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*19*
「それに、俺は恩返しをするんだ。」
「恩返し…?」
「あの二人、アリアとアイリは俺を…幼い俺を救ってくれた。」
キクは柔らかい笑みを見せる。
それでも、目の冷たさだけは変わらなかった。
「だから、お前を犠牲にして二人の願いを叶えるんだ。」
「ぐっ!!!」
いきなり首にかかっているクロスを引っ張られる。
後ろ首が、ギシリと音を立てた。
「なぁ、どうして俺達がデリオラを復活させるか知ってるか?」
「え…………。」
「デリオラを使って、絶望を与えるからだよ。そして…辛い過去を増幅させる。」
「!!」
「辛い過去は、一分前でも一秒前でも何でも良いんだ。」
「てめぇら…!!!!」
「本当はもう過去は溜まってるんだけど…デリオラですぐに辛い過去が溜まっていくんだ!」
「は…?」
「そして、アリアがためた過去をぶつければ…兆年孤独唄が!」
そんなふざけた理由で、悪魔を蘇らそうとしているのか。
それだけの理由で―――――
「ふざけんじゃねぇ!アレがっ、アレがどれだけ危険かっ…!」
「俺だって嫌だよ!イスバンを滅ぼした奴を蘇らせるなんて!」
「!」
キクはカタカタと震えていた。
それは、怒りだ。
「だから…蘇らせたら、デリオラを倒す!」
「無理だっ、倒せる訳が………」
「黙れ!俺は倒すっ、絶対に倒す!両親の仇なんだぁ!!」
「っ――――!」
グレイには、今のキクの気持ちが痛いほど分かった。
(ああ、そうか。)
(アイツは、俺だ。)
(昔の、――――――俺だ。)
「それでも…」
「うるせぇ!お前に分かるかよっ、いつも馬鹿やってる奴に!」
コツン、と足音が響く。
「…キク。」
「アイリ!!」
「大丈夫だよ、デリオラは倒せるさ。」
「ああ、ああ!倒せる、俺なら!」
「あッ………。」
いきなりネックレスから手を放され、軽くむせる。
ハッピーの手が背中をさする。
心地よかった。