完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

6人の役者
作者: 紫桜  (総ページ数: 86ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~

*2*

♯2 「桜羽 晃(オウバ コウ)」


任命式があったその日の夜は、一人だった。
僕は、児童会長になった。

別に、母さんと父さんが家にいて、きっと褒めてくれるだろう・・・。
なんて考えは、思い浮かばなかった。期待もしていない。



僕が、何気なく時計を見たとき、携帯電話がなった。
華からの電話だった。

「もしもし晃? 今大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ」


家にいて、一番の喜びは華と電話ができること。

華は、去年隣町に転校した女子だ。
会おうと思えば会えるけど、なかなかスケジュールが合わない。

小6の忙しさなんて、上の年齢の人たちから見れば、そうでもないんだろうけど、僕はそうは思えない。

僕は、いつでもOKなんだけど、華は勉強で忙しいらしい。
なぜか。

中学校を、受験するからだ。

引越ししなくても通えて、しかも僕が通う中学校に比較的近い学校だそうだ。

無理しなくても良いよって言ったけど、華は聞く耳を持たない。


「あのね、私の受験しようとしている学校でね、
 春のお祭りがあるんだって」

「へぇ」

「それでね、晃と一緒にそれに行きたいなって思うんだけど・・・」


最後までいえないのが華らしくて、僕は微笑んでしまう。
こういうときは、僕が先に返事をしてしまう方が、華は喜ぶ。

「いいよ。けど、塾とかないの?
 優先してくれるのは嬉しいけど、それで華が無理してるんだった   ら・・・」

「ううん、塾はないの。
 私、晃と行きたかったから・・・。
 でも、学校が開くんじゃないんだって。
 学校は、場所を貸すだけ。
 それでも、いい?」

「いいに決まってんじゃん?」

今日は、珍しく長電話した。

僕はこういうとき、いつも思う。
これって、僕だけの特権だよなーって。


1 < 2 > 3