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標的32 残っている時間
神威は血相を変えて疾風の如く走る。綾乃を大事そうに抱えていた。
そして綾乃が寝かせれる場所を見つけ、横にしテキパキと介護する。手馴れたものだ。
「くそっ、何で忘れていた・・・!!」
己を責めるように呟いた。それは、誰の耳にも届かず空を舞う――事は無かった。
沢田達が聞いていた、否、聞こえてしまった。
「あの…それってどういう事ですか?」
自分達の仲間を抱き上げ何処かへ行ってしまった神威の事を追いかけてきたのだろう。息が荒くなっていた。
神威は横目でチラッと沢田達を見るとポツリと言葉を漏らした。
「この方は・・・、綾乃さまは何回、この地であの力をつかわれてしまったのだ・・・?」
沢田達は、 綾乃様?態度が違うような そう思ったが口には出さなかった。場の空気が深刻になっていっていたからだ。
「えぇっと・・・二回かな?今日を入れて」
その解答を聞くと一瞬だが安堵したような顔つきになったがまた深刻そうな顔になった。
「そうか・・・まだ二回か・・・、いや俺とスクワーロに使ったんだ安心はできん」
そうブツブツと呟いた。それに我慢できなくなったのか獄寺が、
「テメェ!!こっちの質問に答えていねぇぞ!!」
と、怒鳴った。
「そうなのな。何で綾乃は倒れたのな?」
何時もは少し能天気な山本も今回は神威を睨んでいた。
神威は三人を見ずに口を開いた。
「あの力は、言ノ葉という一族が使える力でな・・・相手を意のままに操る事が出来るんだ。でも欠点がある。一つ目相手がその言葉の意味を知っていると使えない。二つ目、自我が強かったりすると使う事が困難になる。三つ目・・・その里でしか使えない。使えたとしても命を削る事になる。今思うと、この力は呪いみないなものだ」
知らされた綾乃の力の秘密を知って思う事は後悔だった。
綾乃は自我が強かろうスクワーロと神威に使った。里でもないこの土地で、
「そんな・・・」
沢田達は言葉が出てこなかった。信じたくないと目が訴えている。
「使わせときながら言うのも何だが・・・頼むもうこの方に力を使わせないでくれ」
沢田達の方向に向き、吐き出すように言った。頼むと頭を下げ、そんな神威に、
「当たり前だよ・・・遠藤さんにそんな力絶対に使わせたりしない。」
覚悟を決めたように沢田はしっかりと言った。覚悟を決め困惑は何処かへと消えたらしい。
「そうだな」
「10代目が言うなら」
山本、獄寺も沢田の言った事に賛同した。
その発言を聞いて神威は、たった一言
「感謝する」
と、言ったのだった。