死に方を知らない君へ。

作者/杏香 ◆A0T.QzpsRU

一章 「理想と現実」


ふと立ち止まって見上げた空には、どこか切なさが感じられた。
空は吸い込まれそうなほど青く、雲は綿菓子のようにふわふわと広がっている。
雲の隙間から溢れるのは、眩しい太陽の光。
まるで絵に描いたかのような、とても綺麗な空だ。
「綺麗だな……」
ポツリと呟き、私はまた歩き出す。
学校から、家までの長い帰り道を。

「……はぁ」
しばらく歩いた所で、私は溜め息をついた。
帰り道は、いつも憂鬱だ。

私がそう思う理由は、お母さんにあった。
お母さんはとても厳しくて、些細な事でもすぐ怒る人だ。
だから褒められることより、怒られることのほうが多い。
多分、家に帰ってもまた怒られてしまうのだろう。

"あんたはアイツにそっくり。見てるだけでイライラするのよ"

"こんな事もできないなんて、あんたって本当に役立たずだわ!"

"あんたのせいで、私死ぬわ。あんたが怒らせるから、血圧上がるのよ!"

お母さんは怒るとそんな言葉を私に投げつけ、容赦ない暴力を私に振るう。
"私は、お母さんの望むような良い子じゃない"
その事を分かっていたからこそ、余計にお母さんの言葉が突き刺さった。