にはその子の死因がなにか分からない。なにがあったか分からない。けれど、レイのその言葉には信じるものがある気がする。
「その子は生きているの?」
「遺体は見つかってない。計算上ではその子は死んでない筈なんだ。」
「その子はどこにいるの?」
「…そとの世界だ…計算上では。」
レイの言葉がどんどんにごっていく。
確信は持てない。けれど理論上死んでない筈だから死んでない可能性にかけたいという願いが垣間見得る。
「じゃあ、逃げよう!」
僕はレイの手を握って机に乗り出した。
レイは僕の顔を不思議そうに見つめていた。
- Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.13 )
- 日時: 2021/08/28 00:20
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 393aRbky)
「逃げるって…言った…?」
レイが僕の顔をまじまじと見つめる。僕は深く頷いた。こんな地獄のような生活はもう嫌だ。表へ戻って幸せに暮らせたらいいんだ。でも僕だけじゃ無理なのは火を見るより明らかに分かる。だからレイの協力が必要だ。3柱って言われるぐらいならかなり心強い。僕はワクワクしながらレイを見つめる。
すると、レイは俯く。どうしたんだろうと思って僕は声をかけようとした。
「レイ…」
その瞬間。レイが急に立ち上がり僕の顔面を掴んだ。そして頭蓋骨ごとぶち割るんじゃないかってぐらいの握力でにぎりしめてくる。そして、レイが立ち上がると同時に僕は無理やり押さえつけられてしゃがむ。
僕はレイの指と指の隙間から頑張ってレイを見ようとした。すると…
「…っ!」
声が出なかった。出せなかった。眼孔がこれ以上無いほどに開いていて、鋭い目に眉の間に深く刻まれているシワ、この世の物とは思えないような鬼の形相をしていた。
そして僕は本能的に思ってしまった。
コイツはヤバいーと。
しかし、非力な僕はそこで呆然と立ち尽くしただ恐れているしかなかった。
そしてレイは僕にしか聞こえないような小さな声で、それでも一生脳裏に焼き付けられるぐらいのどす黒い声で僕に言った。
「 脱 走 だ な ん て 二 度 と 考 え る な 」
僕は反射的に頷いた。頷くしか無かった。
するとレイは次の瞬間ニコッと微笑みに変えた。そしていい子だねと僕を撫でる。ずっと微笑みを絶やさないレイ。その顔の裏は僕には想像しきれないほどの感情で溢れてると思うと急にレイが…いや、レイ以外のこの場に、この施設にいる人達が恐ろしくなってきた。
ーここの人々は…化け物だ。
「おい。そこ。時間過ぎてるだろ。部屋に戻れ。」
リーダーが僕たちに声をかける。
周りが静かだなと思ったらもうそんな時間だったんだ。僕は何かの緊張が取れる。
「はいはい。分かってますよーオッサン。じゃ、シュウ。俺は先に行くな。」
そう言っていつもは一緒に居てくれるレイは先に部屋へ戻ってしまった。
あ、僕も戻らなきゃ。そう思った時に…
「おい。」
リーダーに声をかけられた。
なにかやらかしただろうか…
僕にまた恐怖が襲いかかりリーダーの方をむく。
「な、なんでしょうリー…ダ…」
てっきりいつもの怒り顔と思ったがリーダーは予想外の表情をしていた。
口は1文字に閉じていて綺麗な銀色の眉は八の字に、深い紫根の瞳は水性絵の具を垂らして滲ませたようにへしゃがれていた。
まるで…悲しんでる…?
「お前は…レイじゃないんだよな。」
そう言われる。
レイじゃ…ない? レイはさっき部屋に戻ったでは無いか。僕は疑問に思いながら否定の意を込め首を横に振る。しかし、リーダーは余計目を見開くばかりだ。
「そう…だな。レイな訳ないよな…
お前…いや、シュウ。出会ってそうそう悪いが1つ俺の願い事を聞いて欲しい」
「なんでしょう…」
いつもの威厳があるリーダーとのギャップに驚き、声がかすれる。
「レイを…レイを元に戻してくれ…」
「え?」
僕は訳が分からないという顔をすると、同時にリーダーの顔がいつものキリッとした誰も近づかせない顔に戻る。
「行け。」
そう一言言われ、僕は慌てて帰った。リーダーはフードを被りどこかへ出かけて言ってしまった。
僕はここを脱走したい。脱走したって外にはもう何も残ってないが… でも、何故か脱走したいのだ。謎の使命感が僕を纏うのだ。だから、僕は諦めない。
でも、そのためには…覚悟が必要かもしれやい。
僕は意を決して部屋にもどった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
一通り周りのポケモンを倒し終えて、ヘロヘロだった。でも、レイは気にせずタッタッタッと『皆』がいる場所へとかけてく。
『まっ、まってよレイっ!』
耐えられなくなった僕は遂に口にする。
『フジ!遅い!アーボとドクにまた叱られるよっ!』
僕は2人の開きすぎた瞳孔に鋭い目、シワが深く刻まれた鬼の形相を想像しただけで悪寒がした。
『で、でもぉ…僕レイよりも遅いし…』
と、言い訳をしてみる。するとレイははぁ…とため息をつき、ブカブカな上着を翻し僕の元へ駆け寄る。
『もうっ!ほら!』
そう言って、僕をおぶってくれる。僕は心地良さを感じながら周りの景色を見る。
『あぁっ!フジずるい!スイもやってほしかったぁ!』
『スイは相変わらず素直だね』
『ダミぃっ!離して!レイとフジを離して!』
『コイツらには呆れるわ…』
『ドク。そんな事言わないの』
『アーボ…あのなぁ…』
そんな騒がしい声を聞いて僕は目が覚めるんだ。目が覚めてたんだ。
ねぇ、皆どこに行ったの…?
ねぇ、僕を置いて行かないで…お願い…お願い…!
レイ、レイ…レイ…!
レイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイレイ
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「…気色悪い夢を見た。」
俺は外の月を見る。そして横のベットで寝ているシュウも見る。
「レイー…」
終
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